第1節 アメリカ戦

あまりにもワンサイドな45分
開催国3カ国の中では最後の登場となったアメリカ。パラグアイを迎え、ロサンゼルスから彼らのワールドカップは始まることとなる。
左サイドに大きくボールを蹴り出すところからキックオフを始めたアメリカ。強度勝負に自信ありと言いたげな振る舞いは、前半の内容からすれば非常に説得力のあるものだったと言えるだろう。前半は文字通り、最初から最後までアメリカペースだった。
3-2-5に変形するアメリカのポゼッションに対して、パラグアイの4-4-2の守備は困惑気味。トップ下役のエンシソが中盤に加わるなど工夫は見せていたが、結局のところ誰がどこまで出ていくのか?という部分を整理できず。具体的にはライン間で受ける選手や前線に飛び出すマッケニーを捕まえきれていなかった。
加えて、パラグアイを悩ませていたのはアメリカの左サイドのユニット。大外とハーフスペースを行き来するプリシッチと、そこから大外に回るロビンソンのコンビネーションにパラグアイは後手に回る一方だった。
アメリカの先制点はまさに優勢を反映したもの。複数人を引きつけながらリリースを成功させるプレーをつないだマッケニーとプリシッチの2人によって、パラグアイの守備は大混乱。その結果がオウンゴールとして出力されたという印象のゴールだった。
以降も完全に主導権はアメリカ。パラグアイは右サイドのゴメスとエンシソのコンビネーションからチャンスを探っていくが、なかなか時間を作ることができない。それ以上に厳しかったのは守備だろう。アメリカの左サイドのコンビネーションを延々と止められない時間が続く。後手に回って遅れて食いつき、後方にスペースを空けるという悪循環から簡単に2点目を許してしまった。
さらに前半終盤にかけては、アメリカは右の大外に立つデストの存在感もアップ。左サイドだけでなく、右サイドからでも戦えることを示したアメリカ。左右両サイドからパラグアイをタコ殴りにする。
前半の仕上げは中盤でフリーになったティルマンからバログンへのライン。2人のCBを手玉に取ったアメリカのエースが、3点目をハーフタイム前に仕留めてみせた。
後半は前半ほどのワンサイドゲームではなかったと言えるだろう。高い位置からのプレスの手を緩めなかったアメリカだったが、パラグアイも右サイドのユニットを中心に前進への粘りを見せていた。それでもバログンやロビンソンのフリーランに苦戦するなど、非保持になれば一筋縄ではいかない様子も見せていた。
前半に比べればフラットな展開となった中でゴールを生み出したのはパラグアイ。体をぶつけられながらも中央で細かくつなぎ、エンシソを前向きにすることに成功すると、左サイドから遅れて攻め上がったマウリシオ・マガリャンイスが反撃の一撃をお見舞いする。
このまま一気に追い上げていきたいパラグアイ。しかし、アメリカはポゼッションからテンポを取り戻してペースを握る。ゆったりとボールを持つアメリカは後半アディショナルタイムにレイナが追加点。大勝に華を添える一撃で開幕戦の勝利を祝った。
ひとこと
最近見たサッカーの試合の中で一番ワンサイドな前半だったかもしれない。
試合結果
2026.6.12
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループD 第1節
アメリカ 4-1 パラグアイ
ロサンゼルス・スタジアム
【得点者】
USA:7′ ボバディージャ(OG), 31′ 45+5′ バログン, 90+8′ レイナ
PAR:73′ マウリシオ・マガリャンイス
主審:ダニー・マッケリー
第2節 トルコ戦

詰めの甘さと精度不足が拭えないまま敗退決定
第1節では大量のシュートを浴びせながらも勝ち点を奪うことができなかったトルコ。第2節で勝利を手にして、なんとか最終節に望みを繋ぎたいところだ。
同じ4-4-2がベースとなったこの試合。高い位置からプレスでボールを奪いにいくのはパラグアイ。強烈なプレスが身を結んだのはわずか2分。トルコの左サイドでボールをひっかけるとあっさりとゴールまで持っていくことに成功。ガラルサの一撃でリードを奪う。
このハイプレスはあくまで成功例。パラグアイの激しいプレスは結果としてファウルや軽い負傷を呼び込むことも多く、立ち上がりから主審はこの試合をコントロールするのに苦労していた。
一方のトルコは第1戦と同じく体を寄せるアクションにゆるさが見える。寄せているつもりでもプレッシャーを感じていないという状況はこの試合でも。パラグアイ相手にボールを奪うことはできない。
それでもトルコはトランジッションから反撃。サイドの裏にスピードを生かして潜り込むことにより、縦に速い展開になんとかくらいついていく。
15分も経てば試合はトルコのポゼッションで落ち着く形に。3-2-5でポゼッションを行うトルコに対して、パラグアイはSHを低い位置まで下げて時には6バックになる陣形に見える時も。一方的に押し込みながら広くポゼッションを敢行。裏抜けのアクションもオーストラリア戦よりは見られており、悪くはない入りだったと言えるだろう。
ただし、ミドルシュートなどの詰めの甘さは健在。枠にきっちりボールを飛ばすところがなかなかこの試合でも達成することができない。だんだん攻撃のテンポも画一的となり、もう一手詰めたいところで雑に終わらすケースも出てくる。
受けるパラグアイが素晴らしいのはこれだけ下がってもロングカウンターを打つことができる馬力があるということ。カウンターから馬力あふれる突破で敵陣まで。トランジッションの強度は明確にトルコよりも上なので、敵陣で時間を稼げれば枚数的には優位を取ることができるケースが多かった。
しかし、順調だったパラグアイにアクシデント。アルミロンが”プレスティアーニ・ルール”で退場となり、10人での戦いを余儀なくされる。
後半、選手交代を挟んで4-4-1でトルコの攻撃を受けるパラグアイ。トルコは前半からストロングだった左サイドからチャンスメイク。SHもCHも最終ラインに入ることが多かったパラグアイに対して、ミドルやバイタルからのラストパスを増やしていきたいところではあったが、割とあっさりとクロスにシフトする場面も。
終盤は2トップにシフトし、右のSBのミュルドゥルもボックスに入ることで圧力を増していたトルコ。しかし、肝心のシュートがゴールに向かわない。
パラグアイは10人でも馬力を見せてのカウンターで陣地回復。プレスで無理なく圧力をかけるシーンもありながら、簡単には裏を取られないバランス感覚を持っていた。
それでもトルコに押し込まれる終盤戦はかなり厳しい立ち回り。祈るしかなかった終盤戦はヒルのファインセーブとトルコの精度不足でなんとかトルコの猛攻を凌ぐ。
最終的には10人で45分以上を逃げ切ったパラグアイ。死に物狂いで守りきり、勝ち点3を手にした。
ひとこと
トルコ、基本的には攻撃の詰めの甘さがよく目立つチームだと思うが、さすがに最後の10分はシュート精度のせいだなという感じ。
試合結果
2026.6.19
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループD 第2節
トルコ 0-1 パラグアイ
サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム
【得点者】
PAR:2′ ガラルサ
主審:イヴァン・バートン
第3節 オーストラリア戦

最後は安全に着地
勝ち点3同士で並ぶ両チームの試合は一見のところデスマッチにも見える。しかしながら、よその会場を見る限り、勝ち点4は安全地帯。デスマッチに見せかけて両者ともに救済される未来も見えるという48チーム制ならではの状況を迎えている。
序盤から一方的にボールを持つのはオーストラリア。パラグアイの2トップの脇にポイントを作ることで、保持の安全地帯を作りにいく。
序盤はロングボールを積極的に狙っていたオーストラリアだったが、徐々に流れに乗るようにポゼッションにシフト。一方的にパラグアイを押し込んでいく。地上戦ではCHのアーバインが右のハーフスペースに抜け出すなど、位置交換から少しずつチャンスを狙っていく。
ボールを捕まえることが出来ないパラグアイは保持でも一発での陣地回復ができないまま苦戦。ミドルゾーンでオーストラリアの守備に咎められてしまう。
20分過ぎからは少しずつパラグアイが敵陣で陣形を噛み合わせるようなシーンを増やしていく。しかしながら、パラグアイがこれをきっかけにゴールに向かえるようになったというよりはプレーエリアがピッチの中央に集約されたイメージという方が近いだろう。
オーストラリアもパラグアイもゴールから遠かった状態で試合はハーフタイムに。スコアレスのまま折り返すこととなった。
後半は試合が反転。ハイプレスに出ていったパラグアイに対して、オーストラリアはイランクンダのスピードを生かして背後を狙うなどダイレクトな展開で対応。敵陣では噛み合うようなミラー気味なフォーメーションを強めることでオーストラリアの保持をパラグアイが阻害するスタートとなった。
しかしながら、この試合はどちらがボールを持とうと押そうと引こうと簡単に局面を持続させることが出来ない。試合の中盤には少しテンションが上がり、接触プレーの強度が上がったようにも見えはしたが、アルデレーテの負傷くらいのタイミングで再びテンションはトーンダウン。
終盤はまずはお互い安全圏となる4ポイントで!ということを優先したように見えた両チーム。スポットで攻める場面もあったが、ネットを揺らすところまでは至らず。スコアレスのまま試合は決着。パラグアイは突破濃厚の4ポイントで3位の座を確保することとなった。
ひとこと
最後は安全に着地した印象が強い試合だった。
試合結果
2026.6.25
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループD 第3節
パラグアイ 0-0 オーストラリア
サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム
主審:クレマン・トゥルパン
Round 32 ドイツ戦

出戻りハイタワー戦略が不発に終わったドイツがR-32で敗退
前回大会と異なり、なんとかグループステージの突破を決めたドイツ。首位で迎えたノックアウトラウンドの初戦はパラグアイとの一戦に挑む。
序盤からボールを持つのはドイツ。立ち上がりは高い位置からプレスを仕掛けてきたパラグアイだが、ドイツは幅を使うところからこのプレスをいなすことに成功する。フリーになったCBは対角パスから大外レーンを活用。今大会ではインサイドに絞るアクションを見せていたヴィルツがこの日は左の大外に立っていたのが印象的。逆にブラウンは絞ることで大外のパスコースを空けに行く。
右はサネ、左はヴィルツ。パラグアイの守備者はダブルチームをつける様子はなかったし、ドイツの攻撃陣も特にホルダーの周辺に寄っていくようなアクションはなかったため、シンプルな大外の1on1のセットアップが多い展開に。これもインサイドでハヴァーツとウンダフの2枚のターゲットを生かすためということなのかもしれない。
パラグアイは敵陣でのセットプレーなどのチャンスがある場面もあったが、基本的には前に進めるターンがないことで苦戦。自陣からの脱出ができずに受けに回ったままハイドレーションブレイクを迎える。
中断明けも延々とポゼッションが続くドイツ。ただし、主体なのはあくまでクロス。ハヴァーツとウンダフを並べた意味を見出すのであればそれでもいいのかもしれないが、外と中のコンビネーションから揺さぶっていく姿はかなり少なくなった。右サイドに出張したヴィルツが絡んだ攻撃は少ないながらも良かっただけに、もう少しここを使っても良かったように思えた。
前進の機会がないパラグアイだったが、少ない機会での先制に成功。セットプレーからの二次攻撃で先制。アルミロンの外を回るガラルサからのクロスを最後はエンシソが仕留める。少ないチャンスを生かしてパラグアイがハーフタイム前に前に出る。
後半もドイツがボールを持つ展開は続くが、なかなか波には乗れず。シンプルなクロスの跳ね返しからカウンターのピンチを受けたり、無駄なオフサイドで攻撃の流れを切ったりなど。パラグアイのエンシソのファストブレイクの方が手応えがある状況だった。
しかし、そうした悪い流れを変えたのはハヴァーツ。マークを受けながらもワンタッチですらすことに成功して同点ゴールを確保。リードを帳消しにする。
このゴールでオフザボールが活性化したドイツはムシアラを投入し、MFを増やして揺さぶりをかける。これで攻め筋を変えるのかと思いきや、再びヴォルテマーデを入れてタワー型戦略に舞い戻るというのはやや不思議な感じはした。
延長戦はヴォルテマーデとハヴァーツを使いつつ、クロスのターゲットとポストからのミドルの二刀流で攻めていく。ラインは上がらない、プレスはかからないという状態のパラグアイであったが、ボックス内を防衛するというデッドラインだけはなんとか守り抜くことに成功する。
PK戦までもつれた一戦は6人目で決着。ドイツの夢をパラグアイがくじき、Round16に駒を進めることになった。
ひとこと
基本的にはパラグアイが好きなフィールドで戦ってしまった感があったし、その上での行ったり来たりということでプランニングの成否は気になるところである。
試合結果
2026.6.29
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
ドイツ 1-1(PK:3-4) パラグアイ
ボストン・スタジアム
【得点者】
GER:54′ ハヴァーツ
PAR:42′ エンシソ
主審:ジェラル・ジェイド
Round 16 フランス戦

大人なフランスが腹を括ったパラグアイをこじ開ける
Round32において3位抜けチーム唯一の生き残りとなったパラグアイ。首位通過チームのドイツを破るアップセットを演じた次の試合はこの大会のラスボスと言ってもいいフランスである。
パラグアイのスタンスは非常にはっきりしていたと言えるだろう。もちろん、プレッシャーのかかる状態でマイナスのパスが出るなど圧力をかけるチャンスがあるのであれば人数をかけるケースもあるが、基本的には自陣での5-4-1がベースになってくる。引いて受けるということを徹底してやっていくという割り切り度合いとしてはこの大会でも一番はっきりしていたかもしれない。
保持に回った場合でもロングボールでスッキリと。相手が前から来なかった場合などは前に進めるサイドを変えるケースもあったが、奪われそうな状況で1枚を剥がすというようなアクションを自陣ですることはまずない。この点のリスクヘッジは徹底していたし、危ない状況を迎えるくらいならボールを捨てることを進んで選ぶ。最前線がロングボールを収めるという意味で適任ではないエンシソでもここまで徹底していたのは本当に腹が決まっているのだろうなという感じだ。
フランスはバルコラとデンベレというWGをシンプルに外に置く形。SBは高い位置をとりながら攻撃のサポートを探っていく。まずはサイドを突っついてクロスを入れていく形がメイン。防波堤がズラリと並ぶ中で高さ勝負のハイクロスを入れても仕方ないので、少しでもスペースを作りながらクロスを上げるような格好だ。
もっともフランスの持ち味が出せるようなライン間への差し込みからのスピードアップはこの試合ではなかなか見ることができず。狙い目となるのはむしろパラグアイのセットプレーのカウンターか、もしくは攻め終わりの局面だった。
基本的には地味にサイドから相手を押し下げつつ、先に挙げたスペースへのクロスとミドルシュートの両睨み。ミドルはWGに引力があることを利用し、サイドに相手のCHを引きつけつつ、ファーサイド側のCHの背中を取れるような位置から放つことが理想というイメージだった。
ジリジリとスコアレスのまま迎えた後半も構図は同じ。パラグアイは当然腹をくくってのタフな対応に身を投じることとなる。カウンターはエンシソとアルミロンのスピードにお任せだが、こちらもスピードに乗った対応をお手のものというフランスの守備陣に穴を開けることはできない。逆にフランスがスピードアップの隙が見える状況。トランジッションはエンバペがボールを奪いに下がるくらいにはフランスも本気度が窺える状況だった。
構図ははっきりしているが、明確にどちらのペースとは言えない試合に風穴を開けるのはやはり得点。ゴメスが自陣でPKを献上してしまい、このPKをエンバペが決めてついにパラグアイの壁は決壊する。
4-4-2でのミドルブロックを組み直し、ラインを上げながらの殴り合いにシフトしたパラグアイ。フランスからすれば、お得意のライン間パスからの加速が視野に入るシーンであったが、そうした追加点への電車道が見えなかったことを踏まえると、この日のフィラデルフィアの環境はかなり過酷だったのかもしれない。
それでも1点を守るという観点で言えば危なげなく残り時間を過ごしたフランス。パラグアイを振り切って、ベスト8に駒を進めた。
ひとこと
ストレスの溜まる展開だったが、この試合のフランスは非常に大人だった。
試合結果
2026.7.4
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 16
パラグアイ 0-1 フランス
フィラデルフィア・スタジアム
【得点者】
FRA:70′(PK) エンバペ
