第1節 オーストリア戦

セットプレーの脆さがヨルダンの致命傷に
ここまで好調のアジア勢。初出場となるヨルダンもこの波に乗りたいところ。この舞台が久しぶりとなるオーストリアとの一戦に挑む。
序盤からボールを持ったのはオーストリア。2CB,2CHの組み合わせからポゼッションを敢行。ヨルダンの5-4-1に対して押し込んでいく。SBが絞りさえすれば、敵陣の大外へのパスルートはガラ空き。大外に迂回させることで一方的にヨルダンを押し込んでいくスタートとなった。
一方のヨルダンは前線のアルダーマリのキープ力から陣地回復していく形。自陣に下がった苦しい状態からロングボールを受けてなんとか時間を作っていきたいところ。
押し込む機会が多かったオーストリアは左サイドのタメを活かす形で先制点をゲット。マイナスのところでボールを受けたシュミットのミドルでスコアを動かす。
ハイドレーションブレイクが明けたところからヨルダンは少しずつポゼッションを増やしていく展開。左サイドのクロスとセットプレーのチャンスからオーストリアのゴールに策を講じていく。アルダーマリのキープ力も前半に比べれば、高い位置で活かすことができる展開だった。
オーストリアにとってはなんとも言えない状況。ヨルダンが前がかりになったところをひっくり返すようなシャープさはないが、押し込まれている状態自体がものすごく困っているわけではない。ひとまずリードを得ているのであれば問題はないのかな?と言える流れの中にいた。
しかし、後半にもきっちりと押し込んだヨルダンは早々に結果を出すことに成功。前から噛み合わせるプレスで反撃に出ようとするオーストリアをひっくり返し、カウンターからオルクンがゴールを奪い取る。
オーストリアのプレッシングは反撃のきっかけになるというよりはむしろ間延びのトリガーになった印象。左右にピッチを広く使うヨルダンに対して縦と横のコンパクトネスが足りない状態を招いてしまう。
苦しくなったオーストリアは3枚交代を敢行。前線のオフザボールを活性化することで、勢いを取り戻しにいく。押し込む機会を回復させたオーストリアはセットプレーからアルナウトビッチがネットを揺らすが、これは直前のハンドで取り消し。
しかし、ハイドレーションブレイク後に再びアルナウトビッチに合わせるところからオーストリアは勝ち越し。厳密にはオウンゴールではあるが、リベンジを果たした格好だ。ヨルダンはGKの飛び出しの不安定さが危うさを増幅させていた感がある。
なかなか前に起点ができなかったヨルダンだが、終盤に再びハイプレスを起動。パス回しのスピードが足りず、プレスをいなし切ることができないオーストリアを攻め立てる。
このままいけばあるいは・・・という展開を挫いたのが自陣でのPK献上。再びのアルナウトビッチが決定的な3点目を仕留めて万事休す。オーストリアが久々の本大会を勝利で飾った。
ひとこと
セットプレーでの危うさがヨルダンの致命傷となってしまった。
試合結果
2026.6.16
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループJ 第1節
オーストリア 3-1 ヨルダン
サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム
【得点者】
AUT:21′ シュミット, 76′ アルアラブ(OG), 90+12′(PK) アルナウトビッチ
JOR:50′ オルワン
主審:ダハネ・ベイガ
第2節 アルジェリア戦

セットプレーで見られた脆さがヨルダンの致命傷に
第1節ではともに敗れる形でのスタートとなった両国のワールドカップ。文字通り、生き残りをかけての第2節に挑むこととなる。
序盤からボールを握るのはアルジェリア。ヨルダンはCBまではプレスに行かずにジリっと構える形。アルジェリアはシャドーがかなり絞るアクションでCFのグイリとの距離を近くとるのが特徴。IHの2枚のうち、ブダウイは低い位置を取ってアンカーのゼルキをサポートする。大外はSBがとるケースが多かった。
基本的にアルジェリアの前進の方策はインサイドに絞るSHとCFとの連携。細かいポゼッションから前を向く選手を作り、サイドに展開してのクロスからボックス内を狙っていく。パスワークから後方に食いつかせてヨルダンの中盤を間延びさせることができれば、そこからインサイドに差し込む形は作りやすかった。
押し込んでからはサイドからの三人称で攻撃を組んでいく形。奥を取りつつ手前に戻し、斜めに入っていく動きで最終ラインに吸収される中盤のスペースを狙っていく。ヨルダンはこの攻撃にはかなり根性でついていくことで抵抗していた。
アルジェリアはダイレクトに背後をとるオフザボールを活かすケースも。その場合は後方で浮くブダウイがボールの出し手となり、背後へのパスを狙っていく。
ヨルダンは右サイドから裏を取るスタート。サイドからアルジェリアのSHとSBを食いつかせつつ、アイト=ヌーリの背後をとるアクションで一気に押し下げていく。逆にセンターラインではロングボールでカジュアルに前進するのは難しい状況。オルワンのように長いボールを当てつつ、味方に追い越してもらうアクションの方がいいかもしれない。
なかなか前進がうまく行かないヨルダンだったが、流れに逆らうように先制ゴールをゲット。ゼルキのミスをさらってカウンターに成功。当たり損ねたシュートのこぼれをミドルで仕留めてリードを奪う。
このゴールで勢いに乗ったヨルダン。シャドーのキープ力を生かしながら陣地回復する場面が増えることでアルジェリアと互角に渡り合う場面が増えてくる。
後半、リードを許したアルジェリアはメンバー変更を敢行。後方からのゲームメイク役をベンタレブに入れ替えることでゲームメイクを再開。細かくインサイドに差し込むレーンを工夫することでクリティカルな攻撃を目指す。
サイド攻撃は右サイドに偏重。こちらも交代で入ったベンブアリが崩しに加わりながら、サイドのローテーションで相手を外しにいく。
前半に引き続き、これぞ5バックというスライドを繰り返すヨルダン。流れの中では穴を開けずに踏ん張っていたのだが、セットプレーから決壊。シンプルなヘディングの強さを生かして、ベンブアリが同点ゴールを決める。
このゴールの前後からアルジェリアはセットプレーでのチャンスを量産。続くセットプレーからのチャンスでヨルダンを追い込んでいく。後半の立ち上がりはまだ効いていたカウンターも終盤には前進ができない状態に追い込まれていた。
セットプレーでこじ開けに成功したアルジェリア。グイリのゴールでなんとかゴールに押し込んで逆転。そのまま逃げ切りを達成し、最終節に望みをつなぐ3ポイントを手にした。
ひとこと
ヨルダン、あまりにも脆いセットプレーの守備だった。
試合結果
2026.6.22
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループJ 第2節
ヨルダン 1-2 アルジェリア
サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム
【得点者】
JOR:36′ アルラシュダン
ALG:69′ ベンブアリ, 82′ グイリ
主審:スラヴコ・ビンチッチ
第3節 アルゼンチン戦

30分で輝くスター
すでに首位通過を決めているアルゼンチンと敗退が決まっているヨルダンのカード。結果的にも熱戦になった逆側のカードと比べると、コンペティティブな意味合いとしては薄めの試合。それでもヨルダンにとっては大いなる挑戦となる試合だ。
メッシがいないせいかこの日のアルゼンチンはいつもよりも前からのプレスにジリっと進んでいくようなアクションが多め。ヨルダンは安全に直線的なロングボールを選択することでプレスから逃げる。
よって、試合はアルゼンチンのポゼッションがベースに移行する。ヨルダンの5-4-1の守備ブロックの前でのポゼッションを敢行。LSBのタグリアフィコとCHのパレデスの列落ちから後方が重めの陣形を敷く。
メッシがいなくてもアルゼンチンの攻撃の狙い目は同じ。ライン間に3-4人のアタッカーを入れつつ、前を向いて背後を狙う選手への裏抜けのラストパスを狙っていく。メッシがいなくても攻撃はスムーズに流れているのはさすがアルゼンチンという感じだ。
押し込むアルゼンチンはロ・チェルソのFKで先制。飛ばない壁の先のコースはGKも反応することができず。ヨルダンの壁を作る連携がどうなっているかが気になる場面だった。
失点してから少しずつポゼッションを増やしていくヨルダン。左右に散らしながらチャンスを探っていく。先制したこともあり、アルゼンチンのプレスはそこそこという感じであったが、ボールを持ててもブロックを崩すのは至難の業。サイドからCBのキャリーでサイド攻略を狙うが、ボックス内にアプローチすることはできないままだった。
アルゼンチンは苦しむヨルダンをよそにPKで追加点。前半のうちにリードを広げることに成功する。
後半はアップを始めるメッシに注目が行きつつ、前がかりのヨルダンをアルゼンチンがプレスで撃退。高くなったラインに対しては、ラウタロが絶えず駆け引き続けて決定機やオフサイドながらネットを揺らす場面も出てくるように。
しかし、ヨルダンは後半の早い時間に一矢報いることに成功。内外内の流れるようなパスワークでアルゼンチンの陣形を伸縮させると、アルターマリがゴールを決める。
メッシの投入とともにヨルダンのバイタル管理は一段と警戒度が引き上がった印象。ヨルダンは防衛で手一杯となり、なかなかここから前に出ていく意欲を燃やすことは難しそうな状況だった。
そのメッシはこの日もゴールをゲット。またしても壁の作りが甘かったヨルダンの隙を見逃さず、30分のプレータイムで観客を沸かせることに成功。アルゼンチンの全勝でのグループステージ突破に花を添えた。
ひとこと
スターたる所以を発揮したメッシだった。
試合結果
2026.6.27
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループJ 第3節
ヨルダン 1-3 アルゼンチン
ダラス・スタジアム
【得点者】
JOR:55′ アルターマリ
ARG:19′ ロ・チェルソ, 31′(PK) ラウタロ・マルティネス, 80′ メッシ
主審:イシュトヴァン・コヴァーチ
