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「FIFA World Cup 2026 チーム別まとめ」~アルゼンチン代表編~

目次

第1節 アルジェリア戦

別の領域にいるスター

 エンバペ、ハーランドに続き、本日の3試合目に登場するのはリオネル・メッシ。スター揃い踏みというべき大会6日目でアルゼンチンはアルジェリアと初戦を戦う。

 序盤からボールを持つのはアルゼンチン。中盤はかなり自由に変形。守備時には右のSHに入るデ・パウルは攻撃においては中盤に顔を出して3センターのように振る舞うのが特徴。その分、中央やや右寄りに2トップの一角であるメッシが入る形である。

 アルゼンチンの特徴はとにかくゆったりとしたリズムのパス回し。やり直すことに全く抵抗はなく、インサイドにパスを差し込むところを狙っていくスタート。当然狭いところを通そうとするので、アルジェリアはインサイドを固めて対応する。

 序盤のアルジェリアが一番不味かったのは奪った後のパスの精度。早々とミスが出てしまい、逆にアルゼンチンのカウンターの餌食に。オフサイドにはなったものの、メッシにネットを揺らされるなど致死性の位置でのパスのズレが起きてしまう。

 メッシがいるので前からガンガンというわけには行かないが、アルジェリアの降りる選手に対しては厳しくマークにいくアルゼンチン。保持での主導権を握ると、中央をぱかっと割るような縦パスから先制点。デ・パウルから列を超えたパスを受け取ったメッシがライン間から見事なミドルを差し込む。

 先制されたアルジェリアはベンタレブが最終ラインに落ちることで3バックに。SHはどちらもナローに絞り、インサイドのポイントを増やしにいくというアプローチ自体は若干アルゼンチンと似通っている部分はある。

 要は保持から手数をかけていきたいチームなのだが、アルゼンチンからなかなかボールを奪い返すことができずに苦戦。先制したらアルゼンチンはさらにゆったりとボールを動かすことができるし、CBやGKは困った時には精度の高いロングボールを蹴る余裕もあった。アルゼンチンはアルジェリアからボールを取り上げることで安定した試合運びを見せる。

 40分が過ぎたところで少しずつボールを持つことができるアルジェリア。サリーして最終ラインに入るベンタレブがボールと共に列を上げ直すことができた時に、アルゼンチンのマークは遅れがち。この状況を作れれば勝負ができそうな空気はあった。

 左サイドに張るアイト=ヌーリからのドリブルも相手を剥がす手段の一種として機能。インサイドに切り込むドリブルで少しアルゼンチンの守備が怪しいCH付近を狙っていく。

 アルゼンチンリードで迎えた後半。後半も土俵は同じく、互いにインサイドにフリーマンをどのように作るかという文脈で戦いが繰り広げられる。逆に52分のアルゼンチンの攻撃のようなトランジッションからのスピードアップはこの試合においては珍しいシーンでもあった。

 後半も先に試合を動かしたのはアルゼンチン。左に流れたメッシでアルジェリアのDFラインを片側にずらすと、ゴンサレス→マック=アリスターと繋いで放ったミドルのこぼれをメッシが仕留める。初手でややDFラインをずらした分の混乱を見事に本人が回収した格好に見えた。

 さらにメッシはもう1つゴールを決めてハットトリック。何度も見た形、何度も見たコースへのシュートを機械のように流し込んでリードを広げる。

 終盤はアルジェリアの攻撃を受けつつ、保持で時間を潰すなど安定した試合運びが光ったアルゼンチン。W杯歴代最多ゴールタイ記録を樹立したメッシの活躍で初陣を制した。

ひとこと

 アルゼンチン、あまりにも他の列強と別のフィールドで勝負している感が強すぎる。

試合結果

2026.6.16
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループJ 第1節
アルゼンチン 3-0 アルジェリア
カンザスシティ・スタジアム
【得点者】
ARG:17′ 60′ 76′ メッシ
主審:シモン・マルチニャク

第2節 オーストリア戦

メッシを中心に楽しい大暴れ

 第1戦ではメッシの大暴れで勝利。サウジアラビアにくじかれた前回大会とは打って変わって好スタートを切ることに成功。このグループでは最大のライバルになるであろうオーストリアを撃破すれば1試合を残してグループ突破を確定することができる。

 オーストリアは中盤で構えるスタンス。強引にプレスにはいかずに様子を見ていく。試合の流れをいきなり動かしたのはこの構えるプレスからのスイッチ。ザビッツァーが前から捕まえに行ったところに対して、アルゼンチンはモリーナを軸として脱出。加速するスペースを作ると、ボックス内に入り込み、ラウタロがPKを奪取することに成功する。

 しかし、このPKはメッシが失敗。オーストリアとしては事なきを得たが、前へのプレスのスイッチを外されてPKまで持っていかれたという傷は残るだろうなというようなシーンだった。

 基本的にはアルゼンチンは大外勝負のWGがいないので、インサイドをいかに強引にこじ開けるかの勝負。ロメロは浮き球でもライン間に入れていくし、リサンドロ・マルティネスは鬼のような速さと精度のパスを中央につけていく。

 インサイドの面々はそうしたパスでも簡単にコントロールし、少ないタッチから相手のプレスの逆を取っていく。大外レーンは相手の矢印を折るための手段という感じで、あくまでインサイドを空けるための方策として一旦噛ませる以上の意味合いはないように見えた。

 やはり圧巻なのはメッシだろう。パスがこの人に通れば確実に攻撃は加速する。4年前はほぼ動かなくて仙人のようだなと思ったのだけども、今の方が動けているように感じるのは勘違いだろうか。いずれにしても一度インサイドに差し込んで前を向ければそこからゴールまでの導線は保証されているようなもの。外に一旦叩くところからコースが空いたインサイドに走り込んだメッシがゴールを奪う。

 オーストリアもアルゼンチンと似たようなエッセンス自体は感じる。プレスに対して相手を引き込んで矢印を折りながら前進。質も高いように思うのだけども、やはりメッシのいるアルゼンチンが比較対象になってしまうのであれば、なかなか厳しいものがある。狭い距離感で少ないタッチ、相手をへし折るようなパスワークというのは個人的にはバスケットボールを見ているような感覚に近く、その枠の中でアルゼンチンがより上質なサッカーを展開していたというのがこの試合の全体に対する印象だ。

 後半、追いかける立場になったオーストリアはプレスを強化していくが、アルゼンチンのミスを誘うことは全くできず。むしろ、瞬間的に差し込むスペースを差し出してくれたという感じでオーストリアを置いていきながらスピードアップしていく。

 オーストリアは戦う土俵を変更し、ゴリっとザビッツァーからグレゴリッチュの空中戦を活かすような形からゴールに迫っていく。このスタンスの方が!というふうになるのは理解はできる。それくらい同じ土俵で戦うのはハードだった。

 終盤にはメッシがダメ押しのゴールをゲットしてアルゼンチンは完勝。前を向けば何かをしてくれるという期待に応えた神が2試合連続の複数得点でアルゼンチンをグループステージの突破に導いた。

ひとこと

 アルゼンチン、前回大会に比べて圧倒的に見ていて楽しい。

試合結果

2026.6.22
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループJ 第2節
アルゼンチン 2-0 オーストリア
ダラス・スタジアム
【得点者】
ARG:38′ 90+5′ メッシ
主審:アミン・モハメド

第3節 ヨルダン戦

30分で輝くスター

 すでに首位通過を決めているアルゼンチンと敗退が決まっているヨルダンのカード。結果的にも熱戦になった逆側のカードと比べると、コンペティティブな意味合いとしては薄めの試合。それでもヨルダンにとっては大いなる挑戦となる試合だ。

 メッシがいないせいかこの日のアルゼンチンはいつもよりも前からのプレスにジリっと進んでいくようなアクションが多め。ヨルダンは安全に直線的なロングボールを選択することでプレスから逃げる。

 よって、試合はアルゼンチンのポゼッションがベースに移行する。ヨルダンの5-4-1の守備ブロックの前でのポゼッションを敢行。LSBのタグリアフィコとCHのパレデスの列落ちから後方が重めの陣形を敷く。

 メッシがいなくてもアルゼンチンの攻撃の狙い目は同じ。ライン間に3-4人のアタッカーを入れつつ、前を向いて背後を狙う選手への裏抜けのラストパスを狙っていく。メッシがいなくても攻撃はスムーズに流れているのはさすがアルゼンチンという感じだ。

 押し込むアルゼンチンはロ・チェルソのFKで先制。飛ばない壁の先のコースはGKも反応することができず。ヨルダンの壁を作る連携がどうなっているかが気になる場面だった。

 失点してから少しずつポゼッションを増やしていくヨルダン。左右に散らしながらチャンスを探っていく。先制したこともあり、アルゼンチンのプレスはそこそこという感じであったが、ボールを持ててもブロックを崩すのは至難の業。サイドからCBのキャリーでサイド攻略を狙うが、ボックス内にアプローチすることはできないままだった。

 アルゼンチンは苦しむヨルダンをよそにPKで追加点。前半のうちにリードを広げることに成功する。

 後半はアップを始めるメッシに注目が行きつつ、前がかりのヨルダンをアルゼンチンがプレスで撃退。高くなったラインに対しては、ラウタロが絶えず駆け引き続けて決定機やオフサイドながらネットを揺らす場面も出てくるように。

 しかし、ヨルダンは後半の早い時間に一矢報いることに成功。内外内の流れるようなパスワークでアルゼンチンの陣形を伸縮させると、アルターマリがゴールを決める。

 メッシの投入とともにヨルダンのバイタル管理は一段と警戒度が引き上がった印象。ヨルダンは防衛で手一杯となり、なかなかここから前に出ていく意欲を燃やすことは難しそうな状況だった。

 そのメッシはこの日もゴールをゲット。またしても壁の作りが甘かったヨルダンの隙を見逃さず、30分のプレータイムで観客を沸かせることに成功。アルゼンチンの全勝でのグループステージ突破に花を添えた。

ひとこと

 スターたる所以を発揮したメッシだった。

試合結果

2026.6.27
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループJ 第3節
ヨルダン 1-3 アルゼンチン
ダラス・スタジアム
【得点者】
JOR:55′ アルターマリ
ARG:19′ ロ・チェルソ, 31′(PK) ラウタロ・マルティネス, 80′ メッシ
主審:イシュトヴァン・コヴァーチ

Round 32 カーボベルデ戦

王者を脅かし、観客を沸かし、夢舞台を去る

 3つの引き分けを並べてグループステージの突破を果たしたカーボベルデ。2位通過を果たした先のトーナメント初戦で戦うのは優勝候補の一角であるアルゼンチンだ。

 序盤は高い位置から組み合う姿勢も見せるカーボベルデ。しかしながら、敵陣でのプレスはそこそこに、ミドルゾーンで構える形に移行する。

 アルゼンチンはここまではインサイドに数本パスを通して繋ぐことで一気に加速することで勝利してきたチーム。しかし、カーボベルデは相手の最短最速のルートを塞ぐことは得意。アルゼンチンのように手段がはっきりしている中で切れ味勝負してくるチームは相性的には悪くない。

 序盤戦の戦い方はまさにそれを体現するような形。アンカー脇を狙ってくる相手に対して、センターラインをスライドさせることで簡単にフリーにさせない。アルゼンチンもモリーナの絞るアクションなど、インサイドにポイントを増やしていたが、カーボベルデはフリーで前を向く選手を作ることを許さない。

 エンソのサイドフロー、モリーナのバックドアなど、少しずつアルゼンチンはサイドに論点をずらしていく。中央よりは手薄ではあったが、アルゼンチンもサイドで必ず1枚剥がせるアタッカーがいない分、難しいところ。一時的に5バックにシフトして幅を守るなどカーボベルデの柔軟な対応も光った印象だ。

 保持に回るカーボベルデは左サイドから進撃を狙っていく。しかしながら、時間を作ることは簡単には許されず。ボックス内にボールを送り込む手段がなかった。

 前進の手段に苦しむカーボベルデに対して、ハイドレーションブレイク明けにアルゼンチンは先制ゴール。リサンドロ・マルティネスのタッチダウンパスに抜け出したメッシが恐ろしいくらい冷静にゴールを決める。

 先制点はゲームの形を変えることはなく、淡々と試合は進んでいく。それでもインサイドに少しずつパスを差し込んでいく。先制点のアシストと同様にアルゼンチンはCB陣の配球力を活かす格好だ。

 カーボベルデは引き続き左サイドを軸に攻撃を組み立てていく。だが、ロスト後のファウルが目立ってしまうなど、やや焦りが見られるシーンも。なかなか攻め筋を見つけることができない。

 後半も試合はアルゼンチンのポゼッションから入っていく形。カーボベルデは前半よりもインサイドに背負うパスをつけてサイドにスペースを与えていく。突破力は鋭くはないけど出口は変えられない。ならばその分、せめてスペースだけはというコンセプト。

 ひとまずはこれで押し下げられるようになったカーボベルデ。アルゼンチンはトランジッションでのパスの精度低下により、カーボベルデからボールを取り上げることができない時間が続く。

 そのツケを払うことになってしまったアルゼンチン。右の大外を起点にハーフスペースに突撃したデロイ・ドゥアルテのケアが遅れたことが致命傷に。DFの股、GKの爪先を通る針の穴を通すようなシュートを決めてみせた。

 再び押し込むのはアルゼンチン。インサイドのパスから瞬く間にメッシが抜け出すという必勝パターンも繰り出されるが、ボジーニャのファインセーブでカーボベルデは難を逃れる。ハイドレーションブレイク前の長すぎるアルゼンチンの攻撃を切ったことも含めて、彼の貢献度は非常に高かった。

 カーボベルデが前に出ていけなかったことを利用したアルゼンチンだが、彼ら自身も負傷者や足を攣る選手の発生でオフザボールの質は低下。最終的に空けたいインサイドを使うための仕掛けの部分を継続的に作ることができなかった。

 延長戦に持ち込むことができたカーボベルデ。しかし、セットプレーから早々に勝ち越しに成功したのはアルゼンチン。ファーに流れたボールをリサンドロ・マルティネスが冷静に叩き込む。同点ゴールのお返しをこの重要な場面で果たした。

 またしても追いかける立場となったカーボベルデ。救いだったのはアルゼンチンがこの試合を制圧して終わらせるほどのコンディションではなかったこと。最低限ブロックを守れば、多少マークが緩くなっても大丈夫という算段だったのだろう。

 確かに前半のカーボベルデのプレー精度を見ていればその気持ちもわからないでもない。だが、その予定調和を壊したのはロペス・カブラル。前半から再三仕掛けていたボックス外からの突撃がスーパーミドルという形で結実。1枚剥がされなければOKというアルゼンチン側の算段をぶち壊す一撃を食らわせる。

 なんとかPK戦まで引きずり込みたいカーボベルデだが、セットプレーでアルゼンチンは再び勝ち越し。味方も敵もまとめて吹っ飛ばすロメロのヘッダーがオウンゴールを呼び込む。

 最後まで敵陣に迫りながら枠内シュートも飛ばしていたカーボベルデだが、3点目には届かず。今大会最大のサプライズとなったカーボベルデは観客を沸かしながらもRound32で姿を消すこととなった。

ひとこと

 フットボール、最高かよ。

試合結果

2026.7.3
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
アルゼンチン 3-2 カーボベルデ
マイアミ・スタジアム
【得点者】
ARG:29′ メッシ, 92′ リサンドロ・マルティネス, 111′ ディネイ・ボルジェス(OG)
CPV:59′ デロイ・ドゥアルテ, 103′ ロペス・カブラル
主審:ドリュー・フィッシャー

Round 16 エジプト戦

サイドの壊し屋・メッシが降臨

 メッシ×サラーというわかりやすい大エースがいるチーム同士の一戦。アルゼンチンはカーボベルデに手こずらされた影響も気になるところだろう。

 少し気になったのは立ち上がりのアルゼンチンのポジション。一応上のように4-4-2で書いたし、実際にそのように見えるときもなくはなかったのだけども、実際はレアンドロ・パレデスがアンカーのような立ち回りで中盤に段差を作るイメージだった。

 4-4-2で非保持を組みながら人を基準とするエジプトの守備はアルゼンチンに苦戦傾向。インサイドで高い位置をとるマック=アリスターとエンソの2人をどのように捕まえるか?というところに迷いがあり、背後を取られかけるシーンも出てくるように。

 話としては前後するが、追いつくチャンスをアルゼンチンが得たシーンもライン間のエンソの潰し遅れから。タグリアフィコのバックドアなど一手一手先に進んだ結果のチャンスだった。

 エジプトの保持に対してもアルゼンチンの中盤は段差を作りながら、元のポジションを守る意識はエジプトよりも低く、ボールサイドにはマック=アリスターやデ・パウルがスライド。4-3-1-2のような陣形から圧縮をかけるようなイメージの方が正しいかもしれない。

 エジプトは左右に揺さぶりをかけながら、ボールをオープンなサイドに逃しつつ、サイドのローテーションを使いながら奥を取りにいく形。DFラインの背後を取るというよりは、中盤の網を越えるための一手というイメージ。その先に進むための手段はもう少し足りないかなという感じだった。

 そうした中で意外な形で先制点を決めたのはエジプト。セットプレーからの二次攻撃でイブラヒムがゴール。アルゼンチンは早い時間にリードを奪われる。

 保持の時間が長くなるアルゼンチン。以降も積極的にインサイドのポイント作りを敢行。タグリアフィコの左の大外のバックドアは再現性のある攻め筋であり、中央に縦パスを入れてサイドに展開した時の逃し先として機能していた。

 エジプトはハッサンとアシュールの両SHの位置を下げることで4バックはペナ幅にフォーカス。タグリアフィコを気にしつつ、インサイドの縦パスに対して潰しをかけにいく。ハッサンは下がってもなおやや遅れることもあり、タグリアフィコを活かした形はアルゼンチンが引き続き探っていくスタンス。この形を作れさえすれば決定機になる頻度は高かったが、ショベイルのファインセーブでエジプトは難を逃れる。

 後半も展開は同じ。負傷の影響もあり、メンバーを入れ替えはしたがDFの横幅をコンパクトにキープしながらラインを下げる格好。カウンターに出ていく時はハッサンと2トップを軸に3枚でファストブレイクを狙っていく。

 CHの脇に立つことで挟まれにくいポジションを取っていたアルゼンチン。しかし、攻撃を完結させることができるエジプトのカウンターを食らうことに。一度は潰しのプレーでのファウルでお目こぼしをもらったものの、同じ形のカウンターでエジプトは追加点を確保。リサンドロ・マルティネスのマークの甘さが致命傷になり、速攻を完結させられてしまう。

 セットプレーでの前残りのロメロで1点を返したアルゼンチン。だが、幅を取るWGがスカッドにいないアルゼンチンはひたすらに裏抜けを繰り返す以外になかなかボックスに迫る手段がない。誰か幅を取ることができればなと思っているところで右サイドに張り出したのはメッシ。馬力のある強引な突破でサイドの壊し屋として君臨。そのメッシが最後はボックス内に飛び込んだところからアルゼンチンは同点に追いつく。

 得点が欲しくなったエジプトにより、試合はオープンな終盤戦を迎える。90分のうちにこの試合の決着をつけたのはアルゼンチン。右サイドに流れたラウタロはファストブレイクの中で緩急をつけてマークが寄らないことを確認すると、素早くクロスでエンソのゴールを演出。10分強で全てをひっくり返したアルゼンチンが窮地からの逆転劇を演じた。

ひとこと

 サイドに出てきて壊し屋をやるメッシが2026年に見られるなんて。信じられない。

試合結果

2026.7.7
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 16
アルzゼンチン 3-2 エジプト
メルセデス・ベンツ・スタジアム
【得点者】
ARG:79′ ロメロ, 83′ メッシ, 90+2′ エンソ・フェルナンデス
EGY:15′ イブラヒム,67′ ジーコ
主審:フランソワ・ルティクシェ

準々決勝 スイス戦

10人で追い縋るスイスをアルバレスが撃ち抜く

 準決勝の切符は残り1枚。順当続きのW杯の中でスイスが勝てば一大アップセットになることは確実。アルゼンチンのW杯をここで終わらせることができれば最大のサプライズになるだろう。

 序盤にペースを握ったのはスイス。4-4-2という陣形の大枠はキープしつつCHとSHが前にジリっと出ていくことでアルゼンチンのプレスを阻害する。スイッチを入れると敵陣でのショートカウンターに移行し、縦に速い攻撃に打って出てアルゼンチンのゴールをこじ開けにいく。

 ゆったりとした保持においては前の試合と同じくやや中盤ダイヤモンド型っぽい陣形だったアルゼンチンに対して、浮いたサイドバックから無理がなく前進。押し込むきっかけを作っていく。

 アルゼンチンは早々に前のラウンドでの切り札を切ってきた感。サイドに流れるメッシからの仕掛けでスイスを殴り返しにいく。押し返すきっかけを掴んだところからセットプレーで試合を動かしたアルゼンチン。ニアに入ったマック=アリスターから試合を動かす。

 入りはスイスに主導権を譲った感があったアルゼンチンだったが、スコアによって引き戻した感があった。引き続きアグレッシブに前から捕まえにいくスイスに対して、ポゼッションでいなすことで落ち着いた前進を見せていく。

 スイスは攻撃に転じると右のハーフスペースを狙うことで勝負をかけていく。アルゼンチンはリトリートベースでこれを受け止める格好。4-5-1と5-4-1を使い分けながら非保持でもテンポを落としながらハーフスペースを封鎖する。スイスは終盤にポゼッションを取り戻しはしたが、反撃へのクリティカルな道筋は目処が立たなかった。

 後半もハイプレスから勝負をかけていくスイス。アルゼンチンの左のユニットを咎める形から敵陣でのショートカウンターを繰り出せるように。

 アルゼンチンは縦に速いキックでテンポを上げながら対応。エミマルからのフィードは正確だったし、インサイド寄りに立つ2列目はセカンドボール回収にも効くポジショニング。あまりイメージにはない前進方法だが、有効で理に適っていた。

 スイスのリズムになったのは60分前後のこと。ジャカへのプレスがかからなくなったことで左右への散らしを止められなくなった。SBのオーバーラップで厚みを出しながら、即時奪回での回収。このリズムのうちに追いつきたい!という空気感の中でエンドイェが見事に仕事を果たした。

 このまま一気に逆転に!というムードの中でスイスはエンボロがシミュレーションで退場。この大会から適用範囲が変わった「人間違い」によるオンフィールドレビューで2枚目の警告が出されてしまった。

 この判定によって試合はアルゼンチンの保持一色に。スイスは5-3-1に構える形でアルゼンチンの攻撃を延々と受ける展開に。

 しかしながらアルゼンチンもここから一歩中に入っていくようなアクションを見せることができず。メッシに対してもジャカがうまくマークをハメながら自由を与えない。大外破壊モードもどうやらこの日は序盤に使ってしまったせいか、終盤の切り札としての再登場はならなかった。

 コッベルのファインセーブにも助けられながら延長でもなんとか食らいついているスイス。だが、保持一辺倒の展開を決着させたのはやはりアルゼンチン。左サイドから押し下げたスペースを活用したアルバレスのカットインからのシュートがネットを揺らし勝ち越しに成功する。

 再びサイドのオーバーラップを活かす形からスイスは反撃を狙っていくが、逆にラウタロ・マルティネスにゴールを許してしまって終戦。10人で食らいつき善戦したスイスだったが、最後はアルゼンチンを前に力尽きた。

ひとこと

 熱い120分。スイスの意地も堪能できる素晴らしい時間だった。

試合結果

2026.7.11
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Quarter-final
アルゼンチン 3-1 スイス
カンザスシティ・スタジアム
【得点者】
ARG:10′ マック=アリスター, 112′ アルバレス, 120+1′ ラウタロ・マルティネス
SWI:67′ エンドイェ
主審:ジョアン・ピニェイロ

準決勝 イングランド戦

再三狙っていたエリアから劇的な逆転でファイナルへ

 決勝の椅子をまず確保したのはスペイン。もう1つの椅子に座るチームをアトランタで決める準決勝第2試合は因縁のイングランド×アルゼンチンである。

 序盤はスタンスがはっきりしていた両チーム。まずはボールを持たせることを許容したのはアルゼンチン。4-5-1フラットの形でコンパクトに中盤を構えつつ、イングランドのバックラインにボールを持たせる。

 イングランドは2CB+2CHで自由なポジショニングを敢行。大外レーンは基本的にはSBが取りながら、2列目は絞る形がメインとなっていたが、右の大外のジェームズが左サイドに出張するなどフリーダムな動きも許容されていた。どちらかといえば、アルゼンチンの右サイド側を狙っていこうという方向性もこの出張の補強材料になったかもしれない。

 アルゼンチンは左のSHに立つアルバレスがスイッチ役となり、徐々にハイプレスの勢いを出していくように。イングランドはこのプレスのアクションにかなり戸惑いを見せており、自陣でのロストからピンチを迎える場面もあった。前に出ていく際にはエンソがスライドしてSHを務めるシーンも。逆サイドではジュリアーノが最終ラインに落ちる様子も見られており、いろんな意味で陣形を決めているのは両SHという感じだった。

 プレスに来るアルゼンチンへの対抗策となったのはケイン。降りるアクションからボールを引き取り、反転からサイドの奥を狙っていくことで前がかりなアルゼンチンのプレスをひっくり返してみせる。右サイドの攻め筋は浮いたケインからの反転がメインとなっていた。

 序盤は落ち着いてボールを持つシーンはほぼなく、狙いとしてはポジトラにフォーカスしていたアルゼンチン。メッシにボールを当てて、ジュリアーノの右サイドの縦方向へのスピードを生かすパターンか、ほかの2列目と合体してワンツーで中央を進んでいく。

 徐々に出てきたアルゼンチンの保持に対して、イングランドは強気のハイプレスでスタート。WGが前に出ていき、後方のSBもそこにスライドする形で連動。メッシの番はアンダーソンが務めることとなった。

 ただ、あまりアルゼンチンのバックラインがプレスに苦しんでいる様子はなかったため、イングランドが守備を自陣でのブロックに切り替えるケースもしばしば。ハイドレーションブレイク明けには4-4-2をキープしてゴードンの位置を下げて、アンダーソンのマーク対象をメッシからCHに変える様子も。おそらくはあまりハイプレスに手応えがなかったのだろう。

 イングランドがプレスの圧力を下げたことでアルゼンチンのポゼッションの時間が増加。後方からはリサマルのキャリーなど、イングランドのブロックを揺さぶるようなアプローチを増やしていく。だが、試合の動きはないままハーフタイムに。スコアレスで前半を終える。

 後半、いきなり牙を向いたのはアルゼンチン。ロングボールからのファストブレイクでアルバレスがチャンスを迎える。速攻ベースで試合のテンポが上がっていく中でアルゼンチンが先制するという展開だったが、最終的にその状況を利用して先制点を奪ったのはイングランド。降りるケインからの大きな展開がハマり、ゴードンのゴールでリードを奪う。後方からプッシュアップするライスのところで、あとはアルゼンチンからするとミス待ちみたいになった。

 しばらく縦に速い展開が続く状況だったが、ジュリアーノをスペンスが止めたタイミングあたりで試合はアルゼンチンのポゼッションにシフトする。イングランドは両WGを下げる形で迎撃。ローブロックベースで固めていく。その中でもインサイドのメッシを封鎖するという作業は継続的に続けていくイングランドだった。

 アルゼンチンは左にニコ・ゴンサレスという幅取り役を入れることで横の広さを確保する方向に。メッシが流れる右サイドは彼が幅取り役。メッシ自身がクロスを抜き切らないで上げるもよし、メッシの引力を利用してマイナスの位置の選手がアーリーで上げるもよしという状況に。

 ハイドレーションタイムにトゥヘルは5-3-2への変更を決断。しかし、これは右サイドからのアーリークロスの手当てにはなっておらず。5バックでストーンズ周辺にクロスをひたすら入れられてアルゼンチンのアタッカーに先に触られる状況を変えることができなかった。

 5-3-2でも結局ケインやベリンガムがサイドを埋めることに奔走していたので結局一手損感が否めないイングランド。それならば5-4-1でサイドの守備の枚数を確保することを選択。実際にサイドの守備に枚数が足りずに遅れることは減った。

 しかし、メッシの引力を活用することでアルゼンチンは同点。3枚目のアンダーソンを引き寄せたところで中央の浮いたエンソのミドルで80分過ぎに追いつく。

 イングランドには2枚の交代枠が残っていたが、この段階では動かず。押し込む状況を続けたアルゼンチンはまたしても右サイドからのメッシのクロスで逆転。再三狙っていたストーンズの背後に顔を出したラウタロのゴールで逆転に成功する。

 イングランドの5バック攻略を間に合わせることに成功したアルゼンチン。またもメッシ中心の逆転劇で2連覇に王手をかけた。

ひとこと

 5バックシフトの是非はどうしても出てきてしまうだろう。選手の中からも不満の声が上がっていたことが全てかなという感じはする。

試合結果

2026.7.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Semi-final
イングランド 1-2 アルゼンチン
アトランタ・スタジアム
【得点者】
ENG:55′ ゴードン
ARG:85′ エンソ・フェルナンデス, 90+2′ ラウタロ・マルティネス
主審:イルマイラ・エルファス

決勝 スペイン戦

当たり前の再発見

 ニューヨークで迎えるファイナルの舞台にたどり着いたのはアルゼンチンとスペイン。連覇を狙うメッシにバルセロナの若武者を抱えるスペインが立ち向かうという構図はなかなか熱いものがある。

 スタメンを3人入れ替えたアルゼンチンは守備の仕方を調整した感じがある。パレデスを外し、SH寄りのキャラクターのニコ・ゴンサレスが入った分、中盤がダイヤモンドになって同サイドに圧縮するアクションはなし。ただし、ロドリをフリーにしてしまうと絶対アカン!なので、マック=アリスターを前にスライドすることはやっていく。

 SHが絞るアクションをそこまでしない分、横のコンパクトさに欠けるアルゼンチンの守備。そこをカバーしていたのがCBのリサンドロ・マルティネス。縦へのスライドを迷うことなく行うことでライン間に顔を出すオルモ、オヤルサバルを迷いなく潰していく。

 ロドリが早めに立ち位置を調整するアクションをしてきたということを踏まえると、フランスを教訓にしたアルゼンチンは割とちゃんと対策をしたということになるのだろう。序盤のボールが行ったり来たりする流れの中では右の大外のヤマルからのポケット→即時奪回で支配を高めようとしてきたが、徐々にロドリがフリーになっていくと、インサイドの縦関係で揺さぶる形が支配的に。

 相手のCBが一手遅れるのであれば、そこから背後を狙うアクションで差し切ります!ということで、スペインはアルゼンチンに真っ向勝負を挑んでいった感がある。アルゼンチンはリサンドロ・マルティネスの警告→負傷交代で仕組み自体を揺らがされながら前半を終えた印象。オタメンディがリサンドロ・マルティネスの役割を引き継げるのか?それとも他を調整するのか?の宿題は後半に残してしまった感がある。

 アルゼンチンの保持はCHが縦関係気味を構築。エンソがアンカー役としてマック=アリスターはフリーロール。幅を取るニコ・ゴンサレスとタグリアフィコの間へのサイドフローが数回見られており、これは保持でギャップを取りにいくための仕掛けなのだろう。右サイドはデ・パウルが中盤ロールをこなしつつ、モンティエルが右の大外だった。

 ただ、前半のアルゼンチンは保持におけるこうした仕掛けをどのように活かすか?ということよりも左サイドの縦への揺さぶりにフォーカスした感。リサンドロ・マルティネスが縦に誘導されていたニュアンスもあり、スペインの手のひらの上という要素も否めなかった。

 メッシが降りて、ニコ・ゴンサレスが高い位置でのターゲットになるというところで差別化を図れれば、ニコ・ゴンサレスのスタメン起用の意義も見えるのだけども、対面のポロが見事な働きで抑え込みに成功する。序盤はスペインのパスミスからのトランジションで敵陣に迫れたアルゼンチンだったが、スペインが保持でのイニシアチブを持った時間帯以降はなかなか前進のきっかけを見出すことができず。それでもリサンドロ・マルティネスの負傷から真っ先に決壊しなかっただけ、アルゼンチンは耐えたと言える前半だったかもしれない。

 後半のスカローニの決断は素直に守備の修正ベース。ニコ・ゴンサレスを下げて、パレデスを入れることで中央のユニットの上下動の負荷を下げる形となった。単純に守備を固める方策ではなく、保持ももう1回時間を作っていくよ!まで持って行こうとするのがアルゼンチンという感じである。

 しかし、スペインもポロを低い位置で触らせることで対面のマック=アリスターに中央の守備に参加させない。間を広げたことでむしろダニ・オルモのライン間スペースからの加速が使えるようになった。

 再び押し込む展開を作るスペインは右のヤマルを生かしながら縦突破でボックス内に混乱をもたらしていく。ここまでのスペインはペドリのSHやCFもできるIHを同時投入することで相手の基準点を乱しにいくプランだったが、この日は正位置のポジションでの選手交代が目立つ。WGもニコ・ウィリアムスを入れることで幅を取り、どちらからでも攻めることができる形で勝負をかけていくのがデ・ラ・フエンテの選択となった。

 後半の頭は多少組み合う風情を見せていたアルゼンチンだったが、WG主体の攻め筋でスペインは再び一方的なフェーズに。唯一後半に殴り合いの展開に突入したアディショナルタイムでも駒損をしたのはアルゼンチン。エンソの退場で10人に追い込まれてしまうこととなった。

 延長戦前半では延々と耐える展開となったアルゼンチン。WG主体で攻めていく形からボックス内でチャンスを作っていくが、メリーノが一撃必殺の仕事人を務められず、なんとかアルゼンチンが粘る展開が続く。

 しかし、延長後半のファーストプレーでスペインは先制。左右のWGで揺さぶりながら最後はマイナスのフェラン・トーレスが今大会の彼の決定力をここに全て取っておきました!みたいなゴールを決めてついにゴールをこじ開けることに成功する。

 終盤はニコ・ウィリアムスがやや攻守にリズムを悪くするプレーも見られたが、最後のアルゼンチンの攻撃も凌ぎ切ったスペインが防衛に成功。前回王者を倒し、EUROに続くメジャータイトル制覇を成し遂げた。

ひとこと

 フランス戦の文脈から考えると、スペインの相手はどのようにラインを下げずに守り続けるか?というところが命題になることは明らか。その鍵を握っていたリサンドロ・マルティネスの負傷交代はなかなかアルゼンチンに困難を突きつけるものだった。イエローカードをもらった後にどんな姿を見せてくれるかを含めて楽しみにもしていたので、個人的にも残念だった。

 スペインは少しずつ試合を自分たちの土俵に乗せる巧さが際立っていた印象。「そういえば、メッシがいるチームって守りづらいんだよね」という当たり前のことを再提示してくるような内容だった。「そういえば、ロドリを軽視するとしんどいんだった」という当たり前を提示したフランス戦に続き、自分たちの土俵の中で当たり前のことを淡々と突きつけるために振る舞ったのが準決勝以降のスペインの印象であった。

試合結果

2026.7.19
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Final
スペイン 1-0 アルゼンチン
ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアム
【得点者】
ESP:106′ フェラン・トーレス
主審:スラヴコ・ビンチッチ

総括

変容する「中心のメッシ」

 歩いて守備をしないエースを抱えながら、彼を慕う10人の勇者たちで盤面を制圧するという4年前と同じスタイルだったアルゼンチン。そのスタイルは4年前よりも明らかに洗練された状態でこの大舞台で再び見られることとなった。

 フォーメーションは大きく分けて2つ。4-4-2もしくは4-1-4-1をオーソドックスに遂行し、SHにアルバレスやゴンサレスなどアタッカー気質の強い選手を置くのが1つ。もう1つは4-4-2っぽい並びながらSHにCHのカラーの選手を置き、サイドに圧縮しながら中盤がダイヤモンド気味の形からサイドに追い込む勝負の守備をかけていく形。

 定点気味な前者の守備パターンでもCHの広い行動範囲と献身性に助けてもらう仕組み自体は同じ。アルバレスがプレス役になればその背後をCHがカバーする形で対応する。彼ら基準でいえば、前回大会よりも受けに一辺倒にならずに非保持から仕掛ける頻度は増えていたので、マック=アリスター、エンソ、デ・パウルにパレデスが加わるCH陣はメッシを抱えながらとにかく走り切った。

 そういう意味で非保持から勝負を仕掛けなくてはいけなかったスペイン戦は相性としては悪かったように思える。前に出ていくことを許容するようにひたすら効いた潰しを見せていたリサンドロ・マルティネスの負傷で事実上、決着はついてしまったのかなと思った。

 4年前よりもシャープになっていたという観点でいえばもう1つ触れておかなければいけないのはメッシその人だろう。ライン間で浮かせれば依然として世界一であることの証明はとっととグループステージで完了。ノックアウトラウンドではサイドで大暴れ。エジプト戦では大外ドリブルゴリラとしてサイドの破壊者として君臨し、イングランド戦では左右の足から抜き切らないクロスでイングランドの守備網を切り裂くことに成功した。

 神通力っぽいニュアンスでしゃべられることはあるけども、基本的にはメッシをどう生かすか?に関しては理詰めだったのがアルゼンチンの面白いところ。メッシから作っていくという大前提は同じだけども、試合ごとにメッシの役割は微妙に変えており、「メッシ中心のチーム作り」で出力されるものが相手によって変わることによって深みは出た。

 ラウタロやアルバレスといったアタッカー陣もメッシを支えながらという難しい役割を担いながら、結果を出すことも両立している。メッシ後のアルゼンチンの舵取りは明らかに難しいけども、その次のアタッカー陣も大粒であることは確かだ。

 ただし、やはり負けた後の振る舞いはいくら何でも目に余るものがある。勝った時に浮かれて煽る癖があるのに目をつぶるとするならば、いくら何でももう少し他者からの煽りは受容してしかるべきだろう。煽られたから手を挙げたという理屈が通るのであれば、過去の自分たちは何回でもボコボコにされても文句を言えない振る舞いをしていたはずだ。数人の選手の発言や行動には残念な部分があったのは明らかであり、そこは非常にもったいなかった。

Pick up player:リオネル・メッシ
 私は3月のライオンという将棋漫画が好きなんだけども、小さい子供に将棋を説明するシーンで王将のことを「いざとなればかなりファイター」と紹介するシーンがあり、そのことを今大会のメッシを見ながら思い出していた。

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