■一本槍を後押しする声援を打ち消したシック
テクニシャンとハイタワーの融合というのがチェコの伝統的なイメージだったのだが、この試合のチェコは少し様子は違った。何はともあれフィジカルをゴリ押し。スコットランドを向こうに回してゴリゴリに削りあう展開に。『マッチョ』という言葉がやたらTLに飛び交う試合になった。
チェコが丁寧にやる時はCHのソーチェクとクラールで縦関係を築き、CBの手助け役としてクラールが低い位置を取る。だが、そういった場面は限定的。縦に早いボールでシックやソーチェクに当てて大きく前進しながら、押し上げていくようなパワーに頼った場面が目立つ。
確かにチェコのCFのシックはパワーもスピードもあるのでそういうやり方もいいとは思う。実際に先制点は彼の競り合いでの力強さを前面に押し出した場面ではあった。ただ、彼のキレイなポストプレーの落としみたいなのはもう少し活かしてもいいのではないかなと。押し上げる局面を制御しつつもっとゆっくりと丁寧に進めながら試合を支配してもよかったのかなと。特に、スコットランドが相手ならばなおさら。
footballistaの名鑑では散々な下馬評だったスコットランド。特に押し下げられた後の前進の手段と決定力についてメタメタに書かれていた。ただ、前進の方はチェコがプレスを緩めた時は全くダメというわけではなかった。2トップはサイドに流れながらボールを引き出していたし、トップがサイドに流れていた時はIHがエリア内に突撃するというパターンは一応あった。チームの得点源はマッギンということからも何となくこういう形で得点しているのだなという部分は透けて見える。
トップが左サイドに流れたところに後方からフィードを打ち込み、フォローに入ったロバートソンがクロスを上げるというのがスコットランドの攻めの主体。この日は見ることができなかったティアニーとロバートソンの併用は、恐らく後方からティアニーが縦に蹴りまくる形で成立しているのだろう。マクトミネイも代表では後半のようなバックライン起用が多いとのこと。スコットランドは後方に砲台が必要なイメージなのだろうか。
ロバートソンという一本鎗、そして決定力に欠けるストライカーという苦しい展開ではあった。だが、ホームのハンプデン・パークの観衆がスコットランドの背中を押す。後半の立ち上がりは声援を背に、この日最もゴールに近づいた時間帯といっても良かった。
だが、それを打ち砕いたのは再びシック。会場の雰囲気を一刀両断するかのような冷静なロングシュートでハーフラインからゴールマウスを強襲。EURO史に残るであろう長い距離の得点でスコットランドを黙らせてしまう。その後も奮闘を続けていたスコットランドだが、最後までゴールをこじ開けることはできず。もう1つの決定力不足が大きくのしかかる無得点での敗戦となった。
試合結果
スコットランド 0-2 チェコ
ハンプデン・パーク
【得点者】
CZE:42′ 52′ シック
主審:ダニエル・シーベルト