第1節 フランス戦

先制点が切り拓いた完勝への道
優勝候補として名高いフランスの初陣はセネガル。プレミア経験者を中心にタレント揃いのアフリカ屈指の強豪との一戦から始まることとなる。
フランスの保持はチュアメニがサリーすることで後方の数的優位を確保。セネガルの4-4-2(非保持の際はカマラが列を上げる)に対して、バックラインからボールを動かしていく。
特に右サイドはかなりフリーなポジショニングが目立つ展開。クンデがかなり自由に動き回り、オリースが自陣の中央に下がる動きも。当然、デンベレも右を軸に流れていくのでかなりアナーキーなポジショニングになった。
全体的に低いポジションを取るというのはパリのコンセプトとは似ているが、異なるのはその分高い位置に顔を出すことでバランスを取るようなMFがいないということ。よって、エンバペとの距離が遠くなってしまうというのが前半のフランスで頻発した事象。
時折、デンベレから出してくるような狭いコースからエンバペの裏抜けのアクションを生かす場面もあったが、基本的には単発。セネガルの4-4-2のブロックに対して苦戦する。
一方のセネガルの方がポジションチェンジはなめらか。旋回するような動きは中盤にとどまっており、互いのポジションを意識したつながりがあるものになっていた。フランスの捕まえに行くアクションが遅れてしまうと、セネガルはすかさず背後を狙うサールに裏抜けのパス。無理のない保持から的確にチャンスを作る。
左サイドのディウフとマネからのサイドアタックも強力。ロングカウンターから前半最大のチャンスを迎えるが、このチャンスをジャクソンが仕留めることができない。
ハイドレーションブレイク以降はフランスの保持の時間が増えていくが、敵陣に入る機会が増えても、ポジションのバランスに改善の見込みはなし。全体的にブロックの外に立つ選手が多く、ボックス内にはエンバペだけというシーンも珍しくはなかった。
逆にセネガルは右のSBのディアッタがドリブルで相手を外すなど、攻め筋が豊富。セネガルの保持の機会が多くはなかったが、一回ポゼッションの時間がもらえればセネガルの攻める時間も長め。前半最後もマネの左サイドの抜け出しからサールが決定機を仕留められなかったが、手ごたえのいいままハーフタイムを迎える。
後半、フランスはゆったりとボールを持つスタート。前半よりは前線は奥を取ることを意識しており、オリースやドゥエは高い位置でキープすることが多かった。
非保持においてもフランスも手ごたえ。マネをつぶしたところからのスムーズな動きから一気に縦に速い攻め筋を作っていく。フランスは最大の決定機を迎えるが、メンディが素晴らしいセーブでシャットアウトする。
一方のセネガルは前半よりは苦戦したものの、ハイプレスに来たところを裏返すところからのスピードアップで対応。ジャクソンを終点としたカウンターからゴールを狙っていく。
試合が動いたのは後半のハイドレーションブレイクの直前。再三チャンスを作っていたエンバペの動き出しがついに成就。オリースから出たパスにクリバリのリアクションが一瞬遅れたところを見逃さず、見事なゴールを仕留める。セネガルはジャクソンがすぐさまやり返すゴールを決めたかと思われたがオフサイド。同点のチャンスを逃してしまう。
先制点を奪ったことでペースは一気にフランスに。コンパクトな4-4-2を捨てて前から捕まえに行く姿勢を見せざるを得ないセネガルに対して、フランスは縦に速い動きで無双状態。交代で入ったバルコラがさらにその流れを加速。追加点を奪ってみせる。
セネガルは途中交代で入ったエンバイェが右サイドから鋭いゴールを決めて追撃。だが、パリの有望株が上げた反撃の狼煙は直後に先輩が鎮火。エンバペのミドルシュートで再びフランスが完勝を印象付ける一発をお見舞いする。
苦戦したものの完勝したフランス。難敵相手の初陣で勝ち点3を手にした。
ひとこと
1つスコアを動かしてから一気に道が開けたようなフランス。セネガルは絶対0で進めないといけない試合だったことを痛感したはずだ。
試合結果
2026.6.16
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループI 第1節
フランス 3-1 セネガル
ニューヨーク/ニュージャージー・スタジアム
【得点者】
FRA:66′ 90+6′ エンバペ, 82′ バルコラ
SEN:90+5′ エンバイェ
主審:アリレザ・ファガニ
第2節 ノルウェー戦

意外性のあるWG起用がハーランドへの供給の解決策に
久しぶりのワールドカップの幕を勝利で開けたノルウェー。今回の相手はフランス戦の負けをリカバリーしたいセネガル。強敵相手に勝てばノックアウトラウンド進出はこの時点で確定する。
いきなりセットプレーからチャンスを迎えたのはノルウェー。しかしながら、序盤からペースを掴むのはセネガルの方。前線に起点を作っての横断からノルウェーを揺さぶる。ポストだけでなく、サールのようなダイレクトに背後に抜ける動きもつけるので捕まえづらい。総じてバックラインへのノルウェーのプレスの軽さから、セネガルの前線のデュエルの能力の高さを活かすような展開。長いレンジのパスワークの安定感もセネガルの攻撃を支えていた。
一方のノルウェーは列を落とすアクションからプレス回避に出ていく。だが、プレス回避の景色はあまり良好ではない。ウーデゴールの降りるアクションに呼応して高い位置をとるような中盤はいないし、セネガルがマンツーではめてきた時に、ハーランドへのロングボールも活用できず。競り合いがどうというよりはGKのニーランがあまり上手く飛ばせないのかなという感じ。ハーランドはその場に立っての競り合いよりは手前と奥を駆使するスペースへのロングボールを活かすような駆け引き(と爆発力)が持ち味なので、それを活かすほどのフィード力がなかったように見えた。
その分、電柱役として効いていたのは右のWG起用のセルロート。この人は競る使い方でOKである分、フィードの供給は安定。ディウフを引き寄せながら背後のスペースを開けて、そのスペースにリエルソンの負傷交代で入ったペデルセンが走り込むケースが多かった。
この追い越すアクションまで成立すればノルウェーの攻撃は機能。右のセルロートのロングボールからの追い越すアクションでチャンスを作ったノルウェー。クリバリのクリアミスを逃さずにペデルセンがゴールを奪う。
勢いに乗るノルウェーをなんとか食い止めて後半に望みを繋いだセネガル。ポゼッションから押し込んで打開策を狙っていくが、イドリッサ・ゲイェの強引なインサイドへの縦パスを咎められてしまい、ノルウェーは数的優位のカウンター。一番得意なパターンをハーランドが沈めてリードを広げる。
しかし、その直後にイドリッサ・ゲイェの縦パスからサールのゴールを掴むことに成功。1得点、1失点という感じのゲイェの縦パスだった。
だが、ハーランドが再びゴール。またしてもセルロートのロングボールを起点に右サイドの攻略に成功したことがゴールのきっかけ。左に流れたところを再度ボックス内で勝負を仕掛けてハーランドが仕留めた。
その後はポゼッションを増やすセネガルに対して、ノルウェーはバックパスに強気のプレスをかけることで前半のミスの再現を狙っていく。ノルウェーはクローズするのではなくオープンな展開での撃ち合いを望む格好。行ったり来たりの終盤戦の中で、交代で入ったボブを生かすような形で更なるゴールを狙う。
セネガルの後半追加タイムの得点は冷や汗をかくきっかけになっただろう。ラストプレーではフリーでサールがあわやというシーンを作り出すが、結局このシュートは枠外。試合はノルウェーが逃げ切りでGS突破を決めた。
ひとこと
後方からのフィードでダイレクトにハーランドへのロングボールを活かすことは実はできていないノルウェー。ここに繋ぐ術を確立できるかどうか。現時点ではセルロートならロングボールは機能するというのは結構面白い。
試合結果
2026.6.22
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループI 第2節
ノルウェー 3-2 セネガル
ニューヨーク/ニュージャージー・スタジアム
【得点者】
NOR:43′ ペデルセン, 48′ 58′ ハーランド
SEN:53′ 90+3′ イスマイラ・サール
主審:ウィルトン・サンパイオ
第3節 イラク戦

人事を尽くした5得点
連敗でここまで来た両チーム。生存のための唯一のルートは「目の前の相手をひたすら大量得点で倒す」というミッションとなる。
序盤からいきなりチャンスを迎えたのはセネガル。右サイドのハーフスペースにディアラが抜け出すアクションからセットプレーを得ると、このCKをセックが仕留めて先制。起用に応えたCBが試合を動かす。
さらに直後のプレーでマネが反転からスラカからファウルを奪取。これがOFRの末にDOGSOと判定されてイラクは10人となる。
大量得点が欲しい中で願ってもない先制点と数的優位を手にしたセネガル。しかし、イラクも勝つしかない状態というのは同じ。積極的に前から捕まえにいくアクションでセネガルに圧力をかける。
セネガルはポゼッションから引き込んで前進という場面も初めはなくはなかったが、総じてあまり数的優位という状況を上手く使えていない印象。マネの反転など相手が11人でも変わらないようなチャンスメイクが目立った。
逆にイラクは左サイドのジャシムとドスキの縦関係からチャンスメイク。特に左の前を担当したジャシムは背後にボールを引き出すアクションも豊富。セネガルのロングボール対応を複雑にしていた存在だったと言っていいだろう。
少しずつ左サイドの抜け出しを引き出すなど反撃のきっかけを探っていくセネガルだが追加点を奪えず。試合はセネガルの1点リードでハーフタイムを迎える。
後半はセネガルがより腰を据えたポゼッションから試合をスタート。左右に散らしながら押し込むことで局面の安定化を図っていく。
しかしながら、得点に結びつきそうだったのはトランジッションの方。イラクのアグレッシブさを利用しての反転の方がボックス内の攻略にスムーズに移行することが出来ていた。
ゴールショーのきっかけになったのも相手のバイタル付近でのミスを利用したトランジッション。カマラのドリブルからイスマイラ・サールのゴールでセネガルがリードを奪う。
このゴールをきっかけに一気に火がついたセネガル。パプ・ゲイェのミドルは投入いきなりでのインパクトが凄まじい一撃。これも数的優位は関係なさそうな感じはしたが、左サイドをえぐって決めた4点目のゴールは手薄なボックス内の状況を利用したように見えた。
5点目もパワーシュートによる豪快な一撃でゴールショーを演じたセネガル。勝ち点3の3位チームの中ではトップのテーブルに君臨し、無事にミッションをコンプリートした。
ひとこと
人事を尽くしたセネガル。およそ、8時間後に無事に突破が決まることとなる。
試合結果
2026.6.26
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループI 第3節
セネガル 5-0 イラク
トロント・スタジアム
【得点者】
SEN:4′ ディアッラ, 56′ イスマイラ・サール, 59′ 71′ パプ・ゲイェ, 82′ イリマン・エンジアイ
主審:アンソニー・テイラー
Round 32 ベルギー戦

匂いのしない同点劇から流れを引き寄せたベルギー
混戦のグループGを首位通過したベルギー。ノックアウトラウンドの初戦は”死の組”グループFから最終節にグレートエスケープを果たしたセネガルだ。
序盤から互いにボールを持つ時間が長くなるジリジリとした展開に。中盤を厚く、前線の人数は限定的という守備プランは両チーム共通であり、保持側はこの守備の方向性に対して解決策を示す必要があった。
ベルギーはバックラインからの対角のパスでサイドにボールをつけつつ、外側から攻略を狙っていく。サイドにはデ・ブライネがフローすることでそこから先の道筋を探しにいく形。
一方のセネガルは相手に捕まっている選手が背負いながら反転を狙う形。ベルギーは前線は緩めでも、バックスがセネガルの前線にタイトなマークをしていたので、前を向くことは簡単ではない。
それでも引きちぎることができるのがセネガルのフィジカルの魅力。相手に捕まっているような状況からでもボールをコントロールしてボックスに進撃。こぼれたところをディアッラが詰めて先制点を奪う。
失点したベルギーはボールの保持の機会が多くなる。しかしながら、ギアアップのタイミングをなかなか見つけられず。非保持からプレスのリズムを作るチームではないし、保持においてもサイドからの打開策が見当たらない。特にセネガルが優れていたのはドクのマーク。欠かさずダブルチームを行うことで簡単にスピードに乗らせないことを徹底。ボックス付近の迎撃も安定しており、総じてセネガルは安全に無失点で前半を終えることができた。
後半、ベルギーはルカクを投入するが急激にギアが変わることはなし。むしろ、後半の頭は押し込みながら相手を動かしていくセネガルのポゼッションに苦戦する。それならばと前がかりになったところでDFラインの乱れを突かれる形でベルギーは失点。イスマイラ・サールが追加点を決める。
2点差になったことでベルギーはドクとデ・ブライネを外すという荒療治を決断。それでも流れは返って来ず。ボックスの手前に顔を出すトロサールによって、セネガルのブロックが間延びするシーンは出てくるものの、そのスペースを連鎖して利用することができない。
共にローギアのまま進んでいったこの試合。ベルギーが押し込み続けるわけでもなく淡々と時間が過ぎていった中でルカクのゴールは脈絡がなくセネガルのボックス対応が甘くなったシーンだと言える。
立て続けにベルギーはティーレマンスがゴールをゲット。直前に揉めていたトロサールのアシストによって、一瞬で試合を振り出しに戻す。
延長戦でも展開的には交互に押し込みながらブロックをどのように攻略するか?という睨み合い。ほぼチャンスはない展開の中で最終的にゴールを手にしたのはベルギー。ボックスに飛び込んだティーレマンスのPK奪取で125分にベルギーは決勝点。W杯史上最も遅いゴールでベルギーがRound16への切符を手にした。
ひとこと
ベルギーが試合を支配している感じはしなかったけども、終盤は強引に相手を引きちぎるシーンがなかったことを踏まえると、セネガルはだいぶ疲れていたのかもしれない。
試合結果
2026.7.1
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
ベルギー 3-2 セネガル
シアトル・スタジアム
【得点者】
BEL:86′ ルカク, 89′ 120+5′(PK) ティーレマンス
SEN:24′ ディアッラ, 51′ イスマイラ・サール
主審:サイード・マルティネス
