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「普通への回帰、普通への自信」~2023.4.11 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter-final 1st leg マンチェスター・シティ×バイエルン マッチレビュー~

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隙を見せたらたたみかけられるのが今年のシティ

 バイエルンの新監督はトーマス・トゥヘル。シティがビックイヤーに最も近づいたあの夜に、彼らの前に立ちはだかった男である。ナーゲルスマンと激突すると思っていたシティは思いもよらない形で因縁の相手と激突することとなった。

 流浪のマッドサイエンティストであるトゥヘルに課せられた今回の使命をリーグ戦から読み解くと、ナーゲルスマンによって尖りすぎてしまったバイエルンを普通に戻してほしい。だって、普通でも俺たちは強いんだもの!というニュアンスである。これがバイエルンの首脳陣のオーダーなのか、それともせんしゅなのか、はたまたトゥヘルがそう考えたかはわからない。

 よって、試合のテイストはかなりオーソドックスな展開だった。どちらのチームも非保持は4-4-2でブロックを組み、ライン間を非常にコンパクトに保つ。バックラインには強引にプレッシャーをかけすぎずに、ある程度のボール保持は許すというスタンス。

 シティもバイエルンも普段であればボールを持つ側のチームであるが、この試合においてはボール保持にはそこまでこだわらない様子。それよりも中央にスペースを与えず、いい形で加速することを許さないことを優先しているように見えた。

 したがって、序盤のチャンスはショートカウンターに集約された感がある。ショートパスからインサイドにボールを付けることは両チームによって避けられていた。おそらく、降りしきる雨の影響も考えてのことのように思える。

 保持側がきっかけを見出すのはサイドから。バイエルンはより個人の打開力を優先したアプローチ。高い位置を取るデイビスがいる左サイドをメインにサネやコマンといった突破力のある選手たちをシティにぶつけて見せた。しかしながら、気づいてみればシティのバックラインにはCBが4枚ズラリ。単騎で簡単に破れるバックラインではなくなってしまっている。バイエルンはサイドから剥がしてシュートにたどり着くのに苦戦していた。

 シティも立ち上がりは外の抜け出しを優先していた様子だった。サイドの縦関係の変化やシティのCBとWGの間に流れるデ・ブライネなどお馴染みのアプローチからバイエルンの守備をかき回していく。また、バイエルンも右に流れるデ・ブライネに相手にキミッヒがショートカウンターのきっかけとなるボール奪取を決めるなど、シティの移動にもよく食らいついているのが印象的だった。

 デ・ブライネが流れる前の時点での右サイドはベルナルドが孤立気味だったが、孤立しているならしているで時間を作れるのがこの男の凄みである。最低限正対しながら味方が上がる時間を作ることは出来ていたし、2人相手でも突破までこなしてしまうこともあった。組織の強さとは別枠でこの日のベルナルドは存在していた感があった。

 バイエルンの守備はコンパクトではあったが、時折シティはインサイドへのパス交換から逆サイドへの展開を決めて攻撃を加速することが出来ていた。ドリブラー頼みのバイエルンよりは中央に入り込むことが出来ていた格好だ。

 そうした中で先制点を得たのはシティ。ブロック攻略ではなく、外から打ち砕くロドリのミドルで先手を奪う。シュートブロックの外を巻く形の見事な軌道でのフィニッシュであった。シティの方がほんのり優勢ながら全体としてはジリジリしていた序盤戦にカタを付けたロドリにより、シティはアドバンテージを得ることとなった。

 バイエルンはクロスを上げるまでは行く機会はあるけども、インサイドにはシティのCB陣がズラリ。高さがないバイエルンにとっては苦しい状況に。サネのミドルもパンチはあるが、シュートブロックに阻まれてしまい、結局前半はシュート自体がなかなか飛ばないままハーフタイムを迎えてしまう。

 今のシティ、とりわけハーランドが出ている時のシティは保持における絶対感はそこまでない。しかしながら、その分相手が背中を見せたセクションがあれば、そこを徹底的に叩きのめすことができる破壊力がある。後半、シティが狙いを定めたのはバイエルンのバックラインのバタバタ感である。

 ウパメカノのパスミスがきっかけで立ち上がりにだいぶバタバタした様子を見せたバイエルン。それをきっかけにシティは前半にはなかったようなバックラインへの圧力を高めていくように。バイエルンはシティがプレスにきた分、ライン間をつなぎながら脱出しようとするが、シティのプレッシングの圧力を上回ることが出来ずに押し込まれてしまう。

 そして、シティは追加点をゲット。バイエルンはバックラインのミスの連鎖が止まらずに2失点目、3失点目と次々と失点を重ねてしまう。

 シティにはさらなるゴールチャンスがあったが、ここはゾマーの奮闘によって追加点を回避。3失点というのはバイエルンの後半の崩され方からすれば「まだ持った方」という印象ですらある。

 試合はシティが3ゴールというアドバンテージで先勝。追い込まれたバイエルンはミュンヘンで奇跡を起こす必要がある。

ひとこと

 普通に戻りつつあるバイエルンを普通のスタイルでぶった切ったシティはなかなかにインパクトがある。グアルディオラのCLといえば奇策というイメージがあるが、今のシティにはそれが必要ないくらい真っ向勝負ができるということだろう。

試合結果

2023.4.11
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
マンチェスター・シティ3-0 バイエルン
シティ・オブ・マンチェスター・スタジアム
【得点者】
Man City:27‘ ロドリ, 70’ ベルナルド, 76′ ハーランド
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ

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