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「FIFA World Cup 2026 チーム別まとめ」~イングランド代表編~

目次

第1節 クロアチア戦

真面目なイングランドが初陣を飾る

 グループLの登場となったイングランド。悲願のW杯獲得に向けて最終日の登場となる。何かと重要なところで対戦することが多いクロアチアとの一戦に挑む。

 まず、試合で目についたのは十分な強度。イングランドは構えることなく、高い位置からジリジリとクロアチアのバックラインに圧力をかけていく。

 対するクロアチアも前からイングランドを捕まえにいく形。互いに噛み合わせの悪い陣形ながらも、関係なくスライドしながら前プレをしていく。

 非常に激しいぶつかり合いの中でミスが出たのはクロアチア。自陣のPA内でモドリッチがマドゥエケを倒してしまいPKを献上。一度はPKを止めたリヴァコヴィッチであったが、おそらくはグヴァルディオルの侵入が早かったため蹴り直し。リテイクをケインが決めてリードを奪う。

 反撃に出たいクロアチア。保持の局面で気になったのはモドリッチがあまりボールを引き取りたがっていないように見えたこと。イングランドはライスがかなりモドリッチを気にしていたので、モドリッチがあえてボールから離れればライスがボールを狩りに行けないと思ったのかなという仮説。確かにライスは狩れていなかったけど、クロアチアが前進できていたかは微妙なので何とも言えないところではある。

 どちらかといえばクロアチアの攻撃の勝負のポイントは非保持の方にかかっていた感。ハードなプレスでイングランドに圧力をかけていくクロアチア。このプレスが成功するかどうかは、ほぼ最終ラインまで落ちてボールを受けるケインをつぶせるかどうかにかかっている。仮にここがフリーになってしまうと、イングランドは右の大外のマドゥエケから広いスペースでの勝負を仕掛けることができてしまう。

 逆に降りる選手に躊躇なくヴシュコヴィッチが押し上げることができればクロアチアはハイプレスをはめ込むことに成功したといえる。ハイプレスからボールを奪ったところからクロアチアはカウンターで同点。最後は素晴らしいバトゥリナのゴールで追いつく。

 しかし、イングランドはセットプレーから勝ち越し。前の道をブロックしてもらうことでフリーになったケインの一撃でイングランドはリードを奪い返す。

 だが、クロアチアは水際で同点。ムサのゴールで目まぐるしく動くスコアは2-2という形でハーフタイムを迎える。

 後半もプレス勝負のインテンシティが高い展開。イングランドはワンタッチで横向きのアンダーソンがプレスを回避するクリティカルなパスを出すなど、前半よりはクロアチアのプレスをいなす術を見つけていた。

 早々にベリンガムがゴールを決めることでイングランドはゴールをゲット。前がかりなクロアチアの背後を取る格好でリードを奪うことに成功。半端なプレスであれば右サイドから破ることができるのがこの日のイングランドだ。

 ここからは両チームの選手層の違いが感じられる展開となった。選手の交代で巻き直すイングランドに対して、クロアチアは前からのプレスをかけ切ることができずにバテ気味。終盤は馬力の差が出てくる。

 終盤にはラッシュフォードが勝負を決める一撃を仕留めたが、それでもケインは前からのプレスを誘導。最後まで炎を燃やしたイングランドがクロアチアを撃破。開幕節を勝利で飾ることに成功した。

ひとこと

 結構真面目にプレスを開幕節からやったなという感じ。いい試合だけども心配。

試合結果

2026.6.17
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループL 第1節
イングランド 4-2 クロアチア
ダラス・スタジアム
【得点者】
ENG:12′(PK) 42′ ケイン, 47′ ベリンガム, 85′ ラッシュフォード
CRO:36′ バトゥリナ, 45+5′ ムサ
主審:クレマン・トゥルパン

第2節 ガーナ戦

粘りを見せたガーナが32強に前進

  序盤からこの試合のコントラストはくっきり。ボールを持つのはイングランド側、受けるのがガーナ側という構図だった。

 4-5-1で受ける選択をしたガーナはあくまでブロックをコンパクトに保つことを重視。2列目からは時折プレスに飛び出す選手もいるが、それに追従する選手はおらず、飛び出した選手は戻ってブロックの中に入っていく。あくまで狙いは相手に簡単に侵入を許さないこととなっている。

 イングランドのポゼッションは後方のビルドアップが2CB+2CH。SBはある程度の高さをキープしつつ、ガーナのブロックの手前で相手を引き寄せるように動くことをしていた。おそらくはライン間を広げるためのアクションをしたいのだろうが、あまり効果は見えず。対角のマドゥエケにパスを出し、ここから1on1で勝負に行く形やライスの1枚剥がすキャリーの方が手応えはあった。

 それでもボックス付近に迫る以上の効果を出すことはできないイングランド。手数をかけたスペース創出も不発で、ボックス付近のシュートはことごとくガーナの守備にブロックされ、ゴール方向に飛ぶことすらままならなかった。

 押し込まれる時間が続くガーナはサイドの背後からカウンターで勝負。しかしながらこれもイングランドの帰陣の早さを前に武器になることはなし。トーマスのワンタッチでの背後を狙うパスも時折飛び出していたが、こちらもパスが出た後にイングランドの陣形回復が間に合っていたので効果は薄かった。

 ガーナがプレスのスイッチを入れる瞬間を見せるなど、たまにリズムを変えるアクションも見られはしたが、基本的には展開は一本調子。イングランドがガーナのブロックをこじ開けられないままハーフタイムを迎える。

 当然後半も試合の展開は同じ。イングランドはポゼッションをキープするが、相手を打開する術を見つけられず。ガーナはサイドの裏を中心に長いレンジでのパスを通すが、これもイングランドの陣形を乱すところまでには至らなかった。

 流れを変えようとした選手交代から少しずつ試合は動いていった感。ガーナはアイェウに代わって入ったCFのアドゥの裏抜けがアクセント。ややサイドに流れつつCBの背中を取るようなアクションからの抜け出しでチャンスメイク。コンサやピックフォードにあわや大事故というような対応を強い続ける。

 イングランドはサカ、ラッシュフォードの投入でWGをリフレッシュ。CHタスクとの二役ができるオライリーを投入したことにより、アンダーソンよりも攻撃的なキャラクターに中盤を入れ替えるなども敢行した。

 ボックスの外からのサカのシュートやオライリーのボックスへの飛び込みなど、アクセントとなる動きは増えていた。だが、この日は最後の決定力のところが伴ってこない。86分にチャンスを迎えたケインもガーナの呪術師の影響か枠にボールが飛ばなかった。

 結局、ガーナは粘り切ることに成功。イングランドと勝ち点を分け合い、突破の目をかなり濃くして最終節を迎えることとなった。

ひとこと

 やるやん、ガーナの呪術師。

試合結果

2026.6.23
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループL 第2節
イングランド 0-0 ガーナ
ボストン・スタジアム
主審:サイード・マルティネス

第3節 パナマ戦

最後は叩き割って首位通過

 すでにグループステージ敗退が決まっているパナマ。4ポイントながら後半グループの恩恵を受けて試合前には突破が決まっているイングランドとの一戦に挑む。

 立ち上がりから勢いの良いシュートでスタートしたのはパナマ。意外とこの試合のパナマのプランのキックアンドラッシュ作戦にはイングランドはかなり苦労していた印象。

 ボールを収めるところでも一発でイングランドのDFには跳ね返しを許していなかったし、セカンド回収でもそれなりに勝負をすることができていた。

 トランジッションからのサイドのファストブレイクでも手応えはある展開。グループステージで目立っていた右サイドの縦関係はもちろんのこと、左サイドのホセ・ルイス・ロドリゲスもファストブレイクから惜しい状況を作る。

 しかしながら、さすがに保持の主導権はイングランド。中盤に構えるパナマに対して、ブロックの外に降りる選手から相手を揺さぶりつつチャンスを探っていく。

 縦にパスを刺したところから勝負を仕掛けていこうとするが、右のWGであるサカは苦戦。詰まる場面が続く。むしろパナマが固めているインサイドの方がチャンスを作れそうな気配があったイングランド。ケインのポストと距離を詰めて前を向く選手を作ったり、あるいはダイレクトで背後を突くアクションをしたりなどで少しずつ揺さぶっていく。

 それでも前半はイングランド相手に粘ることに成功したパナマ。スコアレスでハーフタイムを迎える。

 後半もパナマの持ち味はアグレッシブさ。高い位置からイングランドのバックラインにプレッシャーをかけていく。しかし、アンダーソンのキャリーなどイングランドは落ち着いてこの状況に対応する。

 またキックアンドラッシュ戦法も前半ほどはイングランド相手に効き目を出すことができず。セカンドボール回収もイングランドに優勢に変化。縦に間延びしたスペースでイングランドの攻撃が逆に活性化していく。

 押し込む機会を得たイングランドはセットプレーから先制。ベリンガムの一撃でようやくリードを確保する。

 追加点はラッシュフォードのクロスから。彼の右足からのクロスにケインが難しいステップで合わせてゴール。この2点で完全に試合は決まった。

 イングランドはこの勝利で首位通過。パナマは勝ち星なしでグループステージを去ることとなった。

ひとこと

 粘りはしたが最後は叩き割られたパナマだった。

試合結果

2026.6.27
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループL 第3節
パナマ 0-2 イングランド
ニューヨーク/ニュージャージー・スタジアム
【得点者】
ENG:62′ ベリンガム, 67′ ケイン
主審:アル・ジャシム

Round 32 DRコンゴ戦

新興国の希望をイングランドのエースが握り潰す

 ウズベキスタンを下し、ノックアウトラウンドの椅子を確保したDRコンゴ。イングランドとの一戦は国の歴史に残る挑戦ということになる。

 そんなアンダードッグ的な立ち位置とは裏腹にこの試合のDRコンゴはポゼッションからスタート。イングランドは簡単にボールを持たせる気はなく、高い位置から追っていたのだが、GKのポゼッション参加とCBのキャリーでイングランドのプレスを撤退させていく。

 すると、オフザボールからあっさりと先制点を確保。対角パスからサディクのフリーランでスペンスを乱すと、そのままシペンガがゴール。ピックフォードもニアを閉じきることができないままあれよあれよとイングランドは失点までたどり着いてしまった。

 その後もDRコンゴはポゼッションからイングランドを揺さぶることに成功。そもそもボールを持って腰を据えた敵陣の攻略に入るというところまでなかなかイングランドはたどり着くことができない。

 ボールを持つことができてもなかなか効果がある動きが見られないイングランド。右のマドゥエケにボールを集めるが、対面のマスアクになかなかアドバンテージを取ることができない。むしろ、突破だけで言えば後方のスペンスの方が切れ味もあった。それでも抜き切らないクロスからチャンスを作る形で修正したのは良かったとは思う。

 サイドからつっつくよりは強引にインサイドのケインの上下動から起点を作る方が有望なイングランド。あわやPKというシーンも出てくるなど、かなり効き目はあった。しかし、どこが効きそうかを整理したところでハーフタイムまでかかってしまった感があった。終盤にはチャンスもあったが、ムパシのファインセーブでDRコンゴがリードをキープする。

 後半もまずはポゼッションから揺さぶるDRコンゴ。イングランドはハイプレスからこれを咎めて自分たちのポゼッションを取り返す。

 イングランドは早々に左右のWGを入れ替えて攻撃のテコ入れを敢行。サカはトラップミスが見られるなどこちらもマドゥエケ同様にすんなりフィットとはいかなかった。

 それでもハイドレーションブレイク明けにさらに修正を加えた4-3-3でイングランドは同点ゴール。右サイドにナチュラルに抜け出したのは多角形の構造ゆえという感じ。SB起用されたライスの抜け出しからケインがゴールをゲット。難しいヘッドを簡単そうに決めるのはエースの矜持だろう。

 さらにケインは逆転ゴールも。パスを受けたところからそのままコースを作り出して強烈な一撃をお見舞いする。

 鮮烈な逆転劇でDRコンゴの希望を潰したイングランド。エースの活躍で苦しみながらもトーナメント初戦突破を果たした。

ひとこと

 これぞエース!というケインの働きだった。

試合結果

2026.7.1
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
イングランド 2-1 DRコンゴ
アトランタ・スタジアム
【得点者】
ENG:75′ 86′ ケイン
DRC:7′ シペンガ
主審:アドハム・マハドメ

Round 16 メキシコ戦

交代選手によって10人ブロックに魂が宿る

 悪天候により1時間キックオフ時間が遅くなったこの試合。ホームで試合を行うメキシコにアメリカから飛んで向かうイングランドにとっては負荷のかかる状況が連鎖する。

 様子見のロングボールでライスがいきなり警告を受けるなど幸先が悪いスタートとなったイングランド。基本的には立ち上がりはメキシコの試合と言っていい展開。イングランドは中盤をマンツーで仕留めたさはありつつ、降りるメキシコのIHにCHがついていけず。

 メキシコは3バック気味に変形することでホルダーがオープンになっているので、イングランドのCHにとっては「ついていって平気?背後を使われない?」と迷いが出てもおかしくない状況。マンツーで行きたさだけ残しつつ、ホルダーがフリーになっていることが実行の邪魔になっているという立ち上がりだった。

 メキシコは右サイドからの進撃でスタート。モラに加えてレーンを変えながら前に出ていくアルバラード、サンチェスの縦関係から抜け出す選手を作ってボックス内にボールを入れていく。

 イングランドはロングボールで様子見の立ち上がりが過ぎると、左サイドからの旋回で脱出を狙う。左に流れるベリンガムにリラがついていったことを踏まえると、メキシコの中盤も相当に人を捕まえる意識は高そうだった。

 メキシコが旋回やオーバーロードでフリーマンを作る設計が前提なのだとしたら、イングランドは目の前に相手がいることを前提として勝てるマッチアップを探っていくことがプランとなっている。ゴードンのところは明確にイングランドがスピードで上回れそうな場面だった。

 欲を言えばインサイドでもそうしたポイントを見つけたかったのではないかなぁと邪推する。降りるケイン、反転しようとするベリンガムに対してはメキシコの守備陣は非常に優秀な対応をした。中盤でデュエルの強度が高まってもメキシコは後手を踏むどころか前に出ていくきっかけとしていた。捕まっても勝てるポイントを作るという設計が前提のイングランドとしてはここは誤算だったはず。

 それでもトランジッションから隙を見逃すのだからイングランドはさすがである。右サイドからキャリーしたライスからサカにボールが渡ると抜き切らないクロスからケインの背後に飛び込むベリンガムに綺麗にボールが合って先制。切れ味勝負できっちりと先制点をもぎ取ってみせる。

 この先制点で勇気を与えられたのかアンダーソンが前に出ていく潰しからイングランドは立て続けにベリンガムがゴール。得点までは本当に前に出ていくきっかけすら掴めない状況だったので、先制点がアンダーソンに与えた勇気が2点目に繋がったのだなと感じたりした。

 このままでは終われないメキシコは前半のうちにセットプレーからキニョーネスの一撃で反撃の狼煙を上げると、以降もイングランドを自陣に釘付けにしてメッタ打ち。サイドのローテからフリーマンを作られる苦しみは想定できるけども、シンプルにファークロスからの空中戦でイングランド相手にメキシコが主導権を握っているのは興味深かった。

 ピックフォードの活躍、ライスのクリアにゴードンとサカのプレスバックと前半からあらゆるファインプレーを重ねたイングランドがギリギリリードを確保してハーフタイムを迎える。

 後半、積極策が目立ったのはイングランド。前にスライドするプレスに加えてオライリーのオーバーラップを解禁。ゴードンをドクに見立ててハーフスペースへの侵入を試みる。ベリンガムも数枚を剥がす凄みのあるドリブルで左サイドの攻め筋の1つとして機能する。

 しかし、想定外だったのはクアンサーの退場だろう。足裏一発で10人に追い込まれたイングランドはサカをストーンズに変えて4-4-1にシフトする。

 ここから20分間は主審を絡めて小競り合いとPKの連打。退場の直後にケインとゴードンの2人でPKをもぎ取ることに成功したイングランド。ケインが自らこのPKを決めてリードを広げる。

 だが、そのケインが今度はPK献上。巧みに前に入った相手の足を蹴り上げてOFRからのPK判定でまたしても試合は1点差に。

 ハイドレーションブレイク明けの2枚交代はトゥヘルからの「守り切る」という明確なメッセージ。バーンとスペンスの投入で最終ラインを増強する。

 80分台が過ぎるとロングボールの跳ね返しに手応えを感じてくるイングランド。ATを前にケインも下げて専制守備に移行する。

 35分に及んだクロスの千本ノックを凌ぎ切ったイングランド。文字通りメキシコの壁となり、ベスト8に駒を進めた。

ひとこと

 クロスで負ける前半を見ると後半の引きこもりは心配だったが、交代選手が魂を注入してミッションコンプリート。

試合結果

2026.7.5
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 16
メキシコ 2-3 イングランド
エスタディオ・アステカ
【得点者】
MEX:44′ キニョーネス, 69′(PK) ラウール・ヒメネス
ENG:36′ 38′ ベリンガム, 60′(PK) ケイン
主審:アリレザ・ファガニ

準々決勝 ノルウェー戦

ジリジリとあらわになったリソースの差

 ついにメジャートーナメントに姿を現したノルウェー。フランスと同居しながらノックアウトラウンド進出を決めて、ブラジルを撃破してベスト8にまで辿り着いた。この大舞台で相対するのはハーランドやウーデゴールにとっては馴染みのあるイングランドの面々との対戦である。

 序盤のロングボールのフォーカスの展開を経ると、ノルウェーは自陣に4-5-1のブロックを構築。イングランドにボールを持たせてOKという形の撤退守備を見せる。イングランドはこれに対して3-2-5気味に変形。オライリーはやや前に絡みつつ、ゴードンとどちらかが幅取り役。右の大外はマドゥエケで固定し、コンサは後方待機が基本線だ。

 イングランドはブロックの手前から対角パスで大外のマッチアップを使いたい構え。特に左のアンダーソンから右のマドゥエケへの展開を重点的に狙っていくが、マドゥエケは無駄なオフサイドにかかってしまったり、シェルドルップがやってくるダブルチームに手詰まり。コンサは自重気味なので、シェルドルップがマドゥエケにフォーカスしているという構図を咎められなかった。

 対角パスの先からチャンスを作れそうなのは縦突破の鋭さがあり、かつ高い位置を取るオライリーとの連携が期待できる左の方。2人のワンツーを含めて、左サイドのポケットを取る形からのクロスでチャンスを探る。大外ではさっぱりだったマドゥエケもボックス内のターゲット役としてなら活用できる予感もしなくはない展開だった。

 ただし、ノルウェーが保持に転じた時のターゲットもこのイングランドの左サイド。セルロートをトランジッションで走らせることでオライリーのいないスペースから侵攻。序盤の前進局面はセルロートに託すという流れは今大会の一貫したノルウェーのトレンドで、この試合でもそれが踏襲された格好だろう。ハーランドは前進局面での寄与はほぼなかった。

 自陣でのポゼッションはウーデゴールがかなり低い位置まで降りることで後ろ重心。後ろ重心の割には相手を引き寄せたところからのカウンターやCBのキャリーからのリリースでイングランドを前がかりにしたところを咎めるような場面はなく、前節のようにクリティカルなカウンターを受けてもおかしくはない怪しさはあった。とはいえ、一定のポゼッションを確保するという意味では後ろ重心の意義はあった。

 リスク管理優先の展開が動いたのはハイドレーションブレイク明けから。自陣では4-5-1のIHの一角の守備位置を取っていたウーデゴールがプレス隊に加わる4-4-2で敵陣からのチェイシングをゆるっと開始。これで敵陣でのプレーが増えたノルウェーは左サイドからのシェルドルップが角度のついたところから先制ゴールをゲットする。

 このゴールでノルウェーは勢いづくことに成功。ファークロスを主体としてイングランドのボックス内にガンガン攻め行っていく。

 なかなか攻め切ることができないイングランドの景色を変えたのはベリンガム。前がかりなノルウェーの守備のわずかなギャップに対して、左サイドからの進撃に成功。スペースを享受したところからのドライブからの左足でゴールを仕留める。

 このゴールの前後の前半終わるまでの数分間のベリンガムは凄まじかった。ゴールだけでなくわずかにオフサイドながらラストパスまで。中盤からのキャリーをしながら抜群の存在感を放っていた。

 後半、イングランドはハイプレスを起動しつつ、対角のパスから前進を狙っていく形。同じアーセナルのマドゥエケから役目を引き継いだサカを狙い、右サイドから相手のブロックを突っついていく。

 しかし、もう1つの交代策はやや逆噴射気味。明らかに本調子でなかったライスに代えてエゼを投入し、4-1-2-3にシフトする形はアンカー脇にノルウェーの縦パスを刺すためのコースを誘発してしまった感があった。

 イングランドはすぐさま陣形を4-4-2に修正。プレスの勢いも抑えながらブロックを組むシーンを作っていく。セットプレーからのラッシュは意外性の男・セルロートのクロスからの流れ。ノルウェーはネットを揺らすが、これはハーランドのプッシングによってやり直し。ここも新規則の影響だ。

 4-4-2で構えるイングランドに対して、ノルウェーはイケイケドンドンで圧力をかけていく。オープンな展開から主導権を握ったノルウェーはボブとヌサにWGを交代することで仕掛けを増やしていこうとするが、ハーランドに頼りたいボックス内のフィニッシュはクオリティが上がってこない。

 80分が過ぎるとゆるっとペースはイングランドに。ノルウェーの圧力が持続可能ではないものとなり、イングランドの保持の阻害が明らかに減退していく。

 こうしたジリジリとした展開はサウスゲート時代から得意であるイングランド。4-4-2でのプレスの強度を強めて、ノルウェーと入れ替わるように敵陣での時間を増やしていく。

 延長戦も当然織り込み済み。押し込んだところからのロジャースのミドルを最後はベリンガムが押し込んで勝ち越しに成功。ブロック外から枠内ミドルをかち込まれてキャッチし損ねたところをという流れは前日のベルギーを踏襲する格好となってしまった。

 リードを奪ったら素早く下がるイングランド。この辺りの色気の見せなさはトゥヘルの現実主義感が漂っているなと思う。メキシコ戦での成功体験もあったのだろう。逆にハーランドが下がったノルウェーは敵陣ボックス内での優位構築の代案を出せないまま試合は進行。スペンスがあわやPKを奪取したシーンにおける足の動かなさを見ると、流石にリソースの差は感じざるを得ないだろう。

 延長戦という舞台、そしてリードしている展開をうまく活かしながら逃げ切りに成功したイングランド。最後は5バックに切り替えることで試合をクローズする。

 最後まで抵抗を見せていたノルウェーだったが、同点ゴールを手繰り寄せることはできず。試合はイングランドの勝利で幕を閉じることとなった。

ひとこと

 最後はリソース差というのは否めない展開になってしまったかな。

試合結果

2026.7.11
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Quarter-final
ノルウェー 1-2 イングランド
マイアミ・スタジアム
【得点者】
NOR:36′ シェルデルップ
ENG:45+2′ 93′ ベリンガム
主審:クレマン・トゥルパン

準決勝 アルゼンチン戦

再三狙っていたエリアから劇的な逆転でファイナルへ

 決勝の椅子をまず確保したのはスペイン。もう1つの椅子に座るチームをアトランタで決める準決勝第2試合は因縁のイングランド×アルゼンチンである。

 序盤はスタンスがはっきりしていた両チーム。まずはボールを持たせることを許容したのはアルゼンチン。4-5-1フラットの形でコンパクトに中盤を構えつつ、イングランドのバックラインにボールを持たせる。

 イングランドは2CB+2CHで自由なポジショニングを敢行。大外レーンは基本的にはSBが取りながら、2列目は絞る形がメインとなっていたが、右の大外のジェームズが左サイドに出張するなどフリーダムな動きも許容されていた。どちらかといえば、アルゼンチンの右サイド側を狙っていこうという方向性もこの出張の補強材料になったかもしれない。

 アルゼンチンは左のSHに立つアルバレスがスイッチ役となり、徐々にハイプレスの勢いを出していくように。イングランドはこのプレスのアクションにかなり戸惑いを見せており、自陣でのロストからピンチを迎える場面もあった。前に出ていく際にはエンソがスライドしてSHを務めるシーンも。逆サイドではジュリアーノが最終ラインに落ちる様子も見られており、いろんな意味で陣形を決めているのは両SHという感じだった。

 プレスに来るアルゼンチンへの対抗策となったのはケイン。降りるアクションからボールを引き取り、反転からサイドの奥を狙っていくことで前がかりなアルゼンチンのプレスをひっくり返してみせる。右サイドの攻め筋は浮いたケインからの反転がメインとなっていた。

 序盤は落ち着いてボールを持つシーンはほぼなく、狙いとしてはポジトラにフォーカスしていたアルゼンチン。メッシにボールを当てて、ジュリアーノの右サイドの縦方向へのスピードを生かすパターンか、ほかの2列目と合体してワンツーで中央を進んでいく。

 徐々に出てきたアルゼンチンの保持に対して、イングランドは強気のハイプレスでスタート。WGが前に出ていき、後方のSBもそこにスライドする形で連動。メッシの番はアンダーソンが務めることとなった。

 ただ、あまりアルゼンチンのバックラインがプレスに苦しんでいる様子はなかったため、イングランドが守備を自陣でのブロックに切り替えるケースもしばしば。ハイドレーションブレイク明けには4-4-2をキープしてゴードンの位置を下げて、アンダーソンのマーク対象をメッシからCHに変える様子も。おそらくはあまりハイプレスに手応えがなかったのだろう。

 イングランドがプレスの圧力を下げたことでアルゼンチンのポゼッションの時間が増加。後方からはリサマルのキャリーなど、イングランドのブロックを揺さぶるようなアプローチを増やしていく。だが、試合の動きはないままハーフタイムに。スコアレスで前半を終える。

 後半、いきなり牙を向いたのはアルゼンチン。ロングボールからのファストブレイクでアルバレスがチャンスを迎える。速攻ベースで試合のテンポが上がっていく中でアルゼンチンが先制するという展開だったが、最終的にその状況を利用して先制点を奪ったのはイングランド。降りるケインからの大きな展開がハマり、ゴードンのゴールでリードを奪う。後方からプッシュアップするライスのところで、あとはアルゼンチンからするとミス待ちみたいになった。

 しばらく縦に速い展開が続く状況だったが、ジュリアーノをスペンスが止めたタイミングあたりで試合はアルゼンチンのポゼッションにシフトする。イングランドは両WGを下げる形で迎撃。ローブロックベースで固めていく。その中でもインサイドのメッシを封鎖するという作業は継続的に続けていくイングランドだった。

 アルゼンチンは左にニコ・ゴンサレスという幅取り役を入れることで横の広さを確保する方向に。メッシが流れる右サイドは彼が幅取り役。メッシ自身がクロスを抜き切らないで上げるもよし、メッシの引力を利用してマイナスの位置の選手がアーリーで上げるもよしという状況に。

 ハイドレーションタイムにトゥヘルは5-3-2への変更を決断。しかし、これは右サイドからのアーリークロスの手当てにはなっておらず。5バックでストーンズ周辺にクロスをひたすら入れられてアルゼンチンのアタッカーに先に触られる状況を変えることができなかった。

 5-3-2でも結局ケインやベリンガムがサイドを埋めることに奔走していたので結局一手損感が否めないイングランド。それならば5-4-1でサイドの守備の枚数を確保することを選択。実際にサイドの守備に枚数が足りずに遅れることは減った。

 しかし、メッシの引力を活用することでアルゼンチンは同点。3枚目のアンダーソンを引き寄せたところで中央の浮いたエンソのミドルで80分過ぎに追いつく。

 イングランドには2枚の交代枠が残っていたが、この段階では動かず。押し込む状況を続けたアルゼンチンはまたしても右サイドからのメッシのクロスで逆転。再三狙っていたストーンズの背後に顔を出したラウタロのゴールで逆転に成功する。

 イングランドの5バック攻略を間に合わせることに成功したアルゼンチン。またもメッシ中心の逆転劇で2連覇に王手をかけた。

ひとこと

 5バックシフトの是非はどうしても出てきてしまうだろう。選手の中からも不満の声が上がっていたことが全てかなという感じはする。

試合結果

2026.7.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Semi-final
イングランド 1-2 アルゼンチン
アトランタ・スタジアム
【得点者】
ENG:55′ ゴードン
ARG:85′ エンソ・フェルナンデス, 90+2′ ラウタロ・マルティネス
主審:イルマイラ・エルファス

3位決定戦 フランス戦

やはり特殊な3位決定戦

 「本当だったら優勝を目指してニューヨークで戦いに備えているはずだったのに・・・」という思いを抱えながら、マイアミに飛ばされることとなった両チーム。3位決定戦の要否も含めて、試合前から議論が多少交わされる中で序盤に見られたのは疲れ切った両チームの姿だった。

 序盤から緩さが際立ったのはフランスの方だろう。ジリっと高い位置から追い合うスタートの中でイングランドにライスのミドルであっさりと先制点を許してしまう。この失点を皮切りに攻守の切り替えの拙さがとにかく目立つのがこの日のフランス。特にネガトラの遅さが顕著であり、DFラインは高い位置に出ていくこともしなければ、背中を取られた後のスペースを埋めるアクションも鈍重。

 コナテはサリバを使い詰めたことの答え合わせのようなパフォーマンスであり、出ていく潰しのアクションも皆無な上にギュストの背後を埋めるような動きも見せられず。この一番に合わせたパフォーマンスを見せることができず、イングランドは左サイドから自在なファストブレイクを見せることができた。

 背後を直線的にエンバペのスピードで突く形はそれなりにピックフォードを脅かすことができていたものの、インサイドのコンビネーションの質はやはりレギュラーセットよりも低下。特にワンタッチ主体のコンビネーションの中でゆったりとしたリズムのチェルキをどのように組み込むか?ということにはかなり苦心していた印象だった。

 インサイドのコンビネーションの質の低さと怠慢なネガトラとの相性は最悪。とにかくひたすら打たれる展開が続き、背後を完全に抜け出し切る場面もしばしば。セットプレーからのコンサに加えて、サカがさらに2つのゴールを上乗せ。4点のリードでハーフタイムを迎える。

 フランスは怒りの4枚交代で後半をスタート。高い位置からのプレスへの意欲も見せることでこの試合の火を復活させようとする。その甲斐があり、エンバペは早々に反撃のゴールをゲット。起点になったのは4人の交代の選手のうちの1人のウパメカノ。高い位置から奪いにいくというチームのプランをきっちり正当化する潰しで、フランスのカウンターの起点に。

 このゴールでの成功体験もあり、高い位置からのフランスの守備は機能。イングランド陣内でのボール奪取から攻撃に転じるケースが出てくるように。さらには2列目をレギュラーセットに戻したことで速いリズムでのコンビネーションも復活。アンカー脇の空いているスペースを修正しようとしないイングランドを延々とインサイドから攻め続ける。

 フランスはスコアを重ね続けることに成功。オリーズの決定力が普段通りであれば、逆転まで行っていたケースもあったくらいだった。

 単発のカウンターにフォーカスしていたイングランドの勢いを取り返すきっかけになったのはベリンガム。馬力のあるドリブルで左サイドを蹂躙することでフランスの守備の難点を脅かすことに成功。左サイドの加速からPKを奪取し、サカがハットトリックとなるゴールを決める。

 デンベレ、ベリンガムと最終的にさらに1つずつのゴールを重ねた合計10得点のゴールが生まれた3位決定戦。やはり特殊な位置付けの試合だと思い知らされる結末だと思った。

ひとこと

 一度チームとして崩れると脆いのがフランスということを思い出した試合だった。

試合結果

2026.7.18
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
3位決定戦
フランス 4-6 イングランド
マイアミ・スタジアム
【得点者】
FRA:48′ 66′ エンバペ, 54′ バルコラ, 90+6′ デンベレ
ENG:3′ ライス, 18′ コンサ, 37′ 45+1′ 87(PK) サカ, 90+8′ ベリンガム
主審:ヘスス・ヴァレンズエラ

総括

変身の余地のなさについての仮説

 サウスゲート期から明らかに国際舞台での戦績は一段階引き上がっているイングランド。その実績を引っ提げながら優勝という大目標に向かっていきたいところだが、今回も上まで進みながら優勝を掴み取ることができなかった。

 よかった部分も悪かった部分も基本的にはスカッド構築に集約されると思う。ベスト4に残った4つのチームの中でも、明らかに大会開幕時の選手のコンディションが悪かった。サカ、ライスといったアーセナルのレギュラー勢は故障も抱えており疲労も困憊。RSBの面々は大会前に離脱したリヴラメントに加えて、ジェームズも限られた試合でしか起用できなかった。

 そういう状況の中で踏ん張ることができたのはさすがの層といえるだろう。サイドの選手は日替わりになりながらも、何とか耐えながら進むことができていた。

 逆にセンターラインの選手たちはフル稼働で軸として君臨。故障持ちのライスも含めて、アンダーソン、ベリンガム、グエイ、コンサ、ケインは完走に成功。クオリティを大きく落とすことなく、過酷な日程に食らいついてみせた。

 どの選手も素晴らしいパフォーマンスではあったが、その中でも個人的にはベリンガムとケインは圧巻。ベリンガムは大会前にはやや合わないのか?と思うような代表戦もなくはなかったが、タフな環境の中でのキャリー性能の高さとゴール前での決定的な仕事の質の高さは別格。スターが順当に活躍するW杯の中で、自らもその一員であることを証明してみせた。

 ただ、最終的にはスカッドの運用に泣いた感もある。アルゼンチン戦での逃げ切り失敗は5バックでの人選が適切だったかどうか?ということになるだろう。ボックス内での枚数は足りているのに、ストーンズの背後をひたすら通され続けたのをケアできなかったのは辛いところであり、ああいう殴られ方をするのであれば決壊は当然。サイドでダブルチームの守備に走らされたオライリーと共に、シティ勢の特性は持て余してしまった感じがある。

 ただ、別の見方もできる。メキシコ戦での成功体験とアルゼンチン戦の戦況から5バックにシフトするのは妥当。だが、こうした押し込まれる局面に専念しなければいけない状況を想定していたかは怪しい。想定外の状況に思わぬ長い時間に閉じ込められてしまったのではないか?という仮説を唱えたい。それであればオライリーやストーンズのミスマッチ感も説明がつく。

 そこに陥った要因は初めに戻るのだが、明らかに万全ではないスカッドということになるだろう。より健康な選手が多く揃っているスカッドならまたやりようは変わってくるはず。ただし、みんな疲れ切っているというのはプレミアのCL勢であれば、再現性がある事象の可能性は高い。

 せっかくトゥヘルがいるのに彼らしい変身を見せられなかったのは残念ではある。しかしながら、変身の余地のなさがプレミアのハードなシーズンに裏打ちされる理由なのだとしたら、この大会の敗因はより根深いものになる可能性もある。マグワイアを呼んでおけば!という対症療法的な話が出てしまう時点で、イングランドの抱える問題は根本的な解決を見ていないのではないだろうか。

Pick up player:ジェド・スペンス
 カウンターを単独で止めることができるスピードに、サイドで2人を剥がすことができるドリブル。低調さが目立つプレミア勢の中でシーズン中以上のクオリティを発揮してみせた。

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