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「Catch up Premier League」~Match week 30~ 2021.4.3-4.5

目次

①チェルシー【4位】×ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン【19位】

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■『スペシャリスト』が演じた大番狂わせ

 今プレミアで最も上昇気流にあるのはチェルシーだろう。就任初戦からビルドアップへの修正が垣間見られ、支配的なスタイルでハーフコートゲームを展開。高い位置で攻撃の機会を摘み取ることで守備をも改善した。彼ら相手に唯一点を取ったことで南野拓実はやたら名前がメディアに出ていたりもした。

 だが、そんな好調なチェルシーもこの日は苦しんだ。特に気になったのは最終ラインの保持におけるポワポワ感である。ウェストブロムのマンマーク気味のプレッシングは確かに勢いはあったが、後方に人を余らせているしプレスのタイミングも抜群とは言えない。それでもズマを中心にやたら保持が慌てていた。

 チアゴ・シウバの退場までの流れも共にそのポアポア感のしりぬぐいの意味合いが否めず。本人もやや軽率だったかもしれないが、最終ライン全体が引き起こした退場といえるだろう。

 ウェストブロムはチェルシーのDFラインがボールを下げたタイミングで圧を高めることと、コバチッチとジョルジーニョへのマークを強めることは決まっていたよう。だが、落ちる前線の選手や、絞るジェームズ、持ち上がるアスピリクエタへの対応は決まっておらず、チェルシーが10人の時も簡単にボールを進めることを許していた。

 チェルシーは退場前に先制点を得ていたものの、前半終盤にひっくり返される。10人の相手を前に2人の負傷者を経てアラダイスがたどり着いたのは強気の4-4-2。セットプレーの流れからラインブレイクのワンパンチで同点に追いつくと、その後は個人技でチェルシーのバックスを上回り逆転。共に得点はペレイラが挙げたものだ。

 チェルシーは10人でも保持はできるが、保持とロスト後のバランスとの両立と10人の守り方までは手が回らなかったように見える。とりあえず競り勝てるディアーニュはうざかったはず。チェルシーにもチャンスはあったが、奪われれば即ピンチという危ういバランスで終わってみれば5失点。攻撃陣もやや消極的なプレー選択が気になった。

 今季は貧打に苦しむウェストブロムだが、今季チェルシー相手には8得点。およそ総得点の30%である。もはやここまで行くと『キラー』どころではなく『スペシャリスト』と評してもいいくらい。今季の4得点をすべてチェルシー相手に挙げたロビンソンは、南野を記憶を上書きするようにチェルシーファンの脳裏に自身の存在を刻んだはずだ。

試合結果
チェルシー 2-5 ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:27‘ プリシッチ, 71’ マウント
WBA:45+2‘ 45+4’ ペレイラ, 63‘ 90+1’ ロビンソン, 68‘ ディアーニュ
主審:デビット・クーテ

②リーズ【11位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

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■素直なブレイズに示せる存在感は?

 長年の功労者であるワイルダーとたもとを分かち、ヘッキングボトムで残りのシーズンを過ごすことになったブレイズ。しかしながらどうもピリッとしない。レスターには5失点。相手が実力上位とは言えいくら何でも無抵抗が過ぎるという内容だった。

 そして、それはこの試合でも同様。ブレイズのFW陣がプレッシングを頑張っていないわけではないのだが、頑張っているだけというか。彼らが出ていったところでどこで追い込みたいか、どうやって奪い取るかという構図が全くといっていいくらいだった。

 おまけにこの日の相手はリーズ。中途半端な間延びはむしろ彼らの燃料になってしまう。案の定、リーズは気持ちよくピッチをのびのびと動き回る。CBの持ちあがりはいつもよりもさらに積極的。彼らがリスクをかけてチャレンジができる状況が広がっていた。先制点の後、追いつかれたのは想定外だったかもしれないが、問題なく決勝点を決めた。それにしても先制点の美しさは見事。相手がざるだった部分はあるが、スペース攻略が基調の彼らの真骨頂を感じることができるゴールだった。

 機会を含め相手を完全に上回ったリーズ。ブレイズもチャンスを作れなかったわけではないが、真っ向に向き合えば質も量も相手が上なのは明白。嫌がらせのない素直なブレイズは終盤のプレミアで存在感を示すことができるだろうか。

試合結果
リーズ 2-1 シェフィールド・ユナイテッド
エランド・ロード
【得点者】
LEE:12′ ハリソン,49′(OG) ジャギエルカ
SHU:45+2′ オズボーン
主審:グラハム・スコット

③レスター【3位】×マンチェスター・シティ【1位】

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■供給元を抑えてペースを握る

 どん底だったアーセナル戦を境にロジャーズは3-5-2の新しいフォーメーションを採用し復調。このやり方のポイントは今までは仕上げのヴァーディにあらゆる手段でボールを届けるというプランから、配球役であるティーレマンスに多くの仕上げの手段を用意するという方針にシフトしたことだ。相変わらず見事である。

 マディソン(この試合ではベンチに復帰している)やバーンズなどヴァーディへの好機の供給役が次々に離脱したことでこのやり方に踏み切ったのだろう。特にこのやり方の恩恵を受けたのがイヘアナチョで2トップの一角として抜け出しからフィニッシュのパターンを確立。4試合で7得点と昨季以上に得点を決めている。

 ただ、シティ相手にはなかなかこのやり方は通用しなかった。まず、ティーレマンスがそもそもオープンにならず、前線へのパスが供給できない。この日のシティはSBもベーシック(とはいってもメンディは超攻撃的だけど)で配置変更も少なめな大人しい布陣だが、抑えるところはきっちり抑えてペースを握る。

 デ・ブライネを軸にレスターのブロックの外から好機をうかがうシティ。後半は左に移動し、崩しにおける左の優先度を増やす。大外を1人で賄えるメンディと内に絞るストライカータスクをこなしつつ勤勉で守備もさぼらないジェズスの縦関係は案外相性がいいのかもしれないと思う。

 得点シーンはこの日タクトをふるい続けたデ・ブライネから。彼を噛ませたマフレズの侵入が得点の決定打になった。終盤にジェズスも決めて試合は決着。ややオープンになった後半は間受けするスペースが出来たアジョゼ・ペレスを中心にレスターも反攻するも得点には及ばなかった。

 交代で入ったマディソンやティーレマンスがこの日のデ・ブライネくらいオープンになる機会があれば結果はもう少し違ったかもしれない。だが、彼をオープンにするための周りの仕組みやクオリティの部分でこの日はシティが差を見せた。CLに向けて自信がつく完勝だ

試合結果
レスター 0-2 マンチェスター・シティ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
Man City:61’ メンディ, 74’ ジェズス
主審:アンソニー・テイラー

④アーセナル【9位】×リバプール【7位】

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■積極策に出るほど増えるピンチ

 立ち上がりはボールが行きかう展開だった。特に攻め手が積極的に持ち上がることで守備ブロックに突っ込んでいくことで攻守の切り替えが頻発する流れになった。

 保持の局面が落ち着くと両チームには徐々に差が見えるようになる。チアゴ、ファビーニョを軸に同サイドが詰まった際には逆サイドまで揺さぶって敵陣深くまで迫ることが出来るリバプール。それに対して、ルイスやジャカの不在で押し込まれた状況から脱出する手段がないアーセナル。守備面で重心を下げることを許容したこともあり、陣地回復の難易度は非常に高くなってしまう。

 一方のリバプールも撤退したアーセナル相手にもう一押しが足りない。彼らの好機はアーセナルがビルドアップで変形をした際のロストに起因するものがほとんど。大外からのクロスに対応されている前半は好機を生み出すような工夫はあまり見られず、3トップが好機を得点に結びつける破壊力を見せることもなかった。

 我慢の前半を過ごしたアーセナルは後半プレスを強化。人を捕まえる意識を見せたことで前に出ていく。が、これはむしろリバプールを助けることに。アーセナルのサイドの選手が積極的にプレスに出ていってしまうこともあり、リバプールのSBはよりプレッシャーが少ない状態でクロスを上げる機会が増える。

 クロスを上げる状況が良化したリバプールはジョタを入れてターゲットを強化。このジョタのゴールでようやくアーセナルから先制点を奪うとここから一気に3得点。

 ビルドアップやプレッシングを頑張れば頑張るほど、リバプールに与える好機が芋づる式に増えていったこの日のアーセナル。必死につないだ前半のスコアレスを花開かせるほどの完成度はこのチームにはまだ備わっていないようだ。

試合結果
アーセナル 0-3 リバプール
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
LIV:64‘ 82’ ジョタ, 68‘ サラー
主審:スチュアート・アットウィル

⑤サウサンプトン【14位】×バーンリー【15位】

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■豪快な4-4-2対決

 一般的に4-4-2のいいところというのは陣形を縦と横にコンパクトにすることができるところである。だが、この4-4-2同士の一戦はコンパクトとは無縁の世界の話だった。

 一つだけ弁護をするならば、彼らのスタイルが互いに間延びした状況を活用しやすいものであることは述べておきたい。バーンリーは細かいパス交換のスキルは高くないが間延びした長いキックで展開したり前線に当てたり、SHは対面の相手を交わすことが出来る。間延びすれば狭いスペースでのスキルが求められにくくなる。

 だが、トッテナム戦のように急戦での攻め込みが得意な相手にこのスタイルでぶつかると大破する可能性もある。サウサンプトンはまさしくそういった相手にくくられる。楔⇒ポスト⇒落とし⇒裏抜け⇒フィニッシュまでのサイクルを高速で回す彼らのスタイルもまた間延びした陣形にはうってつけなのである。

 しかし、この間延び合戦で先手を取ったのはバーンリー。慌てる場面ではないのにウォーカー=ピータースが仕掛けた無謀なタックルがPKを招いてしまう。さらに長いボールから抜け出したヴィドラが追加点。この場面に限らずだがセインツはウッドにベドナレクが歯が立たないのが痛かった。

 セインツも反撃に出る。得意の楔⇒ポスト⇒落としを繰り返して1点返すと2点目も同じパターン。イングスのポストからの裏抜けを誘発する落としは見事。高さで構えるバーンリーのブロックだが、裏抜けへの対応が不十分な部分を出し抜いた。

 そして決勝点はこの試合にふさわしいものだった。バーンリーの攻め込みを耐えたサウサンプトンのロングカウンター。この試合は獅子奮迅の活躍を見せたポープが一度は止めるものの、最後はレドモンドが仕留める。

 豪快な一戦は締めも豪快に。持ち味を存分に発揮して逆転したサウサンプトンが勝利を収めた。

試合結果
サウサンプトン 3-2 バーンリー
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:31’ アームストロング, 42′ イングス, 66′ レドモンド
BUR:12′(PK) ウッド, 28′ ヴィドラ
主審:アンドレ・マリナー

⑥ニューカッスル【17位】×トッテナム【6位】

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■プレミア成分、おかわり

 直前のサウサンプトン×バーンリーから続けてみたのだが、その試合でおなか一杯になっているザ・プレミアリーグ要素がさらにおかわりで襲い掛かってくるような試合だった。

 スパーズは前節結果を出したヴィニシウスをケインの相棒として継続採用する。ただ、4-4-2で受けるとなるとニューカッスルの展開のキーマンであるシェルビーにチェックをかけることが出来ない。

 よって左右のWBへの展開が容易にできるニューカッスル。運動量豊富なIHの攻め上がりのおかげでエリア内に枚数は揃っており、シュートまでたどり着くことが出来た。

 加えてトッテナムの最終ラインのクリアがことごとく中途半端なのもそれに拍車をかける。なんとなく内側にクリアするため、それを拾われて簡単にカウンターという場面が頻発。先制点のシーンもサンチェスがキックをぶち当ててしまい、ニューカッスルはイージーモードなカウンターを沈めるだけで済んだ。

 一方のニューカッスルの守備も不安定な仕上がり。2トップの守備に対して、ホイビュアの列落ちでトッテナムが増員するともう打つ手がなくなるニューカッスル。特にアンカーのシェルビーの脇にパスを通し、そこから3バックとWBのギャップから裏抜けをしてフィニッシュというパターンは効果抜群。これで一気にスパーズは逆転まで持って行く。

 ただし、逆転をしてもなお押し込まれた時の脆弱さはぬぐえないトッテナム。サン=マクシマンの投入で再度左右に揺さぶれる手段を得ると、彼のサイドチェンジから終盤に同点を許す。ソンとロ・チェルソが簡単にサン=マクシマンにターンをさせてしまえば、脆いDFラインがクロスにさらされるのは当然のことだ。この試合のシュート数はニューカッスルがトッテナムを圧倒している。

決められたのが憎き赤の魂を持つウィロックだったのも腹立たしいことだろう。前日のリバプール戦は楽しめなかったアーセナルファンもこの試合は楽しめたはず。ノースロンドン勢のサポーターは応援しない方のチームの試合を見た方が楽しいフェーズに入ってしまったのだろうか。

試合結果
ニューカッスル 2-2 トッテナム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:28‘ ジョエリントン, 85’ ウィロック
TOT:30‘ 34’ ケイン
主審:クレイグ・ポーソン

⑦アストンビラ【10位】×フルハム【18位】

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■リカバリーを見せた主軸CBの意地

 ニューカッスルが勝ち点を得てしまったため、離されるわけにはいかなくなってしまったフルハム。グリーリッシュが不在のアストンビラには何とか少しでも勝ち点を拾いたいところである。

 フルハムは後ろから気合を入れてボールをつなぐ。サウサンプトン×バーンリーなども割とボールが行きかう試合だったが、この試合も縦のスピードは割と早め。ただ、最終ラインから鋭いグラウンダーの楔をザクっと刺すようなボールで縦に進む機会が両チームとも多かった。フルハムの中心はアダラバイオ。アストンビラの3センターの脇をトップ下のロフタス=チークやRSHのコルドバ=リードが絞りながら受けることで前進する。

 非保持では積極的にGKまでプレッシングに行く。が、こちらはやや空転気味。ミトロビッチとロフタス=チークの押し上げに対する後ろの呼応がイマイチで、逆にミングスに縦パスを通す隙を与えてしまう。前半の終盤などは4-1-4-1になって作りやすかったサイドの多角形を使いながらアストンビラが押し込む時間帯が増える。

 空転気味のフルハムのプレスだが、献身的な姿勢にご褒美の先制点がもたらされたのが後半。ミングスのパスミスをかっさらったミトロビッチが貴重な先制点を奪う。だが、フルハムがよかったのはここまで。アストンビラはその後同点に追いつく。アシストをしたのは先ほどミスをしたミングス。フルハムのDF陣は全員ラインに張り付いてしまい、ミングスのマイナスのクロスに反応はできなかった。意地だね。

 その後も畳みかけるアストンビラ。主軸のCBにミスが出たのは次はフルハムの方。アダラバイオのミスから勝ち越し点を献上するともはや万事休す。3点目は驚くほどあっさりクロスに無抵抗な対応でなす術なし。逆転の残留向けてに黒い影を落とした敗戦となった。

試合結果
アストンビラ 3-1 フルハム
ヴィラ・パーク
【得点者】
AVL:78′ 81′ トレゼゲ, 87′ ワトキンス
FUL:61′ ワトキンス
主審:アンディ・マドレー

⑧マンチェスター・ユナイテッド【2位】×ブライトン【16位】

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■圧をかけて徐々にペースを引き込む

 Aマッチウィークを挟んだ強豪チームは軒並み体が重いように思える。ただでさえ負荷のかかる代表活動においてさらにデリケートな移動を伴うとなれば、それも当然のように思う。

 しかしながら、マンチェスター・ユナイテッドはその強豪チームの中では動きはいい方だった。ビルドアップに強みのあるブライトンに対してアップテンポに試合を進める。

 だが、先制点を得たのはブライトン。苦手な展開の中で得点を取ることに成功する。マンチェスター・ユナイテッド的にはやや不運。トランジッションの局面でやや審判が重なってしまったことがきっかけで迎えたピンチが失点につながってしまった。

 先制点をきっかけに徐々にいつも通り落ち着いたビルドアップを見せるブライトン。プレッシングをいなしながらピッチを広く使い、ブライトンは押し込む時間を作りだす。そうなるとなぜか点が入らないのが面白いんだけど。

 後半になると段々と圧をかけていくマンチェスター・ユナイテッド。CHの脇とWBの手前に起点を作りながら前進していく。前者を使うのがブルーノ・フェルナンデス、後者を使うのがポグバ。押し込む機会を増やしながら、トランジッションの頻度を上げてペースを引っ張ってくる。

 同点ゴールはトランジッションからボールを奪取したところから、素早くゴールを陥れる。さらに畳みかけるマンチェスター・ユナイテッド。今度は落ち着いたボール保持から。ブルーノ・フェルナンデスが先ほど示した例のスペースからさらに奥まったところへの侵入に成功。クロスを受けたポグバが折り返すと、最後はグリーンウッド。どちらかと言えばブライトンの得意分野でやり返したユナイテッド。苦しい試合だったが、3ポイントを手にした。

試合結果
マンチェスター・ユナイテッド 2-1 ブライトン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:62′ ラッシュフォード, 83′ グリーンウッド
BRI:13′  ウェルベック
主審:マイク・ディーン

⑨エバートン【8位】×クリスタル・パレス【12位】

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■主導権は7,8割、勝ち点は1

 立ち上がりから主導権を握ったのはエバートン。デイビスアンカーの3センターでクリスタル・パレスの4-4-2に対してボールの落ち着けどころを作ると、安定した保持で試合を進める。3バックの楔からのポストからの逆サイド展開は王道で、大きな左右の揺さぶりに弱いパレスの脆さを浮き彫りにしていた。

 リシャルリソンを中心に速攻の時の詰めの甘さは気になるが、エゼorザハが対面を剥がせなければ前に進めないクリスタル・パレスに比べればはるかに前進の手段は豊富。パレスはこの2人をオーバーラップで大外から追い越すファン・アーンホルトの3人でなんとか押し込もうとするがどうしても十分な機会を得ることができない。

 エバートンのハメス⇒ディーニュのホットラインはなんとなく久々に見た感じ。シーズン序盤は猛威を振るっていたこのコンビのサイドチェンジはこの試合では輝いていた。そして、このコンビが先制点につながる得点を生み出す。ハメスのサイドチェンジからディーニュのクロスでエリア内にボールが届くと、最後は再びハメス。リシャルリソンのアシストもおしゃれ。得点後もそのまま攻勢に出たエバートンが試合を決めに行く勢いだった。

 しかし、選手交代で徐々にエバートンの守備陣の連携に怪しさが出てくる。特に目の前の選手以外の受け渡しがおろそかになっていき、だんだんと人がいるのに守れないという苦しい状況になっていく。

 すると終盤にキーンとゴドフレイのギャップをついたバチュアイが同点ゴールを叩きこむ。試合の7,8割は支配したエバートンだが、詰めの甘さで3ポイントを逃す。失速した守備陣もそうだが、カウンターのチャンスで振るわなかったリシャルリソンの厳しい表情が印象的だった。

試合結果
エバートン 1-1 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:56′ ハメス
CRY:86′ バチュアイ
主審:ケビン・フレンド

⑩ウォルバーハンプトン【13位】×ウェストハム【5位】

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■『大エース』と『ジキルとハイド』、4位争いの不安要素

 ジリっと攻めるウォルバーハンプトン、それに対して自陣深くからのロングカウンターを狙うウェストハム。試合早々に生まれたこの構図のままで先制点が生まれる。立役者はリンガード。前節の好調さをそのままに、今節も早々にネットを揺らす。リンガードの勢いは止まらず、2点目もタッチライン際でボールを残すと、これを起点に最後はフォルナルス。保持で詰まるウルブスを圧倒していく。

 しかしながら、前半途中に順調なウェストハムに暗雲が立ち込める。大エースのアントニオの負傷交代である。アントニオの離脱の時期のウェストハムのパフォーマンスを見れば、彼の存在が今のチームにどれほど重要かは明白である。代わりに入ったボーウェンがトップでどれだけやれるかはここから先の未来を考えても重要。そんなボーウェンが3点目をきっちり決めた時はこの試合もこれからの4位争いに向けても明るい展望を抱けるものと思っていた。

 だが、その見立ては甘かったといわざるを得ない。前半終了間際にトラオレの独走からデンドンケルに追撃弾を許すと、後半はさらにウルブスが反撃の機運が高まることに。シルバ、ジョゼの2人のFWに加えて前半のスコアラーであるデンドンケルがエリア内に陣取り攻撃の迫力を増す。

 そして、ウルブスはさらに得点を重ねる。3点リードを追いかけられるというのはアーセナル戦とほとんど同じ展開。ウェストハムは再び危機にさらされることに。その上、2失点目のシーンではホルダーであるネトを簡単に話したせいで裏に出されるという悪癖丸出しの内容で失点を喫している。

 幸い、終盤戦にエネルギーが残らなかったウルブスに同点に追いつかれなかったのは救い。だが、前半と後半で見せる顔が異なる『ジキルとハイド』体質と大エースのアントニオの離脱は激しい展開が予想される4位争いにおいての不安材料になりうる。

試合結果
ウォルバーハンプトン 2-3 ウェストハム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:44′ デンドンケル, 68′ シルバ
WHU:6′ リンガード, 14′ フォルナルス, 38′ ボーウェン
主審:マイケル・オリバー

   おしまいじゃ!

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