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「5バックを面ごと攻略」~2018.11.3 J1 第31節 川崎フロンターレ×柏レイソル レビュー

 スタメンはこちら。

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 天皇杯のレッドカードの影響を受けて、正GKのソンリョンは出場停止。天皇杯を負傷欠場した阿部は復帰を果たしたものの、車屋は間に合わず。そして俺の知らない間に負傷していた大島はベンチスタート。いつの間にけがしたの。

 4-4-2がメインだったレイソル。瀬川、伊東を中心に前線の選手は好調を維持しているが、攻守イマイチかみ合わない印象。昨季は対戦相手を戦慄させていたクリスティアーノが復調すれば、前線の破壊力だけで多少はなんとかなりそうなものだが、この試合は負傷明けでベンチだった。てか瀬川もベンチ。なんでだろう。手塚もベンチ。これはいつも通り。柏の中で個人的なお気に入りである中川も不在である。特徴的なのは4バックに加えて、亀川を起用した点。そしておかえり、中村航輔!

目次

【前半】
人海戦術とは

 多くの兵員で、損害をかえりみず数の力で敵軍を押しきろうとする戦術。転じて、多人数で物事に対処すること。

 コトバンクによると人海戦術の定義は上の通り。サッカーは実際の戦とは異なり、少なくともゲームスタート時には兵数の差はない。ということは局所的に数的優位を作り、チームとして使われたくないスペースに人を数多く配置することがサッカーにおける人海戦術の定義といえるだろう。

 柏は5枚のDFでスタート。5-4-1という後ろに重い布陣。布陣だけ見たら人海戦術と取れなくもない。試合は川崎のボール保持で進む。柏のプレス隊はオルンガただ一人。なので川崎がボール保持に苦心することはなかった。
川崎のボールサイドのSBには柏はWBではなく、SHが戻ることで5-4のブロックを維持することを求めていた。

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 川崎のビルドアップ隊への牽制はオルンガ1人、SBにはSHが下がって対応。川崎が押し込むのは不思議ではない。
気になったのは比較的ハイラインを敷いていたこと。人海戦術なら最も重要なPAやバイタルエリアを人で埋めるイメージだが、柏は押し上げた最終ラインの裏はぽっかり空いていた。川崎のボールホルダーにチェックがかかっていないことはこの試合においては珍しくなく、柏はロスト後の切り替えも遅い。川崎の選手はフリーの状態で前を向いて、あらゆるパスを選択できた。前に「移籍してしまったネットがいないとサイドチェンジの機能性は落ちる」といったが、これだけフリーでボールが持てるなら話は変わってくる。みんな普通に上手いもんね。フリーで前向いてたら蹴れますよね。
簡単にラインを破られてしまうなら、最終ラインに人数をかける意味は薄くなる。面ごと破壊されちゃうので。

 裏抜けといえば小林の看板メニュー。彼を軸にした裏抜けでまずは前進に成功する。これによって柏の最終ラインは徐々に高さを保つのが難しくなってくる。そしてもう1つ、川崎はこの日低い位置でSBがボールを持つ機会が多かった。低い位置のSBがボールを持ちあがると柏のSHが食いついてくる。最終ラインは徐々に下がる、2列目は前に食いつくということで今度は間のスペースが空いてくる。何人か言及している人もいたが、30分のパス交換→新井の前線へのきれいなフィードはこの現象を利用した最たるものだろう。

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 加えれば、SBがボールを持ち運んだ時には柏の逆サイドのSHは中央に絞る。川崎が素早くサイドチェンジした際にはこのスライドも間に合ってないことがしばしば。ついでに言えば最終ラインも横移動は連動しておらず、チェーンが途切れるところが目立った。この部分は継続してやれば連係でカバーできなくもないけど、そもそもライン上げるけど、後ろ重心でホルダーには自由にボール持たせる!のはちょっとわからなかった。

川崎は幅、裏、間を自由自在に使って柏を徐々に自陣に押し込んでくる。こうなってくるとつらい。いくら前線に力があろうと、陣形が後ろよりな上に、攻撃的なタレントは普段の配置より一段低い位置でポジションをとっている。伊東純也は優れたタレントであり、調子もよいのだが、15分40秒のシーンのように5人目の選手を彼1人で抜き切れなかったことが攻撃の失敗の要因になってしまうのは、どうしようもない。5人抜くとか普通じゃないですからね。。

 人はいるけど、面として破壊されてしまっている柏。先制点のシーンも守田の3人目の動きが最終ラインを破壊した格好。この場面では阿部と登里が引いて受けることで、柏の右サイドのプレイヤーをおびき寄せた形。連動できず、右サイドだけ片あげの不規則な形になった陣形を見逃さなかった守田。守田の試合後のコメントを聞くと、中の動きをしっかり把握したうえでプレーを選択しているようで、余裕が出てきたなと感じた。

 天皇杯での川崎の敗因の一つはプレスの初動の遅さ。この部分は山形戦に比べると大いに改善したよう。初動の速さ然り、他のプレスへの連動然り、連動することで柏の前線がボールを持てる状況を制限していた。

 そうこうしているうちに2点目を取ってしまった川崎。CKでフリーになった谷口がヘッドでたたきこんだ。イケメン!

 柏が切なかったのは、最終ラインに人をそろえたものの面ごと壊されたため、人海戦術で得られるべき最終局面での数的優位のメリットが見いだせてなかったこと。そのうえで、陣形としては多くのプレイヤーが後ろ重心になっているために、攻撃に転じるときは、1人で複数人を打開する必要があるシチュエーションが多かったこと。さっきの伊東純也みたいに。オルンガ1人でなんとかできればいいのかもしれないが、奈良がしっかり抑えていた。
ただ、川崎を自陣に押し込んだ際の攻撃の精度は低くなかった。押し込む頻度はかなり低かったけど。わりかし川崎もクロスは簡単に上げさせていたような。それだけにポストを叩いた伊東のシュートは悔しかったことだろう。柏はCKからもチャンスはいくつかあったがものにできず。試合は2-0で川崎のリードで折り返す。

【後半】
柏のボールの取りどころは?

 前半の終わりは何度か惜しい場面を作った柏。しかし点差は2点のままであるため、引き続き攻撃の頻度を増やす必要がある。もう一度気合でラインを押し上げようという姿勢は後半開始時には見て取れた。

 姿勢は見えたのだがいかんせん攻守の切り替えが遅く、ロスト後のボール奪取ができない。鎌田も試合後のコメントで述べていたようにどこでボールをとるかがチームとして定められていなかったのだろう。

--3バックで挑んだが、どう守るプランがあった?監督が言うには、5枚にするけどそこまで守備的にというよりはしっかり前に出るために5枚にすると言っていたけど、完成度で言えば、勝利するところまでは達していなかったのかなと思います。

--人数はいるけどプレスに行けないシーンも目立ったが?
規制をかけてどこで取りたいのかがハッキリしなかったので、なんとか粘り強くやれれば良かったけど、そこは川崎Fがさすがでしたね。

--試合中に修正は施していた?
もちろん試合前もハーフタイムも試合中も声は掛けているけど、完璧にはいかないところがありましたね。

 ましてやボール保持に関しては得意中の得意といっていい川崎。前半と同様に前にでてくる中盤とDFラインの間のスペースにボールを入れて前進を続ける。

輝く登里

 押し込み続ける川崎の波状攻撃の形成に大きく寄与したのが登里。特に川崎の右サイドからの攻撃が終わった後の彼の立ち位置が波状攻撃に大きく貢献していた。

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 柏の2列目は、川崎のサイド攻撃に対してかなりスライドするのが特徴だ。川崎の右サイドからの攻撃の際は伊東は中央に位置することが多かった。カウンターの際には当然ここから最短ルートでゴールに向かうべく走る。一例を見てみよう。

 54分のシーン。柏がボールを奪う。前を向いた選手にボールが渡る。ピッチ中央にはボールを受ける準備ができている伊東純也。 後方から登里がボール奪取。この場面では登里と伊東の距離が離れていたので、柏はもっと速いパスを通すべきだった。しかしながら、登里の危険察知能力はこのシーンでもみられるとおり。

 そして川崎の3点目も登里のボール奪取がきっかけだ。まずは川崎の右サイドの攻撃がカットされる。ボールは中央に蹴りだされる。先ほど紹介したシーンと同様に山なりのボールだ。後方からやってきた登里がカット。 奪って知念に縦パスを入れてゴールシーンへと移行する形。上に紹介したシーンと同じである。SB起用時の登里のマルチタスクワーカーぶりは今季非常に際立つ。今季このnoteでも散々ほめてきたけど。いいプレーだとほめた部分が得点につながると喜びもひとしおだ。個人的にはSBで継続起用してほしい!ゲームを決める3点目はこのように決まった。

 読み解くのが難しかったのは柏の選手交代。江坂→瀬川で機動力強化はわかるけど、亀川→クリスティアーノで「4バック移行ね!」と思ったら、クリスティアーノをそのままWBに入れたときはめっちゃびっくりした。最終ライン埋めてるぜ…って思った。最後はクリスティアーノの代わりに山崎がWB入ったけど、前方に移動したクリスティアーノのあおりを受けて伊東と瀬川がポジションが下がってインサイドハーフっぽくなったのにもびっくりした。瀬川とかゴールから遠ざけていいのですか…。柏のファンはどう思っているかわからないが、自分が柏のファンならかなり気になる用兵ではあった。

まとめ

 5-4-1を起用した柏。しかし人海戦術は成り立っていなかった。配置と戦術がミスマッチしていた印象だ。伊東と瀬川のように好調を維持している前線の選手がいる中で、攻守の噛み合わなさはもどかしいだろう。サポーターの嘆きとため息が聞こえてきそうな展開だった。残り3試合厳しい戦いになるが、戦力はそろっている。踏みとどまれるだろうか。

 天皇杯ではボールロスト後のリカバリーが遅かった川崎。この試合では修正し、後ろから丁寧にビルドアップすることで幅、裏、間を使うことができた。下支えしたのは先述した通り登里に加えて、オルンガを封じた奈良、インターセプトを繰り返した守田、そして豊富な運動量で貢献した下田の活躍があってこそ。大島抜きで「いつも通り」ができたのは大きな収穫といっていい。連覇まであと1勝。ここからは昨季負けたカードばかりのお礼参りになるので、もう一度気を引き締めてタイトル挑戦に臨みたい。

試合結果
2018/11/3
J1 第31節
川崎フロンターレ3-0柏レイソル
【得点者】
家長(21分) 、谷口(33分)、阿部(89分)
等々力陸上競技場
主審:佐藤隆治

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