チェルシー、23-24シーズンの歩み。
第1節 リバプール戦(H)
先行されたチェルシーが奮闘するも「お決まりの結末」
ネームバリューの観点で単純に開幕カードの中では最も注目度が高い一戦になるのだろうが、すでにピッチ外で実質開幕戦をしているという点でもなかなか面白い巡り合わせのカードとなった。
立ち上がりにペースを握ったのはリバプールの方だろう。攻撃的な選手を並べた中盤を軸にチェルシーのマンツーマンの守備を外しながら前進。右サイドのサラーを出口に攻撃を仕掛けていく。
イメージとしては右サイドがゲームメイク担当という感じ。ショボスライ、マック=アリスター、アレクサンダー=アーノルドの3枚が中盤に降りながら前線にパスを供給。左サイドは逆にガクポやディアスが速い攻撃を仕掛けていく。ロバートソンが上がる時間がもらえずに少し寂しそうではあったが、左右のスタイルの違いから攻めていこうということだろう。
チェルシーの守備は部分的にマンツーをしつつ、後方は人を余らせて待機させるブロック守備重視の仕様。リバプールの攻撃がゆったりすると前線のスターリングとジャクソンはリトリートで自陣のPA付近まで戻ることもしばしば。
ダラダラしていると平気で守備にリソース投入してくるチェルシーを見て、リバプールは手早く裏にボールを繋ぐようになる。長いボールを蹴ることができるアレクサンダー=アーノルドと相手を背負う状態で受けてもターンや無理な体勢からのパスで前線で繋ぐ圧巻のマック=アリスターを軸に攻撃を仕掛けていく。
先制点の起点となったのもマック=アリスター。右サイド奥のサラーに展開をすると、ファーサイドに走り込んだディアスをピンポイントで狙ってゴールをアシスト。終始バタバタした試合の中で唯一仙人のように落ち着いていたサラーの巧みさが詰まったゴールだった。
チェルシーの保持は中央を固めるリバプールに対して外循環のスタート。一見逃げのように見えるプランだが、この試合のリバプールの中盤より前の守備基準はガタガタ。WBにボールが入るとそれだけであっさりと最終ラインが晒される。WBにボールを入れてSBを引き出すと、その背後に前線の選手が入り込むだけで簡単にゴール前に進むことができた。
SBが裏を取られることがわかっていればCBが早い段階でスライドすればいい!となりそうだが、リバプールは3センターがコンパクトに守れない人選になっているため、ライン間の縦パスにも警戒する必要がある。縦パスに積極的にファン・ダイクが出ていく関係で、今季のコナテはアレクサンダー=アーノルドと逆側のサイドの背後もカバーしなくてはいけないという昨季よりも大変そうな状況になっていた。
こうした状況であればラインダウンするエンソは簡単にゲームメイクができる。リバプールは遅れてリアクションをする守備をしているので、スペースを逃さないエンソにとってはうってつけ。アンカー的に振る舞うギャラガーもゲームメイクで貢献できた。
アタッキングサードにおいてはDFとGKの間に右サイドからひたすらクロスを入れる動きを継続。そのご褒美が37分のディザジのゴールに繋がる。
後半もペースを握ったのはリバプール。ハーフタイムを経てもなお、外と中を自由に行き来するチェルシーの攻撃に対抗策が見つからず前進を許し続ける。内外問わずオフザボールの動きを繰り返すスターリングの実直性が光る流れとなった。
チェルシーは右サイドのジェームズがオーバーラップができなくなってからややサイドアタックの精度が低下。リバプールの守備の対応は少しずつ間に合うようになる。
リバプールはヌニェスなど前線の選手を入れ替えることでエネルギーを注入。プレスは前に出ていくようになったが、外され続けていたのであまり効果はなかったが、前進の馬力が出たこと自体は良かった。だが、最も可能性を感じるサラーをあっさりと諦めたのは意見が分かれるところだろう。
ホームチームは同点ゴール以降は試合の主導権を握ったが、勝ち越しゴールを奪うことはできず。スコアレスではなかったが、またしてもこのカードは引き分け。これでチェルシーとリバプールの対戦はPK決着となったカップ戦も含めて7試合連続で引き分けが続くこととなった。
ひとこと
試合後もピッチ外で引き続き戦っていて面白いです。
試合結果
2023.8.13
プレミアリーグ 第1節
チェルシー 1-1 リバプール
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:37′ ディザジ
LIV:18′ ディアス
主審:アンソニー・テイラー
第2節 ウェストハム戦(A)
新戦力に明暗、老獪なウェストハムがチェルシーの勝ちゲームをひっくり返す
ともに開幕節は引き分けスタート。初勝利をかけてのロンドンダービーとなる。
立ち上がりに存在感を見せたのは新加入のウォード=プラウズ。右サイドからのCKが続くと2回目でスコアに繋げることに成功。ファーのアゲルトめがけて綺麗に向かっていく放物線は非常に美しかった。
この場面のようにウェストハムは押し込むとセットプレーを含めてチャンスになる。しかしながら先制点以降はなかなか押し返すことができず、チェルシーが主導権を握るように。
最もわかりやすいアドバンテージは前線のスピード。昨季よりはるかに若返ったようにキレのあるドリブルで相手を何枚も置き去りにするスターリングと相手を吹っ飛ばすパワーと置いていくスピードを兼ね備えたジャクソンの2人がハマーズのバックラインを蹂躙。
やや、裏へのボールが一辺倒な感じがしたチェルシーだが、これだけわかっていても止められないのであれば十分だろう。特に左サイドは裏抜けで押し下げた後も崩しが機能。大外からエンドラインを舐めるような侵入からマイナスのパスでフィニッシュを狙う。ウェストハムはかなり重心を崩されてはいたが、なんとかこの折り返しを根性で守るあたりはさすがであった。
マイナスパスをなんとか跳ね返し続けるウェストハムに対してチェルシーの解決策となったのはチュクエメカ。裏ではなくカットインへの横の動きでソーチェクを置き去りにすると、カバーの選手が来る前にミドルシュートを射抜き追いつく。
これ以降も裏への圧力でウェストハムを自陣に押し込み続けるチェルシー。左は連携、右はスターリングというサイド攻撃を奥行きを使えるエンソを軸にゲームを組み立てる。
前半終了時にタイスコアだったのはウェストハムにとって幸運。スターリングが得たPKをエンソが無駄にしたことも含め、ギリギリで失点を回避する。なんとか前半に勝ち越しゴールを取り切りたいチェルシー。だが、追加タイムにはチュクエメカが負傷するなど、決して何もかもがうまくいった45分ではなかった。
後半も引き続きチェルシーはスピードでウェストハムに圧力をかけていく。しかしながら、少し急ぎすぎる嫌いがあり、雑なパスを引っ掛ける場面も目立つ。
そうなってくると今度はウェストハムに局面をひっくり返す局面がやって来る。ディザジのところから溢れたボールを拾ったウォード=プラウズは即座に裏のアントニオに。まさに強振ジャストミートというシュートでゴールを射抜き、ウェストハムがカウンターからチャンスをものにする。
このまま逃げ切りたいウェストハムだが、アゲルトがボールを奪いにいくタックルが届かず2回目の警告を受けて退場。後半の残り時間を10人で過ごすことになる。
結果的には数的不均衡がチェルシーにとっていい方向に働かなかった。ブロック守備を敷くことで見解一致のウェストハムに対して、スペースと体力が削られたジャクソンやスターリングは存在感を失うことに。定点攻撃から1枚剥がすことを求められたムドリクとマドゥエケはクオリティが伴わずチェルシーは停滞することに。個人的には追い越す動きができるチルウェルがいればウェストハムの守備にギャップを作れたと思うが、ポチェッティーノは早々に彼を下げてしまった。
アントニオが下がった後もパケタやボーウェンが体を張りながら陣地回復に貢献。チェルシー側にボールを追いやることで相手に負荷をかけていく。
時間がなく焦るチェルシー。後半追加タイムに追い込まれた状況で最後にババを引いたのはカイセド。PA内でのタックルが遅れてPKを献上する。こういう時に彼がババを引くのは仕方がない。プレミアリーグはそういう脚本になっていることがあまりにも多い。このPKをパケタが沈めて試合は完全に決着する。
前後半でそれぞれPKに泣いたチェルシー。開幕戦に続き今節も勝ち点3を得ることができなかった。
ひとこと
前半は明らかにチェルシーの勝ちゲーム。それだけに後半の老獪さに飲み込まれてしまったのが切ない。単純にチェルシーが強くなればなるほど、押し込む相手を崩すという後半のような局面は増えていくので、今日よりもはるかに整理されたものを用意できるかどうか。ポチェッティーノの手腕が問われることになる。
試合結果
2023.8.20
プレミアリーグ 第2節
ウェストハム 3-1 チェルシー
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:7′ アゲルト, 53′ アントニオ, 90+5′(PK) パケタ
CHE:28′ チュクエメカ
主審:ジョン・ブルックス
第3節 ルートン・タウン戦(H)
見えてきた新生チェルシーの枠組み
開幕2試合でここまで勝利がないチェルシー。3戦目はホームにルートンを迎えて、今節初勝利を狙っていく。
ルートンの5-3-2に対して、バックラインから繋ぎながらボールを持つチェルシー。ルートンはWBはCBと同じ高さをキープしつつ、IHが2トップのサポートに出ていく形。降りていく選手には厳しくついていくが、バックラインには多少余裕を持たせるスタートとなる。
チェルシーの攻め手となっていたのは右サイド。好調のスターリングが右に開く形からカットインで5バックに真っ向勝負を挑んでいく。インサイドに入っていくタイミングで大外からオーバーラップを被せてくるグストが浮くパターンもちらほら見受けられた。
もう一つの攻め筋はトップのジャクソンのサイドに流れる裏抜けとライン間での反転。これに合わせるように中央高い位置に入っていくエンソがバイタルからゴールを狙うという構図もチェルシーの狙いの一つだったと言えるだろう。2トップの片方と他の選手の組み合わせからチェルシーは攻撃を構築していく。終盤は息切れした前節と比べて2トップの馬力頼み感は減っており、持続可能な活かし方ができているように思える。
先制点を決めたのは外側から攻め込むスターリング。右の大外から1枚を剥がし、2枚を引き寄せつつ左足で狙ったシュートでルートンの守備を個人ベースで切り裂くことに成功する。
ルートンからするとアデバヨとモリスの2トップにロングボールが入らずに苦戦が続く。チェルシーのバックラインは強固。一度はモリスが抜け出しかけるが、これはコルウィルが外に追い出す形で見事に潰し切った。中盤ではタヒス・チョンがなんとかボールを持って押し上げにいくが、なかなかシュートまでつながらない。
2トップを軸に押し下げる形を持っているチェルシーは優勢とキープ。先制点を持っていることもあり、ビルドアップ隊は安定感を重視。ポゼッションから押し下げることを優先し、ルートンの反撃の芽を摘む。この辺りはカイセドがもたらす安心感が別格であった。
30分を過ぎると少しずつルートンがボールを持てるように。5-3-1+右の大外スターリングみたいなブロックを組むチェルシーに対して、やや手薄となるチェルシーの左サイド側からカボレを軸に前進を狙うルートン。だが、CKからニアを狙ったセットプレー以外はチャンスらしいチャンスはなし。チェルシーはリードをキープしてハーフタイムを迎える。
後半もチェルシーは落ち着いたポゼッション。流れに逆らわずに2トップを軸とした攻撃を前半に引き続き行なっていく。前半の終盤に攻め手になっていたルートンの右サイドのところをボールの刈りどころにしていたのも印象的。このサイドをひっくり返してチャンスに繋げていた。
ルートンは60分過ぎからオープンな展開に乗ってWBが攻撃に参加できるように。ジャイルズやカボレが高い位置に顔を出していく。
そうなると、今後はチェルシーの2トップがカウンターからスピードを生かした攻撃を行うように。オープンな土俵でもルートンに力の差を見せつけていく。
すると、右サイドの崩しからチェルシーは追加点。絞るスターリングが空けたスペースに顔を出したグストから折り返しを決めたのはスターリング。勝利を大幅に引き寄せる2点目を手にする。
3点目はスターリングが右を抜け出したところから。クロスをジャクソンに届けて2ゴール、1アシストの大暴れである。後半のゴールのように、チェルシーが前線で抜け出す動きを怠らないのはカイセドやエンソといった抜け出しを見逃さないパサーがいることも大きい。
充実の3ゴールでようやく初勝利を飾ったチェルシー。ポチェッティーノも安堵の笑顔で就任初勝利を祝った。
ひとこと
ポチェッティーノ・チェルシーの枠組みが見えてきた感がある。2トップに連携を紐づけた攻撃、中盤のタレントを軸とした安定したポゼッション、そして強力なストッパーを揃えた3バック。前節のように追いかける展開への適応力は怪しい部分はあるが、攻守両面で土台が手堅い感じがするので、大崩れはないかもしれない。
試合結果
2023.8.25
プレミアリーグ 第3節
チェルシー 3-0 ルートン・タウン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:17′ 68′ スターリング, 75′ ジャクソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
第4節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)
後半頭のプレスの意識が先制点につながる
前節、ルートン相手にようやく今季初勝利を手にしたチェルシー。ホームでフォレストを叩き、きっちりと連勝を狙いたいところ。
ボールを長い時間持つことができたのはチェルシー。推進力を持ちながら縦に速い攻撃で敵陣を素早く攻略しにいく。しかしながら、やや単騎での強引の解決を試みるスタンスが目立つところ。スターリングやジャクソンといった前線のメンバーが好調というのもあるのだろう。ボールホルダーの球離れが悪く、なかなか相手を外すことができず。テンポが上がってこない。
横断しながらWBを活用することができれば、スマートに前進ができそうな感じがあるのだが、そうしたシーンは稀。やや個人個人の力技に縋ってしまった感があったと言えるだろう。セットプレーからのチャンスもあったが、これも活かすことはできなかった。
一方のフォレストは自陣からジリジリファウルを奪いながらセットプレーからチャンスを狙っていくという地道な形で反撃を狙っていく。ボックス内でアウォニイには肉弾戦の末にシュートを打つチャンスが何回かあった。
流れの中ではカウンターでスピードに乗った状態を迎えることができればいいのだが、チェルシーの固い守備陣を前にフォレストはなかなかそうした場面を作ることができず。その一方でフォレストの守備陣もカウンター時にはチェルシーのホルダーを素早く捕まえてきっちり対応。相手にもスムーズなカウンターを許さず、多少遅れてもボックス内での厳しいチェックで帳消し。チェルシーにクリーンなチャンスを与えなかった。
後半、フォレストはプレスで前半よりも積極的にホルダーを捕まえにいく。リトリートとの使い分けが適切でチェルシーは出てくるプレスの裏をかくことができなかった。
そして、ミドルゾーンでのプレスの意識が先制点をもたらすことに。ギャラガーとカイセドのところにミスを引き起こし、アウォニイとエランガでカウンターを完結。後半頭のギアチェンジの成果が早々に出ることに。
エンソ絡みのジャクソンとチルウェルの抜け出しくらいしかスピードアップのきっかけを掴むことができないチェルシー。その抜け出しに対してもフォレストはワローを中心にボックス内の粘り強い跳ね返しで対応し続ける。
チェルシーはパーマーを投入してリズムを変えていきたいところ。彼が投入された右サイドのハーフスペース付近はショートパスが増え、パスワークのリズムがよくはなったもののチャンスの増加になかなか繋がらない。その後も若い選手を中心に積極的に交代カードを切っていくが、選手を入れれば入れるほどごちゃついていくような出たところ勝負感が否めないようになる。
それでも83分にはスターリングが決定機を創出するが、ジャクソンがシュートを枠内に飛ばすことができず。結局最後まで得点を奪うことができなかったチェルシー。フォレストにスタンフォード・ブリッジで金星献上を許してしまった。
ひとこと
これだけスカッドを入れ替えれば交代のたびにごちゃつくのは序盤戦は仕方ないだろうなという印象のチェルシー。フォレストはカウンター以上にボックス内の粘り強い守備に好感が持てた。
試合結果
2023.9.2
プレミアリーグ 第4節
チェルシー 0-1 ノッティンガム・フォレスト
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
NFO:48′ エランガ
主審:ティム・ロビンソン
第5節 ボーンマス戦(A)
直線的な攻撃と間延びの連続で今季初のスコアレスドロー
豪華な補強、悪くない内容ながらもここまで4戦未勝利と苦戦が続くボーンマス。今節の相手はこちらもいまだにルートン相手の1勝だけと苦しんでいるチェルシーである。
立ち上がりから慌ただしい展開となった。どちらのチームもホルダーのプレスには積極的な上にアタッカーの切れ味は良さそうな感じ。開始早々に左サイドからムドリクのカットインでチェルシーが決定機を迎えて試合は幕を開ける。
どちらかといえば前半にチャンスが多かったのはチェルシーの方だろう。左サイドはSBのコルウィルが高い位置をとりながらエンソとムドリクを押し上げつつサポート。たまに自身がエリア内に入り込む高さをとることもあり、攻撃の手助けをしていた。
右サイドはその分トップ下的なギャラガーが流れてサポート。スターリングとグストは右の大外からの抉るようなカットインでマイナスのクロスからチャンスメイクをしていた。
チェルシーは基本的にはWGを軸に悪くない攻撃はできていたが、やや気になったのはアタッカーに入った時に直線的な動きが目立つこと。なまじ切れ味が良い分、特攻してのプレーが多く、強引さが先立ってのロストが目立った。安易なボールロストがボーンマスのカウンターの温床となることを考えても、緩急をつけるようなプレー選択が欲しかったところ。
もっとも、それを阻害したのはボーンマスの功績と言えるだろう。基本的には中盤は噛み合わせる形の守備をしたボーンマスだが、クリスティとビリングは時折バックラインまで追ってプレスのスイッチを入れつつ、中盤のマーカーを受け渡しながら厳しくチェック。緩急を入れられそうなエンソやアンカー的に振る舞ったウゴチュクが自由にボールを持てなかったのは、受け渡しと激しいマークを両立した彼らの守備があってこそだろう。
ボーンマスの攻撃は立ち上がりは左サイドのワッタラが好調。ドリブルで相手サイドを切り裂きながらゴールに迫る。セットプレーからの決定機を決めていれば100点の立ち上がりだったが、これはサンチェスの冷静な対応にいなされてしまう。
ボーンマスもチェルシーと同じく両WGから攻め手は見つけられそうな予感は漂う前半だった。だが、試合が進むにつれて強引な仕掛けが両チームに目立つようになり、後方からのパスは確実性の低い一気に進めるオープンスペースへのものが増えていく。
そうした流れによって、徐々に試合自体が間延びした展開に。両軍のチャンスの可能性が停滞したまま前半はスコアレスでハーフタイムを迎える。
後半の立ち上がり、いきなりチャンスを迎えたのはチェルシー。セットプレーからの決定機だがスターリングのFKの跳ね返りを押し込んだコルウィルはオフサイドを取られてしまう。
基本的には前半の流れの延長上だった後半。アバウトさが先立つ中でチェルシーは決定機の勢いそのまま主導権を握る。左サイドを軸にコルウィルの攻撃参加は後半も有用だった。
だが、時間の経過とともにペースはボーンマスの手中に。チェルシー優勢の流れが変わった要因はボーンマスのバックラインのパフォーマンスの高さだろう。ボックス内の粘りはもちろん、徐々にラインを上げてチェルシーのアタッカーを高い位置から迎撃するように。特にムドリクを完全にゲームから締め出したアーロンズは出色の出来だった。
徐々にバックラインのトランジッションからチャンスを作るボーンマス。前線の交代によるリフレッシュからポジトラの威力はさらに高まっていった印象。チェルシーのボックス内の守備の集中力の怪しさもボーンマスの得点の可能性に拍車をかけていたが、サンチェスの冷静さでなんとか失点を防ぐ。
ボックス内の守備以上にチェルシーが難しかったのは攻撃面。交代選手が入るたびに個人のデュエルの集合体のようになってしまう保持時の連携は大幅にスカッドを入れ替えた弊害と言えるだろう。代表ウィーク前でも見られた課題はそのまま今後も引き継がれることになる。
結局後半の追加タイムは間延びしつつもチャンスができない前半と同じ形での終幕。5節目にしてプレミアでは今季初のスコアレスドローとなった。
ひとこと
チェルシーはカイセドの不在とエンソが南米帰りだったというエクスキューズはあるが、終盤の前線のマネジメントが早急な解決策が欲しいところ。合わせる基準が誰なのかを整理しつつ、連携の構築を急ぎたい。
試合結果
2023.9.17
プレミアリーグ 第5節
ボーンマス 0-0 チェルシー
ヴァイタリティ・スタジアム
主審:デビッド・クート
第6節 アストンビラ戦(H)
息をつけないチェルシーをビラがしたたかに下す
今季ここまではわずかに1勝。ルートンにしか勝っていないチェルシーへの風当たりは早くも強くなっている感じがする。
そんな状態を振り払うかのようにチェルシーはエンソとジャクソンを主体とした高い位置からのプレスを敢行する。しかしながら、アストンビラはこれを落ち着いていなす。特にGKのマルティネスを活用しての数的優位の確保は効いており、チェルシーの高い位置からのプレッシングを無効化できていた。
左右にボールを前進のスキームがあったのもビラにとっては優位に立った理由の一つ。左サイドのハーフスペース付近でグストを背負ったザニオーロが絶好調。ボールを収めて反転して前を向く形でチャンスメイクをしていく。
逆サイドではカマラがマッギンの列落ちに対してムドリクやギャラガーが後手に回った対応をするシーンが目立った。前からのプレスに意欲的なのはいいのだが、とにかくどこの向きに誘導しているかがわからないので、後方からのサポート役もプレスに打って出れずに守備網が間延び。結局、望まない形でプレスラインの撤退を強いられることに。
チェルシーは右サイドを軸にWGの抜け出しからチャンスを作っていく。猪突猛進のスターリングのスピードからサイドを押し下げていく。チェルシーの攻撃を見て少し感じたのは、トップの抜け出しからシュートまで力み続けているような場面が続いていること。決定機の割に決められないというxG的な話は出ていたが、シュート前に息が入る間がないので、シュートが力んでしまっている可能性もあるかもしれない。
均衡で迎えた後半、チェルシーはチャンスメイクで依存していた前線のスピードをさらに生かすかのように、縦に速いテンポでの攻撃を行っていく。ビラもこれに応戦しつつ、チェルシーが少し流れを引き戻してきたなという後半の立ち上がりだった。
だが、テンポアップに先に音を上げたのもチェルシー。グストの一発退場で10人になってしまうと、自陣撤退第一の流れに引き込んでいく。だが、そんなチェルシーをあざ笑うかのようにアストンビラが先制。行けると思ったチェルシーのセットプレー攻勢をディアビのカウンターからひっくり返して最後はワトキンス。数的優位に加えてついにリードを奪い取る。
チェルシーは終盤に復帰戦となるブロヤが投入される。セットプレーから決定機もあった展開だったが、最後までゴールは奪えず。チェルシーはアストンビラに逃げ切りを許して今季は早くも3敗目。9月上旬から続く無得点記録もストップできず、9月は3試合のリーグ戦でノーゴールという形に終わってしまった。
ひとこと
やはり、シュート前の一息をつけるかどうかはチェルシーにとって大事な気がする。ジャクソン不在で縦に急げないフラム戦でもう少し緩急をつけた攻め筋が見つかればいいのだが。
試合結果
2023.9.24
プレミアリーグ 第6節
チェルシー 0-1 アストンビラ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
AVL:73′ ワトキンス
主審:ジャレット・ジレット
第7節 フラム戦(A)
初ゴールが起爆剤になるか
近年は格差が目立っていたウェストロンドンダービーだが、昨年はまさかのフラムが上位でのフィニッシュ。そして、今季のこの対戦も再びフラムの方が上位で迎えた一戦となる。
立ちあがりにチャンスを迎えたのはチェルシー。出場停止のジャクソンに代わって先発だったブロヤにいきなり決定機が訪れるが、シュートが枠をとらえられず、早々のチャンスを逃す。
チェルシーの保持に対してフラムはプレスを強めていく。チェルシーは手数をかけるポゼッションよりも縦に速い選択に注力。フラムはチェルシーと異なり、右サイドに展開しつつクロスを上げるポゼッション重視のスタイルをとっていたので、チェルシーはトランジッションからも速攻を重視。ムドリクを軸に左サイドから裏を取る形で反撃に出る。
そうした中で先制点を奪ったのはチェルシーだった。左サイドで高い位置を取ったのはムドリクではなくコルウィル。カイセドの促すようなパスからオーバーラップをすると、エリア内のムドリクにラストパス。これを仕留めたムドリクはうれしい加入後初ゴールを記録する。
前節のチェルシーの試合の戦評で抜け出すところに力を使いすぎている感がある!と述べたが、カイセドのパスに促されたコルウィルを挟むことで、ムドリクはフィニッシュより手前に使う力をセーブできていた。やはりカイセドがいれば、手前の部分の余裕は持たせられるようになるのかなという感じである。
先制したチェルシーはそのまま追加点をゲット。怠慢なフラムの保持をパルマーが咎めて、ブロヤが2点目を決める。フラムがシュートすらたどり着けないうちにチェルシーは2点のリードを手にする。
フラムはその後もポゼッションから反撃を狙う。片側に寄せつつ、パリーニャで逆サイドへの展開という形は悪くなかったように思う。だが、この日は左サイドからのカウンターのキレが抜群だったチェルシー。フラム以上の得点のにおいがするカウンターで、常にのど元にナイフを突きつけていた。
後半、フラムはハイプレスからテンポを取り戻していく。チェルシーもプレスの手は緩めず、試合は同サイドにポゼッションをいかに閉じ込めるかバトルを軸に進んでいく。トップの誘導からカイセドの回収までスムーズに描けていたチェルシーの方がこの点ではやや優勢だったといえるだろう。
フラムはイウォビを投入し、ウィリアンと共に低い位置から運ばせる選手を作ってポゼッションの安定化を図る。安定という意味ではそれなりに効果があった交代かもしれないが、決め手としてチェルシーのブロックを崩す方策をフラムは最後まで見つけられなかった印象だ。
昨年、上回られたローカルライバルを制圧したチェルシー。ムドリクとブロヤの初ゴールを起爆剤としてここから上がっていきたいところだが。
ひとこと
ムドリク、よかったねという気持ちと本来の活躍が期待されるスピード感はこんな感じだったんじゃないのかなという気持ちが半分ずつ。
試合結果
2023.10.2
プレミアリーグ 第7節
フラム 0-2 チェルシー
クレイヴン・コテージ
【得点者】
CHE:18’ ムドリク, 19‘ ブロヤ
主審:ティム・ロビンソン
第8節 バーンリー戦(A)
スターリングがターフ・ムーアを完全制圧
立ち上がりは積極的にバーンリーが高い位置からチェルシーを捕まえにいくスタート。チェルシーはサイドにボールを逃しながら1on1か裏を取るアクションなどスピードを活かしたアプローチで対抗する形である。
試合が落ち着くと両チームは時間を与えられたバックラインからの組み立てで勝負に行く。バーンリーはGKのトラフォードを使いながらゆったりとショートパスで組み立てていくが、ターンオーバーでコレオショがいないこともありいつも以上にボールの終着点がわからない展開となった。
一方のチェルシーもバックラインからボールを幅をとって動かしながら勝負に出て行こうとするが、右のSBのククレジャにボールが渡ると必ずボールがバックラインに戻ってしまうため、こちらも停滞感があった。バーンリーが中盤を噛み合わせてきたこともあるが、フラム戦のような中盤の小気味良さは終始見られなかった印象だ。
そうした中で少ないチャンスを活かしたのはバーンリー。ターンオーバーしたスタメンの中でもチャレンジ枠のオドベールが先制点をゲット。パリ=サンジェルマンのユース出身の18歳がチェルシー相手に見事なプレミア初ゴールを決めてみせる。
停滞感もあったチェルシーだが、そうしたチームを牽引していたのは左WGのスターリング。中盤が硬直している中でアバウトなボールからあっさりとチャンスを作り出すなど、一人気を吐く働きを見せていた。
そして、そのスターリングがこじ開けてゴールを決めたのが43分のこと。縦への突破からアル=ダヒルのオウンゴールを誘発する鋭いクロスを放って試合を強引に動かしてみせる。先制点以降は全くチャンスのきっかけが掴めないバーンリーからすれば、なんとかハーフタイムまでリードを維持したかったところだろう。
バーンリーは後半まったりとした保持で巻き返そうとするが、チェルシーの高い位置からのプレッシングに屈することとなった。奪ってからは素早くスターリングに預けてあっという間にPK奪取。これをパルマーが決めてチェルシーは逆転。
これ以降もまさしく試合はスターリング祭りだったと言えるだろう。マッチアップ相手がヴィチーニョからロバーツに代わってもその勢いは衰えることはない。バーンリーのポゼッションのあたふた具合がチェルシーにあっさり捕まったことも相まって、中盤でのボール奪取からスターリングまでの流れでチェルシーはあっさりと3点差をつけて見せた。
バーンリーは終盤にボールを持てるようになったが、これはプレッシングを止めたチェルシー側の事情が大きい。新星の貴重なゴールが塗りつぶされてしまう大量4失点でバーンリーは敗北。チェルシーはこれで公式戦3連勝だ。
ひとこと
後半のバーンリーのポゼッションのバタバタ具合を見ていると、プレミアでこの保持が通用する相手がどれだけいるのかは疑わしくなってしまうというのが正直な感想である。
試合結果
2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
バーンリー 1-4 チェルシー
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:15′ オドベール
CHE:42′ アル=ダヒル, 50′(PK) パルマー, 65′ スターリング, 75′ ジャクソン
主審:スチュアート・アットウェル
第9節 アーセナル戦(H)
少ないチャンスを仕留めたアーセナルが1ポイントを掬い取る
レビューはこちら。
立ち上がりの両チームの振る舞いはここまでのチーム状況は真逆。流れがよく入れたのは下位に沈むチェルシーで苦しんだのはアーセナルだった。
もっとも、アーセナルからすれば重馬場のピッチコンディションは言い訳にはなるだろう。簡単にボールが止まるピッチに置いては普段のアーセナルの組み立てで見せるような小気味のいいパスワークは見せることはできない。
チェルシーはそうした状況を利用しつつ、バックラインに対してプレスの駆け引きを敢行。中盤を幽閉しつつ、無理に出ていかずに陣形のズレを作らないチェルシーの守り方にアーセナルは苦戦。強引にWGにボールを預けた結果、サカとマルティネッリの負荷が高まる展開となった。
特にサカとマッチアップしたククレジャは出色の出来といえるだろう。正対はもちろん、横ドリブルすらできないくらいの圧でサカの選択肢を削り取ったククレジャは前半におけるチェルシーのMVPの1人だ。
アーセナルの攻め手を封じることに成功したチェルシーはカウンターを軸にスピードアップしてゴールに迫る。特に大外のムドリクの背負うスキルを中心に設計されていたドリブラーを生かす形は秀逸。スピードに乗ったギャラガーを相手にジョルジーニョが後手に回るシーンがちらほらみられるようになった。
ボックス内までその勢いを維持することに成功したチェルシーはサリバに先んじてクロスに飛び込んだムドリクがハンドを誘発してPKを獲得。これをパルマーが沈めてチェルシーが先制する。
追いかけるアーセナルは後半、ジンチェンコ→冨安の交代を敢行。広い範囲を守れる冨安を中央に置き、ジョルジーニョを右サイドに出張させる形からチャンスを作っていく。
しかし、このテコ入れした右サイドからカウンターを決める形でチェルシーは追加点をゲット。ラヤの癖を盗んだというムドリクのクロス性のボールはそのままゴールに収まり、チェルシーはリードを広げる。
苦しくなったアーセナルだが、少しずつサイドの深い位置に入り込む攻撃は機能するように。カウンターからチェルシーが3点目を仕留められなかったことや、トップにジャクソンが入ってもなおアバウトな方向性にシフトチェンジしなかったことはアーセナルにとっては幸運だろう。
繋ぎにこだわったチェルシーはパスミスから失点。サンチェスのパスミスを拾ったライスは距離があるところから無人のゴールに狙いすましたシュートを打ち込んで見せた。
勢いに乗りたいアーセナルだが、交代で前線に入ったエンケティアとスミス・ロウがプレッシングで機能せずにブレーキに。それでも少ない機会を狙いすましたようにものにしたのがサカとトロサール。WGtoWGのクロスからの決定機を見事に仕留めて試合を振り出しに戻す。
逃げ切り体制に入ったチェルシーと交代選手の活性化がうまくいかないアーセナルにそれ以降は得点を動かす力はなし。ロンドンの両雄の対戦は痛み分けで幕を閉じた。
ひとこと
地獄の連戦が開幕したチェルシー。この内容のまま走り抜けられれば今の順位よりも高い位置に目標を設定する現実味が出てくる感じもする。
試合結果
2023.10.21
プレミアリーグ 第9節
チェルシー 2-2 アーセナル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:15′(PK) パルマー, 48′ ムドリク
ARS:77′ ライス, 84′ トロサール
主審:クリス・カバナフ
第10節 ブレントフォード戦(H)
こじ開けられずに代償を重ねる
フラム、アーセナルとロンドンのチーム相手に着々と勝ち点を稼いでいるチェルシー。この試合ではややメンバーから外れている選手がいるが勢いにのってさらに勝ち点を積み重ねていきたい。
立ち上がりにロングボールから縦に速く攻め込んでいたのはブレントフォード。チェルシーのプレスに追い立てられるように前線に早い段階でボールを預けていく。ブレントフォードはロングスローなどジリジリとしてはいるが、ボックス内にクロスを放りこんていく。
チェルシーは自陣の深い位置からでもロングカウンターを発動。スターリング、ジャクソン、パルマー、マドゥエケの4枚の前線で攻撃を完結させにいく。
10分もするとチェルシーはようやくゆったりとしたポゼッションに移行。ブレントフォードは中央を噛み合わせるように迎撃していく。そのため、チェルシーは右のマドゥエケの1on1とハーフスペースから逆サイドにクロスを放り込んでいくパルマーからチャンスを作っていく。
特にトップ下のパルマーは好調。中央からもアタッカーに時間を供給し、チャンスを作り出していく。だが、これをアタッカー陣がなかなか枠に持っていくことができない。
前半の終盤には再び縦に速い展開の応酬に移行。しかしながらどちらも決め手に欠き、前半はスコアレスのままでハーフタイムを迎える。
迎えた後半、チェルシーはゆったりとしたポゼッションから攻略を狙うフェーズに移行する。前半と少し違ったのはブレントフォードもボールを持つ側に回るとゆったりとしたポゼッションで手数をかけて攻撃を行なっていたこと。これにより、前半と異なり試合は攻守の切り替えが少ない展開となった。
押し込むフェーズで仕事をしたのはブレントフォード。イェンセンのロングスローにスムーズに移行できる右サイドを軸に攻めていくと、サイドを抜け出したのはムベウモ。前節もアシストをした右足からこの日も見事な軌道のクロスで先制点を演出。ピノックが押し込んでブレントフォードがリードを奪う。
その後はスムーズに撤退守備に移行するブレントフォード。チェルシーはブロック守備の攻略に挑むこととなるが、サイドからブレントフォードの守備の重心を崩すことができずに苦戦。交代した前線の選手たちもなかなか試合の活性化をすることができない。
サンチェスの上がりで文字通り全てを投げ打ったチェルシー。だが、その賭けの結末はロングカウンターからのブレントフォードの追加点。ムベウモは2試合連続の1ゴール、1アシストだ。
ブレントフォードをこじ開けられなかったチェルシーは最後に更なる失点の代償を支払うことに。続いていた公式戦無敗の記録もひとまずここで打ち止めとなった。
ひとこと
やはりキーポイントは前半だろう。パルマーを軸にチャンスメイクが効いていた時間帯にチェルシーは先制点が欲しかった。
試合結果
2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
チェルシー 0-2 ブレントフォード
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
BRE:58′ ピノック, 90+6′ ムベウモ
主審:サイモン・フーパー
第11節 トッテナム戦(A)
「9人じゃ試合は勝てない」という原則が最上位
立ち上がり特有のとりあえず強くあたってから考えるシーンを抜けると、ボールを保持したのはトッテナム。チェルシーは自陣に引いて構える気は毛頭ないので、CBにボールを持たせつつ2列目がプレスを仕掛ける機会を伺う形でスタートする。
クルゼフスキのゴールはシュートシーンだけ見ればチェルシーからすると不運なもので片付けたい気がするが、プレッシングのところまで遡ってしまうと話は別。プレスのスイッチを入れたパルマーにジャクソンは連動しきれず、カイセドのサイドへのフォローが間に合っていない。スピードに乗せた状態でクルゼフスキにチャンスを与えてしまったのは、彼らのプレスがトッテナムのビルドアップに上回られてしまったからであり、そこには運の要素は少ないという点は指摘しておきたい。
トッテナムは先制点以降もこのバックラインを軸としたスウィングでチェルシーのプレスを振り回していた。マディソンの展開力は今更触れるまでもないが、逆サイドからのボールの引き取り手としてウドジェやサールの貢献度の高さはさすが。そして仕掛けるタイミングでの同じ絵の加速を作れているあたりはチームとしての完成度の高さだろう。
トッテナム優位の風向きが変わったのはウドジェの警告あたりからだろうか。徐々にチェルシーのロングカウンターがトッテナムのハイラインを侵食するようになる。さらにはエンソのミドルなど(リプレイが被ってるせいでおそらくにはなるが)ハイプレスからボールを奪い取るシーンも少しずつ出てくるように。
そして、カイセドのミドルのシーンも同じ文脈。ネットを揺らしたこのシーンは流れの中でロメロの退場を生み出しており、これ以降盤面は大きく変わることになるが、チェルシーの同点ゴールを生み出したのもまた必然性はあったことは付記しておきたい。
トッテナムは4-3-2でのハイライン継続を選択。マディソン、ファン・デ・フェンという攻守の要を負傷で失ってなお、この方向性は変わらず。チェルシーは無限に左サイドからスターリングが抜け出しを続けるが、ダイアーとエメルソンの急造CBが裏抜けに食らいついていく奮闘が光り、試合は1-1でハーフタイムを迎える。
前半はいろんなことがありすぎたのでトッテナムは単に盤面を整理する時間がなかった可能性もあったが、後半の頭からもポステコグルーは4-3-2のハイラインを選択したことで、彼らの哲学がそこにあるのだなということがわかる。もちろん、CBがベンチにいないのならば、その道を行くことになる納得感もそれなりにある感じはする。
しかし、カウンター対応で3対2の局面からウドジェが2枚目の警告を受けてトッテナムは9人に。スターリングの対応がまごついたものになったが、逆にそれが退場を誘発するのだから、サッカーは難しい。
9人でも4-3-1でハイラインを継続するトッテナム。ホルダーにプレスがかからないようになると、裏抜けを全部なんとかするのは難しいという点で4-3-2より難易度はグッと上がる。
だが、チェルシーはスターリングが何もかも1人でやろうとしたり、ククレジャのように抜け出した後の選択がイマイチだったり、ジャクソンがそもそも抜け出さなかったり、ムドリクが普通に人数をかけたサイドの突破を狙ったりなど難がかなり見えた。トッテナムは強気のプレスにヴィカーリオのリベロ仕事を掛け合わせることで流れを引き戻す。
しかしながら、9人でホルダーにプレスがかからないハイラインを続けてしまえば、破られるシーンが出るのは仕方ないこと。ジャクソンがスターリングの抜け出しを仕留めて本当にようやくリードを奪う。
だが、トッテナムはセットプレーを中心に反撃。交代で入ったウゴチュクがプレスで飲みこまれたり、ムドリクやグストが軽率なファウルを犯したりなど、チェルシーは足元を掬われてもおかしくない試合内容ではあった。
しかしながら、「9人でサッカーを勝つのは難しい」という原則は強固。更なるチャンスを迎えたジャクソンがハットトリックを決めて、最後はチェルシーが大勝。プレミアリーグから無敗のチームは消え去ることとなった。
ひとこと
魔の11節を締めくくるに相応しい内容だったと思う。語りたい角度があまりに多すぎる試合だった。9人じゃ試合は勝てないし、世の中にはいろんなハットトリックがある。試合は見ないとダメだ。
試合結果
2023.11.6
プレミアリーグ 第11節
トッテナム 1-4 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:6′ クルゼフスキ
CHE:35′(PK) パルマー, 75′ 90+4′ 90+7′ ジャクソン
主審:マイケル・オリバー
第12節 マンチェスター・シティ戦(H)
許容されたオープンな展開で激しい撃ち合いに
2週間にわたるリメンバランスデイのトリを飾る一戦はチェルシーとシティの激突。チェルシーにとってはトッテナムに続く上位喰いのミッションに2週連続で挑むことになる。
立ち上がりのプレーはこの試合の激しさを表していたものと言っていいだろう。ハイプレスに出て行ったシティに対して、ポゼッションからチェルシーがこれを回避。
チェルシーは左サイドで上下に動きながらフリーになっているエンソを起点に逆サイドに流すと、ボールを引き取りに降りたパルマーから前進していく。割とテンプレートのような形でゴールに迫る武器を整理できていた印象である。
非保持のチェルシーは人を見ていくスタイルではあるが、シティに比べるとミドルゾーンからの加速に警戒しているぶん、バックラインへのプレスの強度に甘さはあった。シティの保持は中央が封鎖されている分、外循環に傾倒。ディアスが大外のレーンに立つなど、シティがお得意の移動でのマンツー外しは全く何もなかったわけではないが、直線的な動きをチームとして好んでいたため、ハーランドやフォーデンが目立つ一方でロドリやベルナルドといったまずは構造で動かそう!派閥はあまり存在感がない状況だった。
縦に速い攻撃の応酬にも足の長いパスを駆使してついていくチェルシー。ほぼ完璧なゲームプランかと思われたが、ククレジャがPA内でハーランドを倒してPKを献上。これを決められて先行を許してしまうことに。
しかしながら、セットプレーから同点弾をゲットしたチェルシー。ニアに入り込む動きでチェルシーが早々に追いついてみせる。さらには勝ち越しゴールもすぐさまゲット。右サイドのスムーズな前進から加速し、最後はスターリング。この試合の頭から見られていた加速から勝ち越してみせる。
それだけに前半終了間際の失点は痛恨。セットプレーの二次攻撃でアカンジをシウバが浮かしてしまい、試合は同点でハーフタイムを迎えることになる。
後半も高い位置からボールを奪いにいくチェルシー。シティはこれをひっくり返す形で右サイドからのカウンターで勝ち越し。スターリングのゴールよろしく右サイドから奥行きを作り、ハーランドは自分もマーカーもボールも全てゴールに押し込んで見せた。
シティのリードで試合は落ち着くかと思われたが、試合はまだまだここから二転三転していく。次に光を放ったのは交代で入ったムドリク。左サイドからの突破でロドリを引きつけると、ギャラガーがロドリが開けたスペースからミドルで強襲。このこぼれ球をジャクソンが押し込んで再び試合は振り出しに。後半のシティはロドリやグバルディオルなど受けに回ると不安定な守備陣のパフォーマンスがやや目につく。
しかしながら、ロドリはクラッチシューターとしてその存在感を遺憾なく発揮。何度もみた80分以降のミドルシュートでシティに今日も勝ち越しゴールをもたらしてみせる。
だが、試合はこれで終わらず。チェルシーは終了間際にPKを獲得。中盤のパスワークでコバチッチを振り回して作った穴をディザジ→スターリングで使うと、PA内でボールを受けたブロヤに慌ててディアスがアプローチ。このタックルが軸足を刈り取るものになってしまった。シティのバックスのらしくなさは最後まで尾を引くこととなった。
プレッシャーのかかる場面でキッカーとしての勤めを果たしたパルマーにより、チェルシーはこの日3回目の同点弾をゲット。壮絶な撃ち合いは4-4のドローで幕をとじた。
ひとこと
シティのバックスのキレキレ感のなさとリードを奪った時のポゼッションでのいなしフェーズのなさは結構気になる。
試合結果
2023.11.12
プレミアリーグ 第12節
チェルシー 4-4 マンチェスター・シティ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:29′ チアゴ・シウバ, 37′ スターリング, 67’ ジャクソン, 90+5′(PK) パルマー
Man City25′(PK) 47′ ハーランド, 45+1′ アカンジ, 86′ ロドリ
主審:アンソニー・テイラー
第13節 ニューカッスル戦(A)
手応えは前節と真逆
前節はシティ相手に引き分けと健闘したチェルシーとボーンマス相手に完敗だったニューカッスル。対照的だった結果だが、代表ウィークを経てどのように変化をするかが重要な一戦となる。
バックラインへのプレスはお互い控えめな中でボールはニューカッスルが握る。SBをインバートしながらビルドアップから配置を動かす形を使い敵陣に入っていく。
チェルシーはカウンターを重視。ジャクソン、スターリングが直線的な動きを見せてゴールに迫る形で反撃に出る。マイリーの開けたスペースに侵入するククレジャとギャラガーのドリブルからのカウンターが印象的だった。
チェルシーは試合が落ち着くと保持からも崩しに打って出る。ギャラガー、パルマーといったタメを使ったプレーで奥行きを作り、エンソのミドルを演出したシーンは見事だったと言えるだろう。
雑に括るとボール保持のニューカッスルとカウンターのチェルシーという構図だったこの試合。お互いその形でゴールを1つずつ奪い取る。
ニューカッスルはゴードンの横断からゴールを演出。イサクの抜け出しのパスを繋いだのはプレミア初アシストとなったマイリーだった。チェルシーからするとククレジャのラインアップが遅れてしまったのが痛恨だった。
チェルシーはカウンターからスターリングが独走し、ファウルを奪い取ったところからゴール。直接FKを自ら決めて試合を振り出しに戻す。
終盤はやや慌ただしい展開だったが、ミドルゾーンでの引き出しの多さを比較すると、どちらかといえばチェルシーペースで試合は進んでいる印象だった。試合はタイスコアでハーフタイムを迎える。
後半はどちらも保持側が優勢な流れだった。どちらのチームもプレスには積極的だが、なかなか奪い取るところまでにはいかずファウルが嵩んでいく。保持側もまた非保持側のプレスをいなしきって敵陣に入る形は作れなかった。
そうした状況で増えるのはセットプレー。この好機を生かしたのはニューカッスル。高いライン設定のチェルシーの守備に対して、ショートパスでのリスタートでボールを回してタイミングを外すと、ゴードンのクロスに抜け出したのはラッセルズ。このゴールで前に出ると勢いに乗ったニューカッスルはプレスからあっという間に追加点。チアゴ・シウバに襲いかかったジョエリントンがパスミスを誘発して3点目を決める。
さらにはチェルシーはジェームズが退場。これを持ってこの試合は完全なるワンサイドゲームとなる。ボールを保持し、シュートを浴びせて試合を支配するニューカッスル。ゴードンの4点目、そして次々と投入される背番号の大きい若手と悠々としているニューカッスルを前にチェルシーは抗議とファウルで警告を増やしていく終盤になった。
完勝を果たしたニューカッスル。両チームは前節の手応えとは全く逆の結果を手にする結末となった。
ひとこと
チアゴ・シウバのロストが全てを決めてしまったかな。。
試合結果
2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
ニューカッスル 4-1 チェルシー
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:13‘ イサク, 60’ ラッセルズ, 61‘ ジョエリントン, 83′ ゴードン
CHE:23‘ スターリング
主審:サイモン・フーパー
第14節 ブライトン戦(H)
10人の45分を耐え凌いでの逃げ切り
立ち上がりから目立っていたのはチェルシーの激しいチェイシングのスタンスだ。前線のジャクソンが追い回す形はもちろんのこと、自陣に戻る形におけるギャラガーの挟みこみなど非常に精力的なプレスを行っている。ムドリクのタックルなどファウルになるようなものもあったが、彼らのスタンスをよく表しているといっていいだろう。
そんなチェルシーに対してブライトンはポゼッションから迎撃。全体的に前がかりな状況を利用して、レイオフを使って列移動するギルモアや、ムドリクの背後のスペースを使うように低い位置からボールを引き出すブオナノッテによって、ボールを前に進めていく。試合はこのようにブライトンがボール保持でチェルシーをいかに攻略するかの立ち上がりとなった。
チェルシーのプレスには問題なく対応できる様子だったブライトンだが、ボックス付近にボールが入ると「誰がやろうか?」という迷いが感じられる。とりあえずボールを預けられる三笘もマーチも不在のこの日の先発であると、最後の局面の崩しの軸がぼやけてしまうのはこの日の彼らの課題であった。
ボールを奪った後のチェルシーは直線的なスタイルに全く迷いがない形となっていた。スターリング、ムドリク、ジャクソンの3人の槍のような攻め筋から縦に速いアクションで反撃に打って出る。
ポゼッションのブライトン、カウンターのチェルシーとかなりはっきりしていたすみわけだったが、先制点はセットプレーから。アクロバティックな折り返しからエンソが先制ゴールをゲット。
さらにチェルシーは立て続けにセットプレーから追加点を決める。コルウィルのシュートはギリギリゴールラインを超えて4分ぶりに2得点目を挙げる。
チェルシーがスコア的に優位を積み上げていくが、ブライトンは前半のうちに反撃。左から右への横断で進撃すると、ミドルシュートを仕留めたのはアディングラ。コルウィルは間合いが遠く、シュートを防げる立ち位置をとることができていなかった。
さらに前半終了間際にはチェルシーにさらなる追い討ちが。対応の遅れたギャラガーがタックルで2枚目の警告を受けて退場。リトリートしての守備意識が悪い方に転がってしまった。
4-4-1で後半はボックス内に構えるチェルシー。ブライトンが一方的にボールを持つ展開が続いていく。押し込むフェーズが続くブライトンだが、決め手にかける状況も継続。見かねたデ・ゼルビは4枚替えで主力を投入する。
左サイドに三笘を入れたブライトンは同サイドでの仕掛けと逆サイドのSBの裏を狙ったクロスを使い分けながらゴールに迫っていく。確実に攻撃の中心になっている三笘だが、短い時間の仕掛けの割には少し威力が物足りないところがある。やはりコンディションが苦しい。
押し込まれるチェルシーはワンチャンスからムドリクがPKを奪取。両軍にとってこのPKは大きな1点だった。2点のセーフティリードを確保する。
後半追加タイムにジョアン・ペドロの追撃弾を決めるが、反撃もここまで。10人ながらも45分を凌ぎ切ったチェルシーが逃げ切り勝利を決めた。
ひとこと
ムドリクの3点目きっかけのPKはデカかった。大仕事。
試合結果
2023.12.3
プレミアリーグ 第14節
チェルシー 3-2 ブライトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:17‘ 65’(PK) エンソ, 21‘ コルウィル
BHA:43’ ブオナノッテ, 90+2‘ ジョアン・ペドロ
主審:クレイグ・ポーソン
第15節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)
落ち着かない展開で見られた確かな差
立ち上がりから落ち着かない展開ではあったが、落ち着かない展開の中でも優劣が発揮していた序盤戦だったといえるだろう。優勢だったのはユナイテッド。バックスからの落ち着いた組み立てで間延びしたチェルシーのDF-MFのライン間とライン裏を狙う形を併用することでユナイテッドは的確にチェルシーの陣内に迫っていく。
チェルシーもユナイテッドに対してジャクソンの裏抜けを軸とした縦に速い攻撃で対抗するが、縦に差し込むようなパスをことごとくユナイテッドにとがめられることに。ここからのカウンターに対して、ほぼチェルシーは無抵抗でパスをつながれ続けてユナイテッドは枠内シュートを連発する。いうまでもなくPKを献上したシーンはその代表例といえるのだが、ブルーノはこれを決め切れずに試合はタイスコアを維持する。
このPKをいいきっかけに転じることができなかったチェルシー。だらだらと相手にカウンターの機会を渡し続けると、ついに左サイドからのクロスをマクトミネイに仕留められてしまい失点を喫することに。緩い緩いボックス内でのチェルシーの対応はマクトミネイにとっては格好の飛び込むためのシチュエーションだったといえるだろう。
しかしながらチェルシーは45分に同点に追いつく。縦パスを受けて前を向いたパルマーがリンデロフを出し抜く形で勝負をかけて同点に。直前の時間帯から少しずつボールを持てるようになった流れを生かし、ハーフタイムの前にタイスコアに引き戻す。
だが、後半もペースを握ったのはユナイテッド。前半と同じようにポゼッションを行うチェルシーからプレスでボールを奪い取ると、左サイドのガルナチョを中心に攻撃を構築していく。
同点ゴールはその左サイドから。ハーフタイムに交代したレギロンとのコンビでガルナチョがクロスを上げた先にいたのはまたしてもマクトミネイ。この日2点目のゴールで再びリードを奪う。
ガルナチョはこの場面で大きな仕事をしたのはもちろん素晴らしいことなのだが、できれば直後に迎えた決定機を仕留めて試合を完全に終わらせたかったところ。今の2列目はなかなか得点力に苦しんでいる節があるので、こうした確実な決定機はなんとか仕留めていきたい。
60分もすればチェルシーはプレッシングで追い回すところが機能しなくなる。ユナイテッドが落ち着いてボールを持つことで試合を制圧する。立ち上がりほど両チームの間に差は感じなくなったが、チェルシーにビハインドをひっくり返す勢いはなく、試合はそのまま終了。ホームのユナイテッドがチェルシーに勝利。チェルシーはいいところなくあっさりと敗れてしまった。
ひとこと
虚無なことはそこそこあったけども、悪い状況を積極的に引き寄せていたという意味ではこの試合のチェルシーの入りは今季最悪に部類に入ってもおかしくはないなという感じだった。
試合結果
2023.12.6
プレミアリーグ 第15節
マンチェスター・ユナイテッド 2-1 チェルシー
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:19‘ 69’ マクトミネイ
CHE:45‘ パルマー
主審:クリス・カバナフ
第16節 エバートン戦(A)
逆境上等の姿勢を象徴する勝利
勝ち点減という痛恨の処分を受けてから、失われた勝ち点を狂ったように取り戻しているエバートン。特に本拠地であるグディソン・パークはそうした上げ潮の雰囲気に乗っかるがうまいサポーターが集っている。前節結果が出なかったチェルシーとしてはあまり歓迎できる状態ではない。
バックラインからゆったりとボールを動かし続けるのはチェルシー。縦関係を組むエバートンの2トップに対して、きっちりと誘導を外しながらの前進を狙っていく。
ただし、中盤では少しボールのタッチ数が多くなってしまい、エバートンのプレスを不用意に引き寄せてしまうことが多かった。そうした部分でうまく流れに乗れていなかったのがブロヤ。中盤に降りるアクションでボールをひっかけてしまい、なかなか効果的なボールプレーができずに苦戦していた。
逆に存在感を見せていたのはパルマー。パンチ力のあるミドルなどパスワーク以外でもクオリティを高いプレーで押し込んだ後のチームを牽引する。
エバートンの攻め筋はサイドの裏からのダイレクトな攻め筋。正直に言えばそこまで成功率は高くはないが、その流れの中で相手にハイプレスをかけるところまでがセットになっている。サンチェスまで追い回すこともしばしば。サンチェスはいつも通り、ギリギリまで相手を引き寄せてからショートパスでの回避というリスクをかけたプレーでエバートンのプレスを外していく。
サイドの裏からの攻め筋はチェルシーからしても有力。前半は総じてチェルシーがやや優勢だったといえるだろう。
後半もボールを持っているのはチェルシー。前半に比べればややオープンな流れながらも再びポゼッションから先制ゴールを狙っていく。
しかしながら、先行したのはエバートン。見事なカウンターから反撃に出てマクニール→キャルバート=ルーウィン→ドゥクレとつないでリードを奪う。
追いかける立場になったチェルシーはさらに押し込んでのポゼッションの時間を増やしながら攻略を狙っていく。しかしながら、ブロック攻略において難点になるのは前半にジェームズが負傷した右サイドに縦ベクトルの成分がないこと。ポチェッティーノはスターリングの投入でこの問題の解決を図る。
しかしながら、マイコレンコの粘りは素晴らしかった。振り切られずについていくことでスターリングがこの試合のアクセントになることを防ぎ続ける。CBはライン間へのパスに対して厳しくチェックをかけながらPA内では壁になり、チェルシーのクロスを跳ね返し続ける。
跳ね返し続けた先のご褒美はセットプレーの追加点。終盤に入ったドビンがセカンドボールを叩き込み、試合を決める一撃を沈める。チェルシーは交代で入ったペドロヴィッチのパンチングに飛距離が足りなかった。
押し込まれても動じることなく跳ね返したエバートンが粘りの勝利。予期せぬアクシデントに見舞われながらも勇敢に戦っている直近の彼らを象徴するような試合運びだった。
ひとこと
エバートンの中盤のプレスの強度はプレミアでもなかなか高水準になってきたように思う。
試合結果
2023.12.10
プレミアリーグ 第16節
エバートン 2-0 チェルシー
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:54‘ ドゥクレ, 90+2’ ドビン
主審:マイケル・オリバー
第17節 シェフィールド・ユナイテッド戦(H)
最低限の結果でまずは連敗ストップ
マンチェスター・ユナイテッド、エバートンと力なく連敗をきっしているチェルシー。最下位のシェフィールド・ユナイテッドにホームで勝ち点を落とすことになれば、今季最大級の向かい風がポチェッティーノに対して吹くことは間違いないだろう。
ブレイズはバックラインへのプレッシャーは特になく、延々とチェルシーがボールを持つ立ち上がり。ブレイズが形成する4-5-1のブロックの前を左右にボールを動かしながら敵陣へと侵攻していく。
敵陣に入っていく形はバックラインからのキャリーが効いている。CBの持ち上がり、特にバディアシルがボールを運んで刺す工程で効く動きを見せていた。
その一方でアタッキングサードでの攻略は苦しいものがあった。押し込んだ後の個々の選手にはあまりつながりはなく、相手を動かすための共通のデザインのようなものを読み取るのは難しかった。ブレイズは後ろにきっちりと人数を揃えてはいるので、さすがに単騎ですべてを打ち破るのは難しい。敵陣にボールを運ぶところは安定していたが、ブロック守備を壊すところには課題があった前半だったといえるだろう。
ブレイズは押し込まれる展開の中で抵抗を続ける展開に。アーチャーが孤軍奮闘気味にカウンターからミドルを放つくらいしか反撃の手段がないのはいつものことである。これもラインが下がりっぱなしの影響だ。
それでも機を見たハイプレスの流れから少しずつチェルシーに押し込まれる時間を減らすアプローチを見せていく。ただし、アタッキングサードでのアイデアの部分はチェルシー以上に厳しいものがあるのが今のブレイズ。両チーム合わせて枠内シュートは1本というクリティカルなダメージがないまま試合は進んでいく。
後半もボールを持って動かしていくチェルシー。サイドをスムーズに変えてパルマーが右サイドからの仕掛けを見せるなど、少しずつ前半より奥の位置に入り込めるようになっていく。
そうした中でチェルシーは先制。スターリングとパルマーの右サイドの攻略から先制点をゲット。刺すようなパスは精度とスピードを伴ったものであり、ブレイズのバックスは反応しきれなかった。
追いかける格好になったブレイズだが、二の矢がなかなか見つからないまま。反撃の手段はなくむしろ押し込まれる時間が増えていく。パルマー、スターリングを軸にチェルシーは攻撃を続けると、ジャクソンが追加点。ピンボールのように跳ねたボールの恩恵を受ける形でシュートを決めてみせた。
最低限の勝利で何とか悪い流れを断ち切ったチェルシー。トップハーフに復帰し、面目躍如の連敗ストップとなった。
ひとこと
勝ったのはもちろんいいのだが、少しパワーで押し切る系統に回帰している感じは心配。
試合結果
2023.12.16
プレミアリーグ 第17節
チェルシー 2-0 シェフィールド・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:54′ パルマー, 61′ ジャクソン
主審:アンディ・マドレー
第18節 ウォルバーハンプトン戦(A)
攻守が噛み合わないチェルシーがモリニューで沈黙
連敗を最下位相手にようやく止めてここから上位追走を再開したいチェルシー。ミッドウィークには土壇場のゴールからのPK戦でニューカッスルを下してカラバオカップ準決勝進出を決めるなどちらほら明るい話題も見られるようになってきた。今節はモリニューに乗り込んでの一戦である。
ウルブスはまずはチェルシーにゆったりとボールを持たせるスタンス。チェルシーはCBが広い位置をとりながらビルドアップを行っていく。グストを片上げする3バック化がチェルシーのビルドアップの基本布陣。残りの3枚のDFと2枚のCHを活用しながらのボール回しを行う。
ウルブスはWBが出ていきながらサイドの蓋は素早く閉じていくスタンス。このWBの強気なスタンスによりチェルシーはなかなか押し下げることができず。
前半も中盤になるとチェルシーはラインの入れ替えを頻発するように。チェルシーから見て右サイドのウルブスのWBの裏にスターリングを走らせるなど、少しアクセントになるようなランも増えてきた。
そのスターリングは32分に決定機。バックパスをかっさらった後に3対1の局面を迎えたが、やや淡白なシュートという選択肢を選び取ってあっさりとジョゼ・サにボールを渡してしまった。
このプレー以降、35分過ぎから少しずつボールを動かしながらゴールに迫っていくウルブス。チェルシーのラインの間と裏を意識しつつボックス内の侵入の頻度を増やしていく。
後半はウルブスはさらに強気のプレスを行っていく。チェルシーのバックラインはこの強気のプレスにかなりナイーブな反応を見せる。バタバタとしたバックスの対応もあり、試合はなんとなくオープンな展開に。
すると、セットプレーからウルブスが先制。レミナがゴールを叩き込み、ウルブスが一気に流れに乗る。以降もミスがやたらと出るチェルシーのバックスにウルブスがプレスでつっつきながらの展開が続くことに。
しかし、ウルブスもドーソンの負傷によりプレスに出るかに迷いが出るように。以降はどちらでもない時間がしばらく流れていく。
反撃の機会を掴むことができないチェルシーに対して、ウルブスは左サイドの裏抜けから追加点をゲット。ブエノの抜け出しからドハーティが追加点を奪い、試合を完全に決める。バディアシルがボールをあっさりと置いていってしまうあたりもこの試合のチェルシーの流れの悪さを感じる。
後半の追加タイムにはエンクンクが初ゴールをゲット。この試合でのチェルシーの数少ない良かったポイントである。攻守が噛み合わないチェルシーはウルブス相手に力無い敗戦。連勝はならず今季のリーグ戦8敗目を喫することとなった。
ひとこと
後半のチェルシーのバックスのバタバタ具合はなんだろう。
試合結果
2023.12.24
プレミアリーグ 第18節
ウォルバーハンプトン 2-1 チェルシー
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:51′ レミナ, 90+3′ ドハーティ
CHE:90+6′ エンクンク
主審:デビッド・クート
第19節 クリスタル・パレス戦(H)
奇策のパレスに苦戦もPKで振り切る
欧州カップ戦圏内という目標が遠ざかりつつあるチェルシーと残留争いとは無縁の安定感が脅かされつつあるパレス。苦しい両チーム同士のロンドンダービーだ。
明らかに立ち上がりからいつもと様子が違ったのがアウェイのパレス。高い位置からの激しいプレッシングという彼らのトレードマークとは全く異なる立ち上がりのスタンスを見せていた。
序盤のチェルシーはややこのハイプレスに面食らっていたように思えたが、10分もすれば問題なく対応。明確な解決策になっていたのは降りてくる前線への縦パス。ポイントを作りに降りてくるムドリクやエンクンクといった選手たちを活用したレイオフ、もしくは縦パスを受けた選手自身のターンをベースとして、パレスの攻撃を剥がしていく。
先制点の場面で活躍したのはグスト。プレス回避の立役者としてボールを前に進めつつ、フィニッシュの局面ではアシストを記録。ムドリクのゴールを御膳立てした主演と言ってもいいだろう。
パレスは先制されてもなおプレスが機能せずに沈黙。慣れない高いラインはガタガタだったし、ボールを奪ったら奪ったで何故かゆったりとボールを回してカウンターに移行しない。正直、この試合のパレスのスタンスは自分にはよくわからなかった。
それでもセットプレーの流れからオリーズのスーパーゴールで同点に。悪い出来ながらもタイスコアでハーフタイムを迎えることができた。
得点というのは悪い流れを振り払う効果があるのだろう。パレスは前半には見られなかった押し込むアクションを後半の頭に見せるようになった。しかしながら、前半よりは出来は良化しているものの、繋ぐ意識が引き続きいい方向につながらない。後半の方が勝負ができているが、徐々にチェルシーにペースを持っていかれる。
チェルシーは途中投入のラヴィアが散らし役として躍動。横方向のパスが増えたことで前半以上に保持側がゆったりとボールを持つ展開に。
優位を得たチェルシーは74分にジャクソンが決定機。しかしながら、これを仕留めることができず。その後もネットを揺らすがこれはオフサイドと彼の日ではない雰囲気がする後半のパフォーマンスだった。
しかしながら、終了間際にエゼのファウルを引き出してPKを獲得したチェルシー。これをマドゥエケが仕留めて土壇場でチェルシーが勝利を手にする。最後まで持つれた試合はホームチームに軍配。苦しみながらもなんとかホームで勝利を手にした。
ひとこと
パレスの前半の立ち上がりのハイプレスは奇策の域を出なかったかな。
試合結果
2023.12.27
プレミアリーグ 第19節
チェルシー 2-1 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:13′ ムドリク, 89′(PK) マドゥエケ
CRY:45+1′ オリーズ
主審:マイケル・サリスベリー
第20節 ルートン・タウン戦(A)
わずかに間に合わなかった猛反撃
今季初の連勝を決めて勢いに乗るルートン。残留圏内までの勝ち点はもう少しである。3連勝を目指してケニルワース・ロードに迎えるのは年末年始も不安定さが目立つチェルシーである。
そんなチェルシーを飲み込むかのようにルートンはキックアンドラッシュで勢いに乗るスタート。ロングキックとハイプレスをベースとした縦に速い展開を利用してチェルシーを飲み込みに行く。
チェルシーはブロヤ、ジャクソンをターゲットとしたロングボールからハイプレスを抜け出すことができるかが争点。逆サイドのマドゥエケまでボールを届けることができれば、脱出口としては機能する。ルートンのハイプレスからチェルシーが脱出できるかがポイントとなる序盤戦だった。
チェルシーはロングボールを蹴ったタイミングでルートンのバックスにプレスにいく。ルートンは基本的にはこのプレスにうまく対抗していた。ロコンガはアーセナルにいた頃に比べればプレス回避において機能していたのが印象的であった。
しかし、ハイプレスを機能させたのはチェルシー。カボレのパスミスを拾ってパルマーが叩き込んでの先制ゴールとなった。
反撃に出たいルートンは前線にボールを運んでのファウル奪取から決定機を狙っていく。しかしながら、セットプレーからのチャンスは実らず、同点ゴールを決めることができない。そうこうしている間にハイプレスの脱出口となっていた右サイドのマドゥエケが火を吹いたチェルシーが追加点をゲット。前半を2点差としてハーフタイムを迎える。
ルートンは後半開始のタイミングで選手交代を実施。中盤の枚数を増やしたオールコートマンツーの様相で相手を前からより捕まえやすい形に整備する。チェルシーは前半よりは明らかにプレスを剥がす形を作ることに苦戦。敵陣に攻め込む機会が増えたルートンはあとはアデバヨが触るだけというところまで持っていくことができている。
しかし、シュートを決めれずにいるとこれを嘲笑うかのようにチェルシーが追加点。マンツー剥がしの王道パターンという形でジャクソン→パルマーのパスで一気にゴール前まで。マンツー色を強めた後半のルートンの動きを鑑みればパルマーについていけなかったロコンガの責任は重たいということになるだろう。
3失点後にさらに追撃を強めるルートン。右のオグベネ→ベル→ダウティーという横断からのクロスからのゴールは取り消しになるが、これが反撃の契機に。左右からダウティー、カボレ、チョンといった選手の鋭いクロスに対して、チェルシーは防衛策を組むことができなかった。
バークリーのセットプレーからのゴールで反撃の狼煙を挙げると、87分にはアデバヨがようやくゴールを仕留めて1点差に追い上げる。終盤まで猛攻を繰り広げたルートンだが惜しくも届かず。3点のリードを溶かしかけたチェルシーが最後に踏みとどまり勝ち点3を確保した。
ひとこと
勝ち点は取れなかったけどもこの時期に90分戦えるコンディションなのはそれだけで心強い。ケニルワース・ロードはめんどくさいスタジアムである。
試合結果
2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
ルートン・タウン 2-3 チェルシー
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:80‘ バークリー, 87‘ アデバヨ
CHE:12‘ 70‘ パルマー, 37‘ マドゥエケ
主審:ポール・ティアニー
第21節 フラム戦(H)
2試合連続の冷や汗逃げ切り劇
両チームの2024年のリーグ初戦はウェスト・ロンドン・ダービーでの開幕。ボールを持ったのはチェルシー。アンカーを管理してくるフラムの4-4-2の2トップに対して、カイセドの横に誰かを置く形で対抗。クロースのように最終ライン付近まで降りてくるエンソをメインに、ギャラガーやパルマーといった面々がアンカーのサポートに出てくる。
フラムはこのチェルシーのポゼッションに対してプレスに出ていけるかが高い位置でプレーできるかのポイント。パリーニャのボールハントが間に合う範囲であれば、高い位置からボールを奪ってのカウンターも視野に入る流れだった。ただし、CBの縦パスへの迎撃はリバプール戦に比べると処理が怪しく、チェルシーがチャンスを迎えることもしばしばだった。
ボールを奪うとフラムは左右のサイドから攻め込む。右サイドは大外に開くウィルソンを経由してペレイラのハーフスペースの裏抜けからチャンスメイク。左サイドはウィリアンをロビンソンが追い越す定番の形。27分の左サイドの連携からファーのウィルソンまでクロスが届いた瞬間が前半の最も大きなフラムの決定的なチャンスだった。ペドロヴィッチに止められたけども。
チェルシーはボール保持では苦戦。むしろ、即時奪回からのカウンターに出ていく方が得点の可能性を感じることができた前半だった。特にしんどそうだったのは左サイド。エンソは低い位置への意識が高く、コルウィルも攻め上がることができない。スターリングは1on1の形を作ってもチャンスに繋げることができない。パルマーが縦パスを引き出すために中央に顔を出し(外ではグストが上がる)ていた右サイドの方が可能性を感じる。
そんな右サイドにスターリングが顔を出したところからチェルシーは先制。縦パスを受けたスターリングをディオプが慌てて倒してしまいPKを献上。前半終了間際でチェルシーがリードを掴む。
後半は前半と陸続きの内容。バックラインからボールを繋ぐチェルシーに対して、フラムがそれを跳ね返す構図は後半も続いていく。左右に動くブロヤは右サイドのローテに入るなど、前半よりも行動範囲を広げた印象。ボールの預けどころとして地味ながらも機能していた。
トランジッションでもチェルシーは優位。ウィリアンのタックルをかわしながらカウンターに出ていくエンソ、積極的なタックルでカウンターの起点になったギャラガーなどは強度の面でチェルシーを支えていた。
フラムは攻撃に出ている場面でもカウンターを完結できずにさらにピンチを招いてしまう。ボックス内での守備の精度でなんとか踏ん張っている時間が続く。チェルシーは右サイドにマドゥエケを投入し、カウンターの起点として試合を仕留めにかかるが、なかなか決定打となる2点目を決めることができない。
流れが変わったのは72分のフラムのカウンター。チェルシーはうまく外に追い出すように守れたかと思われたが、逆サイドのヒメネスまで苦し紛れのクロスが届いたところから流れが変化。これ以降、ウィリアン、ペレイラ、ヒメネスの3枚からカウンターでチャンス構築ができるように。
ここからフラムが主導権を握る終盤戦に。パリーニャに代わって入ったルキッチが試合に入れなかったのは残念だったが、ボックス内の空中戦を中心にチェルシーを脅かすことに。
ルートン戦に続き1点リードを冷や汗をかきながら守る展開になったチェルシー。しかしながら、この修羅場を凌ぎきりなんとか連勝を達成した。
ひとこと
終盤でカウンターの精度が上がるフラムのベテラン勢、ちょっと意味がわからなかった。
試合結果
2024.1.13
プレミアリーグ 第21節
チェルシー 1-0 フラム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:45+4′(PK) パルマー
主審:アンソニー・テイラー
第22節 リバプール戦(A)
ハッピーエンドに向けて加速は続く
クロップの退任が発表されて初めてのリーグ戦。アンフィールドでチェルシーを迎え撃っての一戦である。立ち上がりからリバプールはエンジン全開。一方的にボールを持ってのスタートになる。
リバプールの前線の配置は5レーンを意識。3トップがナローに立ちながら、大外にジョーンズやブラッドリー、ショボスライが流れてチェルシーの4バックを広げながらのスタートになる。大外からシンプルにクロスを上げる形もあるし、4バックの横幅が広がるとDF間のスペースを使ったヌニェスの抜け出しが効いて来るという算段で中央とサイドをバランスよく使い分けていた。
さらにはプレスでチェルシーのCHを自陣側につり出すと、その背後に潜むリバプールの3トップはDF-MFのライン間で反転して前を向いて加速。裏だけでなく、ライン間も活用して攻撃を進めていく。
チェルシーは自陣に押し込まれる苦しい展開。スターリングの左サイドの裏抜けが生命線ではあるが、抜け出しきれることは稀。リバプールは特に中盤に対してマンツーで広範囲に捕まえるアプローチをしており、ここからのポジトラで優位に立つ。
チルウェルが高い位置を取った際のロストが発生するとさらにチェルシーの傷口は広がる。ジョッタの先制点の場面もその形だった。CB2人が間を割られるという最もまずい形でやられてしまったチェルシーだが、オフザボールで動き回る選手を気にしながらジョッタに対応していたことがこうした状況を間接的に招いているといえる。つまり、失い方が悪い。
一方的に攻撃を続けるリバプール。ファストブレイクから右の大外を駆け上がったブラッドリーが追加点を奪うと、前半終了間際にはディザジが空中戦の対応をミスした流れからバディアシルがPKを献上。ヌニェスはPKを仕留め切れなかったが、リバプールが一方的にぶん殴り続ける45分となった。
後半のチェルシーは3枚の交代カードでスカッドを入れ替え。前線をメインにテコ入れを行い、スピードを生かした裏抜けで勝負する頻度を増やす。全体の枠組み自体は大きく変わらなかったが、勝負する局面のクオリティは少し上がった。リバプールが前半ほど中盤のプレスが間に合ってないシーンが増えたのも、わずかにチェルシーに展開を押し戻す格好になっていた。しかし、得点を決めたのはリバプール。またしても得点に関与したブラッドリーがアシストを決めて3点差とする。
試合は完全に終わったかのように思えたが、エンクンクのゴールからチェルシーは追撃。4人交代をしてなお、リバプールは中盤の締め直しができず、この時間帯はチェルシーの反撃を受けることとなった。
しかし、再びリバプールはゴールを決めて3点差をキープ。抜け出してのシュートを延々とバーに当てる形を繰り返していたヌニェスが裏抜けを人のために使い、ディアスにアシストを決める。
このゴールで試合は完全に決着。週末に続くゴールラッシュでハッピーエンドのエンディングに加速し続けるリバプール。勢いに乗った状態でエミレーツでの一戦を迎えることになる。
ひとこと
チェルシーはワンサイドで受ける時間が長く、かつスコアを動かされてしまったのが痛かった。後半の面々自体は長いトランジッションで勝負できなくはなさそうだったので、前半の踏ん張りの利かなさはしんどかった。DF人のこの日のクオリティはそうした踏ん張るプランにそぐう水準になかったように思える。にしてもブラッドリーはすごいね。
試合結果
2024.1.31
プレミアリーグ 第22節
リバプール 4-1 チェルシー
アンフィールド
【得点者】
LIV:23′ ジョッタ, 39′ ブラッドリー, 65′ ショボスライ, 79′ ディアス
CHE:71′ エンクンク
主審:ポール・ティアニー
第23節 ウォルバーハンプトン戦(H)
脆すぎるカウンター耐性でトップハーフ入れ替わり
リバプールに4失点というハードな敗戦を喫してしまったチェルシー。本拠地でのウルブス戦で再起を図る。敗れればウルブスと入れ替わる形でボトムハーフに転じてしまう一戦だ。
ボールを持つのはチェルシー。バックラインからボールを動かしつつ、ウルブスのナローな3センターの脇から前進を狙っていく。ウルブスの中盤の守備はそこまでコンパクトではなく、特にDF-MF間のスペースは空いてしまっている。したがって、チェルシーは中盤で段差を作りつつ、縦パスの出し入れでブロック内にフリーの選手を作って裏抜けを行う。序盤に迎えたエンクンクの決定機などはこれがハマった形である。
ウルブスは逆にボールを奪ったら素早く縦にカウンターで出ていく。2CHのスライドとWBの迎撃から中盤よりも前からボールを刈り取る形からポジトラを狙っていく形である。
ボールを持つチェルシー、カウンターを狙うウルブスの構図から先制したのはチェルシー。中盤3人のブロック内での段差の作り方は見事。フリーになったカイセドからパルマーにラストパスを送り、これを冷静に沈めて先行する。
しかし、ウルブスはすぐに反撃。チルウェルからのパスを受けたカイセドを捕まえると、素早く縦に進み幸運なディレクションからボールはネットに吸い込まれていった。
以降もボールを持ちながらチャンスを伺うチェルシー。だが、ギャラガー、パルマーといった面々がブロックの外に流れてしまいエンクンクが孤立。左サイドもスターリングが起点になることができず、攻め筋から逆算したポゼッションができず。
そんなチェルシーを尻目にウルブスは勝ち越し。再三繰り返されていた右サイドの裏へのネトの抜け出しから折り返しに合わせたのアイト=ヌーリ。こちらも幸運な跳ね返りからゴールに吸い込まれてリードを奪ってハーフタイムを迎える。
後半も基本的には前半と同じ流れを踏襲。チェルシーはギャップを作りながらの前進を画策し、右サイドからの横断でスターリングが決定機を迎えるがこれを決め切ることはできない。
攻撃の強度は問題ないが、非保持では苦しい対応が続くチェルシー。バックスの強度不足は後半も顕著。クーニャのポストによって前向きに攻める機会を得たウルブスの前線に苦しめられることになる。
右サイドの抜け出しからネトがチェルシーの守備陣を切り裂くとインサイドで待っていたクーニャがゴールをゲット。この場面のようにチルウェルの裏を取られるシーンもあったし、シウバの対応は怪しかったし、グストはクーニャに振り切られてPKを献上するなどウルブスはやりたい放題。クーニャはPKを仕留めてハットトリック達成だ。
オープンなカウンターでのびのびとプレーを続けるウルブスを咎めることができなかったチェルシー。2試合連続の4失点で連敗。3連勝からボトムハーフに転じることとなった。
ひとこと
あまりにもポチェッティーノの風当たりが強まりそうな負け方過ぎる。
試合結果
2024.2.4
プレミアリーグ 第23節
チェルシー 2-4 ウォルバーハンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:19‘ パルマー, 86′ チアゴ・シウバ
WOL:22′ 63′ 82′(PK) クーニャ, 43′ ディザジ(OG)
主審:ティム・ロビンソン
第24節 クリスタル・パレス戦(A)
崖っぷちのロンドン・ダービーを制したのは?
2試合連続の4失点での敗戦を喫してしまったチェルシーとストレスフルな敗戦が積み重なり続けているクリスタル・パレス。マンデーナイトに開催されるロンドン・ダービーは今最も監督の去就が不穏な2チームによる一戦と言ってもいいかもしれない。
立ち上がりからプレスをかけたのはパレス。思えば、このパレスのプレス攻勢はスタンフォード・ブリッジの一戦から始まった流れである。高い位置からボールを奪ってはマテタにボールを預けながらなんとか起点を作るのがこの日のパレスのプランである。
しかしながら、チェルシーは保持で時間を作ることでパレスのプレスを撃退。試合はチェルシーがパレスのブロックを攻略できるかどうかという異なるフェーズになっていく。効果的だったのは右サイドにきっちりボールを運べたシーン。マドゥエケを追い越すグストのオーバーラップからパレスのブロックにギャップを作れたシーンである。
だが、これはまだパレスにプレスの色気が残っていたからこそ生まれたチャンス。2CBとカイセドが深い位置をとるチェルシーのポゼッションはなかなかパレスの中盤を引き出せずに苦戦。この辺りは割り切ったパレスのブロック守備のクオリティを見た気がする。ギャラガーのボックス内に飛び込むシュートが唯一のチェルシーのすがりどころになっていた。
パレスはボールを奪うとサイドからの速攻でファストブレイクを狙っていく。SBの追い越す動きの速さなどは非常に効果的でチェルシーを上回っていた部分と言えるだろう。
そして、パレスは押し込んだ数少ないチャンスを仕留めることに成功。レルマのミドルから先制ゴールを奪い、先行する。
まさかのリードを奪われてしまったチェルシー。しかしながら、後半早々に同点に追いつく。深い位置をとる右サイドからグストの折り返しをギャラガーが仕留めるという前半と陸続きのゴールで試合は振り出しに戻る。
以降もチェルシーが押し込み続けるという構図は変わらず。パレスは左右に流れるマテタがボールを収めることで奮闘するが、前半よりもサイドの押し上げが効かずに苦戦。起点を作れない状況が続く。
スターリング、エドゥアールというそれぞれのジョーカーが攻撃を活性化するなど交代選手の動きが目立った終盤戦。しかし、またしても仕事をしたのはギャラガー。大外からの折り返しを見せたパルマーのパスを押し込んでまたしても古巣に恩返しゴールを決める。
終了間際にはエンソが速攻からゴールを奪い、試合は決着。目先の勝ち点がとにかく必要なロンドン・ダービーはアウェイのチェルシーに軍配が上がった。
ひとこと
ホジソン、潮時かもしれぬ。もうちょっといい別れの舞台を用意してあげたいところだが、エゼもオリースもいないのではどうにもならない感しかない。
試合結果
2024.2.12
プレミアリーグ 第24節
クリスタル・パレス 1-3 チェルシー
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:30′ レルマ
CHE:47′ 90+1′ ギャラガー, 90+3′ エンソ
主審:マイケル・オリバー
第25節 マンチェスター・シティ戦(A)
殴ることをやめないシティから1ポイントを持ち帰る
リバプールとアーセナルは前の時間ですでに勝利。とはいえ、シティはこの試合とミッドウィークの中断分を連勝すれば首位に躍り出る。コペンハーゲン遠征後のハードな試合だが、ここはなんとしても勝利が欲しいところだろう。
立ち上がりからシティはハイプレスでチェルシーを強襲。畳み掛けるようなプレスから一気に先制点を奪いにいく。
しかしながら、チェルシーもこれに応戦。この日のチェルシーは深い位置からの反撃という形で裏抜けを作り出す点が非常に優れていた。ジャクソンをポスト役として段差を作り、フリーマンから裏にジャクソンもしくはスターリングが抜け出すシーンがそこそこな頻度で作られることとなった。
シティはサイドからオープンにクロスを上げる状況を作ることでチャンス構築。ハーランドに縦パスが入り、デ・ブライネに落とされて、裏のフォーデンに展開されたシーンなどはシンプル。ただし、チェルシーも大外の守備にはSB、そしてハーフスペースの封鎖にはエンソとカイセドが動員されているので、簡単にオープンな展開を作ることは難しい。
そのため、左右にボールを動かすことでチェルシーを揺さぶる。具体的には左右にボールを動かすことでエンソとカイセドにカバーリングを間に合わせないようにする方向性である。
この流れでチャンスを作ることができていたシティ。しかしながら30分以降はサイドを入れ替えながらの攻撃が機能せず。チェルシーはギャラガーが圧縮する形と逆サイドに展開されることは少なくなり、ボールサイドに守備者を動員できることが増えてくる。それでもチャンスを作れるシーンがあるのがシティの凄みなのだけども。
ギャラガーの働きはとても良かった。アンカーのロドリの監視に加えて、サイドの圧縮のためのスライドと機を見たCBへのプレスとあらゆる方向のタスクをこなしていた。
そして、先に挙げたカウンターの道筋からようやく先制点をゲット。ボールタッチが良好なジャクソンが自らポストをきっかけに抜け出すと、スターリングへのアシストを決めてついにリードを奪う。
迎えた後半。立ち上がりからシティは猛攻を仕掛けていく。カイセドの退場疑惑など、シティ側には選手が文句を言いたくなるような判定がちらほら。その度、シティは攻撃に怒りを込めての強シュートを連打するようになっていた。
攻撃の中心は左サイドのドク。攻め疲れないという彼の長所と単調さと相手を剥がした後のプレーの精度という彼の課題の両面が見えたのがまさにこの日の後半という感じだろう。それでもサイド攻撃におけるパスワークからクロスを上げる隙を作るのはさすが。コルウィルとディザジという粘っているチェルシーのCB陣もクロスに対して外されてしまうシーンが出てくる。ただ、この日はハーランドの決定力がイマイチでなかなかチャンスをゴールに結びつけることができない。
チェルシーは左サイドからの裏抜けカウンターという一本槍で後半は対抗。チルウェルとジャクソンという加速できる選手を軸に、なるべく少ない手数でシティの背後を強襲するプランである。リードしているという点では悪くはなかったが、当然頻度という部分では明らかに減ってしまう。
70分にチャロバーの投入で5バックにシフトするチェルシー。以降も守備的な交代を継続する。ロドリが追撃弾を決めた84分にはすでにもう一度攻撃に転じるのは難しい状況だった。
32本のシュートで殴り続けるシティだったが、最後まで勝ち越しゴールを決めることはできず。勝ち点3を詰めなかったシティはついに優勝争いのポールポジションをリバプールに明け渡すこととなった。
ひとこと
シティ、相手を殴り続けるということのスキルの高さがすごい。
試合結果
2025.2.17
プレミアリーグ 第25節
マンチェスター・シティ 1-1 チェルシー
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:84′ ロドリ
CHE:43′ スターリング
主審:アンディ・マドレー
第27節 ブレントフォード戦(A)
前半はチェルシー、後半はブレントフォードが勢いに乗る
トニーの復帰以降も思ったようにV字回復とはいかないブレントフォード。特に響いているのは失点の多さ。ピノックに加えて、前節ベン・ミーが離脱してしまったことで、バックラインの人で不足にはさらに拍車がかかっている。対するは先週カップ戦タイトルを逃してしまい、難しい1週間を過ごしたであろうチェルシーだ。
まずはロングキックをベースとして試合はスタート。試合が落ち着くとボールを持ったのはアウェイのチェルシー。ブレントフォードの3-5-2を鎮圧し、バックラインからボールを動かしていく。左落ちするエンソなど外循環の方策からの前進を狙っていく。
ミドルブロックで何とか踏ん張りたいブレントフォードはWBが高い位置から奪いに行くなど積極的なアクションを見せる。だが、こうした部分は逆にチェルシーに利用された印象。高い位置を取るWBの背後にジャクソンが抜け出したり、プレスで間延びしたライン間に入り込むパルマーに縦パスのレシーバーになられたりと怪しい動きは満載であった。
しかしながらジャクソンがなかなかアタッキングサードでもたついてしまい、攻撃を仕上げることができないチェルシー。抜けた後のコントロールが乱れたり、ファーにてフリーで待つチルウェルのことを認識できていなかったりなど、いくつかのプレーでチャンスをフイにしてしまう。
チェルシーの先制点はジャクソンのフィーリングが合ったタイミングでようやく。右サイドのクロスにばっちり合わせたジャクソンが35分に先制ゴールを手にする。ブレントフォードからすると、クロスのレシーバーは1枚だったのでここまでフリーにしてしまうのは頭が痛いところだろう。
しかしながら、後半はブレントフォードが反撃。ややアバウト感を残す感じで入ったチェルシーに対して、カウンターを中心に攻勢に出ていく。同点ゴールを決めたのは50分。インサイドに入っていくローアスリウがゴールを仕留めて試合は振り出しに。前節のルイス-ポッターもそうなのだが、最近のブレントフォードのWBはインサイドに入っていきながら得点に絡む動きが多い。
さらに70分手前にはウィサがアクロバティックなゴールをゲット。今節はもちろん、今季でも指折りのスーパーゴールで一気にチェルシーを逆転する。
バックスのバタバタ感から逆転を許してしまったチェルシーだが、何とかそのバックスがカタをつけて試合をフラットに。ディザジのヘディングで再び同点となる。
シーソーゲーム感があった試合は引き分けで終了。互いに勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
チェルシー、前半まではよかっただけに勝ち切っておきたいゲームだった。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
ブレントフォード 2-2 チェルシー
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:50‘ ローアスリウ, 69’ ウィサ
CHE:35‘ ジャクソン, 83’ ディザジ
主審:ジャレット・ジレット
第28節 ニューカッスル戦(H)
抱える課題が露呈する勝利に
ハイプレスに出て行ったのはアウェイのニューカッスル。高い位置から相手を積極的に捕まえにいく入りでチェルシーのバックラインにプレスをかけていく。チェルシーはこのハイプレスに真っ向から組み合う形になった。CBが広がり、ペドロヴィッチをパスワークに組み込みながら横幅を使って脱出口を探る。
最終的にはチェルシーはニューカッスルのプレスを解決したと言えるだろう。スターリングが受けてターンして前を向く形が初手だった。チェルシーは二手目であるグストを壁に使ったパルマーの脱出で一気にゴールシーンまで辿り着く。
ニューカッスルは引き続き積極的にプレスに出て行っていたが、前に起点を作るチェルシーに苦戦。この辺りはシティ戦から本当に上手。前線の縦関係を作りつつ、ロングキックで脱出しつつニューカッスルのプレスを空転させる。
ニューカッスルは頼みの綱だったゴードンが負傷してしまうなど踏んだり蹴ったり。しかしながら、一気に畳み掛けられそうな状況なのにも関わらず不思議と流れを手放してしまうのがチェルシー。蹴りつつブロックを組み、試合を落ち着かせる方向に舵を切ったのかな?と思いきや、いつの間にかニューカッスル相手に自陣から脱出する術を失ってしまい、一方的に押し込まれる展開に。
すると、エンソの雑な縦パスから自陣での脱出に失敗する流れから失点。イサクらしい抜き切らないにも関わらず長いレンジから仕留められるという特殊技能のフィニッシュに仕留められて、試合は1-1でハーフタイムを迎える。
後半、ニューカッスルのプレスに対してチェルシーはバックラインからロングボールで前線に当てながら回避を狙う。この形はそこそこにうまくいっていたが、ニューカッスルの攻撃に対してのプレスはぎりぎり。試合の展開としてはオープンな立ち上がりとなった。
スコアを先に動かしたのはチェルシー。ジャクソンでピン止めしたDFラインの手前でパルマーがボールを受けてカットインからシュート。スリーオンラインの異形のような形からスペースメイクで間合いを作ってのシュートは見事だった。
しかしながら、再び雲行きが怪しくなるチェルシー。トリガーが何かはわからないが、再び押し込まれるフェーズに突入する。何がきっかけかわからなくてもリードするとばたばたするチェルシーというのはあるあるである。だが、これも左サイドで起点を作ったジャクソンから解決。後方からやってきてギャラガーからボールをかっさらったムドリクが相手をかわしてゴールイン。さらに突き放す。
ニューカッスルの選手交代が白旗ムードだったこともあり、これで試合は落ち着くかと思われたが、最後までばたばたは止まらず。緩慢な中盤の守備とククレジャの飛び込みから失点を許してしまう。
それでも何とか逃げ切りに成功したチェルシー。リーグでは3試合ぶりとなる勝利を手にして10位との勝ち点差を縮めた。
ひとこと
ニューカッスルの手札の少なさに助けられた感のあるチェルシー。リード時の試合運びの拙さはチームの成績が安定しない大きな要因といえるだろう。
試合結果
2024.3.11
プレミアリーグ 第28節
チェルシー 3-2 ニューカッスル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:6‘ ジャクソン, 57′ パルマー, 76′ ムドリク
NEW:43‘ イサク, 90′ マーフィー
主審:ジョン・ブルックス
第30節 バーンリー戦(H)
悪癖を見せたチェルシーと意地を見せたバーンリー
立ち上がりからロングキックの応酬となった試合。変わった狙いが見えたのはアウェイのバーンリーの方だった。バーンリーのロングボールは左サイド狙い。2トップが左サイドに流れて起点を作り、左のSHをスタートポジションとするオドベールがインサイドに入ってくる。
この試合におけるバーンリーの左サイドの動きは興味深いものだった。サイドに流れる2トップをサポートするのは大外に立つヴィチーニョと後方支援役のカレン。2トップで起点を作り、折り返す動きからフィニッシュを狙っていく。
ただ、10分が過ぎると少しずつチェルシーのペースになっていく。まずはカウンターからジャクソンに当てることでファストブレイクを進行。右サイドのヴィチーニョの背後を取る形から一気にサイドの奥をとる。
定点攻撃でも右サイドは軸になる。カイセドのサリーか、グストを片上げするかのどちらかで3-2-5の形を作ると、やはりグストの抜け出しの形からクロスを上げていく。
だが、決め手になったのは左サイド。セットプレーからのクロスで先制点かと思われたが、これはハンドで取り消し。しかしながら、ムドリクがアシニョンの退場を誘発してPKを奪い取る。珍しく怒りに身を任せて退場するコンパニのリアクションも理解できる微妙な判定だった。このPKをパルマーが仕留めて先制。チェルシーがリードしてハーフタイムを迎える。
後半も3-2-5でポゼッションするチェルシーが4-4-1で構えるバーンリーを押し込んでいくスタート。しかし、バーンリーはすぐに反撃。右サイドに移動したヴィチーニャを起点とした攻撃でムドリク、エンソ、カイセドをまとめて手玉にとると最後はカレンのミドルで同点に。
以降はバーンリーに10人という数的不利を感じるシーンは少なかった。中盤のハードワークにより、サイドのスペースを埋めることがやたらと上手かったし、そこそこボール保持の機会も得ていた。
サイドの数を合わせられたチェルシーは力技で対抗。ムドリクとマドゥエケの両翼からゴリゴリと削るようにしてクロスを上げていく。
ただし、勝ち越しゴールはややテイストが違った。後半は存在感が薄かったパルマーがスターリングのオシャレなフリックを受けてゴールをゲット。サイド攻勢だった後半の中では異質な中央破壊からチェルシーがリードを奪う。
だが、直後にバーンリーはセットプレーから同点。最後までピリッとせずに試合を仕切れなかったチェルシーは45分以上10人だったバーンリーにホームで引き分け。チームの士気に影響しそうな重たい勝ち点ロストとなった。
ひとこと
後半に垂れる悪い時のポチェッティーノのチェルシーが顔を出したなという感じ。
試合結果
2024.3.30
プレミアリーグ 第30節
チェルシー 2-2 バーンリー
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:44′(PK) 78′ パルマー
BUR:47′ カレン, 81′ オシェイ
主審:ダレン・イングランド
第31節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)
大乱戦の幕を引いたパルマーのハットトリック
低迷が続く両名門の直接対決。国内での順位をCL出場権内に押し上げていくのは厳しい状況ではあるけども、少なくとも目の前の相手を叩きのめしたい一戦となっている。
まず、保持で入ったのはチェルシー。ユナイテッドはCB片側だけにプレスをかけて他は噛み合わせる形。バックラインからボールを動かしながら、どこに隙を作っていくかをチェルシーが探る立ち上がりとなった。
その立ち上がりの懸念は早々に解決。ややトランジッション気味の局面から右サイドでギャップを作ることに成功。グストがフリーで抜け出して少しごちゃっとした折り返しを最後はギャラガーが押し込んだ。
ユナイテッドが保持に回った際も課題は同じ。中盤が捕まっている形でここからボールをいかに動かすかということが問われることとなる。こちらはサイドのレーン交換が主。WGの周辺でSHとSBの位置関係を変えながら攻撃を仕掛けていく。大きくサイドを変える展開から薄いサイドを作ることもセットである。
しかしながら、これはずっと今季のユナイテッドの課題なのだけども、ポジション交換でフリーになった選手がその先でできることの引き出しが物足りない。例に出してアレだけども、インサイドで高い位置を取るワン=ビサカなどはその代表格と言えるだろう。
配置でできたギャップを優位に繋げることができていないユナイテッドに対して、チェルシーは追加点。ジャクソンのポストから左サイドに展開し、ククレジャとムドリクの2人のサイドアタックからPKをゲット。アントニーがククレジャにインサイドに入られてしまいファウルを犯してしまった。パルマーがゴールを決めてチェルシーはさらにリードを広げる。
大きくサイドに揺さぶられながらもライン間はコンパクトに維持できていたチェルシー。順風満帆な流れかなと思ったけども、これに水を差してしまったのがカイセド。技術的なミスもそうだけど、GKに戻せる状況で「それ必要?」と思える横パスからガルナチョの決定機を演出。これを仕留めてリードは1点差に。
すると、あっという間にユナイテッドは同点。左サイドからのクロスにファーで待ち構えていたブルーノが仕留めて試合は振り出しに。
流れは良かったのに追いつかれたチェルシー。後半は内容が悪くなるという伝統はこの日も踏襲。不安定な流れのきっかけになるのはこの日もCB。強引な突撃や縦パスのミスからリズムを失い、一気に押し込まれる機会が増えていく。
ただし、この日はユナイテッドも苦しい流れが改善することはなし。ミドルゾーンでの踏ん張りが効かなくなった両チームは守備のコンパクトさとは無縁で互いにゴール前に進撃していくスタートとなった。
そういう意味ではフラットに引き戻せたユナイテッドが有利とも言えるかもしれないが、こちらは負傷者トラブルに襲われることに。HTでヴァランのトラブルで代わりに入ったエバンスがこちらも負傷交代に見舞われる。
しかし、CBが致命的なミスを犯してしまったのはチェルシー。バディアシルの雑なボールコントロールを咎めたユナイテッドは速攻からの反撃に。またしても相手の後方ブロックの雑さに漬け込む形でガルナチョのゴールを奪う。
リード以降は順調に時間を使っていたユナイテッドだが、後半ATに落とし穴。交代選手として右サイドに投入されたマドゥエケに対して、ダロトが簡単にファウルを犯してしまいPKを献上する。
PKを決めて勢いに乗ったパルマーは止まることなく決勝点まで。ディフレクションに助けられたミドルはすっぽり枠の中に入り、チェルシーは劇的な逆転弾を手にする。
互いにチグハグさが目立つシーソーゲームを制したのはチェルシー。ハットトリックのパルマーに導かれて、歓喜の逆転勝ちを収めた。
ひとこと
いやぁ、見ている分には楽しかった。
試合結果
2024.4.4
プレミアリーグ 第31節
チェルシー 4-3 マンチェスター・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:4′ ギャラガー, 19′(PK) 90+10′(PK) 90+11′ パルマー
Man Utd:34′ 67′ ガルナチョ, 39′ ブルーノ・フェルナンデス
主審:ジャレット・ジレット
第32節 シェフィールド・ユナイテッド戦(A)
実らない守備固めで2ポイントを失う
前節はマンチェスター・ユナイテッド相手に劇的な勝利を挙げたチェルシー。出し入れが多い試合が続きつつも地味に無敗の記録は続いている。最下位のブレイズ相手にここはきっちりと勝ち点を積み重ねておきたいところである。
ボール持つのは順当にチェルシー。RSBに入ったディサシを含めた3人のCBでブレイズの2トップに対してズレを作る形で組み立てを行っていく。
一方のブレイズはボールを奪ったらとりあえず前に蹴るスタート。落ち着かずポンポン蹴るような展開を誘発する。チェルシーはあまりこの傾向を抑制できなかったように思えるが、保持で押し込む機会が多いことを活かしセットプレーから先制点をゲット。CKから久しぶりの先発となったチアゴ・シウバが先制点をゲット。ブレイズはドフリーでシュートを許してしまった。
チェルシーは先制ゴール後も保持からペースを握る。ショートパスを繋ぎながらもパルマーの裏抜けなど奥行きをもたらすプレーでブレイズのゴールに迫っていく。
だが、チェルシーは自陣のMF-DF間のスペースが空きやすくバイタル管理が甘め。ブレイズは強引な裏抜けは阻まれていたが、ライン間のパスは刺さるように。すると、ここのエリアでパスを受けたマクバーニーがタメを作り、裏に抜けたボーグルから同点ゴールをゲット。試合を振り出しに戻す。
追いつかれたブレイズは保持でもう一度巻き直しを図るが、途中でパスミスが出てしまいどうも安定しない。リズムを掴みきれないまま試合は同点でハーフタイムを迎える。
後半もペースは同じ。ゆったりとしたボールを持つチェルシーが押し込んでいくスタートとなった。中盤でパスの切れ目を使って加速。繋ぎながら前に出ていく。左右に揺さぶりながらブレイズの3センターを揺さぶり、その脇からパルマーが顔を出す形で攻撃で勢いをつけていく。
一方のブレイズもブレアトンが裏抜けから起点を作る形で地道に陣地回復。チェルシーに対してこちらも細かいパスワークから裏抜けで流れをひっくり返していく。ただし、アタッキングサードに迫る頻度は雲泥の差。優勢に立つチェルシーがパルマー→マドゥエケから勝ち越しゴールを奪う一方で、ブレイズはセットプレー以外でゴールに迫ることができない。
勝ち越した後も手を緩めず敵陣に向かっていたチェルシー。だが、試合終了間際に落とし穴。マクバーニーを中心に競り合いからなんとかボールを繋ぎ、最後に再びマクバーニーが抜け出しからゴールを奪い取ってみせた。守備固めで交代に入ったバディアシルはマクバーニーとの競り合いに敗れてしまった。
今節の劇的ゴールはチェルシーにとっては悪い方向に。ブレイズに土壇場で同点ゴールを許してしまい、後半ATに勝ち点2を失うこととなった。
ひとこと
やっちまったな!チェルシー!
試合結果
2024.4.7
プレミアリーグ 第32節
シェフィールド・ユナイテッド 2-2 チェルシー
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:32′ ボーグル, 90+3′ マクバーニー
CHE:11′ シウバ,66′ マドゥエケ
主審:ロベルト・ジョーンズ
第33節 エバートン戦(H)
ようやく会心の勝利
チェルシーの保持がベースでスタートしたこの試合。エバートンはこれに対して高い位置からの積極的なプレスで対抗。ハイプレスからのショートカウンターの成立を狙っていく立ち上がりとなった。
序盤の数回のプレスはエバートンにとって手応えのあるスタートとなったが、徐々にチェルシーはハイライン破りに成功していくように。半身でボールを受けるカイセドからサイドにボールを叩き、グストのオーバーラップを重ねることで敵陣に侵入したり、あるいはジャクソンのポストから左右に広く展開したりなど、いくつかのプレス回避のスタイルを見せていく。
先制点はこうした前進のルートにアタッキングサードの仕上げが乗っかった形。パルマーの1枚剥がしてのシュートを仕上げとしたチェルシーが先制点を奪う。
以降も安定したハイライン破りを見せるチェルシー。ジャクソンのポストとCHからの配球の2つを武器にアタッキングサードに侵入し、パルマーが仕上げるという形を確立し、5分後にはパルマーが追加点を奪う。エバートンとしては中央のユニットが剥がされまくっているのが気がかりである。
何失点してでもハイプレス!そして、前にとにかく蹴る!というスタンスを貫きたい姿勢を見せていたエバートン。それだけに、自陣でのピックフォードのパスミスからあっさりとパルマーにハットトリックを許してしまったのは切なさがある。
3点のリードが生まれた時点でチェルシーは非保持でラインを下げる。エバートンは少しずつボールを持てるようになっていた。ベトはクロスに合わせてネットを揺らすがオフサイド。徐々に攻めることができる?と思った矢先にジャクソンが4点目を仕留めたところでハーフタイムを迎える。
3枚交代を敢行するエバートンだが、試合はチェルシーの保持ベースというところに変化はなし。エバートンのブーストに効果を出させないように試合をコントロールすると、ターコウスキの安易なプレーからPKを獲得。展開は落ち着かせることができていたが、身内では誰がPKを蹴るか揉めているのがほほえましかった。
以降もずっとチェルシーは保持のターンが続く。エバートンの交代は試合自体のテンションを上げるものにはならず、エバートンの得意な泥試合の展開に持ち込むことはできなかった。
若手を中心にプレータイムを与える交代を敢行したチェルシー。大量ゴールショーの締めはその交代選手の1人であるギルクリストの得点であった。
負けこそないものの、なんとなくミソがつく試合が多かったチェルシー。ようやく会心の勝利をあげて欧州カップ戦出場権争いをまだまだ諦めない姿勢を見せた。
ひとこと
ちょっとエバートンは軽い展開が続いてしまったかな。後方があのプレーが続いてしまうと、ハイプレスは機能しないだろうなという感じ。
試合結果
2024.4.15
プレミアリーグ 第33節
チェルシー 6-0 エバートン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:13′ 18′ 29′ 64′(PK) パルマー, 44′ ジャクソン, 90′ ギルクリスト
主審:ポール・ティアニー
第29節 アーセナル戦(A)
青写真通りのギアアップで大量得点
レビューはこちら。
中2日での試合が続くアーセナル。10日間で4連戦のトリを飾るのはチェルシーとのビッグロンドンダービーである。
体力面で不安のあるアーセナルに対して、チェルシーはハイプレスでスタート。冨安がインサイドに絞る3-2型のアーセナルには陣形的にはチェルシーはハメ込めるようになっている。しかしながら、実際にはアーセナルのビルドアップにはハヴァーツ、トロサール、ウーデゴールといった面々も顔をだす。それによりチェルシーのプレスには足りない部分が出てくるように。
そういう意味でチェルシーのプレスはハマりきらず。アーセナルはショートパスからスムーズに前進することで先制点をゲット。相手を右サイドに引きつけつつ横断することでチェルシーの引き剥がしに成功。アイソレーションの機会を得ることができたトロサールが角度のないところから先制点を決める。
チェルシーの保持に対してはアーセナルは右サイドを軸としたプレスで対抗。いつもほどの強度はないが、相手をきっちり押し下げる役割は果たしていた。しかしながら、チェルシーも左右に流れるジャクソンや右の大外から仕掛けるマドゥエケからアーセナルのゴール前に進んでいく。
速攻はもちろん、自陣からのビルドアップでも全く手応えがないわけではなかったチェルシー。だが、ボールの奪いどころを定められない状況は変わらず。試合はアーセナルのリードでハーフタイムを迎える。
後半はギアアップしたアーセナルがチェルシーをあっという間に飲み込む展開に。プレッシングから一方的に押し込む状況を作ったアーセナルはセットプレーからホワイトが追加点を決める。
このゴールでチェルシーは中盤のプレスが後手に。降りるアクションを見せたウーデゴールから一発で抜け出したハヴァーツがゴールを決めてさらにリードは広がる。
終盤はククレジャとの優位をとったサカを軸に右サイドから攻めるアクションを見せたアーセナル。周りの動きだしを見逃さなかったアーセナルはさらにこちらのサイドからの侵入でハヴァーツが追加点を奪う。
最後はホワイトが角度のないところからクロス性のシュートを決めて5点目をゲット。大量5得点を挙げたアーセナルがチェルシーに順位の差を見せつけた90分となった。
ひとこと
後半頭のギアアップからの畳み掛けは体力的に不安があるアーセナルが描いた青写真通りの展開だろう。
試合結果
2024.4.23
プレミアリーグ 第29節
アーセナル 5-0 チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:4′ トロサール, 52′ 70′ ホワイト, 57′ 65′ ハヴァーツ
主審:サイモン・フーパー
第35節 アストンビラ戦(A)
保持で粘れないビラがリードを溶かす
負けない粘り強さはエミレーツで一旦終焉。逆転での欧州カップ戦の出場権を狙うためにビラ・パークからチェルシーはリスタートを図る。
気合の入ったチェルシーは立ち上がりからハイプレスでスタート。サイドにボールを追い込みながらプレスを仕掛けていく。ビラはこのプレスを回避することであっさりと先制。ハイプレスを一気に退けながら押し下げたところからトーレス→ディーニュで左サイドの背後をとり、折り返しにミートしたのはマッギン。これがククレジャのオウンゴールを誘って先制する。
先制したこともあり、ビラはアンカーを管理する形で自陣にプレスを構える。ベイリーはククレジャをマークすることで5バックにシフトする形を見せていく。攻撃のメインはカウンター。前に出てきたチェルシーをひっくり返す速攻からの攻撃で十分にチャンスに迫ることができるという算段だろう。
2CB+2CHのボックスビルドに時々チャロバーで低い位置からの組み立てを図るチェルシー。しかしながら中央と最終ラインを手厚くプロテクトするビラに対して、なかなか活路を見出せずにいる。ならば!ということでダイレクトな裏抜けからジャクソンはネットを揺らすが、これはオフサイド。同点のチャンスを逃す。
一方のビラは前半終了間際に追加点をゲット。攻め上がったキャッシュから横断に成功すると、ゴールを決めたのはロジャーズ。2点のリードでハーフタイムを迎える。
後半、チェルシーは保持をベースに反撃。ククレジャがインサイドに絞るなどのアクションを起こすことで少し流れを変えようとしていた。
しかしながら、後半に流れを変えたのはむしろ高い位置からのプレッシング。敵陣から躊躇なく圧力をかけていくチェルシーに対して、ビラはタジタジ。自陣でのロストを連発し、脱出することができない。ボールを奪ったチェルシーは縦にボールを刺すと、サイドのマドゥエケから勝負に行く。
追撃弾はルイスを捕まえたギャラガーからのショートカウンター。最後にマドゥエケが仕留めて1点差に迫る。このゴール以降、ビラは単発での裏抜け以外はほぼ押し込まれる苦しい展開に。ハイプレスで蓋をし続けるチェルシーはギャラガーが追加点をゲット。ブロックの外からのミドルでついに同点に追いつく。
単発のカウンターからも十分に攻撃を仕掛けることができていたビラ。だが、自陣からのパスミスからオルセンのファインセーブで難を逃れたものの、セットプレーからディザシにネットを揺らされてしまう。しかし、これはバディアシルのファウルで取り消しに。命からがら引き分けをもぎ取ったビラが最後は勝ち点1を守り切った試合だった。
ひとこと
これだけプレスから脱出できないビラは久々に見た。
試合結果
2024.4.27
プレミアリーグ 第35節
アストンビラ 2-2 チェルシー
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:4′ ククレジャ(OG), 42′ ロジャーズ
CHE:62′ マドゥエケ, 81′ ギャラガー
主審:クレイグ・ポーソン
第26節 トッテナム戦(H)
セットプレーからの二発で因縁のダービーを制する
互いの目標達成のために負けることは許されないロンドン・ダービー。調子の上がらないトッテナムは高い位置からのプレッシングに出ていく形でスタート。チェルシーのバックラインに縦に速いボールを蹴らせてハイラインからボールを回収する。危うい場面もなくはなかったが、ストッパーになったのはファン・デ・フェン。ギリギリのところでの体を張ってのクリアでピンチを回避する。
チェルシーの保持はプレスに対して無理につなぐよりもこのようにトランジッションを意識する方がうまくいく。ロングボールもそうだが、ポジトラで瞬間的にフリーになるカイセドからの前進などは有効な手段だった。
一方のチェルシーはローブロックで構えてのスタート。先に述べた通り、カウンターには十分手応えがあった状態なので、ローブロックは望むところ。片側サイドに押し込むようにプレスをかけているが、トッテナムはこれをひっくり返す形で横断を成功させたりもしており、展開としては五分五分である。
ただ、チェルシーはプレスから色気を見せすぎてしまうと、逃げられてしまうことがしばしば。そういう意味では我慢をする方が好転するというチェルシーからすると難しい展開になっていた。
そうした中で先制したのはチェルシー。セットプレーからのチャロバーのゴールで先行する。
反撃に出たいトッテナムだが、アタッキングサードでの加速のフェーズは稀。ポロの抜け出しからサールの決定機などのトッテナムらしい揺さぶりからのチャンスはかなり限られていた。押し込んだフェーズにおいての仕掛けはチェルシーは安定。左右のWGからハーフスペースを狙うことでチャンスを作っていく。
後半もチェルシーは安全第一のカウンターベース。押し込まれたフェーズを受け入れていく。サイドの裏に流れての折り返しにフォーカスするトッテナムだが、時折見せるチェルシーのCB陣の不思議な対応を除けば特に問題なく時間を過ごしていた。
チェルシーはジャクソン、マドゥエケ、パルマーの右サイドを定点として攻撃のパターンを構築。敵陣での攻撃を安定させたチェルシーはセットプレーから追加点をゲット。パルマーの枠を捉えたFKからこぼれ球をジャクソンが押し込んでさらにリードを広げる。
最後はトッテナムにボールを渡して自陣でサンドバックを受け入れたチェルシー。人垣、人垣、人垣を作ったチェルシーは最後までトッテナムにゴールを割ることを許さず。因縁のロンドンダービーはホームのチェルシーは勝利を挙げて幕を閉じた。
ひとこと
CBコンビはたまに不安な時があるが、局面を見るとチェルシーは高クオリティだなと感じさせる内容だった。
試合結果
2024.5.2
プレミアリーグ 第26節
チェルシー 2-0 トッテナム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:24′ チャロバー, 72′ ジャクソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
第36節 ウェストハム戦(H)
3-2-5が上々の機能性を発揮してのゴールショー
8位と9位で迎えるロンドン・ダービーだが勢いは対照的。逆転での欧州カップ戦出場権獲得を目指して怪気炎をあげるチェルシーと、ELの敗退からやや勢いがトーンダウンしてしまうような形となっているウェストハムとの一戦である。
互いに強引なハイプレスにはいかない両チーム。2トップは共に縦関係を形成し、バックラインには時間が与えられる展開になった。
そうした状況の中でより明確にポゼッションでの道を見つけた感があったのはチェルシー。前節のアストンビラ戦の後半で採用したククレジャのインサイドへの絞りから大外のWGへの攻めのルートを見つける。
良かったのは大外一辺倒にならなかったこと。インサイドのジャクソンに当てることでウェストハムを外にフォーカスさせない仕組みになっていた。ウェストハムはズルズルと下がっているが、内側と外側のどこを封じるかが共有されておらず、ただ受けに回っている形が多くなってしまう。
保持で主導権を握ったチェルシーは大外からの仕掛けで先制点をゲット。マドゥエケの仕掛けからインサイドのジャクソンに当てたボールのこぼれをパルマーが仕留めて先行する。
先制されても特に試合は変わらない。カウンターに出ようとするウェストハムの攻撃は早い段階でチェルシーに潰されてしまい、反撃に打って出ることができない。
押し込むチェルシーは順調に追加点をゲット。インサイドに当てて、こぼれたところを押し上げた後方の選手が仕留めるという先制点を似た構図でリードを広げる。
さらにはチェルシーは前半に3点目をゲット。セットプレーからファーのシウバの折り返しをマドゥエケが仕留めて前半で試合を完全に決めてしまう。
後半もチェルシーは保持から試合を完全に支配。後半もギアを入れることなく様子見が続くウェストハムに対して、チャロバーからマドゥエケのタッチダウンパスが通ると、この折り返しをジャクソンが仕留めてゴール。アレオラが呆れるほど無抵抗だったウェストハムの守備陣の対応はルーズ。これでわずかにあった勝ち点獲得の可能性は完全に0になった感がある。
このゴールで試合のテンションは完全にダウン。どちらのチームもただただ時間を進めることにフォーカスしていく。その間にジャクソンは抜け出しから5点目を確保する。
チェルシーはそれ以降、プレータイムを与えていきたい選手を交代で積極的に使う機会としてこの試合を活用する。ウェストハムは特に何も起こせないまま試合は終了。無抵抗なゴールラッシュをただただ眺めるだけの90分となってしまった。
ひとこと
チェルシー、3-2-5の試運転としては非常に良い内容だったのではないだろうか。
試合結果
2024.5.5
プレミアリーグ 第36節
チェルシー 5-0 ウェストハム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:15′ パルマー, 30′ ギャラガー, 36′ マドゥエケ, 48′ 80′ ジャクソン
主審:アンディ・マドレー
第37節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)
お祝いムードに冷や水をかける
直前の時間の試合でルートンとバーンリーが敗れてしまった為、事実上の残留がほぼ確定したフォレスト。欧州カップ戦争いに名乗りを挙げているチェルシーをリラックスした気持ちで迎えることができる状況に。
試合はチェルシーの保持でスタート。ククレジャがインサイドに入るアクションでカイセドの横に立ち、内側でポイントを作っていく。ここからIH役となるパルマーとギャラガーを解放するパスワークができれば理想。チェルシーは早々にパルマー→ムドリクのスルーパスから一気にゴールを陥れる。
順風満帆なチェルシーのスタートであったが、少しこのゴールシーンのような一発でゴールに迎えるパスにこだわりすぎていた感があった。こういったパスは決まれば強いが、成功率が低い分カウンターを食らう危険性もある。そういう意味では諸刃の剣。フォレストはカウンターでの出足が非常に良好だったので、こうした状況を生かしたポジトラからのカウンターでチャンスを作る。フォレストはムリージョのキャリーからファウルをもらうと、このセットプレーからボリーがゴールを奪う。
以降も試合の構図としては同じ。保持のチェルシーはシステムの流動性を探りながらフォレストのカウンターを受ける形で試合が推移。ミスが減らずになかなかペースを掴みきれず、トランジッション色が強くなったままハーフタイムを迎えることとなった。
後半、ククレジャは正位置に移動。よりシンプルな4-2-3-1からの組み立てでボール保持をベースに戦っていく。特にククレジャがいなくとも中央はポイントを作ることができていたし、大外にグストを入れることで右の大外が生きるようになってからはさらに威力を増す。
後半のフォレストは左のハドソン=オドイを軸としたカウンターが生命線。それでも確実にここにボールを届けることができるギブス=ホワイトのおかげでここからゴールに迫ることができていた。
先にゴールを決めたのはフォレスト。エランガの助けを借りてより高い位置に入り込むことができたギブス=ホワイトからハドソン=オドイにラストパスを決めるとここからスーパーゴールをゲット。この試合初めてのリードを奪う。
追いかけるチェルシーは両サイドのテコ入れから追い上げを図る。先に効果を出したのは左サイド。スターリングの得意なカットインからの角度のついたシュートで同点に追いつく。
そして、決め手になったのは遅れてやってきた右サイド。復帰のジェームズの美しいクロスをジャクソンが叩き込んでついにリードを奪い取る。
劇的な逆転と嬉しいキャプテンのアシストで試合をひっくり返したチェルシー。残留がほぼ確定したフォレストに冷や水をかけて勝ち点3を確保した。
ひとこと
ジェームズ、素晴らしい復帰アシスト。
試合結果
2024.5.11
プレミアリーグ 第37節
ノッティンガム・フォレスト 2-3 チェルシー
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:16′ ボリー, 74′ ハドソン=オドイ
CHE:8′ ムドリク, 80′ スターリング, 82′ ジャクソン
主審:トニー・ハリントン
第34節 ブライトン戦(A)
順調な保持型チームとしての運用
勝てば欧州カップ戦での逆転出場の望みが繋がるチェルシー。ブライトンのホームでの試合という勝つハードルは低くない試合だが、ここはなんとか勝利を手繰り寄せたいところである。
立ち上がりからボールを持つアクションを見せたのはチェルシー。ブライトンのバックスは無理にプレスに行かず、チェルシーのバックラインはゆったりとボールを持つ。ククレジャのインサイドに絞るアクションは今節も継続。インサイドに差し込む動きと大外を迂回する動きを織り交ぜながら前進。今節はムドリクを壁にして、ギャラガーが前を向くという新しいレパートリーも見られた。総じて悪くない保持と言っていいだろう。
ブライトンはカウンターとセットプレーで粘りが求められるチャンスメイク。SHにボールを当ててのポストからの前進を狙っていく。だが、チェルシーのインサイドのブロックはとてもコンパクト。20分過ぎからボールを持てるようになっていたが、なかなか攻め手を見つけることができない。
先制点を奪ったのはチェルシー。左サイドのククレジャの突破からパルマーが合わせてゴールをゲット。前半のうちにリードを奪うことに成功する。
先制したことで一層落ち着いたチェルシーは幅を使いながらの保持を徹底し、安定した試合運びを取り戻す。ポゼッションのためのポゼッションだけではなく、クロスからの決定機もきっちりと演出することができていた。
後半、先に攻め手を見つけたのは追いかけるブライトン。ライン間で反転するエンシソからの加速で一気にゴールに迫っていく。アタッキングサードで狙い目にしていたのは左サイド。両SHをこちらサイドに集めることで攻略を狙っていく。
チェルシーは右サイド側からのひっくり返すカウンターでチャンスを狙いたいが、抜け出したジャクソンのパスが合わずに難航。それでもよりクリーンなチャンスメイクができていたチェルシーはエンクンクのゴールから追加点を奪うことに成功する。
以降はローブロックを組むことに専念したチェルシー。ハーフスペースを埋めるアクションを行うカイセドなどから自陣の低い位置を埋めることを徹底する。ボールを持ちながら解決策を探る必要があるブライトン。後半追加タイムにウェルベックのゴールから1点を返したが反撃はここまで。試合はチェルシーが上位に迫る勝ち点3を確保して幕を閉じた。
ひとこと
チェルシー、順調に組み上がってる感がある。もう少しカウンターの精度を身につければよりいいけども。
試合結果
2024.5.14
プレミアリーグ 第34節
ブライトン 1-2 チェルシー
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:90+7′ ウェルベック
CHE:34′ パルマー, 64′ エンクンク
主審:マイケル・サリスベリー
第38節 ボーンマス戦(H)
逆転のカップ戦確保に相応しい内容で着地
欧州カップ戦の出場権確保を目指しているチェルシー。6位を確保すればFA杯の決勝の結果次第にはなるが、ELの出場権確保も見えてくる。
ボールを持ちながら試合を進めていきたいチェルシー。ククレジャがいつものようにインサイドに絞りながらの勝負を仕掛けていく。ボーンマスは強気のプレスに出ていくという今季のスタイルを象徴するスタイルで対抗する。
ボーンマスの強気のスタンスは裏へのカバーリングも悪くはなく、手応えとしてはいいものだった。しかしながら、快調さが目立つチェルシー。裏へのカバーをひっくり返す形で先制。背後のカバーに出てきたネトがガラ空きにしたゴールマウスをカイセドが長いレンジで狙い撃ちしてゴールを決めた。
保持のフェーズでもチェルシーの手応えは良好。前線の降りるアクションに加えて、後方の選手の動き直しもマメ。パスコースを作る動きをきっちり見せることでボーンマスのプレスに対しては一手先を行っていた印象である。
ボーンマスは保持局面になれば押し込む機会をきっちりと作っていくが、チェルシーはこれをリトリートできっちりと跳ね返す。保持でも非保持でもチェルシーの手堅さが見える前半となった。
迎えた後半。先にチャンスを迎えたのはボーンマス。中盤から左右に揺さぶるクリスティによってウナルが決定機を掴むが惜しくもゴールを掴みきれない。
しかしながら、勢いをきっちりとひっくり返すことができるのがこの日のチェルシー。左サイドを打ち破ったスターリングが決定機を仕留めてさらにリードを広げる。
だが、直後にファーのウナルがククレジャに対してミスマッチを作り、オウンゴールを誘発。あっという間に試合は1点差に逆戻りとなる。ファー待ちのウナルは彼が入っている時の黄金パターンである。
この追撃弾以降は押し込むアクションが目立つボーンマス。チェルシーはきっちりと受けにまわり、跳ね返していくフェーズに突入する。
ボーンマスはソランケを投入しつつ、サイドアタッカーをリフレッシュして強化していくがチェルシーのバックラインを打ち破る決め手にはならない。チェルシーは逆に徐々に背後を固めるような用兵で自陣の守備を強化していく。
最後まで粘り切ることに成功したチェルシー。欧州カップ出場権を確実にする6位をキープ。終盤戦での猛チャージで最低限のノルマに滑り込むこととなった。
ひとこと
相手の狙いをきっちりひっくり返したチェルシー。堅実な終盤戦の内容は順位のジャンプアップに相応しいものだった。
試合結果
2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
チェルシー 2-1 ボーンマス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:17′ カイセド, 48′ スターリング
BOU:49′ バディアシル(OG)
主審:アンソニー・テイラー