■哲学に沿うほど苦しむ
昨季はアトレティコの優勝を占うカードだった一戦だが、今季はCL出場権を争うシックスポインター。メッシがいなくなりシャビが帰還したことも含めて、両チームの立ち位置はかなり1年前とは変わっている。シャビとシメオネとの試合前後の舌戦はなかなかに見ものであった。
アトレティコは4-3-3のフォーメーションを選択。バルセロナと似た形で迎え撃つことを選んだ。試合はバルセロナがボール保持で支配というおなじみの展開である。バルサは保持、アトレティコはブロック守備をそれぞれ哲学とする両チーム。
だが、おなじみであるはずのアトレティコのブロック守備はどうも様子が違っていた感じであった。中央への楔を一発入れる形ではガッツリとそれを咎めることができており流石という感じであるが、サイドの守備の脆さが目立つ。
とりわけ狙い目になったのはアトレティコの左サイド側。大外のトラオレが起点となり、バルサは深くまで進撃することができていた。トラオレは対面するエルモソを歯牙にもかけず、大外からゴリゴリ縦に突破。直前にアトレティコに挙げられた先制点を打ち消すプレーで早速カンプノウの観客にご挨拶をして見せる。
トラオレとエルモソが対面をした時のマッチアップは前者に軍配が上がるというのは明らかだったので、アトレティコとしてはそもそも前を向いてボールを持たせたくなかったところ。しかし、同サイドのSHはジョアン・フェリックス。撤退守備第一の人選ではない。となるとカバーの役割は同サイドのIHのレマルが担当する。
しかし、レマルはフェリックスの代わりにバルサのCBまでプレスをかける役割を兼任している。となるとトラオレにパスが入るタイミングで挟んで前を向かせない役割を常にやり遂げるのは難しい。というわけでバルサは右サイドの優位を恒常的に享受できていた。
ならジョアン・フェリックスの位置を下げればいいか?と言われると難しいところ。ならそもそも他の選手を使いたかったはずである。保持の部分でアトレティコは押し込むことができればチャンスメイクは十分にできていた。先制点の場面のコケの一発の縦パスにスアレスが抜け出し、カラスコがPA内に入っていく形は完全にバルサの守備を上回っていた場面である。アトレティコ、普通に保持は安定していてうまい。
ジョアン・フェリックスも行動範囲が広いアウベスの後方を突くことはできていたし、チャンスを一つ決めていれば評価はガラッと変わっていたはずである。しかし、このサイドの攻防で結果を出したのはトラオレとアウベスのバルサコンビ。右サイドをきっかけに一気に逆転まで持っていく。
エルモソだけでは対抗できないと踏んだシメオネはトラオレにカラスコをぶつける5バックに変形する。だが、5-3-2に変化したアトレティコは完全にはペースを戻せず。トラオレは食い止めたが、アトレティコのWBの前の低い位置に出ていくバルサの選手を捕まえるのに一苦労。IHがサイドに出て行きすぎては中央でフェラン・トーレスが縦パスを受けられる隙ができてしまうが、WBは右はトラオレ、左はかわるがわるローテする選手にピン留めされるせいで動けず。
バルサはこのWB前の位置を積極活用することで、敵陣に攻め込みつつ自分達の弱点である撤退守備の機会を減らしていった。前半終了間際のセットプレーでバルサはさらに加点すると、後半もその勢いのままに4点目を決める。
試合を決めたかと思ったバルサに対して、アトレティコは3枚交代で最後の山場づくりに挑む。4バック変形、やけっぱち気味のハイプレスでバルサから時間を奪いにいく。得点が欲しい状況でジョアン・フェリックスが外されたのは前線からのハードワークを優先した結果だろう。
この試合のバルサはポゼッションはできてはいたが、そもそもバックラインからアトレティコのプレスで時間を奪われる機会はなかった。やけっぱちのプレスを凌げば、この試合は終了なのだけどもそれができなかったバルサ。人を嵌めるプレスに屈して、被カウンターの機会が増える。
スアレスの追撃弾で一気に巻き返しを狙うアトレティコ。後半早々に点を決めてMVP級の活躍を見せたアウベスも展開に飲まれて一発退場の蛮行に及んでしまう。
これで勢い付いたアトレティコ!かと思いきや、保持の時間が増えることで徐々に攻めあぐねるように。バルセロナは無理に繋ごうとするよりもボールを捨てたほうが安全という展開に。思えば、前半はアトレティコが撤退ブロック構築で苦しみ、後半はバルセロナが保持で苦しむというチームの哲学に根ざしているところでつまづいてしまっている感。サッカー、難しい。
それでもバルサの勝利は妥当だろう。アトレティコは開始直後からハイプレスを繰り出していればいいのに!という意見も結構見かけたが、個人的には90分持ちっこないから、こういう形でピンポイントで活性化させる使い方でしか持ち出せないんだろうなと感じた。
試合結果
2022.2.6
ラ・リーガ 第23節
バルセロナ 4-2 アトレティコ・マドリー
カンプ・ノウ
【得点者】
BAR:55′ エドゥアール
ATL:8′ カラスコ, 58′ スアレス
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ