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【16位】ウォルバーハンプトン
12勝6分20敗/勝ち点42/得点54 失点69

半年分のアドバンテージを今度こそ活かせるか?
もはや伝統芸能と言ってもいいスロースタートは今年も健在。例年に比べても沼は深刻で19位に沈んだクリスマスの前にオニールは解任の憂き目にあってしまう。
もっとも、内容が箸にも棒にもかからないというわけではないのが難しいところ。前半はいい流れを掴みながら得点に辿り着くことができず、最終的には後半に垂れたところを叩かれてしまい、勝ち点を落とすというパターンが多かった。
そういう沼にハマったことで流れが徐々に悪くなってきたこともあり、それが星取に影響していた印象だ。攻め筋ははっきりしていたのは光明であり、クーニャやストランド=ラーセンといった前線の核の独力解決力は他の残留争いをしているチームに比べても明らかに別次元にいた。よって、実際には降格圏にいる時期は多かった一方、「前線の問題解決力」と「安心と信頼の尻上がり実績」の2点から本格的に降格の心配をしたタイミングは個人的にはあまりなかったように思える。
実際に戦績としてはその通りになったと言える。後半戦の巻き返し力はさすがで、特に残り15試合では6連勝を記録し、この間の勝ち点は26と欧州争いをしているチームの水準での勝ち点確保力を見せた。ウェストハムの項で「後半の追い上げがなかった」ことを中位に届かなかった要因としたが、ウルブスは「前半に沈みすぎたこと」が中位に届かない要因だったと言えるだろう。
戦力としても後半戦の方が安定していた感がある。アンドレとジョアン・ゴメスで固定できたCHはゲームメイクと前線への攻め上がりへのバランス感覚が絶妙。この辺りは年末に就任したヴィトール・ペレイラの手腕を感じる部分でもある。
バックラインではアグバドゥが独り立ち。後方におけるボール奪取能力の高さや持ち上がりからの縦パスが絶品。スケールが非常に大きく、このパフォーマンスを1年間続けていたらビッグクラブが放っておかないだろうなと思う。
前線は移籍の噂のあったクーニャの残留をバネに一転して結束力が高まった感がある。後半戦に上昇したといったが、ウルブスの巻き返しは2月から。冬の移籍市場のクローズと見事に一致している。
来季はこの監督交代を早めた成果を実にできるかにかかっている。すでにロペテギの時に失敗した半年のアドバンテージを今度こそは生かしたい。
Pick up player:マテウス・クーニャ
運んでよし、フィニッシュよしのオールラウンダー。裁量が多い方が輝きそうだが、その点でやや異なる新天地でも存在感を発揮できるか。
今季の道のり

【17位】トッテナム
11勝5分22敗/勝ち点38/得点64 失点65

将来性重視のスカッド構築が大幅に裏目に
ポステコグルー就任2年目となった24-25シーズンはリーグ戦に限った話をすれば率直にいいことを見つけるのが難しいシーズンとなってしまった。昇格組を除いては最下位という事実は重く、後述するクラブにとって長らく続いた無冠の時代に終止符を打ったという功績をもってしても、ポステコグルーの解任を止めることができなかった。
23-24シーズンはハイテンポ、ハイラインから生み出されるトランジッションサイクルを高回転させることで相手を置き去りにしていくことで、前半戦は暴れ回った印象。息切れしてしまった後半戦を経て、24-25シーズンに求められるのは安定感や大人の試合コントロールであるはずだった。
1年を落ち着いて戦うことができるチームへの変貌は全く進まなかったと言っていいだろう。懸念された指揮官の理想主義は今年に関しては悪い方向に働いてしまい、離脱者がたくさん出たスカッドにおいて悪循環に歯止めをかけることができなかった。
最も苦しかったのは最終ライン。ファン・デ・フェン、ロメロのコンビは稼働が安定せず、出番を得ることができてもパフォーマンスが不安定。特にロメロはタックルの距離感が見えていないのか、不用意な警告を連発。高いラインをキープして攻撃に転じるという仕事を果たすことができなかった。3番手としてこういう機会をなんとかして欲しいはずのドラグシンも負傷してしまい、本職が稼働できない試合は特に後半戦においては全く珍しくない出来事だった。
こうした有事に備えたスカッドではなかったのも悪循環を止められなかった要因。24年の夏の市場では本来は層の厚みをアップさせたいところだったが、前線以外は若手への投資に終始。今後を見据えればこの夏に補強した選手たちが花開く可能性は十分あると思うが、少なくとも24-25シーズンだけを考えれば裏目に出たと言える。アーチー・グレイはよく奮闘していたが、中盤より後ろをたらい回しにすることは若手の有望株にやってもらうには少々ハードすぎる仕事であることは明らかだ。
そうこうしているうちに試合のクオリティは低下。ハイテンポのサッカーがハマれば強いが、落ち着かせられない!というシーズン序盤戦の評価は、徐々にハイテンポのサッカーでも相手に押し切られるなど本来のスタイルとはかけ離れていくように。こうなってしまうとポステコグルーでなければいけない意味は薄いはず。個人的にはヨーロッパ王者のタイトルがあっても解任は妥当に思えてしまう。
来季はスカッドに合わせた振る舞いができる万能型のフランクが就任。頑固な哲学者から一転した新しいチームが見られるだろうか。
Pick up player:ブレナン・ジョンソン
チャラい若者っぽい見た目とは裏腹に「こう使ってくれればきっちり結果出しますよ」の職人気質の選手。ファー詰めと裏抜けの実直さは本当に信用できる。
今季の道のり

【18位】レスター
6勝7分25敗/勝ち点25/得点33 失点80

プレミアと大看板に別れを告げるシーズン
堂々と1年でのカムバックに成功したレスターだが、残留を志したこのシーズンにおいてはレスターは爪痕を残すことができなかったと結論づけていいだろう。プレミアに長年君臨した経験値をなかなか活かすことができないシーズンだった。
残留争いをするチームが優位に立つための条件は「低い位置でブロックを組んだ時の強度」と「点を取るための尖った武器」だと思っている。しかしながら、このどちらも揃えることができなかったというのが今年のレスターの到達点だと言えるだろう。
バックラインは非常に不安定。ファエスは相変わらず見ているこちらがハラハラしてしまうラインコントロールや、高い位置に出ていくアクションのエラーなど軽率なプレーを連発。コーディやヴェスターゴーアといったプレミア経験が豊かな面々もいたが、彼らの存在も悪循環のストッパーにはならず、延々とボックス内で相手に先手を取られる展開が続いた。
もう1つの武器であるわかりやすい点を取る武器にも困った感があった。PA内では素晴らしい駆け引きを依然として見せているヴァーディではあるが、さすがに1人でカウンターを完結させることができる爆発力には欠けていた感があった。それを周りで賄うことができればいいのだが、代わりにそうした1人で攻撃を完結できる選手がいるわけではない。
ライン間の住人であるブオナノッテ、エル・カンヌスや攻め上がりで違いを見せることができるジャスティンといった遅攻に向いている選手がいないわけではない。しかし、そうした面々が輝けるほどには押し込む機会を担保できないのが難しいところ。
引いて受けることができる固さもないし、前に出ていく推進力も甘い。というわけで今季のレスターは何で勝負するか?という点で道に迷ってしまい、なかなか戻ってこれなかった感がある。
プレミアからの降格とともにヴァーディとはここでお別れ。名実ともに新しいチームを作り上げる必要があるシーズンとなる。今年は見せることができなかったプレミアで勝負するための武器を次のチャレンジではきっちりと持ってきたいところだ。
Pick up player:ジェレミー・ヴァーディ
ミラクル・レスターを牽引したエースはついにチームに別れを告げる。主審の笛を代わりに吹いた場面は間違いなく今季のハイライトだ。
今季の道のり

【19位】イプスウィッチ
4勝10分24敗/勝ち点22/得点36 失点82

尖った武器は間違いなくプレミアを彩った
20年ぶりのプレミア復帰となったイプスウィッチ。ポートマン・ロードのファンは最後までプレミアの旅を楽しんだが、最終的な目標である残留には遠く及ばなかったというのが正直なところだろう。
全くもって可能性を感じなかったわけではない。レスターの項で挙げた残留争いをするチームに求めたい要件のうち「点を取るための尖った武器」の方に関しては、十分にこのチームは競争力を見せていた。
イプスウィッチが見せた「武器」はシャープな縦への速攻だ。その主役となるのは当然デラップ。シティ所属の過去を持つ若武者は事実上のプレミアファーストシーズンにおいても十分な存在感を発揮。わかっていても止められない加速してからの速攻の切れ味はプレミアにおいても通用。自分の形を発揮出来さえすれば、どんな相手でも苦しめることができることを証明したシーズンと言えるだろう。
こちらもアーセナル、チェルシーと渡り歩いたハッチンソンもソリストとして攻撃を牽引。冬に加入したブライトン印のエンシソや、終盤戦ではCFを務めたハーストなどアタッカーには面白いタレントが多かった。
その一方でこれらのタレントを組み合わせて90分をコーディネートするという点では不満があったように思う。特に60-70分のチームが一息をつきたくなる時間帯において、ブーストをかけるような交代カードが見つからず。デラップやハッチンソンといった主力級を終盤に投入するケースもあったが、それでも効果は薄かった。
その影響でリードをしても終盤戦で逃げきれなかったり、あるいは追いかける立場になったら一気に苦しくなったりなど得意な試合展開がかなり限られていた。この不器用さが勝ち点奪取に大きく影を落としてしまった。レスターやサウサンプトンほどでないにせよ、ラインを下げてクローズするという点を得意としなかったのも辛いところだろう。
それでも彼らのファストブレイクや前向きな猪突猛進な姿勢はプレミアを彩ってくれたのは間違いない。また、彼らの姿をこの舞台で見られる日を楽しみにしたい。
Pick up player:リアム・デラップ
自分の形ですでに怖さを見せられる存在であることは証明ずみ。次のステップは幅を広げられるかどうか。プレミアへの個人残留で更なる飛躍を遂げたい。
今季の道のり

【20位】サウサンプトン
2勝6分30敗/勝ち点12/得点26 失点86

欠点を補うためのプランがさらなる惨事を招く
言葉を選ばすに正直な感想を言わせてもらうとすれば、プレミアの初戦から降格決定までの間で個人的に「残留できそうだな」と思えた瞬間が全くなかったというのが全てだろうか。プレーオフで勝ち抜き「プレミア20番目のチーム」となったサウサンプトンのチャレンジは完全に失敗に終わってしまった。
チャンピオンシップで戦った23-24シーズンですら60失点台を記録してしまった守備のところをどのように克服するか?というのが間違いなく今季のテーマだったはず。この点を克服できなかったのがあっさりと降格してしまった最大の要因だろう。
基本的には自陣を固めてもボックス内においても守ることはできない。人がいてもマークは外してしまうし、マークの受け渡しに関する責任感が乏しい。プレミア経験のあるベトナレクなどが率先してこの感覚が鈍いのだからなかなか厳しいものがある。
守ることができないチームなので、守備の時間を減らす必要がある。ということはポゼッションを踏ん張らなければいけない!という理論で導き出されたであろう自陣でのショートパスから逃げないスタイルは地雷のパス回しの域を出ることはなし。相手のプレスを食いついたらとにかくボールをリリースすることに必死になってしまい、前進するどころではなかった。
守れないから頑張ることに決めたポゼッションで失点がさらに増えるという悪循環。前半戦はディブリング、後半戦はスレマナと攻撃を牽引する選手がいないわけではなかったが、焼け石に水感は否めない。
そんなサウサンプトンのハイライトはなんといっても後半戦のシティ戦。「これをはじめからやっていれば!」という禁句を叫ばずにはいられないほど、ボックス内での粘りを見せて勝ち点をもぎ取ったのは間違いなくサウサンプトンの今季のハイライトであった。
守備の陣形の立て直しなど再昇格からの残留チャレンジに向けた課題は少なくない印象。再びプレミアに堂々とした聖者の行進が響く日はいつになるだろうか。
Pick up player:菅原由勢
守備に追われる残留争いチームに所属する攻撃的WBとしての悲哀を感じずにはいられないシーズン。特にファーサイドのクロス対応には課題が浮き彫りになった感が強く、W杯へのサバイバルに向けた大きなポイントとなる可能性がある。
今季の道のり
