第1節 スコットランド戦

サイドの切れ味が久々の本大会勝利に導く
下馬評の段階ではグループCにおけるアウトサイダーという位置付けの両チーム。まずは目の前の相手に対して勝ち点を奪い、なんとか他のチームの取りこぼしを狙っていきたいところだろう。
序盤からボールを持つのはスコットランド。バックラインは左のSBのロバートソンを上げる形の3バック変形。3-2-5ベースでボールを動かしていく。
基本的には攻撃はSB-SHの関係性で完結させていきたいスコットランド。SBの追い越すアクションを使いながらサイドを抉り、折り返していく。シンプルなクロスでもインサイドには強力なマクトミネイというターゲットがあるのは怖さがある。
ハイチは序盤からロングボールでの起点作り。初めは跳ね返され続ける展開だったが、イシドールは少しずつ競るところを工夫しながらボールを収めていくアクションを増やしていく。
前半の途中からベルガルドのサリーによってボールをゆったりと持つ場面も。スコットランドは無理にプレスに行かずに、ステイしてボールを持たれることを許容する構えだ。
敵陣に入ってからは主なストロングは左サイド。プロビデンスとエクスペリエンスからのクロスでボックス内のクロスで勝負していく格好であった。
スコットランドがある程度ボールを持たれてもOKという考え方になったのはカウンターでも十分な陣地回復が見込めるからだろう。このレベルではギャノン・ドークは無双状態であり、ここから多くのチャンスが生まれていた。
先制点もロングボールを収めるアダムスからのギャノン=ドークのクロスから。マッギンのミドルが綺麗にゴールに入り、スコットランドがリードを奪う。
以降もチャンスを作っていたのはギャノン=ドーク。ハイチもスポット的に左サイドからの反撃を試みるが、この日のギャノン=ドークを軸としたスコットランドの攻撃の精度には及ばず。試合はスコットランドがリードをしたままハーフタイムを迎える。
後半、ハイチは巻き返しを狙っていく形。保持ではベルガルドをサリーして最終ラインに落とす形から外を循環させていく。
非保持ではハイプレスを狙っていくが、右サイドからひっくり返すなどスコットランドは十分にやり返せる力を持っている。インサイドに起点を作り、サイドに展開をしてWGに1on1の形を作るところもスコットランドの方がうまくセットアップができていた。
加えて、ギャノン=ドークのようなこの試合においては別格の切れ味を持っているWGがいることも好材料。逆にハイチはサイドに展開をしつつ、ストロングの左サイドからの打開を狙っていくが、スコットランドの守備にズレるきっかけを与えない。
84分と最終盤にシンプルなクロスにピエローが合わせる決定機があったハイチだが、この2つのチャンスを共に仕留められず。スコットランドが逃げ切りで勝利し、久しぶりの本大会での勝利を祝った。
ひとこと
ギャノン=ドーク、このレベルだと頭2つくらい抜けていた。
試合結果
2026.6.13
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループC 第1節
ハイチ 0-1 スコットランド
ボストン・スタジアム
【得点者】
SCO:28′ マッギン
主審:ムスタファ・ゴルバル
第2節 ブラジル戦

細かいギャップからのスピードアップで前半決着
初陣はモロッコとのドロー発進となった王国・ブラジル。対するはスコットランド相手にギリギリで勝ち点を取ることができなかったハイチ。前節以上にタフな相手と対峙することとなる。
当然ボールを持つのはブラジル。ハイチは5-4-1のブロックでスタート。SHはフラットな位置に入るというよりはやや絞り気味でCHと段差を作る形から。
そうなると、保持側の狙いはこのSHとCHのギャップのところとなる。ヴィニシウス、ハフィーニャの2人のWGが降りるアクションからボールを引き出し、ここから攻撃を加速。右サイドからクーニャのポストでいきなりハフィーニャが抜け出す形を作る。
ポイントをSHの背後に作るアクションに加えて、シンプルに背後を狙う動きもあったブラジル。中盤でパケタがフリーになると、ここから裏抜けで直線的にゴールに向かうケースも。ラインを上げる動きを挟もうとするハイチを牽制する。
ハイチがボールを持つケースにおいては、即時奪回以外でブラジルが無理なチェイスがなかったものの、なかなか打開のポイントは見つからず。SHとWBの縦関係が一番の狙い目ではあるが、追い越すWBを見逃してしまったり、あるいはクロスがイマイチだったりなど、ミドルサードから先のところに問題がある形。きっかけはありそうだが、それを活かすことができないシーンが続く。
機会的にも展開的にも優位だったブラジルに先制点が入ったのは23分。少しずつ加速させてハイチのDFを背走させるケースがあったが、その状況が続くことで決壊。ヴィニシウスのドリブルからのカットインのこぼれをクーニャが押し込む。
ハイドレーションブレイク明けも優位なのはブラジル。細かく位置を変えるパケタを捕まえることができず、背後を狙う動きから一気に加速する。37分にはクーニャが再びゴールを決めて追加点。さらに、追加タイムにはヴィニシウスがゴール。オフザボールの質と量に裏打ちされた加速で一気に勝負を決める。
後半、ハイチは4-4-2にシフト。より前から圧力をかけにいくが、ブラジルからすると降りる前線がさらに自由を得る展開。背後をつくための起点には不自由せずにスピードアップする。解説のラモスが言うところの「やりすぎ」なプレーが多かったため、追加点まではいかないが、主導権はやはり王国にある状態。
ハイチも前半同様にボールを持つ機会自体はあるが、シュートまでのところでブラジルの強力なセンターラインに潰されてしまう。危険なロストシーンもあっただけにアリソンをもう少し脅かしたかったところだろう。
終盤はブラジルの若い交代選手を中心にこの舞台に慣れるための時間に。中でもエンドリッキは抜け出すアクションからオフサイドながらもゴールネットを揺らす場面があった。
結局は前半の3得点をキープしたままの勝利となったブラジル。勝ち点4に乗せて突破に大きく前進した。
ひとこと
さすがに力の差が拭えない試合だった。
試合結果
2026.6.19
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループC 第2節
ブラジル 3-0 ハイチ
フィラデルフィア・スタジアム
【得点者】
BRA:23′ 37′ クーニャ, 45+3′ ヴィニシウス
主審:アレハンドロ・エルナンデス
第3節 モロッコ戦

片道切符のハイチが見せた意地
すでに敗退が決まっているハイチとあとは通過順位だけが重要となるモロッコ。対照的な状況ながら、試合は非常に熱の入ったものとなった。
まず勢いを感じたのはハイチのハイプレス。明らかに行けるところまではフルスロットルで行くという気概を感じるハイプレスでひたすらモロッコを追い込んでいく。
しかしながら、モロッコも落ち着いた対応。ハキミのフリーマン化に始まり、エル=カンヌスやディアス、サイバリなど2列目の面々がかなり自由な動きを見せながら、ハイチの動きに迷いを与える。サイドアタッカー陣は止まった状態からでも1枚を剥がすことができるという点で明確に質での優位を持っているモロッコだった。
だが、ハイチはとにかく相手を捕まえ続けることでこの日は生きていく!という流れ。その意気込みが実を結んだかのようにハイチは10分で先制点をゲット。右サイドのカシミールのロングボールから追い越すデュベルネからのクロスがオウンゴールを誘発。歴史に名を刻む初ゴールを生み出してみせる。
以降も落ち着いたポゼッションでモロッコに対抗するハイチ。引き込んで相手のSHの背後にSBを置いてそこにボールを届けることでサイドからの進撃のきっかけを作っていく。
それでもオープンな展開が続けばさすがに優位なのはモロッコ。プレス回避も安定していく中で前線に飛び出すハキミが徐々に決定機を作っていく。
すると、そのハキミが同点ゴール。ディアスで左に揺さぶり、クロスを上げると飛び込んで試合を振り出しに戻す。
ここから前半は撃ち合い。モロッコの一方的なペースを許さない!というスタンスを見せたハイチは脈絡もなければプレミアで見たこともないイシドールの素晴らしいミドルでリードを奪う。
だが、すぐにモロッコも反撃。右サイドからまたしても抜けたハキミの折り返しをサイバリが仕留めてまたも同点。ハーフタイムはタイスコアで迎えることとなる。
後半はさすがにハイチは下火に。4-4-2のミドルブロックを組むケースが多く、その中でモロッコは保持の安定を図りつつ、敵陣では即時奪回を仕掛ける。ハイチが抵抗しようと速いテンポでプレーすれば、そこから全体のスピードを上げて、その時の質で相手を上回るというサイクルを延々と回すことでハイチを圧倒。ただただボールを逃すことでいっぱいのハイチと比べると緩急をつけながら相手の空けたスペースを侵略するという数段上の攻撃を繰り出すことができていた。
試合を動かしたのはセットプレー。この試合らしくシュートは豪快に。途中出場のラヒミの一撃でこの試合で初めてモロッコが前に出る。
ビハインドになったところでハイプレスを再開したハイチ。基本的にはアグレッシブなこの試合のハイチの姿勢は肯定したかったが、最後の最後はセルフジャッジによる失点に泣いたのはもったいなかった。
決定的な4点目を手にしたモロッコだが、ブラジルのスコアによって2位の座は変わらず。F組の首位との対戦に臨むこととなった。
ひとこと
大会の外れ値のような捨て身感のあるハイチとモロッコがうまく組み合った試合だった。
試合結果
2026.6.24
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループC 第3節
モロッコ 4-2 ハイチ
アトランタ・スタジアム
【得点者】
MAR:39′ ハキミ, 45+1′ サイバリ, 78′ ラヒミ, 89′ ヤシン
HAI:10′ ブヌ(OG), 43′ イシドール
主審:ダニー・マッケリー
総括

いい経験のその先に進むには
ローブロックを固めるチームが格上の相手に勝ち点をもぎ取る(ただし、引き分けどまり)というのは、この大会のグループステージで何回か見た光景ではある。しかしながら、ハイチはうまくこのトレンドに乗れなかった感。3試合で合計8つの失点を記録し、あっさりと敗退することになった。
スコットランド戦がすべてということになってしまうだろう。事実上、このグループの3番手を決める試合だとわかっていた中で、伝統国に格の違いを見せつけられてしまった格好。引いて受ける中で耐えきれず、ゴールを破られてしまい、敗北を喫する。
この時点で窮地に陥ったハイチ。ブラジル相手には5-4-1で入るも叩き割られてしまい、前半だけで3失点。得失点差も考えればこの時点ですでに突破は厳しいものとなった。やけくそで放った4-4-2は降りるブラジルの前線にハイチのCBがついていくのを躊躇させるきっかけに。失点は避けることができていたが、前がかりな姿勢が機能していたかは微妙なところ。
続くモロッコ戦では試合開始とともに片道切符でのプレスを披露。命を燃やしながら敗退初ゴールと初勝ち点をめがけて戦ってみせた。
その甲斐もあり、早々に先制点をゲット。一度追いつかれても再びゴールを確保し、前半は意地を見せた。
後半の失点にセルフジャッジによる気が抜けていたようなシーンが挟まれていたことは悔やまれるところ。それでもハイプレスに行くトライ自体は見ごたえがあるものではあった。
ただ、現実的にグループステージを突破しに行くとなると、窮鼠猫を噛むといった様相の第3節以外の普段着で何とか3ポイントを取りに行ける設計図が欲しいところ。それができないと仮に3位に入ったとしても突破は難しいだろう。
今大会はいい経験ができたことは間違いない。ポット3の相手と組み合えるスタイルを身に着けることが次のステップになるだろう。
Pick up player:ウィルソン・イシドール
こんなところにこんなプレミアリーガーが!となる現象が結構好きなのだけども、今大会のイシドールはまさにそんな感じ。次点がウィサ。
