第1節 トルコ戦

詰めの甘さが目立つトルコをオーストラリアが粉砕
ここまで好調をキープしているアジア勢。オーストラリアの初陣は日韓以来の出場となるトルコ。24年ぶりのW杯を戦うことになる。
序盤からボールを持つのはトルコ。ユクセクがサリーする形で最終ラインに入る3バック化を敢行する。オーストラリアは5-4-1でブロックを組む形。4の形はかなりフラット気味であり、トルコは1トップの脇に選手を置くことで起点づくり。入ってくる選手も多彩で、横のドリブルで相手を揺さぶるカディオールやチャルハノールから配球。2列目を動かす形で前進を狙う。
オーストラリアは最終到達点だけ防いでおけばOKだろうという感じ。ミドルを狙えるバイタル付近の守りを手厚くすることで自陣の守備を固めていく。
保持だけ見ればトルコは攻め続けてオーストラリアの堅い壁をこじ開けようとする展開になるかと思われた。しかし、トルコにとって誤算だったのは非保持の方だろう。メトカーフを狙ったロングボールが収まるのは仕方ないとしても、ハイプレスを起動した時に全く相手を捕まえられなかった。
特に前線がロスト後にプレスにいくタイミングがかなり遅く、プレスに行ったとしてもかなり遠い距離で止まってしまう。これではホルダーはプレスがかかっているとは感じない。オーストラリアは左サイドを軸にトルコのプレスを引き寄せると、ここから背後をスピード勝負で狙っていく。
オーストラリアはプレスがかかっていない時はロングボールを狙い、かかっている時は手数をかけてサイドを裏抜けで破りにいくというあべこべ感が面白かった。ロングボールではターゲットになっていたメトカーフもプレスがかかると中盤に降りてプレス回避に加わっていく。
プレス回避から手応えを得たオーストラリアはGKからのリスタートで先制。トルコのアリバイハイプレスを交わしてサイドから早く進撃に成功。そのままイラングンダがゴールを陥れる。
トルコは押し込む局面においては左のユルマズの縦突破からのクロスでミドルシュートを打つスペースを作り出す。しかし、この日はミドルの精度が低調。枠を捉えることができないシーンが目立つ。オーストラリアが前に出てきた時のカウンターにも丁寧さを欠いており、なかなかゴールまでは辿りつかない。
後半も大枠の展開は同じ。トルコの前がかりながらも強度がないプレスをオーストラリアの左サイドが余裕でいなすことでスピードアップ。トルコは押し込む時間が多く、個々人は上手いのだけども1人のアクションを周りが活かせないシーンが続く。左サイドにハーフタイムから入ったユルディズが攻撃の中心ではあるが、なかなかゴールに近づくチャンスはなし。頼みのミドルも精度を欠いたままだった。
70分の手前付近から少しずつトルコの攻撃にはつながりが出るように。ナローなスペースを崩すためのポストやオフザボールでオーストラリアの逆を取るシーンが出てくる。ややトランジッションの強度が落ちたオーストラリアだったが、選手交代直後にオーストラリアが貴重な追加点。リードを2点に広げる。
チャルハノールのFKをはじめ、多くのレンジのあるシュートが枠外、ポスト、そしてGKに阻まれたトルコ。カウンターからチャンスを量産したオーストラリアに屈し、24年ぶりのワールドカップは黒星スタートとなった。
ひとこと
縦ポンにやられたで済ますにはハイプレスが脆すぎるトルコだった。
試合結果
2026.6.13
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループD 第節
オーストラリア 2-0 トルコ
BCプレイス/バンクーバー
【得点者】
AUS:27′ イランクンダ, 75′ メトカーフ
主審:ヘスス・ヴァレンズエラ
第2節 アメリカ戦

埋まっているようで埋まらない5レーン
開催国としてパラグアイ相手に上々のスタートを切ったアメリカ。オーストラリアに勝利すればメキシコと同じく、1試合を残してグループステージの突破を決めることができる。
序盤からボールを持つのはアメリカ。前節と同じくロビンソンを前に押し出す形で変形する3-2-5からポゼッションを敢行。オーストラリアはバックラインにはプレスをせず、アメリカのCBには自由にボールを持たせていく。
フォーメーション的にはオーストラリアの優先事項はひとまずはアメリカの攻撃において5レーンを埋めて相手に自由を与えないことだろう。しかし、5つのレーンを埋めていても細かい駆け引きでのスペースメイクからギャップを作ることができる選手がいるのが今のアメリカの強み。マッケニーはファジーなポジションからボールを引き取っての反転やワンツーでの位置の取り直しから一気に縦に進んでいく。彼が主に顔を出す右サイドでは、なかなかオーストラリアの守備が捕まえられない展開が続く。
アメリカは左サイドからの襲撃から先制。レーン的には埋められていても壊されるという意味でこの日のアメリカにおいてマッケニーと双璧だったのはバログン。スピードで相手をちぎることができる動きからオーストラリアのDFラインを乱し、一気にゴールを陥れる。
以降も一方的な保持からオーストラリアにはチャンスを与えないアメリカ。右サイドから先に動いて相手に対応をさせ続けることで試合を支配する。保持においてもロングボールから陣地回復は簡単ではない状態だった。
ハイドレーションブレイク明けもペースを握ったのはアメリカ。左サイドでもロビンソンの抜け出しから引き続きチャンスを作っていく。
43分には追加点をゲット。わずかなラインの上げ下げで相手を揺さぶり切ったアメリカがリードを広げるゴールを手にする。
後半、覚悟を決めてハイプレスに出ていくオーストラリア。ひっくり返すことでアメリカのアタッカーのスピードが映える立ち上がりに。セカンド回収も含めて十分に優位を見せることができていた。イランクンダの裏抜けなど、逆にオーストラリアが支配を狙っていこうとする局面においてはリチャーズがスピードを生かした対応で封殺を続ける。
しかしながら、時間の経過とともに少しずつアメリカの支配力は低下。オーストラリアは高い位置での守備からスムーズに攻撃に行く場面が増えていく。裏を狙うアメリカの走力も低下傾向にあった。
それでも最後の局面は体を張って防ぎ続けたアメリカ。オーストラリアにあと一手を許さないままクローズに成功。見事な逃げ切り勝利でグループステージ突破を決めた。
ひとこと
実力の違いを感じる90分だった。
試合結果
2026.6.19
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループD 第2節
アメリカ 2-0 オーストラリア
シアトル・スタジアム
【得点者】
USA:11′ バージェス(OG), 43′ フリーマン
主審:フェリックス・ツバイヤー
第3節 パラグアイ戦

最後は安全に着地
勝ち点3同士で並ぶ両チームの試合は一見のところデスマッチにも見える。しかしながら、よその会場を見る限り、勝ち点4は安全地帯。デスマッチに見せかけて両者ともに救済される未来も見えるという48チーム制ならではの状況を迎えている。
序盤から一方的にボールを持つのはオーストラリア。パラグアイの2トップの脇にポイントを作ることで、保持の安全地帯を作りにいく。
序盤はロングボールを積極的に狙っていたオーストラリアだったが、徐々に流れに乗るようにポゼッションにシフト。一方的にパラグアイを押し込んでいく。地上戦ではCHのアーバインが右のハーフスペースに抜け出すなど、位置交換から少しずつチャンスを狙っていく。
ボールを捕まえることが出来ないパラグアイは保持でも一発での陣地回復ができないまま苦戦。ミドルゾーンでオーストラリアの守備に咎められてしまう。
20分過ぎからは少しずつパラグアイが敵陣で陣形を噛み合わせるようなシーンを増やしていく。しかしながら、パラグアイがこれをきっかけにゴールに向かえるようになったというよりはプレーエリアがピッチの中央に集約されたイメージという方が近いだろう。
オーストラリアもパラグアイもゴールから遠かった状態で試合はハーフタイムに。スコアレスのまま折り返すこととなった。
後半は試合が反転。ハイプレスに出ていったパラグアイに対して、オーストラリアはイランクンダのスピードを生かして背後を狙うなどダイレクトな展開で対応。敵陣では噛み合うようなミラー気味なフォーメーションを強めることでオーストラリアの保持をパラグアイが阻害するスタートとなった。
しかしながら、この試合はどちらがボールを持とうと押そうと引こうと簡単に局面を持続させることが出来ない。試合の中盤には少しテンションが上がり、接触プレーの強度が上がったようにも見えはしたが、アルデレーテの負傷くらいのタイミングで再びテンションはトーンダウン。
終盤はまずはお互い安全圏となる4ポイントで!ということを優先したように見えた両チーム。スポットで攻める場面もあったが、ネットを揺らすところまでは至らず。スコアレスのまま試合は決着。パラグアイは突破濃厚の4ポイントで3位の座を確保することとなった。
ひとこと
最後は安全に着地した印象が強い試合だった。
試合結果
2026.6.25
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループD 第3節
パラグアイ 0-0 オーストラリア
サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム
主審:クレマン・トゥルパン
Round 32 エジプト戦

アジア最後の砦が陥落
日本がブラジルに敗れてしまい、アジア最後の砦となったオーストラリア。エジプトも躍進が伝えられたアフリカ勢が次々と敗退に追い込まれていることからも大陸間での注目度が高いカードだと言えるだろう。
互いに噛み合わないフォーメーションの中で慎重に入ったのはオーストラリア。ミドルゾーンに構える5-4-1でエジプトにボールを持たせることを許容する。
エジプトのポゼッションは左サイドの片上げ。SBが高い位置をとり、SHは絞る形でローテーションを行っていく。
オーストラリアは持たれる展開に焦れることが少しずつ増えていくように。前線がワンサイドカットしながら片側サイドに幽閉しようとするが、エジプトのCHのマークが甘いことで逆サイドに逃がされるシーンが多かった。
逆サイドに逃がしながらの前進が安定してできていたエジプトは押し込むところから先制。セットプレーの二次攻撃からアシュールがゴールを決めてリードを奪う。
一方のオーストラリアの保持に対して、エジプトはSHが前にスライドしながら枚数を合わせる強気のプレス。低い位置に相手を引きつけながら、ひっくり返すような縦に速い攻撃を見せる。右のWBであるボスからの加速は多少不利な体勢でも前に出るようなポテンシャルがある。瞬発力の点では明らかに優位のあるイランクンダとともに飛び道具として機能する。
前半の終盤になると、徐々にオーストラリアの前からのプレスがすれ違わなくなってくることで試合の流れは変化。ショートカウンターからオーストラリアに手応えのある展開を呼び込むことに成功する。エジプトも少しずつオーストラリアのシャドーとWBの間にボールを届けることで落ち着かせることで対応。均衡した流れながらエジプトのリードでハーフタイムを迎える。
後半の頭はオーストラリアが主導権を握ったスタート。徹頭徹尾空中戦の強さを生かすようなオーストラリアのパスワークから一気にゴールに向かう形。ボール奪回の際にも列を上げる圧力が効いており、エジプトは飲まれるような立ち上がりだった。
その流れからセットプレーでオーストラリアは同点ゴール。サウターの一撃がオウンゴールを誘発し、試合を振り出しに戻す。
以降もしばらくはオーストラリアの圧力は続いていたが、徐々にエジプトのCHがフリーになるとポゼッションは回復。この時間帯よりあとは非保持側のプレスがかかることはなく、交互にポゼッションを行っていくバトルとなった。
サラーをトップに置く4-1-4-1→3バックという流れは右サイドを中心とした定点攻撃の整備という意味合いはあったが、これもプレスの圧力という観点では低下の方向。手当が保持の局面フォーカスだった分、展開自体は保持と非保持のタームが長くなるような傾向に流れていった。オーストラリアからすると疲れの見えるイランクンダを下げて、前線を入れ替えてもなおプレスのスイッチが入らなかったのはもしかすると想定外だったかもしれない。
延長戦も含めて保持のターン制バトルは継続。チャンスの量が大きく違ったわけではないが、ハッサンとサラーが右サイドから交互に仕掛けるという方向性がきっちりしていたエジプトの方が優位だったか。PK戦までもつれた試合は2つのキックが枠に飛ばなかったオーストラリアが敗退し、アジア勢のワールドカップはここで幕を閉じることとなった。
ひとこと
保持のターン制バトルになった時にオーストラリアは少し損をしていた感じがしたので、終盤戦にもう一度非保持で主導権を握りたかったなと思った。
試合結果
2026.7.3
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
オーストラリア 1-1(PK:2-4) エジプト
ダラス・スタジアム
【得点者】
AUS:55′ ハニー(OG)
EGY:13′ アシュール
主審:グスタボ・テヘラ
