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「細かいところで取り返す」~2026.5.24 J1百年構想リーグ 第18節 水戸ホーリーホック×川崎フロンターレ レビュー

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レビュー

奪い取れる設計のあるハイプレス

 前日の浦和の敗戦を受けて、川崎は1ポイントでも取ることができれば5位に浮上できる状態。水戸は現在の8位をキープすべく、川崎相手にも勝ち点を狙ってくるだろう。

 序盤はロングボールの応酬となったこの試合。まずはお互いに様子を見ながらの入りとなる。

 その状況を変えようとしたのは川崎。水戸のハイプレスは、特に川崎を左サイド側に追い込みたい様子だった。ただし、完全に人を捕まえるマンツーではなかった分、川崎は左右に動かしながら丸山がオープンで運べる場面を作ることができれば、そこからインサイドにパスをつけることができていた。

 丸山をフリーにする前の大きなサイドチェンジには山口の足元が重要な役割を果たしていた。左右に揺さぶってCBをオープンにする工程においては、ブローダーセンよりも組み立てのアドバンテージがあるのかもしれない。

 ハイプレスで追い込まれた場面でも山本、宮城、脇坂などMF陣が早めに降りるアクションをすることで、距離感の近いパスワークから密集を脱出。いわゆるハメパスのような場面においても、MF陣は相手に寄せられている前提でパスをつなぐことで対応できていた。この現象は右サイドでも同様で、松長根のハメパスを伊藤と山原の素早いタッチで抜けるシーンも見られた。

 前節はボックス付近にタスクが限定されていた脇坂は、この日はいつものように降りるアクションを増やし気味。インサイドに絞る伊藤と宮城、CHの山本と橘田とのポジションチェンジを絡めながら、攻撃の手前の局面から関わっていく方向にバランスを調整。ビルドアップの安定感という意味では、彼のタスク変更が寄与していたと言えるだろう。

 だが、水戸のプレスを完全にいなすことができていたかと言えば、そういうわけでもない。左サイドの大外に立つ三浦は、ボールを持つアングルが限られるタイプのプレイヤー。対面に縦を切られてしまうと、斜め方向も含めてなかなか角度を変えてボールをつけることができない。

 三浦に苦し紛れの横パスを強いることができれば、水戸はカウンターを打つことができる。そういう意味では、高い位置からのプレスで相手を捕まえる設計図は存在したと言えるだろう。ただ、奪った後のパスをつなぐ精度が足りない分、ゴールに迫れたかと言われると微妙なところではある。

 川崎の保持局面で気になったのは、相手を外しながら前進できた後のスピードアップの精度不足。フリーの選手がスムーズにつなぎながら進撃する局面において、満足にプレーできた選手はほぼおらず、前半に交代させられた宮城とロマニッチの2人は特にこの傾向が顕著だったと言える。フリーな状態で簡単にミスをしてしまえば、ビルドアップで外せたとしても、カウンターを打てたとしても効果は薄い。その状況はなかなか前節から変えることができなかった。

苦戦傾向の中の朗報

 水戸のビルドアップも序盤とは異なりショートパスから。GKを絡めつつ、高さの異なるSBで枚数を調整。右サイドの真瀬は大森よりも高い位置を取っていた。

 水戸のビルドアップは確実性と不安定さの両面を感じるものだった。個人的に危うさを感じたのは西川のフィード。ライナー性のボールを中央につける割には精度がアバウトだった。この軌道のキックであれば、DFがラインを上げ直す時間はないので、確実につなぐ必要があるのだが、それができずに川崎のボールとなる。

 上に書いたようにこの日の川崎のカウンターには怖さがなかったため大事には至らなかった。それでも一時期の山口と似たような危うさを感じるプレーではあった。

 逆に確実性を見せられた局面は川崎の左サイドのユニットに対するアドバンテージだろう。この日の川崎はSHが水戸のCBまでプレスに行くことが多かったのだが、その際にSBの真瀬をどのように扱うかが曖昧だった。山本は絞るレイリアを担当するケースが多いため、おそらく三浦が出ていくことが宮城がCBにチェックへ行くことを正解にするためのアプローチだったのだろう。

 しかしながら、宮城がプレスに行くアクションに合わせて真瀬はきっちりとバックステップを踏むため、三浦のプレスは追いつかないことが多々。川崎がこの場面のように前線の圧力を上げていこうとする場面では空振りが目立つ。

 もちろん、多少相手が捕まらなくても試合のテンポを強引に上げて相手のミスを誘いたいというやり方もあるだろう。ただし、それはCBがきっちりと相手を捕まえることができてこそ。丸山と松長根にはSBが出ていった背後を余裕でカバーできるほどの行動範囲はない。

 谷口とジェジエウであればそれでもいいが、今の川崎のCB陣はそうはなっていない。松長根は食らいついていたが、前半の中盤を過ぎてからは徐々に厳しさが目立つようになった。

 センターラインが徐々にプレスで遅れるようになったのも川崎的には痛かった。山本や橘田が出ていけないケースが出てきて、仙波や加藤がフリーになる。川崎がハイプレスを仕掛けた時にプレスに出てきた選手の背中付近でフリーになる動きがうまい選手が水戸には何人かいた。真瀬や加藤などである。

 前プレスにCHが出ていき、対面のCHを捕まえたら捕まえたでセカンドボール争いがスカスカになる川崎。回収の設計をしていた水戸に対して、後手を踏んでしまう格好となった。

 水戸目線で惜しまれるのは川崎と同様にフリーになった選手のパスの質の低さだ。特に長いボールになると精度がガクッと落ちてしまったのがつらいところだった。

 攻め込まれ続けて怪しい場面ばかりというところまではいかないものの、プレスが空振りする状況が続く川崎。前半のように相手を外してCBから運ぶ場面も減少し、苦戦傾向に入っていく。

 そうした中で個人的に好感を持ったのは山原と伊藤の連携。伊藤が2枚を引きつけたところで抜け出した山原に出した場面などは、「ようやく!」という感想を持つような抜け出し方だった。

 抜け出した後のプレーの整理はボックス内の動き方も含めてまだまだ。それでも山原がオープンでボールを持てるシーンがようやく増えてきたのは朗報だと言えるだろう。

幻の失点シーンにおける課題

 後半、川崎は2枚の選手を入れ替え。インサイドに人を集結させるポゼッションの安定感を大事にしつつ、トップの持山はサイドに流れる動きを増やしながら、より手前のフェーズに細かく絡んでくるイメージだった。

 インサイドのパスワークが安定している分、押し込むフェーズを呼び込むことはできていたが、奪われた後の余計なファウルがもったいなかった川崎。水戸に保持で息をつく状況を与えてしまう。

 守備の仕組みについては明確な改善が見られなかった分、川崎は水戸に前進を許すケースも。プレス回避とロングボールで川崎を縦横無尽に揺さぶりながらチャンスを探っていく。逆に揺さぶりをかけることができず、シンプルにCFめがけてロングボールを蹴るデュエルではなかなか打開は難しいことも後半の水戸の攻撃の特徴だった。

 流れを変えたのはボックス付近でのプレー精度だろう。三浦からのクロスを仕留めたのは持山。相手のブロックに遭いながらも、チャンスを仕留めきることに成功する。

 水戸からすれば、ニアでダニーロがカットできなかったのが痛恨。足を滑らせたようにも見えるので、そうでなければきっちり跳ね返せていたのかもしれない。軌道的には明らかにニアで切っておきたかった。

 しかし、水戸はミドルシュートでやり返し。脇坂のところを咎めることに成功したかに見えたが、これはファウルでゴールは認められなかった。

 ファウル判定の正誤がどうこうよりも川崎としては反省しておきたい部分ではある。まずは密集地帯の脇坂にボールを預けた伊藤の判断がどうだったか。

 個人的にはここは意外と難しいところなのかなと思っている。あのエリアの脇坂は、カウンターの起点としての川崎の常套手段。自陣で攻撃を跳ね返したタイミングで、あのエリアの脇坂にボールを預けるというのは速攻の起点作りとしてはわかる。

 もちろん、ロストした状況においては脇坂に選択肢はなかったように思える。しかしながら、川崎側は選択肢を作ろうと思えば作れた、というのが個人的な意見だ。

 脇坂がボールを受けたタイミングでの最良の選択肢は左サイドで駆け上がる準備をするマルシーニョにボールをつけること。だが、2人に囲まれた脇坂が反転してマルシーニョにパスをつけるのは難しい。

 しかし、直接は難しくとも間接的にはパスを出せるチャンスはあった。川崎の左サイド、脇坂から見るとコーナーフラッグの方向には、明らかに水戸のプレスがかからないスペースがある。

 このエリアにパスを出せれば、川崎は背後のマルシーニョを狙うことが可能。それができなくてもボールを逃がすことはできたはずだ。三浦をはじめとする川崎の後方ユニットがボールを奪った後のタイミングでこのエリアへ動き出しさえできていれば、少なくとも相手に二次攻撃を許すことはなかったはず。実際にはファウル判定だったとはいえ、攻守の連続性を維持できなかったという意味で重要な意味を持つ。このミドルシュートは失点につながらなかったとしても非常に大きな反省点として指摘できる部分だと思う。

 いずれにしてもこのピンチをしのいだ川崎は持山のゴールでリードを広げることに成功。ややライン間のスペースをもらった側面はあるものの、ドリブルでのシュートコース作りと威力とコンパクトさを両立したシュートは素晴らしい。「得意な形」と試合後にコメントしたことも含め、頼もしさのある得点シーンだった。

 3得点目はまさに乗っているストライカーらしいシュート。ただし、あえて指摘するのであれば、2得点目以外はシュートコースを作るよりも強引に打ち切った要素が強かったのは気になるところ。もちろん、ゴール前だった1点目はこの選択で問題ないと思うが、3点目のシュート位置などは跳ね返ったところからカウンターに転じる可能性がある。

 シュートを打つ積極性は買いたいが、それは昨季の伊藤のようにシュートコースを開けるアクションとセットで備わってほしいところでもある。今のところうまく壁を抜いてゴールマウスまで届くシーンが多いのは期待が持てるポイント。この点は今後試合数を重ねていく中で問われてくる部分のように思える。

 水戸は1点を返したが反撃はそこまで。東京Vの大敗という漁夫の利を得た川崎は4位で百年構想リーグのレギュラーシーズンを終えることとなった。

あとがき

 持山がこじ開けてくれたなという試合だった。あの位置から枠をとらえるミドルが少ないことは今の川崎の攻撃の課題の1つなので、その点を克服しうるカードとなったのは大きい。あとはシンプルにニューヒーローの活躍は盛り上がる。

 ただし、今の川崎はCFに陣地回復のスキルを求めざるを得ない状況になることがとても多い。この点が頭から出た時の課題になる。CFになるべく頼らない構造を後方で作りつつ、持山自身もハイラインを敷いてくる相手に対して、どのようにボールを引き出すのかは問われることになるだろう。

 チームとしてはやはり細かいところで流れをつかみきれないところが気になる。左サイドやセンターラインのハイプレスの機能不全、あるいは幻のゴールのシーンの脇坂へのサポート。特に後者はハイプレスが難しいチームであれば、奪った後にボールをどう安全に逃がすかということはやはり考えていかないと展開を立て直すことができない。

 後半で、疲れていて切り替えするのは大変だろうが、週1日のスケジュールの中でここもできないとなると、いよいよとれる改善策は限られてくる。丸山と松長根が急に守備範囲が広がることは考えにくいけども、このサポートへの動き出しはできることではあるはず。改善のためにできることからやっていって細かいところで盛り返せるチームになってほしい。

試合結果

2026.5.24
J1百年構想リーグ
第18節
水戸ホーリーホック 1-3 川崎フロンターレ
ケーズデンキスタジアム
【得点者】
水戸:90′ パトリック
川崎:57′ 77′ 84′ 持山匡佑
主審:山下良美

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