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レビュー
あっさりと武器を生かされる
東と西の4位が激突する7位決定戦。あまり聞いたことのない百年構想リーグならではのカードで川崎と対峙するのは広島。2レグ制のノックアウトラウンド形式ととるならば(とっていいのかわからない)、両チームが激突するのは12年ぶりのこととなる。
立ち上がり、川崎が勝負をかけたのは左サイド。山原以外の中盤がほぼ左サイドに流れながらまずは片側サイドから人数をかけて破りにいく。しかしながら、オーバーロードをしただけの意味があったかは微妙なところ。このシーンの出口が橘田の中央へのパスになったことは個人的には残念であり、人をかけた分きっちりと左サイドを破るアクションまで持っていってほしかったところではある。
序盤の川崎のボール保持は広島のワンサイドカットにどのように対抗するか?というところがテーマとなった。マンツーで完全につぶすほどではないけども、相手の選択肢を高い位置から制限できるのであれば戦っていく!という広島のスタンスを川崎はひっくり返せるかが試された立ち上がりだった。
平たく言えば、この点が不十分だったことが川崎視点での試合が物足りなかった要因でもある。山口のGK起用は、相手を左右に振って脱出するためのボールの戻しどころなのだろう。だが、サイドでボールが詰まった時にSBがあっさりと縦に蹴ってしまう。
この日のCFは持山。ロングボールに対して奮闘してはいたが前進の選択肢として高い優先順位で位置付けるには心もとない。ならば、GKまで戻すアクションはきっちりと活用すべきであり、序盤はその点がハマらず、急ぐべきではない点で急いでしまったのが惜しまれる。
広島の立ち上がりの攻撃は川崎の攻撃のターンを反転させたところから。インサイドに素早くポイントを作りつつ、縦パスから加速。敵陣に入ってロストした後は再びアグレッシブなプレスで高い位置でのボール奪取を狙う。
もっとも大きな違いは早々にストロングポイントを生かした先制点を生み出したことだろう。中村の左サイドのポケット突入からゴールを決めた広島。11分で早々にリードを奪う。
中村のハーフスペース突入のゴールは京都戦とほぼ同じ形。この時はカバーに来たCBの寄せが甘かった分、切り返さないまま左足でゴールを打ち抜いた。
川崎の今回の失点場面は松長根のスライディングによってより危険な場面を呼び込んでしまった感じ。ニア側はGKに任せるのがセオリー(ニアを閉じることに関して山口に不安があるのは確かだが)であり、松長根は進んで川崎を厳しい状況に追い込む選択をしてしまったといわざるを得ない。
SH起点で噛み付く
得点を取った広島はさらにプレスを強化。ほとんどマンツーともいえる高い位置からのプレスで一気に勝負をかけていく。構造的には比較的対策を組んでいたように思う。脇坂の列落ち、サイドに流れてロングボールの的になる持山の2人は特に個人の動きが効いていた感じがする。この時間帯における河原のサリーも対面の広島のマーカーを引き寄せていたので、特に問題はないだろう。
どちらかといえば、惜しまれるのはやはりプレスをひっくり返すところまでたどり着かなかったことだろう。相手のプレスを回避しても直線的にゴールに向かうことなくスローダウンしてしまう。もちろん、局面を切り出してみればその判断が妥当であるパターンもあるのだけども、マンツーでのハイプレスという広島の勝負手をひっくり返す力がないのは惜しいところ。マンツーハイプレスをはがしたのであれば、シュートに近いところまではもっていかないとうまみがない。
逆に川崎はミドルゾーンでの詰まりから追加点を献上。狭いところに無理に通そうとした山原のパスがカットされて、広島のカウンターが発動。鈴木と加藤を丸山と松長根の2人で見たい場面ではあったが、結果的に対応は中途半端となり、広島の2人のCFが最後までフリーのまま攻撃を完結。加藤のミドルは素晴らしかったけども、同数で受けることになった際の川崎のCBの無力感はなかなかつらいものがある。
リードを広げた広島はゆったりとしたポゼッションにシフトチェンジ。プレスのかからないバックラインから幅を広げながらボールを動かしていきつつ、先制点の場面で動きが怪しかった松長根のところからさらなるゴールを狙っていく。
このままではまずいということになった川崎はプレスでギアアップを敢行。この日の川崎の前半でほめるべきポイントがあるとすれば、3人目のプレス役として前に出ていくSHが機能していたことだろう。得点シーンに絡んだ伊藤はもちろんのこと、直前にオフサイドながらもネットを揺らした持山のシーンではマルシーニョがハイプレスで蹴らせたところからの一連。ラストパスを決めた(オフサイドとはいえ)ところまでを含めて、前半終盤はWGのトランジッションを含めた前線が牽引した結果だといえるだろう。
逆に広島は2-0というスコアで川崎を追い詰めた結果、4-4-2で構えている相手では問われなかったバックラインのプレス耐性を問われることに。川崎が一矢報いたところで試合はハーフタイムを迎える。
スローダウンが裏目に
後半の立ち上がり、広島は前半と同じように落ち着いてポゼッションを行おうとするが、川崎のスライドを前にバタバタ。なかなか思うように試合を安定して運ぶことができない。
川崎は伊藤のシャープさがとてもよく目立つ。プレスに出ていくだけでなく、プレスバックもこの日はあまりサボりが目につかず、精力的にやっていた印象。持山の決定機を演出したスルーパスはそのパスの精度もさることながら、パスを受けたシーンでずれたボールに対してマイナス方向のランできっちりミートしたのが印象的。最近はカウンターのような持ち味を生かしたい場面でも走れていなかっただけに、こうしたパスにもリアクションができること自体が復調気配を感じる部分でもある。
さらに川崎は河原からマルシーニョへのスルーパスでも決定機。広島はカウンター迎撃の局面で安易なスライディングからピンチを広げてしまうなど、オープンな局面で不用意に川崎へチャンスを与えていた。
前線からスライドする守備ではきっちりとクオリティを出せていた川崎だったが、ダイレクトにバックラインをロングボールで狙われると難しいところがあるのは確か。広島も反撃の武器は持っていた。
川崎にとって惜しまれるのは選手交代でトランジッションの強度がそがれてしまったことだろう。長、紺野は幅を取ってスローダウンさせる方向に試合のリズムを変化させたが、アウトサイドのレーンからのクロスで有効打にはならず。クロスのターゲットを整理できない状態が続き、誰にも触れられないボールがエンドラインを割るシーンや跳ね返されるシーンが多かった。きっちりと幅を取ったところからもう一段階上に行けなかったのは苦しいところでもある。
一方の広島は展開が静的な局面になっても新井のクロスを中心に川崎のゴールを脅かせるように。しかしながら、この日は暑さの影響もあってか、無理にゴールに向かうというよりはポゼッションで試合をコントロールする方にシフトした感がある。手ごたえがよかった川崎の前線を早めに代えたのも、もしかすると天候に起因する部分かもしれない。
チャンスが少なくなった終盤は見どころが少なく、神田がアクロバティックなシュートを打った程度。広島が本拠地できっちりとリードをキープしたまま、第1戦での先勝に成功した。
あとがき
よくなっている部分はあるものの、序盤のバックスの組み立ての怪しさと守備対応の杜撰さは苦しいところ。こういう失い方とボックス内の守備対応をしていれば、複数失点を逃れることは難しいかなというクオリティの時間帯をそれなりに続けてしまったのがつらいところでもあった。
広島も予習した試合ではもう少しキレがあった感じはするので、相手のコンディションにも助けられながら、何とか第2戦に望みをつなげたのは朗報。川崎での今季最終戦を緊張感のある状況で迎えられる方が、成長を促せるはずだ。
試合結果
2026.5.30
J1百年構想リーグ
プレーオフラウンド 第1戦
サンフレッチェ広島 2-1 川崎フロンターレ
エディオンピースウイング広島
【得点者】
広島:11′ 中村草太, 20′ 加藤陸次樹
川崎:43′ 伊藤達哉
主審:高崎航地