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「EURO 2020 チーム別まとめ」~オランダ代表編~

目次

チーム情報

監督:フランク・デ・ブール
FIFAランキング:16位
EURO2016⇒予選敗退
W杯2018⇒予選敗退

招集メンバー

GK
ヤスパー・シレッセン(バレンシア/スペイン)
ティム・クルル(ノリッジ・シティ/イングランド)
マールテン・ステケレンブルフ(アヤックス)

DF
ナタン・アケ(マンチェスター・シティ/イングランド)
パトリック・ファン・アーンホルト(クリスタル・パレス/イングランド)
マタイス・デ・リフト(ユヴェントス/イタリア)
ステファン・デ・フライ(インテル/イタリア)
ジョエル・フェルトマン(ブライトン/イングランド)
デイリー・ブリント(アヤックス)
ユリエン・ティンバー(アヤックス)
デンゼル・ダンフリース(PSV)
オーウェン・ワインダル(AZ)

MF
ドニー・ファン・デ・ベーク(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)※8日に負傷のため欠場が発表
フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ/スペイン)
ジョルジニオ・ワイナルドゥム(リヴァプール/イングランド)
マルテル・デ・ローン(アタランタ/イタリア)
ライアン・グラフェンベルフ(アヤックス)
デイヴィ・クラーセン(アヤックス)
トゥーン・コープマイネルス(AZ)

FW
メンフィス・デパイ(リヨン/フランス)
ルーク・デ・ヨング(セビージャ/スペイン)
クインシー・プロメス(スパルタク・モスクワ/ロシア)
ワウト・ウェクホルスト(ヴォルフスブルク/ドイツ)
スティーヴン・ベルフハイス(フェイエノールト)
コーディ・ガクポ(PSV)
ドニエル・マレン(PSV)

各試合振り返り

GS第1節 ウクライナ戦

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■香車型WBの活躍で乱打戦を制する

 先行して第1戦を開催したイングランド(グループ順に記したこの記事では後ろだけど)に続き、オランダも非常に強度の高いプレーを見せた。攻撃時はWBが高い位置をキープ。加えてIHのワイナルドゥムも機動力を活かしてエリア内に侵入。立ち上がりから厚みのある攻撃でウクライナを攻め立てる。

 ここまでのチームはサイド攻略が主体のチームが多かったが、オランダは中央突破が主体。デパイのように間受けが得意な前線のプレイヤーを活かして、中央での細かいパスワークからの裏抜けでチャンスを作る。

 そんなオランダに対抗するウクライナ。4-3-3の守備網は中央を固める立ち位置を取る。そうなったときに手薄になるのがサイド。特にオランダの右サイドであるダンフリースがこの試合では効いていた。WGの裏で受けて持ち上がりウクライナの左サイドをえぐる。ダンフリースにとっては、IHのワイナルドゥムが中央の攻撃参加に加えてサイドの手助けができることが大きかった。中央でのパスのコンビネーションと大外の香車型WBの突撃というコンボでオランダが立ち上がりから攻め立てる。

 しかし、ダークホースとして有力視されるウクライナも黙ってはいない。彼らの持ち味はトランジッション。ボール奪取からのロングカウンターはウクライナの狙い目。距離が空きやすいオランダの3センターの間でCFのヤレムチュクが受けることで、カウンターの起点となった。敵陣に攻め込んだ後はロスト後のゲーゲンプレスもウクライナの強み。ラインコントロールが危ういオランダを脅かす場面も十分にあった。

 互いに攻撃面で強みを見せながらもスコアレスで前半を終えた両チーム。待っていたのは得点ラッシュの後半だった。オランダの得点のキッカケとなったのはダンフリース。重戦車のように突き進み右サイドを打開。ワイナルドゥムとベグホルストの得点を続けざまに挙げる原動力になる。

 だが、試合はここから一変してウクライナのペースに。前半に指摘したオランダの被カウンター時の3センターの脆さがさらに顕在化。オランダのCBが出ていくも潰しきれずにむしろ傷口が広がるシーンも。止められるファン・ダイクがいればこれでもいいのだろうけど。怪しいカウンター対応に付け込んだウクライナはここから一気に追いつくところまで。2点目のヤレムチュクのシーンを見るとオランダのセットプレーの守備にも不安が残る。

 しかし、試合を手にしたのはオランダ。そしてまたしても活躍したのはダンフリース。前半にドフリーで外したヘッドを今度は叩きこみ貴重な勝ち越し点をゲット。トータルで見れば打ち合いでの破壊力に分があるオランダがウクライナを上回った一戦だった。

試合結果
オランダ 3-2 ウクライナ
ヨハン・クライフ・アレナ
【得点者】
NED:52′ ワイナルドゥム, 58′ ベグホルスト, 85′ ダンフリース
UKR:75′ ヤルモレンコ, 79′ ヤレムチュク
主審:フェリックス・ブリヒ

GS第2節 オーストリア戦

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■終盤に効いた出場停止

 第1戦と比べるとオランダは少しやり方を変えてきたように見える。変わったように見えたのは右サイド。ウクライナ戦で攻撃面で活躍したダンフリースを押し出すように、後方ではデ・フライがSB化。中盤もアンカー気味だったデ・ローンがデ・ヨングとフラットで底に2枚並ぶ形が多かった。

 想像だが、前者はベクトルを自分たちに向けたような交代に見える。ダンフリースを攻守に前方に押し出すことで大外から押し込むことを狙っているように見えた。一方のデ・ローンとデ・ヨングがフラット気味な形になったのはオーストリアの中盤3枚に形を合わせる色が強かったように思う。

 オランダは前に出る時は4バック気味でガンガン行こうぜプレスをかけるのだが、リトリートの際にはダンフリースを5バックの外に戻した形でかっちりブロックを組む。オーストリアとしてはオランダが前に出たところをかわし、かつ5バックを形成する前に攻め切りたかったはず。例えば27分のシーンのように。

 しかし、そうしたシーンは非常に稀。なかなか攻め手を見つけられなかった。ザビッツァー、ウルマー、ヒンターエッガーが流れる左サイドから攻めたいのだろうけど、流れてくるタイミングや位置があまり効果的ではなく、変形で相手をずらすことができない。例えばオランダのDFのついていきたい習性を利用して、2トップのどちらかをサイドに流しつつザビッツァーをPA内に突撃!みたいなことをやってくれれば面白かったと思う。

 そんなことをしているうちにオーストリアは主将のアラバがポカ。PA内でダンフリースを踏みつけてPKを献上する。試合開始から両軍はやたらタックルのテンポが合わずに無謀な警告を食らいまくっていた。このアラバは単に足があってしまい踏みつけてしまった感はあるけど、ファウルで落ち着かない立ち上がりを象徴していると思う。

 後半は攻撃に出なければいけなくなったオーストリア。またしても得点に絡んだダンフリースに追加点を決められ状況は厳しくなる。だが、70分になってようやく縦パスが入るように。75分くらいにはもうオランダの中央がヘロヘロで攻め立て放題になったこともあり進撃が可能になる。

 だが、とにかく火力がない。具体的にはエリア内の脅威がない。いや、これはアルナウトビッチでしょ。なんで出場停止なのよ。オランダを押し込むまでにはいったが、最後の仕上げの要素がピッチになかったオーストリアが最後は屈してしまう。北マケドニア戦の二匹目のドジョウを狙い、アラバを解放しても受け手がいなければ同じことだ。

 結局試合はそのまま終了。2連勝のオランダが1節を残してグループCの首位通過を決めた。

試合結果
オランダ 2-0 オーストリア
ヨハン・クライフ・アレナ
【得点者】
NED:11′(PK) デパイ, 67′ ダンフリース
主審:オレル・グリンフェルド

GS第3節 北マケドニア戦

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■英雄のラストダンス

 北マケドニアのレジェンドの門出となる試合である。英雄・パンデフのラストゲーム。オランダ代表は彼のラストゲームにメモリアルなユニフォームを用意する粋な計らいで花道を彩った。

 首位通過が決まっているオランダだが『ターンオーバーしすぎると体がなまる』という考えがOBにあるみたいなことを実況が言っていた。それに従ったかはわからないが、ターンオーバーは最小限。数人を入れ替えた程度のメンバー構成である。

 コンペティション的には意味合いが薄い一戦だが、互いの持ち味はどう考えても攻撃。それを活かすために互いにアグレッシブなスタンスの組み合いとなる。北マケドニアも前進の機会さえあれば十分にオランダを苦しめることができる。立ち上がりから逆サイドにボールを振り、そこから縦に裏抜けするなどオランダのハイライン攻略に奮闘。わずかなタイミングでオフサイドになったパンデフの得点は『なんか認めてやれよ!』と思ったけど、そういうものではないので仕方がない。

 オランダに効く攻撃を仕掛ける北マケドニアだが、攻めに打って出ることができればオランダは大会でも屈指の存在である。縦に推進する際の持ち味は完全に北マケドニアの上位互換。ブリントを中心としてワイドや裏への展開、そして後方からサポートする中盤の馬力などはさすが。フィニッシュワーク付近でやや息切れ感がある北マケドニアに格の違いを見せた格好だ。

 オフサイドでパンデフに得点されることを回避したオランダに比べると北マケドニアはラインコントロールも怪しい部分がある。抜け出しで相手を捕まえられないことでカウンターをもろに受けることになる。というわけでオランダに先制点が出るのは当然だった。デパイの得点を皮切りにがっちり3得点。いずれもオランダらしい持ち味が出た得点だった。

 68分にパンデフが交代するとスタジアムは彼の労力をねぎらう空気一色に。20年もの間、北マケドニアを引っ張ってきた大黒柱のラストゲームは完敗。しかし、この大きな舞台を代表引退の一戦に選ぶことができるまで北マケドニアが大きくなったのはまがいもなく彼の功績だ。英雄はヨハン・クライフ・アレナで確かな歴史を刻み、北マケドニア代表のキャリアを終えた。

試合結果
北マケドニア 0-3 オランダ
ヨハン・クライフ・アレナ
【得点者】
NED:24′ デパイ, 51′ 58′ ワイナルドゥム
主審:イシュトバーン・コヴァチ

Round 16 チェコ戦

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■誘発されたミスマッチで沈んだオランダ

 ここまでアグレッシブなスタイルを貫くことでグループステージを彩ってきたオランダ。この試合でもそのスタイルは健在。立ち上がりから積極的な動きでチェコに挑む。特長的だったのは前線の人選。長身で基準点型のベグホルストではなく、より機動力に長けているマレンをチョイスした。

 狙いとしては裏抜けの動きでチェコのDFラインを縦方向に揺さぶることだろう。特に集中的に動き出していたのは左サイドの裏の周辺のあたり。マレンやデパイだけでなく、右のWBであるダンフリースもこのサイドまでわざわざ流れてから裏抜けをしていたので、チームとしてここを狙っていこうという意志があったのかもしれない。

 チェコも立ち上がりはその戦いに付き合った。チェコ、結構不思議なんだけど、序盤はとりあえず相手に肌を合わせるような戦い方をする。例えば、スコットランド戦ではやたらキックアンドラッシュなスタイルに全乗っかり。この試合ではボールサイドにやたら人をかけてショートパスをつなぐスタイルだった。10分くらいでやめたけども。

 守備の部分ではチェコはオランダの中盤をマンマーク的に捕まえる。チェコが上手かったのは、浮いているオランダの最終ラインがボールを持った時に、周辺の選手がマーカーを捨てて圧縮をかける選択ができたこと。そのため、オランダは常に窮屈な状態から脱することができなかった。デパイやマレンを前線に使ったにもかかわらず、彼らがDFを背負いながらプレーする機会ばかり。オランダの前線の人選と展開はミスマッチになってしまった。

 結果的にオランダの攻め手はダンフリースの猪突猛進の突撃ドリブルか、タイミングが全く合わないファン・アーン・ホルトの抜け出しくらい。チェコの非保持によって乏しい前半になってしまった。

 後半はやや落ち着かないオープンな展開になった両チーム。後半早々に両チームに訪れた決定機の成否が試合を大きく分けることになった。先に決定機を得たのはオランダ。スルスルと抜け出したマレンが迎えたGKとの1対1はシュートを撃てないまま終了。

 一方、チェコが迎えた決定機はシュートには至らなかったものの、デ・リフトのハンドを誘発。これが決定的な得点機会の阻止により一発退場になってしまう。10人になってもオランダが攻める余力はまだあったが、先制点を得たのはチェコ。ファーに流したFKからニアに折り返すシンプルな形でチェコは簡単にフリーな選手を作ることができた。オランダ、数的不利関係ないじゃん!という失点シーンだった。

 その後のオランダはいいところなし。80分にはシックにとどめの2点目を決められる。ダンフリース、5バックの感覚でカバーをサボってしまったように見えた失点シーンだった。2失点をするとオランダは完全に意気消沈。奇跡を起こすための下地となるエネルギー自体がもう残っていないように見えた。

 戦況と人選のミスマッチを解消できなかったオランダ。相手を苦しめるやり方に注力したチェコに屈し、伝統的な勝負弱さをまたしても露呈してしまった。

試合結果
オランダ 0-2 チェコ
プスカシュ・アレナ
【得点者】
CZE:68′ ホレシュ, 80′ シック
主審:セルゲイ・カラセフ

大会総括

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■『たらればサッカー』でエンタメ性は十分

 割り切った現実的な戦い方をするチームが多い昨今の代表シーンの中では異質な存在といえるだろう。『俺たちのやりたいサッカーはこんな感じ!よろしくだ!』みたいなスタンスで予選かららしさ全開。同じく『俺たちのスタイル全開だぜ!』というウクライナ相手との第1戦はそれまでの大会とのお堅さとは一線を画すド派手な撃ち合いとなった。

 基本的には攻撃的な志向が強いチームといっていいだろう。ショートパス主体でポジションチェンジも多い。長身のベグホルストへの長いボールもオプションとしてはあった。だが、ラウンドが進むにつれてベグホルストではなくマレンが代わりに入ったことを考えると、ライン間で受けながら前進していくスタイルを目指したかったのだと思う。

 後方の選手もスルスル前に上がっていくことが特徴。リバプールでもお馴染みのワイナルドゥムは前線へのサポートでの目立ち方が1.5倍くらいで、クラブではバランサーに徹している分、代表では割と派手なことをしている印象だった。

そんなワイナルドゥムよりもインパクトははるかに上だったのは右のWBのダンフリース。とにかく高い位置を取る。サイドの高い位置を取るだけでは飽き足らず、前線に張ることもしばしば。そして前線に張った挙句、そのまま左サイドまで流れて裏を取ったのには驚いた。さすがにRWBが左サイドから裏を取る姿はあまり見たことがない。得点にも失点にもとにかく絡みまくるド派手なスタイルは今大会のオランダの象徴といっていいだろう。馬力的にはプレミアでもやれるかもしれない。メガクラブは難しいかもだけど、人気はでそう。

 まぁ、ただこういったスタイルを支える後方は大変である。中盤3枚は受けに徹するタイプではなく、被カウンターの際には間を突かれまくり。さらにはバックスにもカウンターを受け止める力はなし。今大会のオランダは『ファン・ダイクがいれば成り立つサッカーをファン・ダイク抜きでやってみた』がコンセプトなので、ファン・ダイク抜きだとこうなるだろうなという印象。チェコ戦では過負荷気味だったデ・リフトが退場してしまったのはさもありなんという感じ。

 ワンマッチでいえばどこ相手でも一噛みできる強さはある反面、トーナメントで勝ち抜いていく図太さは感じない。展開が転がらなければチェコ戦のようになってしまうのは仕方ない。仕方ないといえるのは俺がそういうオランダが好きだから割り切れるだけなんだろうけども。ひとまずはワールドカップでは元気なファン・ダイクと共に『ファン・ダイクがいれば成り立つサッカーをファン・ダイクありでやってみた』がみたいところである。

頑張った選手⇒フレンキー・デ・ヨング
デ・ヨングとかペドリとかバルサの若者が代表でも報われない苦労ばかりさせられているの、涙ぐましいですよね。

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