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3 塚川孝輝
■計算外だった2020年
素材としてはポテンシャル十分、未知なる可能性を秘めた大器という触れ込みで松本から加入。スカッド的には中盤の底に大型選手を据えたいという今季の方針もあったため、アンカー起用が中心となりそうだったが、本来の資質的には迫力ある攻撃参加と試合終盤のクラッチシューターぶりが魅力ということでIHからの攻撃参加も期待できる存在だった。
プレッシャー下における細かいボールタッチなどは試合を使いながら慣れていくはずだったのだろう。外から移籍してきた選手特有の異物感はポゼッションにおいてはやや目につく部分もあった。
だが、こういった部分はフロントも鬼木監督も織り込み済みだったはず。真に計算外だったのは同年で2度にわたる脳震盪である。ゼロックス、ACLと2回の頭部接触による途中交代は塚川の2021年を大きく狂わせてしまった。
回復プログラムを受けている最中に山村と谷口を併用する高さを伴うアンカーでのクローズシステムが確立。橘田の台頭もあり、ベンチ入りすらままならない状況に。ACLのグループステージをほとんど棒に振ってしまったことと、ルヴァンカップとACLの敗退で秋以降の過密日程が緩和してしまったことも向かい風になってしまった。
とはいえまだ川崎でのプレーは見たい選手。来季もチャンスは与えられるはずだろう。じっくりと川崎に慣れるための1年だったと苦難の2021年を後々笑って振り返るために、2022年の飛躍に期待したい選手である。
アンケートを見ると周りからも自分でもバカであるという認識が一致しているよう。
『自分の性格を一言でいうと』→バカ
『自分の性格で気に入っているところ』→バカ
『第一印象でよく○○といわれます』→バカそう
『家族から何と呼ばれていますか』→サル
というバカとサルのオンパレードだったので、『最近できるようになったこと』で挙げていたニンテンドースイッチを使いながらいい感じで頭がよくなってほしいところである。
せっかくできるようになったなら。
6 ジョアン・シミッチ
■強みも弱みもクッキリ
序盤戦は不動のレギュラーとして君臨したが、秋先に一度メンバー落ちして以降は一気に戦力外の扱いに。めちゃめちゃ波の激しいシーズンになった。
プレイヤーとしてはかなり強みがはっきりしている選手。攻撃においては精度の高い左足で鋭い縦パスと正確で速いサイドチェンジを演出することができる。守備では機動力こそ難があるものの、ボールの行方を事前に察知する能力に長けており、前線の守備の誘導が決まればフィルターとしても十分機能する。空中戦でも強みを見せることができ、従来の川崎の中盤にはないものをもたらせる存在だ。
ただし、弱みもはっきりしている。得意なボールの持ち方が明白で、左足で扱える位置にボールを置けない際は一気に選択肢が狭まってしまう。そのため、左足を切られる立ち方をされると性能がガクッと落ちてしまうという難点がある。多分、日本の昭和に生まれていたら矯正させられているくらい極端な左利きである。
守備においても単純なかけっこを仕掛けられると後手に回ってしまう。シーズンが進むにつれて対策をされる機会が増えてしまった分、徐々に輝ける試合は減ってしまった。左サイドで密集になってもなんとかできる三笘がいなくなってしまったことも影響はあったかもしれない。
ただ、相手は選ぶとは言え普通に考えれば何試合もずっと使われないほどの能力の選手ではないので、クラブ側が割と早い段階で来季構想外の判断を下したなという感じ。長谷川よりも先に放出の噂が出たものの、その後ちっとも進展はなさそうなのが気がかりである。
ドライな話をするならば彼の移籍金が入ってくるかどうか、そして彼の年俸を来季も負担するか次第で川崎の編成は大きく影響を受けそう。チームにとっても、彼にとっても有益な判断をなるべく早めに下したいところだが。
確かに、選ばれた才能!って感じ。
8 脇坂泰斗
■代表招集でワンステージ上に
シーズン序盤戦は田中、旗手とのポジション争いに苦しんでいる時期もあり、スタメンで出た際も中盤を代える時は真っ先にベンチに下げられてしまうことが多かった。
だが、シーズン終盤はプレータイムが底上げされて、チームでの重要度が明らかに上昇した。大きかったのは代表招集と田中の退団だろう。チームでの背負う責任の量と、刺激が大きい体験を重ねたことで全てのプレーが一次元上がった感じ。
相手を背負うスキル、サイドでの展開の素早さ、得点への意識、守備でも貢献度とスケールがアップ。川崎が後半戦にペースを落とさなかった大きな要因の一つと言える。ただし、数字に残る部分としてゴールもアシストも伸びなかったというのも事実。得点に関与した数字は直近2年よりも落ちている。本人としては来季はここが課題になってきそう。
得点関与数が増えてくれば、2022年は代表定着も狙える一年。代表に足りないプリンスキャラを注入するためにも、是非ともカタールを狙っていきたいところだ。
10 大島僚太
■スタイル変化と試合勘に阻まれた一年
7試合のリーグ戦出場、および252分のプレータイムは共にプロデビュー以降自己最低の記録。やはり怪我の影響は大きく、年間を通してフィットしなかった感が大きい。
ピンポイントでイジメに帰ってきた清水戦では得点を取る活躍を見せたが、基本的にはチームへの適応へは苦しんでいたように見える。時折クールなパスを見せるものの、チームを支配しながらゲームを組み立てる絶対感はそこにはなく、本来の大島とは程遠い状況であった。
さらに難しいのはチーム事情。大島不在の間にトランジッションの強度と広い守備範囲が求められるようになったIHのタスク。能力以前に故障の頻度が高い大島にとっては単純にリスクが大きい。終盤で投入される試合が多かった今季だが、チーム側に特に彼を入れてボールを落ち着かせようという振る舞いは見られなかったため、今季は少なくとも彼自身がチームのIHのタスクに適応するしかなかった。
先発で出た試合においても得意なビルドアップ局面でなかなか貢献できず。もちろん、彼だけのせいではないが、プレスのきつかった鳥栖戦や天皇杯の大分戦で特効薬になれなかったのも痛かった。
現状では彼がいるとどうかでチームが戦い方を変えながら調整していくしかないように思う。大島モデルが来年の川崎にどれだけ組み込まれるかは彼次第。まずはフィットネスを取り戻して、年間で稼働することが目標となる。
センターかいないかって感じ!
16 長谷川竜也
■やりたいことと求める役割の摩擦
サポーター的ぐぬぬ大賞2021という感じだろう。2020年開幕時のような輝かしいフォームを取り戻せないまま、苦しみ続けたシーズンとなってしまった。
左サイドの大外を主戦場とし、内側に切り込みながらゴールをひたすらに狙い続けた一年。だが、正対した相手を交わしきれないまま、内側の密集に突っ込んでは攻撃が阻まれるという流れを繰り返してしまい、ファンを納得させるプレーを見せられた試合は数えるほどだった。
気になったのは足元に要求してしまう癖である。静止状態では対峙できないならば、動きながらパスを引き出すことで可能性は広がるはず。というかむしろ、その動きこそが長谷川の本来の持ち味だったはずだ。
相性が良さそうな小塚のフィットがなかなかうまくいかなかったことも大きいのかなとも思ったが、マルシーニョの活躍を見れば、川崎は裏に動き出せばボールが出てくるチームということは明白。なので、やはり本人の意識の方の部分が大きいのかなと思う。
求められるプレーさえできれば、十分に通用することはすでに証明できているので、長谷川ファンの自分としても非常にもどかしい一年だった。三好とコンビを組んで速い攻撃で幅を効かせた風間時代の活躍や、スコアラーとして頼もしかった2020年を見てしまうと、ここでのお別れは悲しい。
けども、確かに旅立ちのときとしてこの冬はふさわしいタイミングであると思う。チームで求められる役割の中で、自分の個性をいかに出していくか。まずはそこに立ち帰って新天地でも活躍を見せてほしい。
17 小塚和季
■天皇杯で夢を見る
同じ天才の系譜である家長が加入初年度にだいぶ苦しんでいたのを見ていたので、おそらく小塚もフィットに時間がかかるのだろうなとは開幕前から想像していたが、さすがにここまで出番がないのは想定外と言わざるを得ない。
ただ、プレーを見れば彼に出場時間が与えられなかったのは納得ではある。ボール保持ではボールを受けられないと立ち位置を下げてしまう癖があり、チームの重心をイタズラに下げてしまっていた。脇坂や旗手、田中など狭いスペースで受けることを厭わない選手が多いのが川崎の中盤なので、そうした中でポジションを下げてしか受けられないというのは非常に厳しい。
非保持においても、相手を捕まえるのがワンテンポ遅くなるケースが多く、クリーンにボール奪取をしきれないという難点が見られてしまっていた。
とはいえ、課題となるのは保持の局面だろう。天皇杯の投入後のプレーを見ればもう少し夢を見たいファンも多いはず。おそらく、来季がラストチャンス。家長のように味方に時間を作れる存在になれば、向こう数年川崎を背負えるポテンシャルはある。FIFA22のような活躍を現実でも見せられるような逆転の2022年にしたいところである。
FIFA22の小塚。誰だよ。
18 三笘薫
■川崎でも代表でもベルギーでも結果しか出さない
MVPこそオルンガに持って行かれてしまったが、MVP級の活躍を見せた2020年。その勢いを引き続き見せつける2021年となった。開幕直後にC大阪のように複数枚マークをつけてくるような相手なども出てきて苦戦した試合もあったのは確か。2021年は明らかに相手の警戒度合いがワンランク上がったように思う。
だが、左サイドから相手を引きちぎりながら全てを破壊する神っぷりは今年も健在。昨シーズンに比べれば試合ごとの波もなくなりどの試合でもフラットに脅威さを見せつけ続けた。家長、ダミアンとの3トップは川崎史はもちろん、Jリーグ史に殘るであろう凶悪なユニットとなった。
そして誰もが覚悟していたようにあっさり夏に退団。英国経由ベルギー行きで昇格組のユニオン・サン=ジロワーズに移籍し、首位をひた走るチームの一員として活躍している。
オリンピックでは苦い思いをしたが、アジア最終予選では急速に進む川崎化の一角を担うことに成功。勝てなければぐっと苦しくなるオマーン戦で伊東純也にアシストを決めて、日本を救ってみせた。
来季は予定通りに行けばついに英国上陸。屈強なDFが揃うプレミアでの活躍が今から楽しみだ。
結果しか出さない男。
22 橘田健人
■普通の顔で異次元に
初年度にいきなりゼロックスでプレーする大卒ルーキーということで加入当初から守田クラスの大物?という感覚を持つファンは多かっただろう。単にゼロックスのピッチに立ったというだけではなく、長年川崎でプレーしていたかのようないい意味で普通にプレーしているかのような姿もどこか守田と重なっていたし、なんなら最近うちの部署にきた新卒の子にも似ている。令和の有能なやつはなんでも普通の顔でこなすのである。
春先はベンチ外が続く時期もあったが、ACLのハットトリックで弾みをつけると、田中碧が旅立っていった中盤を支えることとなった。秋にはシミッチからレギュラーを奪い取り、アンカーとして君臨した。尻上がりにパフォーマンスを上げて後半戦の主役となった。
相手の1stプレスライン後方で我慢できるポジショニング、ボール配球の正確性、そしてクリーンなボール奪取と運動量。サイズこそないが、体をぶつけられても簡単には当たり負けしないフィジカルの強さは有しており、少なくともJでプレーする中では物理的に届かない空中戦以外に気になる部分はほとんどない。
本人に海外移籍希望があるかどうかはわからないし、サイズに難があるゲームメーカーにどこまで需要があるかはわからないが、2022年中のお別れをありえる風格にはなってきた。2022年始めの代表候補キャンプには呼ばれなかったが、川崎化に傾倒していくならば一発逆転のチャンスはなくはないだろう。
まずは2年目もパフォーマンスを落とさずに更なる高みを目指してほしい。
25 田中碧
■カタールに飛躍の2022年にしたい
昨年の記事で『三笘とどちらが海外に行くかのチキンレース中』と書いたが、見事に結果は同着。きっと、とっとと海外に行ってしまうだろうという見立てで早めにユニフォームを買っておいて正解であった。
山根、旗手と共に過労死三兄弟の一員としてシーズン立ち上がりからチームの中心人物として、勝利に大きく貢献。勝ってなお表情を崩さないストイックさはチームとして川崎をさらに上の次元に押し上げつつ、自身もなるべく高い位置まで辿り着かねばならないという使命感からだろう。
五輪では遠藤航と共に中盤の中心人物として国際舞台にて活躍。ここでの躍進がA代表の川崎が始まったきっかけのように思う。A代表では絶体絶命のオーストラリア戦で先制点を奪い取る活躍。代表シーンで大活躍の1年となった。
ドイツ移籍後の試合はなかなかチェックできていないのだが、クラブは2部で2桁順位と沈んでいる。昇格は難しい中できっちり買い取りOPが行使されるのかは気になるところだが、川崎に帰ってくることよりも他にやることがある選手なので、欧州の舞台での活躍を期待したいところ。カタールの夢舞台に向けて充実の2022年にしたい。
28 山村和也
■離脱の分、働いた後半戦と意地のダービー
今年も名バイプレイヤーとしての活躍は健在。シーズン序盤戦は負傷でまとまった期間の離脱となったが、帰還後は例年以上に活躍。主戦場でのCBでの出番はかなり増えた上に、離脱を繰り返した塚川とベンチ外に放り出されることが増えたシミッチに代わってアンカーとしての終盤での起用も目立った。
対空性能の高さと落ち着きのある持ち上がりは相変わらずの強み。プレーのムラも少なく、多くの離脱が続いたCB陣の苦しい時期を凌ぐ原動力となった。2年ぶり2回目となった鹿島戦での古巣嫌がらせゴールが攻撃面での最大のインパクト。宮城の劇的な逆転弾の立役者となった。
守備ではルヴァンの浦和戦や鳥栖戦など、一歩目の判断が遅れたり、ボールロストの状況が悪かったりすると振り回されるシーンが目につくようになったのは気になりはしたが、緊急出場となったリーグ戦最終節の横浜FM戦では快足揃いのアタッカー陣を向こうに回して十分に張り合ってみせた。非常に頼もしかったと言えるだろう。
もちろん、来季も残ってほしいが、本人がプレータイムを求めた上で納得のいくオファーが来てしまったら止められないだろうなと思う存在。今季は今の所は大丈夫そうだけど。タスクが多く難易度が高い川崎のバックスを成り立たせることができる貴重な戦力としてまだまだリーグとACLを戦いたいところである。
関係ないけど、この画像の打点やばくね。
41 家長昭博
■傭兵ではなくリーダーに
35歳を迎えた今シーズンもフル稼働の一年。昨年記録したキャリアハイとなる11得点には及ばなかったものの、8得点は立派な数字。かつ、38試合になったにもかかわらずリーグ戦での完全休養は1試合だけというのだから驚きである。
プレーの部分も衰え知らず。流石に全試合フルパワーで守備をやっている感はないが、ここぞというときは自陣まで戻れる守備はできるし、何より攻撃に転じた時のプラスを考えると外すわけにはいかない存在。後方の山根やジェジエウ、そしてIHなどのサポートとセットでユニットを組む必要はあるが、彼がいる限りは中心にチームを組むべきだろう。
彼が逆サイドに出張に行くか、それとも右サイドに開くのか?でチームの攻めのパターンが決まっている感があり、そこで決まることを監督はじめチームとして尊重している感すらあるのだから、大したものである。川崎はすっかり家長のチームになったと言えるだろう。
やや懸念なのはPKの失敗が重なってしまったこと。特に1つ目のミスである蔚山とのPK戦での失敗は川崎ファンには衝撃だった。天皇杯でも延長後半で下げたのを見ると、あまり彼にPKを蹴らせる気がなかったのかなとも。嫌がっていなければいいのだけども。
中村憲剛の引退や主力の海外流出に伴い、ピッチ外での発言に変化があったのには驚いた。チーム全体を見ての発言や試合の流れを考えた言葉が明らかに今季は増えた。天才肌でソルジャーのようにチームを渡り歩いてきた家長が川崎でチームのリーダーの1人として君臨する未来はあまり想像していなかった部分。
タイトルを獲得するための傭兵ではなく、近年の川崎の成功の象徴として来年も新たなタイトル獲得に邁進してほしい。
チームリーダーの正装姿。