第1節 ドイツ戦

門番役のドイツがキュラソーを手荒く歓迎
W杯初出場を決めたキュラソー。彼らの歴史の1ページ目を彩るのはW杯の酸いも甘いも知り尽くしている経験豊富なドイツである。
キュラソーは非常にアグレッシブなスタート。人基準で相手を捕まえにいくアクションを見せる。オールコートマンツーではなく、後方には人を1人余らせるような形。ポジションチェンジにも積極的についていく姿勢を見せた。
しかしながら、ドイツは狭いスペースでのマンツーを早々に攻略に成功。ヴィルツの落としを受けたヌメチャが先制点をゲット。細かいパスワークでフリーマンを作り、ゴールに陥れる。
徐々にキュラソーはマンツーの綻びが見えるように。オールコートマンツーではない分、前線がどこから捕まえていくか?というのは重要なのだが、前線のポジションが自由であり、なかなかドイツのバックラインが捕まらない。
特におそらくは左の前が基本ポジションに見えるハンセンは左の大外にいる機会が少なく、ボールをロストしてからも持ち場に戻るのが遅く、キミッヒがフリーになる。そこにCHのバクーナがスライドすることで簡単に中盤に穴を空けてしまうことに。
しかし、保持に回った際にはキュラソーは素晴らしいカウンターで反撃。再三狙っていたブラウンの背後や周辺のスペースを対角パスでつくことに成功。ヴィルツとブラウンを同時に釣り出したところからドイツの左サイドの守備を混乱させて、最後はコメネンシアがゴールを仕留める。
ハイドレーションタイムを挟み、ドイツはネジの巻き直しが完了。サイドの近い関係性からフリーマンを作りつつ、マイナスのパスから積極的にミドルを放っていく。セットプレーからの勝ち越しゴールは完全にキュラソーを出し抜くことに成功。ニアに入り込んだシュロッターベックを阻害するキュラソーの選手はいなかった。
保持に回れば縦に進む鋭さは垣間見えるものの、ボールを奪うメカニズムはないキュラソー。前半終了間際にPKからハヴァーツの一撃で追加点を奪い、2点のリードでハーフタイムを迎える。
後半もドイツがポゼッションを敢行。すると47分には追加点を奪う。右のハーフスペースに飛び込んだムシアラが角度のついたところからゴールを流し込む。このシーンでもそうなのだけども、キュラソーの選手は寄せているつもりなのにドイツの選手の行動を阻害できていないケースが多かった。おそらく、寄られた時に自由にプレーできる圧力の感じ方が違うのだろう。
キュラソーはセットプレーからバクーナが千載一遇のチャンスを得るが、後半の大きなチャンスはこれくらい。あとは延々とドイツがボックス付近まで迫っていく展開。細かいポストから丁寧にシューターをフリーにする形で得点を量産。交代選手も流れるような攻撃に違和感なく絡んでいきながら、手応えのある後半を過ごしていく。
ハヴァーツの本日2得点目となるゴールがこの日のドイツの締め。大量7得点でドイツがキュラソーを下した。
ひとこと
距離感を掴んでからは容赦ないドイツが牙を剥いた試合だった。
試合結果
2026.6.14
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループE 第1節
ドイツ 7-1 キュラソー
ヒューストン・スタジアム
【得点者】
GER:6′ ヌメチャ, 38′ シュロッターベック, 45+5′(PK) 88′ ハヴァーツ, 47′ ムシアラ, 68′ ブラウン, 78′ ウンダフ
CUW:21′ コメネンシア
主審:ジェラル・ジェイド
第2節 エクアドル戦

仕留めきれないエクアドル、痛恨の1ポイント止まり
第1節ではドイツ相手に得点を挙げるという奮闘を見せながらも7失点で敗れたキュラソー。第2節のエクアドルも強い相手ではあるが、なんとかW杯初の勝ち点を奪取したいところだ。
序盤からキュラソーは非常に積極的な入り。サイドの高い位置で止める意識が高く、エクアドルのビルドアップを早い段階で阻害する。ラインを高く設定し、かつマンツーでホルダーを厳しくチェックしてこない相手には裏という定石でエクアドルは対抗。早々に背後に抜け出したエネル・バレンシアが決定機を迎える。
徐々に押し込む時間が増えていくのはエクアドル。3-4-3と3-5-2の間のようなファジーな中盤の構成で微妙に相手に基準点を作らせない。CHのサリーから4バック化するケースもあり、今話題のミシャ式っぽくなっている場面もあった。
攻略のパターンとしては外循環を軸に大外→ハーフスペースで相手の5バックに対してズレを作り、DFラインを押し下げたところからクロスというのが王道。インサイドに差し込むのはスペースがない分厳しいが、エストゥピニャンが手前で絞るなど変化をつけながら、ライン間に差し込めるような工夫もあった。
基本は外循環でも相手を不意に下げるパターンを作ることができたので問題はなし。キュラソー目線でも前進はできておらずハードという展開だった。
ハイドレーションブレイク明けにキュラソーはマンツーハイプレスを起動。エクアドルはかなり面食らった感があり、自陣でのロストから怪しいシーンを繰り返す。キュラソーの左サイドにカウンターの決め手があればあるいはという展開であった。
しかし、負傷による一時的な数的不利からキュラソーのイケイケドンドンハイプレスは沈静化。それでも自陣側で相手のサイドアタックをマンツーで封鎖しギャップを作らせない。前半はスコアレスでハーフタイムを迎える。
後半もエクアドルの保持が中心。前半の終盤のようなエクアドルが押し込み続けるが、決定機が量産されるわけではない展開が続く。
キュラソーは左サイドからのカウンターに手応えが出てきた後半。ジュニーニョ・バクーナからのキャリーで陣地回復に成功する場面も出てくる。エクアドルは第1節でもほんのり見られた一歩遅れの迎撃で穴を広げてしまう様子が見られた。
シンプルなエネル・バレンシアへのクロスでチャンスを掴んだエクアドルはWBにより攻撃色の強いアングロを入れることでさらに攻勢を強めていく。
プレシアードを投入しての更なるサイドアタック強化に前線のターゲット増加などできることはやったエクアドル。だが、チャンスが巡ってきたエネル・バレンシアが枠をとらえられないのは立ち上がりと同じ。沈黙が続いたままのファイナルホイッスルで勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
いくら首位通過が決まっているとはいえ、ドイツ残しのエクアドルはだいぶ追い込まれた感がある。
試合結果
2026.6.20
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループE 第2節
エクアドル 0-0 キュラソー
カンザスシティ・スタジアム
主審:マー・ニン
第3節 コートジボワール戦

余裕を持った危なげない2位通過
すでにドイツは首位通過が決定。コートジボワールにできることはこの2位の座を守ること。引き分け以上でそのミッションは達成ということになる。勝つしかないキュラソーに対して、最低限の結果を出さなければいけない状況だ。
序盤は縦ポンの応酬でのスタート。ガチっとハイプレスに出ていく姿勢を見せたキュラソーに対して、コートジボワールは落ち着いたボール回しでプレスを沈静化。オーソドックスな2CB-2CHの配置をベースにしていたが、さすがのスキルの差でゆったりとした保持に移行する。
敵陣に入ることが出来たら当然勝負のところはディオマンデ。キュラソーはダブルチームでの対応をするが、早々に左サイドを破られてしまって決壊。折り返しをぺぺが仕留めてコートジボワールが先制する。
コートジボワールは両サイドに勝負ができるアタッカーがいるという長所がある一方で、アウトサイドでの剥がしをインサイドで生かしきれないという難点が。具体的にはサイドで相手を剥がしてもそこからのインサイドの動き出しがなくて、相手を攻略しきれないというイメージだ。
先制点を取ったこともあり、キュラソーの保持には厳しく咎めるアクションはないコートジボワール。キュラソーはサイドの奥を取った際にはワイドのCBも攻撃参加ができるなど、枚数をかけた攻撃で勝負。だが、コートジボワールには反撃をすることができず。ファストブレイクから逆にコートジボワールは追加点を狙っていく展開となった。
後半もハイプレスでキュラソーは勢いのいい立ち上がり。コートジボワールは4-5-1に構える形に陣形を変更。キュラソーのCHを抑えて、ポゼッションの安定を切り崩しにいく。キュラソーがアンカー脇に選手を仕込めれば面白いなと思いながら見ていたのだが、前線の意識は奥。ダイレクトに背後をとりにいくが、クリティカルな一撃をお見舞いすることが出来ない。
サイドアタックでは前半と課題は同じ。 外と中の接続がうまくいかない状況のコートジボワール。なかなか追ってのチャンスが出てこなかったところだが、ボニーでラインを下げたところからサイドから抜け出したぺぺがそのままゴールをゲット。キュラソーはラインの乱れがゴールに直結するミスでコートジボワールに追加点を許す。
これ以降はキュラソーのプレスを安定して回避したコートジボワールが落ち着いた試合運びで逃げ切り。ミッションである2位通過を無事達成した。
ひとこと
キュラソー、アグレッシブなスタートだったが。
試合結果
2026.6.25
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループE 第3節
キュラソー 0-2 コートジボワール
フィラデルフィア・スタジアム
【得点者】
CIV:7′ 64′ ペペ
主審:グレン・ニーベリ
総括

ローブロック以外の手段が光る大健闘
W杯の初出場として夢舞台を踏むことができたキュラソー。門番役として立ちはだかったドイツに大敗をしても「負けなんて関係ない!あのドイツ相手に1点を取ったことは勝利!」と顔を輝かせている国民の様子が印象的だった。
しかしながら、彼らは第2節にエクアドル相手に勝ち点をもぎ取ることに成功。歴史に名を刻む1ポイントを手にする。第3節のコートジボワール戦では力負けをしてしまったが、最終節まで突破の可能性を残したことはまず重要であった。
第2節で重要だったのはもちろんエネル・バレンシアの決定力不足でもあるのだけども、ローブロックで構える以外の武器を彼らが持っていたからだろう。エクアドル戦でアクセントとなっていたのはハイプレスの起動。可変フォーメーションで基準点ずらしから押し込む流れを作っていたエクアドルに対して、ハイプレスから捕まえに行くところからもう1回流れをかき乱しに行くことができる地力を見せた。
サイドアタッカーを多く投入してきたエクアドルに対して終盤押し込まれる展開もあったが、決壊せずに踏ん張ることができた。おそらくはこのスタンスでずっと進んでしまえば耐えるのは難しかったはず。高い位置に出ていくことができた時間が重要だったし、左サイドのジュニーニョ・バクーニャからのキャリーでの陣地回復も重要だったといえるだろう。
欲を言うのであればコートジボワール戦でもその姿勢を起動できれば面白かったところではある。一方的に殴られ続けてしまい、かつ抜け出しがシュートに直結してしまうようなラインの乱され方を早々にしてしまったというのはこの立ち位置のチームとしては反省が残る部分だといえるだろう。
48か国への拡大に加えて、今回は北中米の強豪が軒並み予選免除されたという背景は無視できず、この舞台に帰ってくることは容易ではないだろう。それでも目を輝かせてドイツ相手のゴールを喜んでいた彼らがまたこの舞台を楽しめる日が来るように心から願っている。
Pick up player:ジュニーニョ・バクーニャ
中盤を務めた兄と共にチームを牽引。左サイドからの突撃はチームの前進の支えとなっていた。
