第1節 スイス戦

前回開催国が劇的な勝ち点奪取
序盤からボールを持つのはスイス。4バック気味にシフトし、アビシェルはやや前に動く形。CHのうち、ジャカは中盤に鎮座し、フロイラーは自由に動くという役割であった。
カタールは5-2-3のミドルブロックで構える形。陣形をコンパクトに保ちつつ、トランジッションからチャンスを狙う。アフィフのプレスバックからカウンターで早々にチャンスを迎える場面もあった。
しかし、主導権はスイス。ロングボールのセカンド回収から一気に抜け出して前進するケースもありつつ、基本的にはプレスに来ないDFからサイドに展開するところから大外を突くことでチャンスを作っていく。
先制点につながったのも、そのサイド攻撃から。クロスのターゲットとなったエンボロの落としから飛び出したフロイラーがPKを獲得。エンボロがPKを決めてスイスが試合を動かす。
先制点を決めた後も展開的にはスイスが優位。ポゼッションをキープする形でカタールを攻め立てていく。カタールはじわじわと押し上げる形以外での前進は難しい状態。ハイドレーションブレイク後には縦横のプレスのスライドを早めるようなシーンもあったが、スイスは落ち着いてプレスを回避。ジャカのクロスや4人目としてサイドから抜け出したバルガスからチャンスを作っていく。
後半も展開的にはスイスのポゼッション優勢は動かず。サイドにボールをつけての押し下げを敢行する。一時的にはマンツーのハイプレスからカタールがリズムを掴む形。保持でもCHが列を落ちるなど、スイスのポゼッションの時間を寸断するトライをしていく。
スイスは左の大外のバルガスを主体としたサイドアタックからリカバリー。静的に押し込みたいスイスと、トランジッションから行ったり来たりしたいカタールという構図。アフィフがスピードに乗ることができれば、一気に希望が見えてくる形は作れていた。スイスのハイラインを破りかける場面もあった。
ただし、盛り返す終盤戦もカタールはプレスでスイスを苦しめることができなかった分、リズムは一方的にはならず。このまま終わりかなと思われたが、終盤に流れの中から攻撃に出ていったフヒがヘディングを制して値千金のゴールをゲット。土壇場で追いついたカタールが、後半追加タイムに劇的な勝ち点1をもぎ取った。
ひとこと
まさにワンチャンスをものにしたカタール。アジア勢として意地を見せることに成功した。
試合結果
2026.6.13
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第1節
カタール 1-1 スイス
サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム
【得点者】
QAT:90+5′ フヒ
SWI:17′(PK) エンボロ
主審:サイード・マルティネス
第2節 カナダ戦

大勝もやや後味の悪さがある結末に
開催国の中で唯一開幕戦を勝利で飾ることができなかったカナダ。劇的な形で勝ち点を奪うことができたカタールを叩き、混戦模様のグループBの中から抜け出したいところだろう。
序盤からボールを持つのはカナダ。カタールはカナダにプレッシャーをかけることはなくボールを持たせることはOK。4-3-3であればIHが前に出ていくことで圧力を出すことができるが、そのIHの意識はむしろ自陣側に。バックを埋める形になり、カタールは早い段階でDFラインが5~6枚になるシーンが多かった。
というわけで展開としてはカナダが一方的に押し込む形。カタールは左サイドからのトランジッションでアフメドやアフィフが前に出ていくなど単発での反撃を狙うが、基本的には押し込み続ける状態が続く。
試合としては安全に攻撃のトライを続けることはできているが、なかなかあと一手を差し込むことができないカナダ。打開のきっかけになったのはセットプレー。二次攻撃となったジョンストンの右サイドからのクロスに合わせる形でデイビッドがミドルを放ち、ラリンがこぼれ球を仕留めてリードを奪う。
先制しても試合の展開は変わらず。カナダに対してカタールはプレスのかけどころを設定することができていないままとなった。リードを奪ったことでカナダは逆に気楽にプレーができるようになった感。インサイドに積極的に差し込む機会が増加。絞るブキャナンが入ってラリン、デイビッドなど自由に縦方向に動き回りながらチャンスを探っていく。
結果的にライン間に入ったブキャナンのミドルの跳ね返りをデイビッドが仕留める形でカナダは追加点。前半のうちにリードを広げる。
そのブキャナンの抜け出しからカナダは数的優位を確保。カタールは一発退場で10人に追い込まれてしまう。
さらに優勢となったカナダは前半の終盤にデイビッドが追加点。クロスを上げ切ったジョンストンのボールをラリンが折り返し、最後に10番が仕留める。
後半も展開としては同じ。ボールを握るのはカナダ。点差もついているので強度の低い展開になるかと思われたところで、コネが接触プレーで負傷をしてしまうという最悪の事態に。このプレーでマディボが退場させられたカタールは9人でのプレーを余儀なくされることに。
このあとは順当に押し込みながら追加点を淡々とカナダが叩き込む展開。コネに捧げるサリバのFKはなかなかグッとくるものがあった。
終了後の小競り合いも含めてやや後味の悪い展開となったこの試合。だが、手にしたものを見れば、コネの負傷を例外としてカナダには十分なものが残った結果だと言えるだろう。
ひとこと
カタールがどこでカナダに勝負をしようとしたかがあまり見えず。勝負をかける間もなく叩きのめされてしまった感じがした。
試合結果
2026.6.18
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第2節
カナダ 6-0 カタール
BCプレイス・バンクーバー
【得点者】
CAN:16′ ラリン, 29′ 45+3′ 90+2′ デイビッド, 64′ サリバ, 75′ シャフェルバーグ
主審:クリスチャン・ガライ
第3節 ボスニア・ヘルツェゴビナ戦

輝きを放ち出したボスニア・ヘルツェゴビナのアタッカー陣
もう1つのカードの余裕さとは対照的に、こちらは現実的には3位通過を目指す両チームの試合。勝てばW杯の初勝利という名誉もかかっている重要な試合である。
4-5-1で構える形がメインとなったカタールに対して、ボスニア・ヘルツェゴビナがポゼッションするスタート。外にボールを循環させつつ、左サイドのアライベコヴィッチとコラシナツの縦関係から打開を狙っていく。
とにかくこの日のボスニア・ヘルツェゴビナは積極的な姿勢が目立ったのが特徴。前が開いたらガンガン打つということを意識しており、割り切った様子が見られた立ち上がりだった。
一方のカタールは基本的にはカウンターベース。9番の位置に立つアフィフはさすがに偽CF。中盤まで降りるアクションからボールを引き取り、そこから背後を狙うパスを出していく。アフィフを起点に裏抜けから直線的に向かうというのがカタールのプランだった。
こうなってくると単発の攻撃であるカタールに対して、ボスニア・ヘルツェゴビナは保持の機会が増えていくことに。徐々にカタールを押し下げていく。サイドから押し下げていきつつ、セカンド回収という形でバイタルが空くか?というのがこの試合のポイント。そのポイントを制したのがアライベコヴィッチ。セカンド回収ではなく、ドライブで中盤を剥がすことでシュートのスペースを確保。振り切ったシュートで豪快な一撃を見事に決める。
カタールはプレスを強化していきたいが、ボスニア・ヘルツェゴビナはデミロヴィッチを中盤に下ろすことで中央の数的優位を構築。ボスニア・ヘルツェゴビナがビルドアップの時にバックスがプレスを1枚引き寄せることでカタールは中盤が足りなくなってしまう。結果的にプレッシングは空転となった。
ボスニア・ヘルツェゴビナは押し込む局面を継続。右サイドからのジェコのクロスがオウンゴールを誘発し、リードを広げることに成功する。
ボスニア・ヘルツェゴビナの一方的な展開だった前半だったが、カタールは終盤に反撃。4-4-2の際にはボスニア・ヘルツェゴビナはなかなかプレスにいくことができないことを逆手に取り、右に流れるアフィフからサイドの裏を取ることに成功。あれよあれよという間にボックスに入って行き、最後はアル・ハイドゥースがゴールを決める。
後半、ボスニア・ヘルツェゴビナはもう1回ポゼッションから展開をキープ。アライベコヴィッチとコラシナツの左サイドから展開を掴み直す。降りるアクションが多かったデミロヴィッチが背後を取る動きから変化をつけていく。
ボールを持つ側になった場合のカタールは前半同様にボスニア・ヘルツェゴビナの消極的なブロックに対して、追い込むことができるように。展開としては一進一退の攻防となる。
終盤にもう一度ギアを入れ直したのはボスニア・ヘルツェゴビナの方だろう。右サイドのバイラクタレヴィッチのカウンターからパンチのあるミドルを放つと、ここから勢いに乗ることに成功。マフミッチがゴール前で粘りながらゴールを叩き込み、試合を決定づける3点目を決める。
初勝利と3位からの決勝トーナメントのチケットを手にしたのはボスニア・ヘルツェゴビナ。滑り込みでW杯の旅を続けることに成功した。
ひとこと
ようやく若いWGたちが輝き始めたボスニア・ヘルツェゴビナだった。
試合結果
2026.6.24
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第3節
ボスニア・ヘルツェゴビナ 3-1 カタール
シアトル・スタジアム
【得点者】
BIH:29′ アライベコヴィッチ, 34′ アルブラキ(OG), 80′ マフミッチ
QAT:42′ アル・ハイドゥース
主審:ヘスス・ヴァレンズエラ
総括

脱・アジアカップ番長は失敗に
前回の開催国はアジアカップ連覇という実績を引っ提げて自国開催ではない初めてのワールドカップに見参。3連敗という結末に終わった前回大会のリベンジに燃える大会となった。
スイス戦は奇跡のような結果だったといえるだろう。終始押し込まれて、かつボックス内での対応も後手。ひたすらに殴られながらもなんとか1失点で耐えきったご褒美が最後の最後に舞い降りてきたというような試合。今大会では一番「これで勝ち点取れるのか!」という内容だったかもしれない。
すべてが壊れてしまったのはカナダ戦だろう。押し込まれ続ける中でのセットプレーで失点をした挙句、2人の退場者を出してしまい、ゲームとしての形を保つことができない状態に。コネが負傷した結果(早く治りますように)を重要視したというプロセスが疑問のマディボの退場はともかく、ブキャナンにちぎられてしまった11人→10人の退場は言い訳の余地なし。引いて受けて失点して抜け出されるというのは割とすべてをやらかしてしまった感がある。
3試合目のボスニア・ヘルツェゴビナとのW杯初勝利と3位通過の権利をかけた試合はアライベコヴィッチをはじめとするボスニア・ヘルツェゴビナのアタッカーのスピードに振り切られてしまい苦戦。プレスに出ていくアクションも枚数調整で外されてしまうなど、終始劣勢のまま敗れてしまった。
これまでのチーム同様にアフィーフがスピードに乗ることができれば強いチームなのだろう。しかしながら、プレス回避にアフィーフが下りてこなくてはいけないなど、組み立ての段階で彼のスキルを頼ることも少なくなかったことも確か。アフィーフをめがけてゴールから逆算して組み立てるほどの余裕がなかったことは素直に痛い。
非保持では引いて受けるアクションはするのだけども、サイドでは後手に回り、ボックス内の対応も脆弱。正確に彼に届けることができるのか?というところも含めてアフィーフへのロングカウンターだけでは収支が合わない状況を最後まで変えることができず。アジアカップ番長の印象を上書きすることはできなかった。
Pick up player:アクラム・アフィーフ
なんだかんだアフィーフだし、アフィーフ側もなんだかんだ期待に応えてくれる。
