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「嘆く前に」~2026.9.6 J1リーグ 第6節 川崎フロンターレ×清水エスパルス レビュー

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レビュー

揺さぶられたところを利用されず

 豪雨で開催が危ぶまれる状況となった国立決戦は最終的には予定通り開催。海老名SAで見かけた清水サポのみんなが無駄足にならなくてよかった。ちなみに自分は友達と箱根のコテージに行った帰りです。

 雨の国立というトリッキーな試合は立ち上がりもトリッキー。開始わずか20秒ほどで先制点を奪ったのは川崎。佐々木の積極的な攻め上がりが目立つ中で、得点を決めたのは持山。左サイドでゴールから遠ざかりながら反転してゴールを決めた。

 守備側から見るとある程度仕方ないなと感じる場面なのではないか。多少寄せが甘く、そのせいで放たれた高さのシュートをブロックできなかったのは反省すべきポイントでもある。

 しかしながら、あの位置からコースを作って振り抜くというプレーは予測しにくいはず。深追いしてコースを無理に消そうとすれば入れ替わられるリスクもある。持山の思い切りが完全にDFを上回ったシーンであった。

 いきなり先制を許した清水。保持においては4-3-3のスタート。木下を目指してのロングボールと後方からの繋ぎをミックスしていた。

 ロングボールのターゲットになる木下は清水から見て右サイド側に流れてボールを引き出していく。順当にいけば丸山がデュエル相手となるのだけども、ウレモビッチがかなり出張って空中戦の相手としてついていっていた。

 ウレモビッチの評価は非常に難しいところ。潰し切る意識のようなものは川崎の他の日本人CBよりは強いものの、味方とかぶるシーンも多く、連携的には怪しいところもかなり目立った。

 この日の丸山のようにそもそも行動範囲に無理が利かないCBのお守りをするような役割ならば向いているのかもしれない。だけども、同じようにフリーダムに動く傾向の強いホマーノとの相性的にも怪しい部分はあるように思える。他のCBに説得力があるかも微妙なところではあるけども、レギュラーに返り咲くチャンスを掴んだ90分!という感じではないのかなというのが個人的な感想である。

 逆に清水はこのウレモビッチの動きは攻略に使えそうだった。右サイドに木下を流してウレモビッチを引き寄せ、そのスペースにジャーメインを走らせる形は使えそう。しかしながら、この形はほぼ採用されず。ジャーメインはどちらかといえば前から降りて引いて受けることが中心。ポゼッションで気を付けていきたいのかもしれないが、川崎目線でより怖かったのは木下との連携で壊しに行く形ではあった。

 ショートパスの組み立ては左サイドが中心。基本的には4-3-3の陣形を維持するイメージが強かったが、弓場が左サイドに落ちるなど変形から川崎の4-4-2を揺さぶるケースもあった。

 その場合は左サイドから直進を狙う形。山原の背中からロングボールを蹴っていくが、ここにもウレモビッチがしつこくついていくことで簡単にフリーになることを許さない。

 清水の後方からのビルドアップで少し気になったのはCHをフリーにする設計の甘さ。CB、特に住吉はキャリーをすることがない分、狙い澄ました川崎の中盤のインターセプトに引っ掛かるケースが多かった。

 まとめるとロングボールは川崎を揺さぶることはできていたが、揺さぶりによって生じた川崎の微妙な箇所を突っつくことができず、ショートパスからは相手に上回られるケースが多かった。前半の清水のイメージはそんな感じだった。

コンセプトで清水を追い詰める

 2026年の川崎が明確に良くなったと感じる部分は試合ごとのプランの立案。地味に試合ごとに方向性は変わっていて、それが相手の弱みとリンクするケースがそれなりにある。

 まさにこの清水戦もコンセプトによって主導権を握った感。相手の保持のトライやロングボールを跳ね返したところから川崎が始める攻撃はトランジッション。とりわけ、インサイドにドリブラーが仕掛けながら相手にラインの後退を促していく。

 スピードがあるアタッカーに対する清水のリアクションはかなりナーバス。遠くから急に飛び込んでかわされたり、相手の進行方向の変更についていくことができなかったりするケースがとても多かった。コースを変えた持山についていきにくそうにする住吉を見ると、この試合のコンセプトも刺さっている感があった。

 マルシーニョがいない中でスピードで相手を揺さぶる動きを牽引したのは伊藤。微妙に緩急もつけながらのドリブルから相手を置き去りにしながらゴールに向かっていく。

 伊藤のいる左サイドから攻撃を牽引する川崎。そのまま縦に鋭く攻め切るか、もしくは右サイドへの横断から紺野を活かす仕掛けを敷く。

 紺野はだいぶ体のキレは戻ってきたように思える。トランジッションでも単純なスピード面は申し分なかった。ただ、それでも気になるのはプレーする方向が体の向きで簡単にわかってしまうこと。特にマイナス方向にプレーする時は、それが清水のDFラインを押し上げるきっかけになっている。

 この試合では体がキレていたので、マイナス方向にコントロールした場合でも味方に預けてから裏抜けができていた。ただ、タッチはもっと細かくしてリリースはより早くする傾向の方がスムーズにサイドの崩しはできるようには思う。体が動いているからこそ逆に課題が見えた試合だったといえるだろう。

 CFの持山は欲を言えばもう少しカウンターの精度を上げたかったところ。重要な先制点をこじ開けたことだけでも大仕事なのだけども、縦に速い攻撃やオフザボールの裏抜けで前半のうちに追加点やそれに準ずる決定機創出はしたかったところである。

 清水はスピードに乗られてしまうとまずいので、ボールを失った後にサイドに追い込みながら即時奪回を目指す格好。SBに追い込みながら人数をかけて囲んでいく。脇坂にボールが入れば陣地回復の目途が立つ形になる。ここで嵌めることができれば清水はカウンター。苦手な局面の回避+得点のチャンスという一石二鳥の合わせ技となる。

 互いの流儀で崩しにトライする両チーム。30分過ぎから少しずつ手応えが出てきたのは清水。それまではハードに管理されていた弓場が少しずつ空き、ライン間の縦パスが入るようになっていた。

 しかし、一回のミスが命取りになるのがサッカーの怖さ。積み上げるプロセスで清水は大失敗。弓場のパスが弱くなったところを紺野にかっさらわれ、慌てて倒してしまった住吉が退場。前半のうちに、残り時間を10人で過ごすことが決定してしまう。

避けたい必要ないミス

 数的不均衡で残り時間を過ごすこととなった両チーム。優位な川崎は後半頭も流れのいい立ち上がり。佐々木のオーバーラップや伊藤のドリブルから4-4-1で構える清水をサイドから突っついていく。

 ポゼッションにも安定感。安パイな選択肢をキープしておきながら勝負のパスにチャレンジすることができていた。サイドの三角形を作りながら清水の守備ブロックを崩しに行く。特に左サイドは後半から入ったマルシーニョと佐々木にMFが絡んでくる形で手応えのある崩しができていた。

 追いかける清水は10人でもポゼッションを大事に。幅取り役をSBに任せてSHがナローに絞り、木下の近くでプレーをするなどアタッカーの距離感を調整する。

 清水の追い上げムードの後押しになったのは3枚交代。左右に流れてロングボールを引き出すセフンと、サイドアタッカーの井上を軸に川崎のウィークサイドである右を攻めることで押し込むことができるように。

 川崎は後半を通して、非保持においてはプレスのスイッチの入れどころが定まらず、とりあえず後方のポジションを埋めるような安全運転をした結果、マイナスのパスに対してプレッシャーがかからず、クロスや裏へのパス、シュートへのチャレンジを許してしまう傾向があった。空中戦で1on1の勝利が見込めるオ・セフンがボックス内に入ることにより、具体的な得点のチャンスが生まれた印象だ。

 押し込む時間を作った清水は丸山の軽率なハンドでPKを獲得。飛んでしまえば、ああいう腕の上がり方になるのはわからなくはないけども、そもそも飛ぶ必要があるシーンだったのか?という検証は必要。ミスは仕方ないけども、必要のないことをしてのミスはあまりにも切ないので。

 追いつかれた川崎は再び押し込みながら解決策を探っていく。前半に効いていたライン間ドリブルは清水がインサイドを固めたことによってなかなか生み出すことができず。ピッチが徐々にボールが転がらなくなったこともあり、マルシーニョの裏抜け頼みのようなアバウトさが見えるものとなる。こうなると数的優位の活用は難しい。

 そうした中で川崎は強引に追加点を取ることに成功。セフンとウレモビッチの接触でフリーズしてしまった清水の守備陣に対して、動きを止めなかったマルシーニョとラセルダで川崎が勝ち越しする。

 ファウルかどうかは難しいところだけども、CBが躊躇なくあの位置まで出ていって潰すというアクションをリスク低めでできるのは数的優位ならでは。攻撃の切り口がアバウトになる中で久しぶりに見せた数的優位ならではのアクションが得点につながった。

 川崎の2点目で後半頭の展開に戻った感。清水はなかなかソリッドに追うことができず、川崎は安全な手段を残しながらポゼッションからの崩しにトライすることができていた。

 最後の仕上げは大関から山原へのバックドアのパスから。一度は清水にカットされたボールではあるが、最終的にはジャーメインのコントロールミスを拾ってマルシーニョがこの日2つ目のゴールを決める。これで試合は完全に決着だ。

 国立決戦は川崎に軍配。昨年の国立の嫌な思い出を上書きすることに成功した。

あとがき

 本文にも書いたが、コンセプトできっちりと相手を刺すプラン立案は見事。とにかくスピードで振り回すというところとCBからの縦パスの積極的なインターセプトあたりはかなり清水の弱点に刺さっていたように思える。特に前半に盤面上の優位を握れたのは試合前の準備が大きいように思えた。

 その一方で一つのミスで試合を難しくしてしまったのはいただけない。10人でも押し込まれるなんてことはサッカーでは当然ある話だし、川崎はそんなあるあるが当てはまらないといえるほど強いチームでもない。そういう時間でも耐えて次のサイクルを待つ必要がある中で、チームを引っ張ってほしいベテランが進んでああいう軽率なミスを引き起こしてしまうのは残念である。

 町田戦の後は選手層を嘆く声があったけども、今いる選手ができることをきっちりやってから嘆いてほしいというか。ないものを嘆く前に目の前のチームをどう強くするかのアプローチをもっともっとこだわってできなければ上位進出は難しい。勝ってなおそういうことに目を向けざるを得ない雨の国立だった。

試合結果

2026.9.6
J1リーグ
第6節
川崎フロンターレ 3-1 清水エスパルス
MUFGスタジアム
【得点者】
川崎:1′ 持山匡佑, 77′ 90′ マルシーニョ
清水:68′ オ・セフン
主審:飯田淳平

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