第1節 ボスニア・ヘルチェゴビナ戦

おそばせながらの反撃で1ポイント止まり
メキシコに続いてカナダでもワールドカップが開幕。開催国が迎え撃つのは、プレーオフからギリギリで滑り込んだボスニア・ヘルツェゴビナだ。
4-4-2で組み合う両チームは、序盤から縦に速いロングボールの応酬。味方も積極的に前へ飛び出していくなど、かなりアグレッシブな立ち上がりとなっていた。
時間の経過とともにボールを持つ機会が増えていったのはカナダ。ミラーに時間を作ってもらいつつ、オーバーラップする味方を使っていく。トランジッションからオルワセイを生かす形も含めて、徐々にボスニア・ヘルツェゴビナを自陣へ押し込んでいく。
サイドから押し下げられ、ボックス内を何とか守る展開に追い込まれるボスニア・ヘルツェゴビナ。しかし、序盤から強さを見せていた空中戦から先制に成功する。セットプレーからコラシナツのニアフリックをルキッチが叩き込み、リードを奪う。
以降はさらにカナダの保持が増える展開に。やや大味な肉弾戦の連続となり、なかなか決め手となる攻め筋を増やすことができない。それでも中盤でボスニア・ヘルツェゴビナの反撃をすぐに封じることで、自分たちのターンを延々と増やしていく。ボスニア・ヘルツェゴビナは右サイドのバイラクタレヴィッチがスピードを生かした陣地回復を狙うが、ラリアとのマッチアップで簡単には前へ出られない状況だった。
少し違いになりそうだったのはインサイドのしなやかさだろうか。ターンからボスニア・ヘルツェゴビナのDF陣を振り切るようなシーンはちらほら見られた。それでも肝心の決定力がついてこなかったカナダ。前半のうちにビハインドを解消することができないままハーフタイムを迎える。
後半もカナダのポゼッションは安定。前線のしなやかさを生かしたターンも健在で、ボスニア・ヘルツェゴビナはミドルゾーンより後ろで延々と耐える展開が続くこととなる。ブロックのコンパクトさも前半よりルーズになっており、カナダは中盤やサイドでブロックの内側にフリーの選手を作り、背後へ抜ける選手へパスを出すための動線を作る余裕があった。
ボスニア・ヘルツェゴビナはロングボールのセカンドボール回収から一気にゴールを狙っていく形が中心。サイドの選手を入れ替えてアライベコヴィッチを投入しても、反撃の機運はなかなか高まらなかった。
プレスの意識を強めたボスニア・ヘルツェゴビナを退け、あとは仕上げられるかだけがテーマとなったカナダ。決め手になったのはしなやかさだった。ボックス内でうまくフリーになったラリンが同点ゴールを決める。
しかし、反撃はここまで。試合はタイスコアのまま終了。勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
ボックス付近の精度が特に先発セットに欲しいという感じのカナダだった。
試合結果
2026.6.12
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第1節
カナダ 1-1 ボスニア・ヘルツェゴビナ
トロント・スタジアム
【得点者】
CAN:79′ ラリン
BIH:21′ ルキッチ
主審:ファクンド・テージョ
第2節 カタール戦

大勝もやや後味の悪さがある結末に
開催国の中で唯一開幕戦を勝利で飾ることができなかったカナダ。劇的な形で勝ち点を奪うことができたカタールを叩き、混戦模様のグループBの中から抜け出したいところだろう。
序盤からボールを持つのはカナダ。カタールはカナダにプレッシャーをかけることはなくボールを持たせることはOK。4-3-3であればIHが前に出ていくことで圧力を出すことができるが、そのIHの意識はむしろ自陣側に。バックを埋める形になり、カタールは早い段階でDFラインが5~6枚になるシーンが多かった。
というわけで展開としてはカナダが一方的に押し込む形。カタールは左サイドからのトランジッションでアフメドやアフィフが前に出ていくなど単発での反撃を狙うが、基本的には押し込み続ける状態が続く。
試合としては安全に攻撃のトライを続けることはできているが、なかなかあと一手を差し込むことができないカナダ。打開のきっかけになったのはセットプレー。二次攻撃となったジョンストンの右サイドからのクロスに合わせる形でデイビッドがミドルを放ち、ラリンがこぼれ球を仕留めてリードを奪う。
先制しても試合の展開は変わらず。カナダに対してカタールはプレスのかけどころを設定することができていないままとなった。リードを奪ったことでカナダは逆に気楽にプレーができるようになった感。インサイドに積極的に差し込む機会が増加。絞るブキャナンが入ってラリン、デイビッドなど自由に縦方向に動き回りながらチャンスを探っていく。
結果的にライン間に入ったブキャナンのミドルの跳ね返りをデイビッドが仕留める形でカナダは追加点。前半のうちにリードを広げる。
そのブキャナンの抜け出しからカナダは数的優位を確保。カタールは一発退場で10人に追い込まれてしまう。
さらに優勢となったカナダは前半の終盤にデイビッドが追加点。クロスを上げ切ったジョンストンのボールをラリンが折り返し、最後に10番が仕留める。
後半も展開としては同じ。ボールを握るのはカナダ。点差もついているので強度の低い展開になるかと思われたところで、コネが接触プレーで負傷をしてしまうという最悪の事態に。このプレーでマディボが退場させられたカタールは9人でのプレーを余儀なくされることに。
このあとは順当に押し込みながら追加点を淡々とカナダが叩き込む展開。コネに捧げるサリバのFKはなかなかグッとくるものがあった。
終了後の小競り合いも含めてやや後味の悪い展開となったこの試合。だが、手にしたものを見れば、コネの負傷を例外としてカナダには十分なものが残った結果だと言えるだろう。
ひとこと
カタールがどこでカナダに勝負をしようとしたかがあまり見えず。勝負をかける間もなく叩きのめされてしまった感じがした。
試合結果
2026.6.18
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第2節
カナダ 6-0 カタール
BCプレイス・バンクーバー
【得点者】
CAN:16′ ラリン, 29′ 45+3′ 90+2′ デイビッド, 64′ サリバ, 75′ シャフェルバーグ
主審:クリスチャン・ガライ
第3節 スイス戦

起爆剤の効果が持続したスイスが首位通過を決める
この2チームが最終節に見据えているのはノックアウトラウンドから先の話。首位の座を勝ち取ることができれば移動なくこのまま近い会場での調整が続くことになる。特にホームのカナダにとっては1位通過は多くのファンの後押しが期待できるプラチナチケット。是が非でも確保したいところだろう。
序盤はまずはスイスのボール保持からスタート。カナダはコンパクトなブロックをキープしつつ、サイドにボールが出たら圧縮するというスタンスだった。スイスはジャカがサリーをしつつカナダのプレスの噛み合わせをずらしていく。精度の高いジャカが浮くことができれば、ライン間にボールを落とすことも対角でサイドに揺さぶることもできる。
スイスの攻撃は前線の2枚のFWを活かす形から。背負ってよし、反転も期待できるマンザンビとエンボロの2人に対して、カナダのDFラインは1on1。彼らをダイナミックに使って馬力を生かしてゴールに向かってもらう役割が期待される。
カナダは逆にトランジッションからインサイドの細かい繋ぎで前進を狙う格好。体を当てるというよりは降りて浮く形を好む、ジョナサン・デイビッドがリンクマンとしての役割を担う。
序盤はジャカが自在に浮くという意味で配球が安定していたスイスが優位。だが、カナダがジャカのマークを厳しくして、出し手が変わるようになるとボールの供給面はやや不安定に。スイスの2トップはやりきれないと味方と繋がりきれないという弱点もあった。仮にロストをしてしまうと、ここから一気にカウンターを打たれるケースも。徐々にオープンな展開の中からカナダが裏抜けでチャンスを作る場面も出てくる。
2トップを活かせればスイスペース、それでなければカナダが直線的な攻撃からチャンスを得るという展開で前半は推移。しかし、スコアレスのままで試合はハーフタイムを迎える。
後半早々に試合を動かしたのはスイス。右サイドに流れるマンザンビを起点に2トップでカナダのDFラインを根こそぎ引っ張ることに成功。最終的に大外で浮いたバルガスが貴重な先制点を生み出す。
このゴールで一気に着火したスイスの2トップ。エンボロ→マンザンビのラインからあっという間に追加点を決める。
追い込まれたカナダはハイドレーションブレイク明けに反撃。投入したプロミス・デイビッドがワンタッチ目を叩き込んで1点差に迫る。
その後も身長の高い選手を中心にハイタワー戦略でゴールに迫っていくカナダ。追いつくところまで行けば逆転する順位だが、もう1点が遠いままで終戦。1位の座を勝ち取ったのはスイス。2位となったカナダは南アフリカとのRound32での対戦が決まった。
ひとこと
スイス、完全に2トップへの移行がこの大会の転換点。この2人の勢いはどこまで続くのだろう。
試合結果
2026.6.24
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第3節
スイス 2-1 カナダ
BCプレイス・バンクーバー
【得点者】
SWI:46′ バルガス, 57′ マンザンビ
CAN:76′ プロミス・デイヴィッド
主審:ラモン・アバッティ
Round 32 南アフリカ戦

自信を深める南アフリカを早めの切り札投入でねじ伏せる
Round32のスタートはカリフォルニアから。ロサンゼルス・スタジアムで先陣を切るのは開催国の1つであるカナダ。南アフリカはグループステージと同様にノックアウトラウンドでも開幕戦で開催国と当たることとなる。
序盤で主題になったのは南アフリカのビルドアップに対するカナダのプレス。かなりプレスの意識は強く、広がる南アフリカのCB陣に対して、圧力をかけにいく。マイナスのパスをGKのウィリアムスに出させることができれば、ミスキックからのボール回収が期待できる格好。ウィリアムスにプレスがかかる状態を作ることがカナダの目標となる。
南アフリカはビルドアップの陣形を工夫。モコエナだけを最終ライン手前にアンカー気味に置く形からシトレも低い位置に下げることでCH2枚を横関係に配置する。カナダはモコエナ1枚であればラリンが前にスライドする形でプレスに出ていたが、2枚までプレスをかけにいくのは躊躇する。
ウィリアムスへのプレッシャーから逃れた南アフリカが狙いを定めたのは左サイドのアポリスのスピード勝負。逆サイドのマセコも含めて、SHはスピード勝負ができるマッチアップ。南アフリカとしては自陣にプレスを引き寄せてから、敵陣でスペースのある状態でSHのフリーランを活用したい。
カナダはスピードを期待されて起用されたボンビトが当たった感じ。一度スローダウンをさせてしまえば、南アフリカのSHはできることが格段に下がる形となる。最後のところはやらせないということはカナダは十分に出来ていた。
最後までやりきれなかった南アフリカのもう1つの誤算は構造的にギャップを作ることが出来ていてもミスはそれなりに起きるということ。ミドルサードでのミスからカウンターを受ける場面も少なくなく、ラリアとミラーのカナダの左サイドのコンビネーションから素早い攻撃を完結させる。
保持においても狙いとなるのはこの左サイドの抜け出し。インサイドに多くのポイントを作りつつ、距離の近いパス交換からサイドの裏を出口にして南アフリカのバックラインを背走させる場面を完成させていく。
南アフリカは献身的なSHのプレスバックやインサイドのポスト役に対するCHの挟み込みなど2列目の奮闘によってカナダに決定的なチャンスを与えず。トランジッションからでも粘りのある対応が見えたのは好材料だ。
両チームの中で最も得点の可能性が高い局面はカナダのセットプレーだろう。南アフリカはマンマークを離してしまう場面や、ラインを破られてしまう場面が見られるなど、カナダのボール次第では行かれていたなと感じる場面はいくつかあった。この点で壊されなかったのは南アフリカにとっては幸運。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。
南アフリカはハーフタイムに選手の入れ替え。トップ下のモフォケングに代えてムバサを投入する。前半の頭と同様にCHはアンカーのような振る舞いを増やしていく。選手交代はトップ下+2CHという構造から3CHに均質的に変わった感じで、枚数調整とアンカー役の人選を入れ替えることでカナダにプレスのポイントを絞らせない。
前半よりもアンカー+2IHのような陣形が増えたことでCFのマクコバのポストを積極活用。インサイドのコンビネーションとセカンド回収から裏抜けの手前に手数をかけるように。
カナダのプレスには依然として迷いがある状況で、アンカーにはっきりとプレスをかけられる場面が増えたわけではなく、縦パスから横断で厚みのある攻撃を受ける場面が続く。南アフリカの調整はうまくいったように見えた。
しかしながら、一発があるのはカナダという状況は変わらず。オルワセイの抜け出しから決定機を迎えた場面はスピードを生かしたところであったが、これはムボカジのブロックで間に合わせる。
アンカーを捕まえられないカナダはさらに選手交代。中盤とバックラインにテコ入れをする。プレスをかけていきたいという意志は見えていたが、前半の立ち上がりのようにウィリアムスに効果的なプレスのかけ方ができる場面は増えてこない。
南アフリカの攻撃を受けながらも相手のボックス付近の精度の低さに助けられているカナダ。とにかく早めの選手交代で活性化を促す。前線にプロミス・デイビッドを投入して高さ重視のプラン。さらにはやや時間差で切り札であるアルフォンソ・デイビスも投入。シャッフェルバーグとともにサイドの活性化を狙う。
早めの最終兵器投入でなんとか息を吹き返したカナダ。南アフリカを押し込む場面を後半にようやく作り出すように。南アフリカもCFのポストから加速を狙うが、ボックス付近のクオリティは交代しても変化はなかった。
右サイドのシャッフェルバーグから繰り返されるクロスはなかなかボックス付近には届かなかったが、再三繰り返されたこのクロスの跳ね返しを回収したエウスタキオがミドルでこじ開けに成功。延長ウェルカムの空気に風穴をあける。
早めの切り札投入でなんとか90分で南アフリカを下したカナダ。Round16に一番乗りを果たした。
ひとこと
時間と共にビルドアップに自信を深める南アフリカを結果的にはカナダの早めの交代策がねじ伏せた格好だった。
試合結果
2026.6.28
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
南アフリカ 0-1 カナダ
ロサンゼルス・スタジアム
【得点者】
CAN:90+2′ エウスタキオ
Round 16 モロッコ戦

タフな戦況で際立つ強さ
Round16の戦いはヒューストンからスタート。開催国の一角であるカナダが迎えるのはすでにオランダを下したくらいでは誰も驚かなくなっているモロッコだ。
試合はモロッコの保持が中心となる立ち上がり。ミドルブロックの4-4-2を組むカナダに対して、モロッコはブアディがアンカー役でSBが枚数調整役となるいつもの形。この日の保持の方向性の特徴はダイレクトにカナダの背後を突くボールが多かったこと。いつもよりも手数を少なくするようなアプローチからカナダの守備を揺さぶる。
誤算なのはCFのサイバリが負傷してしまったことだろう。縦横無尽に動けるCFがいなくなったことで、ダイレクトに背後を狙うプランはやや停滞した感がある。加えて、自陣でのパスワークでのミスが目立ったことでカナダのカウンターのきっかけを呼び込んだことも誤算。サイドに展開するボールをインターセプトで狙い撃ちすることで、そのまま前に推進力を持って出ていくことができた。決定機という面ではカナダの方が優位な前半だったと言えるだろう。
カナダのもう1つのチャンスは押し返したところからのセットプレーだろう。フーゲロールスの高さを活かすような空中戦や二次攻撃からのジョナサン・デイビッドの決定機などあわやというようなシーンも出てくるように。
保持の局面は着実に増えるモロッコだが、クリティカルなパスは入らず。カナダの高いラインを攻略できないまま、前線の苛立ちがイエローカードにつながってしまった感じがあった。カナダからすれば自陣のボックス内を防衛する必要はほぼなかった前半。戦略的にはバッチリとハマったと言えるけども、この内容ならば得点が欲しいという展開だった。
後半、モロッコのポゼッションは広げるようなパスワークにシフト。まずは縦パスという方向性から微妙に変えたことでサイドのスピードを活かすような局面が出てくる。
サイドからの揺さぶりに成功したモロッコはセットプレーからの先制点。虚を突いたマイナスのパスからウナヒが仕留めて難しい展開の中での先制ゴールを決める。
ポゼッションからハイプレスで反撃に出ていくカナダ。先制してなお前に出てくるモロッコに対して、1枚を剥がすことはできるのだけども、そこからスピードに乗って敵陣を侵略するところまでは至らなかった印象だ。
モロッコはブアディからアムラバトにスイッチすることで一時的にポゼッションの落ち着きを取り戻したように見えた。だが、徐々に縦に速いパスをカナダにカットされる場面も増えてしまい、またもカナダに押し込まれる場面が出てくる。
その状態でも解決策を見せたのがこの試合のモロッコ。カナダの右サイドのモタモタをカウンターで制圧。数的優位の速攻からマイナス方向のウナヒがまたしてもゴールを決める。
最後まで諦めなかったカナダだが、モロッコが3点目を決めて完全にとどめ。タフな展開の中でも完勝を果たしたモロッコがベスト8一番乗りを果たした。
ひとこと
らしいポゼッションが出せない中での完勝はむしろモロッコの強さを感じさせるものだったと言える。
試合結果
2026.7.4
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 16
カナダ 0-3 モロッコ
ヒューストン・スタジアム
【得点者】
MAR:50′ 82′ ウナヒ, 90+8′ ラヒミ
主審:マイケル・オリバ
