あべこべの後半にツケを払う
立ち上がりは明らかにスパーズペースだったと言えるだろう。能動的な日のトッテナムはプレッシングも勢いに乗ることができているが、この日はまさにそれ。高い位置から相手を捕まえることができていたし、そこからスムーズに敵陣に進むことができていた。
特にこの日のウルブスで気になったのはDF-MF間のスペースのケアの甘さである。ソン、ケイン、クルゼフスキの3人は狭いスペースで悠々とパスを繋ぐことができていたし、そうなれば大外のボロもオーバーラップのタイミングを掴むことができる。守備から攻撃までひと繋ぎでいい循環を回すことができていた。この日のトッテナムのイレブンは並びを見るとやや攻撃により過ぎている?という印象だったのだが、そうしたバランスをつかれることはなし。試合は完全にトッテナムペースに流れている。
だが、トッテナムはなかなか決定機を掴むことができない。特にシュートタッチの悪さが際立ったのはソン。今季はなかなかシュートが決まらないが、この日は特に頭を抱えたくなるほどひどかった。と言ってもベンチに待ち構えているのはこちらもゴール欠乏症のリシャルリソンなので難しいところだけども。
それで言えばウルブスの前半も頭を抱えたくなる出来だった。いつもであれば多少のプレッシングはレミナorネベスのサリーで解決していたのだけども、そうした手段をとっても一向に保持は安定しない。守備では先に述べたように人がいるのに守れていない状況であり、トッテナムのシュート精度に助けられる格好になった。さらにはコスタも負傷するなど、悪い流れを体現するような連鎖がピッチでは起こっていた。
迎えた後半、トッテナムは2枚の交代とシステム変更を行う。レミナ→コリンズの交代でシステム変更はすぐに読み取ることができた。だが、方向性としては後方を増やす形。かつ、トッテナムのフォーメーションに噛み合わせる形である。この日のウルブスは後方の人がいないことが守備の問題になっていたわけではなかったし、プレス回避の観点からも噛み合わせが良くなる形はトッテナムのプレスに対してあまり相性が良いものではないように思えた。
それだけにこれでトッテナムがプレスをやめてしまったという展開には驚いた。撤退守備優先のプランかと思ったウルブスは後半押し込み始めるという流れに。降りていくサラビアを逃がしてしまうトッテナムには前半のプレスの積極性は見る影もなかった。
右サイドのトラオレは前半に覆い隠されていたトッテナムの攻撃に偏った布陣の歪さを徐々に露わにしていったし、後半途中で投入されたクーニャはウルブス側のプレス隊として機能。徐々に試合はトッテナムペースだった前半とあべこべの展開になっていったと言えるだろう。
そして決定機を活かしたのは流れに乗ったウルブス。左右から上がったクロスを処理しきれず、最後に仕留めたのはトラオレ。前半からは考えられない展開の一変。ソンをはじめとするアタッカー陣が外し続けたツケを驚きの形で払う結果となった。
ひとこと
仮に自分のファンのチームの試合だとしたら目を覆いたくなる結果だ。不甲斐ないアタッカー陣と勇気のないバックライン両方に情けなさを覚えるだろう。大きな不安を覚えた状態でトッテナムはCLに臨むことになった。
試合結果
2023.3.4
プレミアリーグ 第26節
ウォルバーハンプトン 1-0 トッテナム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:82‘ トラオレ
主審:ティム・ロビンソン