
当たり前の再発見
ニューヨークで迎えるファイナルの舞台にたどり着いたのはアルゼンチンとスペイン。連覇を狙うメッシにバルセロナの若武者を抱えるスペインが立ち向かうという構図はなかなか熱いものがある。
スタメンを3人入れ替えたアルゼンチンは守備の仕方を調整した感じがある。パレデスを外し、SH寄りのキャラクターのニコ・ゴンサレスが入った分、中盤がダイヤモンドになって同サイドに圧縮するアクションはなし。ただし、ロドリをフリーにしてしまうと絶対アカン!なので、マック=アリスターを前にスライドすることはやっていく。
SHが絞るアクションをそこまでしない分、横のコンパクトさに欠けるアルゼンチンの守備。そこをカバーしていたのがCBのリサンドロ・マルティネス。縦へのスライドを迷うことなく行うことでライン間に顔を出すオルモ、オヤルサバルを迷いなく潰していく。
ロドリが早めに立ち位置を調整するアクションをしてきたということを踏まえると、フランスを教訓にしたアルゼンチンは割とちゃんと対策をしたということになるのだろう。序盤のボールが行ったり来たりする流れの中では右の大外のヤマルからのポケット→即時奪回で支配を高めようとしてきたが、徐々にロドリがフリーになっていくと、インサイドの縦関係で揺さぶる形が支配的に。
相手のCBが一手遅れるのであれば、そこから背後を狙うアクションで差し切ります!ということで、スペインはアルゼンチンに真っ向勝負を挑んでいった感がある。アルゼンチンはリサンドロ・マルティネスの警告→負傷交代で仕組み自体を揺らがされながら前半を終えた印象。オタメンディがリサンドロ・マルティネスの役割を引き継げるのか?それとも他を調整するのか?の宿題は後半に残してしまった感がある。
アルゼンチンの保持はCHが縦関係気味を構築。エンソがアンカー役としてマック=アリスターはフリーロール。幅を取るニコ・ゴンサレスとタグリアフィコの間へのサイドフローが数回見られており、これは保持でギャップを取りにいくための仕掛けなのだろう。右サイドはデ・パウルが中盤ロールをこなしつつ、モンティエルが右の大外だった。
ただ、前半のアルゼンチンは保持におけるこうした仕掛けをどのように活かすか?ということよりも左サイドの縦への揺さぶりにフォーカスした感。リサンドロ・マルティネスが縦に誘導されていたニュアンスもあり、スペインの手のひらの上という要素も否めなかった。
メッシが降りて、ニコ・ゴンサレスが高い位置でのターゲットになるというところで差別化を図れれば、ニコ・ゴンサレスのスタメン起用の意義も見えるのだけども、対面のポロが見事な働きで抑え込みに成功する。序盤はスペインのパスミスからのトランジションで敵陣に迫れたアルゼンチンだったが、スペインが保持でのイニシアチブを持った時間帯以降はなかなか前進のきっかけを見出すことができず。それでもリサンドロ・マルティネスの負傷から真っ先に決壊しなかっただけ、アルゼンチンは耐えたと言える前半だったかもしれない。
後半のスカローニの決断は素直に守備の修正ベース。ニコ・ゴンサレスを下げて、パレデスを入れることで中央のユニットの上下動の負荷を下げる形となった。単純に守備を固める方策ではなく、保持ももう1回時間を作っていくよ!まで持って行こうとするのがアルゼンチンという感じである。
しかし、スペインもポロを低い位置で触らせることで対面のマック=アリスターに中央の守備に参加させない。間を広げたことでむしろダニ・オルモのライン間スペースからの加速が使えるようになった。
再び押し込む展開を作るスペインは右のヤマルを生かしながら縦突破でボックス内に混乱をもたらしていく。ここまでのスペインはペドリのSHやCFもできるIHを同時投入することで相手の基準点を乱しにいくプランだったが、この日は正位置のポジションでの選手交代が目立つ。WGもニコ・ウィリアムスを入れることで幅を取り、どちらからでも攻めることができる形で勝負をかけていくのがデ・ラ・フエンテの選択となった。
後半の頭は多少組み合う風情を見せていたアルゼンチンだったが、WG主体の攻め筋でスペインは再び一方的なフェーズに。唯一後半に殴り合いの展開に突入したアディショナルタイムでも駒損をしたのはアルゼンチン。エンソの退場で10人に追い込まれてしまうこととなった。
延長戦前半では延々と耐える展開となったアルゼンチン。WG主体で攻めていく形からボックス内でチャンスを作っていくが、メリーノが一撃必殺の仕事人を務められず、なんとかアルゼンチンが粘る展開が続く。
しかし、延長後半のファーストプレーでスペインは先制。左右のWGで揺さぶりながら最後はマイナスのフェラン・トーレスが今大会の彼の決定力をここに全て取っておきました!みたいなゴールを決めてついにゴールをこじ開けることに成功する。
終盤はニコ・ウィリアムスがやや攻守にリズムを悪くするプレーも見られたが、最後のアルゼンチンの攻撃も凌ぎ切ったスペインが防衛に成功。前回王者を倒し、EUROに続くメジャータイトル制覇を成し遂げた。
ひとこと
フランス戦の文脈から考えると、スペインの相手はどのようにラインを下げずに守り続けるか?というところが命題になることは明らか。その鍵を握っていたリサンドロ・マルティネスの負傷交代はなかなかアルゼンチンに困難を突きつけるものだった。イエローカードをもらった後にどんな姿を見せてくれるかを含めて楽しみにもしていたので、個人的にも残念だった。
スペインは少しずつ試合を自分たちの土俵に乗せる巧さが際立っていた印象。「そういえば、メッシがいるチームって守りづらいんだよね」という当たり前のことを再提示してくるような内容だった。「そういえば、ロドリを軽視するとしんどいんだった」という当たり前を提示したフランス戦に続き、自分たちの土俵の中で当たり前のことを淡々と突きつけるために振る舞ったのが準決勝以降のスペインの印象であった。
試合結果
2026.7.19
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Final
スペイン 1-0 アルゼンチン
ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアム
【得点者】
ESP:106′ フェラン・トーレス
主審:スラヴコ・ビンチッチ
