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「FIFA World Cup 2026 チーム別まとめ」~ベルギー代表編~

目次

第1節 エジプト戦

ルカクの一発回答で追いつくが・・・

 黄金世代の総決算とも言えるW杯が開幕したベルギー。対するはこちらも英雄・サラーにとっては重要なW杯となるエジプトである。

 立ち上がりに目立ったのは積極的な守備を見せるエジプト。ラインを上げてベルギーのバックラインに非常にタイトに体を当てていく。

 ベルギーの立ち上がりの前進は相手にハードに当てられた状態で何かができる選手次第という感じ。体のキレが好調で反転できるドクと、ポストプレーが安定していたデ・ケテラエルの2人が時間を作ることで味方をフリーにしたり、あるいはミドルシュートをお膳立てしたりなどチャンスを作っていく。

 エジプトの保持はアッティアが右にサリーするような形をメインとした後方3バック化。大外はSBとSHで分け合う形でSBが低い位置に下がってビルドアップに関与するケースもある。

 ベルギーは無理にプレスに行かずに4-4-2をキープ。プレスのスイッチ役となるのはデ・ブライネで、彼がプレスに行った際には後方の選手たちがついていくという格好だった。

 徐々に試合のリズムを掴んできたのはベルギーの方。エジプトのプレスのタイトさに慣れてくる選手が出てきて、無駄なロストが減少。前を向く選手を作るのが容易くなってくる。

 誤算だったのは前を向いても精度が定まらない選手がいたことだろう。オナナのパスミスの多さは流れを切ってしまう苦しさ先行のものだった。

 いい流れながら、守備でもミスが出て先制点を献上してしまうベルギー。サラーのパスを受けたアシュールのシュートは素晴らしいものだったことには違いないが、簡単にオナナの背中を通されて、ムニエのシューターへのアプローチが遅れてしまったことは痛恨だった。

 失点以降はベルギーの保持の時間が長引く展開に。SHの左右を入れ替えて、トロサールを左固定、ドクをフリーロールに変化させるなど配置の工夫も見えた。

 エジプトの守備ブロックはDF-MF間が空いていたが、そこを生かし切ることはできなかった印象。逆にベルギーはCHの背中に現れる降りるエジプトの前線を捕まえきれなかった。

 後半もビハインドのベルギーは引き続きポゼッション。デ・ブライネのFKなど、あわやという場面を早々に作る。流れの中の攻撃においてもインサイドに縦関係をいかし、ナローなスペースで前を向く選手を作るアクションを見せる。

 エジプトはカウンターにフォーカス。左に移動したジコをSBで追い越すなど厚みのある形からファストブレイクを狙っていく。自陣に押し下げられたとしてもマルムシュの爆発的なスピードがあれば、一気に陣地回復ができるのは魅力的だった。

 膠着した試合を打開したのは交代で入ったルカク。右サイドからのクロスに飛び込むことでオウンゴールを誘発。試合を振り出しに戻す。

 逆転を狙いたいベルギーは右サイドのフリーランを生かした攻略というここまでとは少し違う攻め筋から対抗。この攻め筋自体は悪くはなかったが、ボールを失った時に取り返すエネルギーがなかったことは痛恨。セットプレーからメシェレの決定機などはあったが、終盤はやや軟着陸気味のドローでの決着となった。

ひとこと

 守備でギアアップできないチームなのはベルギーの痛いところである。

試合結果

2026.6.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループG 第1節
ベルギー 1-1 エジプト
シアトル・スタジアム
【得点者】
BEL:66′ ハニー(OG)
EGY:19′ アシュール
主審:ラモン・アバッティ

第2節 イラン戦

決め手不足のスコアレスドロー

 エジプト相手にドロー発進となったベルギー。幸い、このカードはドロー決着祭り中なのでここをものにすれば出遅れをリカバリーすることができる。イラン戦は大事な位置付けの試合となる。

 序盤からボールを持つのはベルギー。イランは5-4-1がベース。マイナスのパスに対して、ぐいっとラインを上げるようなアクションを見せるが、CBまでは深追いはしないスタンス。メシェレとヌゴイの2人は安全地帯として活用することはできる。

 インサイドでは強引にルカクでラインを下げさせる手段もなくはなかったが、基本的には左サイドからの進撃がこの日のメイン。トロサールの縦突破は5枚を並べているイランに対しては悪くはない当て方だったように思う。

 イランはボールを持つ側に回ると、GKを基準にCBが大きく左右に開く形でショートパスからの前進を示唆。即時奪回のところを除けば、ベルギーは前から追っていくようなタイプのチームではない分、プレッシャーは限定的。

 ロングボールから一発で抜け出す形を含めて、イランが前進に困っている様子はなし。ベルギーを押し返す場面もあった。その機会からイランはネットを揺らすがオフサイド。壁の間を割るトリックプレーは僅かに飛び出しが早い分、スコアにはつながらなかった。

 ベルギーは以降も押し込む展開を中心とするが、なかなか変化をつけるアタッキングサードの動きが出てこない。トロサールのインサイドを噛ませるワンツーはキレ自体は悪くはない一方で、イランのミドルシュートのブロックが間に合っている。縦への揺さぶりが少し足りていないようにも思う。

 そこを補うアクションとしてみられたのはデ・クーパーのバックドア。オフザボールのアクセントの付け方としては面白かった。だが、総じてパスの出し手であるデ・ブライネへのハードなタックルでイランはベルギーにスムーズな起点を許さず。代わりに手に入るセットプレーでも怖さを見せることができないまま、無得点でハーフタイムを迎える。

 後半もジリジリとした展開は同じ。どちらかといえば元気なのはイランの方で、右サイドに交代で入ったジャハンバクシュを絡めた攻撃でボックスに入っていく。

 決め手がないままのポゼッションをしつつ、どこかでギアアップを狙っていきたいベルギー。しかし、そんなベルギーにアクシデントが発生。ヌゴイのDOGSOで残り時間を数的不利で迎えることに。

 このプレーから試合はイランがボールを持つ展開に転換。イランは無理にギアを上げるのではなく、引き分けでもやむなしというように試合を寝かせていく。ベルギーの前線にはプレスでこの展開を叩き起こすのもなかなか難しいという様子だった。

 終盤のデ・ブライネ→フェルナンデス=バルドの交代から残りの時間はオープンな展開に。直線的な前進手段を手にしたベルギーだけではなく、イランも恩恵を受けてスピーディーに前に進んでいく。

 しかし、どちらのチームも得点には至れず。試合は0-0。グループFはいまだに3ポイントを手にしたチームがいない4すくみ状態である。

ひとこと

 ベルギー、何が強みがわかりにくいチーム。

試合結果

2026.6.21
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループG 第2節
ベルギー 0-0 イラン
ロサンゼルス・スタジアム
主審:ダリオ・エレーラ

第3節 ニュージーランド戦

群雄割拠を大量ゴールで抜け出す

 群雄割拠のグループG。まだ全チームに突破の可能性が残されている中で勝利しなければいけないニュージーランドと対峙するのはベルギー。彼らもまた勝たなければ道が閉ざされる可能性があるチームである。

 序盤からボールを持つのはベルギー。前から強引にという戦い方はしてこないニュージーランドに対して、左右の大外から突っついていくスタート。この日はスタートポジションが右サイドだったドクだが、左サイドにも出張することもしばしば。逆サイドのトロサールやトップ下のデ・ブライネのコンビネーションからボックス内の侵入を試みる。

 ラインを下げつつ、人も下がりつつという形でなんとか踏ん張ろうとする姿勢を見せていたニュージーランドだったが、細かいタッチから攻撃を加速させていくベルギーに苦戦。ロングボールでの前進も不発で保持で呼吸することもままならない展開だった。

 押し込み続けるベルギーは次々とチャンスメイク。多くの決定機が訪れるがギリギリのところでニュージーランドは粘り続ける。最終的にはOFRまでたどり着いた場面においてもハンドはなしという判定。首の皮一枚でハイドレーションブレイクを迎える。

 だが、そのハイドレーションブレイク明けについに失点してしまったニュージーランド。CKのエアポケットのような位置にキックのボールは落ちてしまい、そのこぼれを押し込んだのはトロサール。見た目とは裏腹に当たり負けしないプレミアリーガーらしさを見せる押し込みでついに試合を動かす。

 失点した後からは徐々に保持の時間が増えるニュージーランド。ベルギーはハイプレスで相手を制圧する術を持っていない分、自分たちさえ落ち着けばボールを持てるということをこの時間帯からできるようになってきた。

 ジャストやシンを軸とした左サイドの攻撃からのチャンスの場面はできてきたニュージーランド。しかし、攻め込めば攻め込まれる際のスペースが生まれてしまうのは世の常。ベルギーのテクニシャンたちが中盤でフリーのスペースを享受することで加速しながら敵陣に入っていく場面も。

 後半早々にベルギーは追加点。左のハーフスペースを細かいパスで繋いでいくことに成功すると、得点を決めたのはトロサール。ボックス内でやや浮いたボールを器用にゴールに押し込んで見せる。

 さらにデ・ブライネも得点を決めたベルギー。この時点で勝利と勝ち抜けは確定したと言っていいだろう。ただ、ベルギーは保持で時間を殺すわけでも強固なブロックで相手の得点の可能性を握りつぶすわけでもないのが不思議なところ。ニュージーランドからすればそれなりに組み合っている感はあるけども、得点が入るのはベルギーの方ばかりという感じであった。

 ジャストが一矢を報いることは成功したニュージーランドだが、ルカクに早々に反撃ムードを咎められてしまうと、最終的にはサレマーカーズにも得点を決められて5失点。突破の可能性を残しながらも派手な返り討ちに遭ってしまった。

ひとこと

 ベルギー、変わった試合の支配の仕方をした。

試合結果

2026.6.26
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループG 第3節
ニュージーランド 1-5 ベルギー
BCプレイス・バンクーバー
【得点者】
NZL:84′ ジャスト
BEL:28′ 50′ トロサール, 66′ デ・ブライネ, 86′ ルカク, 90+4′ サレマーカーズ
主審:アドハム・マハドメ

Round 32 セネガル戦

匂いのしない同点劇から流れを引き寄せたベルギー

 混戦のグループGを首位通過したベルギー。ノックアウトラウンドの初戦は”死の組”グループFから最終節にグレートエスケープを果たしたセネガルだ。

 序盤から互いにボールを持つ時間が長くなるジリジリとした展開に。中盤を厚く、前線の人数は限定的という守備プランは両チーム共通であり、保持側はこの守備の方向性に対して解決策を示す必要があった。

 ベルギーはバックラインからの対角のパスでサイドにボールをつけつつ、外側から攻略を狙っていく。サイドにはデ・ブライネがフローすることでそこから先の道筋を探しにいく形。

 一方のセネガルは相手に捕まっている選手が背負いながら反転を狙う形。ベルギーは前線は緩めでも、バックスがセネガルの前線にタイトなマークをしていたので、前を向くことは簡単ではない。

 それでも引きちぎることができるのがセネガルのフィジカルの魅力。相手に捕まっているような状況からでもボールをコントロールしてボックスに進撃。こぼれたところをディアッラが詰めて先制点を奪う。

 失点したベルギーはボールの保持の機会が多くなる。しかしながら、ギアアップのタイミングをなかなか見つけられず。非保持からプレスのリズムを作るチームではないし、保持においてもサイドからの打開策が見当たらない。特にセネガルが優れていたのはドクのマーク。欠かさずダブルチームを行うことで簡単にスピードに乗らせないことを徹底。ボックス付近の迎撃も安定しており、総じてセネガルは安全に無失点で前半を終えることができた。

 後半、ベルギーはルカクを投入するが急激にギアが変わることはなし。むしろ、後半の頭は押し込みながら相手を動かしていくセネガルのポゼッションに苦戦する。それならばと前がかりになったところでDFラインの乱れを突かれる形でベルギーは失点。イスマイラ・サールが追加点を決める。

 2点差になったことでベルギーはドクとデ・ブライネを外すという荒療治を決断。それでも流れは返って来ず。ボックスの手前に顔を出すトロサールによって、セネガルのブロックが間延びするシーンは出てくるものの、そのスペースを連鎖して利用することができない。

 共にローギアのまま進んでいったこの試合。ベルギーが押し込み続けるわけでもなく淡々と時間が過ぎていった中でルカクのゴールは脈絡がなくセネガルのボックス対応が甘くなったシーンだと言える。

 立て続けにベルギーはティーレマンスがゴールをゲット。直前に揉めていたトロサールのアシストによって、一瞬で試合を振り出しに戻す。

 延長戦でも展開的には交互に押し込みながらブロックをどのように攻略するか?という睨み合い。ほぼチャンスはない展開の中で最終的にゴールを手にしたのはベルギー。ボックスに飛び込んだティーレマンスのPK奪取で125分にベルギーは決勝点。W杯史上最も遅いゴールでベルギーがRound16への切符を手にした。

ひとこと

 ベルギーが試合を支配している感じはしなかったけども、終盤は強引に相手を引きちぎるシーンがなかったことを踏まえると、セネガルはだいぶ疲れていたのかもしれない。

試合結果

2026.7.1
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
ベルギー 3-2 セネガル
シアトル・スタジアム
【得点者】
BEL:86′ ルカク, 89′ 120+5′(PK) ティーレマンス
SEN:24′ ディアッラ, 51′ イスマイラ・サール
主審:サイード・マルティネス

Round 16 アメリカ戦

渦中のアメリカを飲み込んだベルギー

 ドナルド・トランプまで巻き込んでの大騒動で雑音が止まらなかったこの試合。渦中のバログンはスタートからトップを務めさせるというのがポチェッティーノの決断だ。

 立ち上がりはアメリカがボールを持つスタート。ベースとしてはここまでと同じ3-2-5。左サイドにはロビンソンを片上げで時にはプリシッチとレーンを変えながらという形だった。

 人を気にしているけども、人を潰し切るような守備基準でなかったベルギー。本来であれば、アメリカはこういうチームに対して、細かいオフザボールの駆け引きを絡めながら、中央で反転するフリーの選手から一気に加速するのが得意技。

 しかしながら、プレー選択は弱気だわ、パスの精度がイマイチだわでミドルゾーンから先に進むようなクオリティはアメリカになかった。ベルギーはアメリカの攻撃をピッチの中央付近で簡単に終わらせることができた。

 ベルギーは立ち上がりこそ無理に蹴らされていた感じがあったが、徐々に対応。厳しいチェックを受けながらも反転から加速をもたらすことができるルケバキオの推進力がベルギーの生命線であった。

 アメリカのらしくなさは自陣での守備でも。ブロック守備から相手の攻撃が終わった後のプレーやリアクションがとにかく雑で遅い。このスタンス故にベルギーは波状攻撃を仕掛けることに成功。ラスキンのセカンドを拾うアクションからデ・ケテラエルの一撃までの流れはこの試合のアメリカのパフォーマンスの低調さの象徴とも言える。

 ハイドレーションタイムが明けると少しずつアメリカはらしさを取り戻してきた感。兆しが見えると、結果はすぐについてきた。インサイドでのバログンのファウル奪取からフリーマンの直接FKが決まり、同点ゴールを仕留める。

 だが、ベルギーはすぐに反撃。トロサールの左サイドからのシンプルな仕掛けからデ・ケテラエルがゴールをゲット。2枚が寄ってきたのをモノともしないクロスを上げたトロサールはお見事。逆に言えば、フリーマンは2枚目のマーカーとしてスピードを上げたところでケアできる距離感にいたい。それが無理なら、そもそも初めから横並びでいた方が良さげである。

 アメリカは終盤に右サイドのティルマンがラスキンを外すところから右サイドで加速。バログンをランナーとした攻撃は徐々にらしいスピードアップを見せる。だが、同点にする前に前半は終了。ベルギーのリードでハーフタイムを迎える。

 後半、アメリカは選手交代を敢行。レイナをデストに代えて投入する。この交代に伴い幅取り役はSBにフォーカス。5人のMFでシームレスにインサイドをかき乱すことでベルギーを揺さぶっていく格好に。

 ベルギーの中央に恒常的な数的不利を強いるという意味でこの交代は意味があったと言えるだろう。足の長いパス1つで背後を取ることが目立った前半に比べると、ベルギーの守備ブロックの中で前を向く選手を作るケースは前半よりも明らかに多くなった。

 ベルギーは高い位置をとるアメリカのSBの背後からカウンターを狙っていく形。当然アメリカとしてはビハインドなので、このリスクを負うのは仕方ないと言ったところだろう。

 だが、そのリスクの爆発の仕方は計算外。抜け出しへの対応のミスから一気に失点まで持っていかれる格好に。フリースは芝に足を取られてしまった。

 後半頭のプランは活性化という意味では悪くなかったが、さすがに3失点目のダメージは重たかった感。駆け回りつつ前線にパスを供給していたバーホルターなど一部の選手は気を吐いていたが、プリシッチの負傷交代もあり、勢いに多方面から水を差された格好に。

 ドクとルカクというカウンターにおける嫌がらせの権化のような2人がいたのもアメリカにとっては迷惑。いちいち時間を作られるだけでなく、トロサールとタンデムを組んで現実的なゴールの可能性まで突きつけてくるのだから溜まったものではないだろう。

 最後はルカクが敵陣でのプレスから奪ったボールを冷静に沈めて4点目。前半のリードを取り返そうと息巻いていたアメリカを返り討ちにしたベルギーがベスト8への進出を決めた。

ひとこと

 ちょっと、色々ありすぎたね。

試合結果

2026.7.6
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 16
アメリカ 1-4 ベルギー
ルーメン・フィールド
【得点者】
USA:31′ ティルマン
BEL:9′ 33′ デ・ケテラエル, 57′ ファナケン, 90+3′ ルカク
主審:アドハム・モハメド

準々決勝 スペイン戦

リリーフエース対決はメリーノに軍配

 大会の本命と目されるフランスが待ち受ける準決勝の切符。奪い合うのは試合が進むにつれてパフォーマンスを上げてきている欧州の両雄だ。

 共にゆったりとしたリズムでプレーすることが多い両チーム。しかしながら、この試合は非保持で相手を前から捕まえにいくアクションをすることで押し込まれることを回避しようという強い意志を感じるスタートとなった。

 スペインはプレスを誘引しつつ、前線の降りるアクションから中盤の背後を狙っていく。オルモとオヤルサバルが中盤に空いた穴を突いていく形で前に出ていく。

 ベルギーの狙い目は左サイド。人につく意識が強いスペインに対して、ドクがややインサイド寄りに降りるアクションと左の背後を取るデ・ケテラエルで縦に揺さぶりながらチャンスを作りにいく。

 手応えがあったのはスペインの方だろう。ベルギーは2トップでロドリまで管理するようなシステム。たまにベルギーのCHが出ていくケースもあったが、いつも出ていくほど前がかりでもない。そうなってくると、デ・ブライネがいくらパスコースを消してもロドリが浮く場面は出てくる。

 2トップに対して、浮く位置を探すことに関してはロドリはもはや名人の領域。スペインは攻撃の起点を作ることに成功。ロドリからの幅とライン間を合わせた組み立てとクバルシの背後を狙うアクションを組み合わせる形で徐々にベルギーを追い詰めていく。ベルギーはスペインのバックラインにプレスに出ていくことができず、少しずつスペインの保持の時間が増えていく展開に。

 ハイドレーションブレイクの直後にベルギーは決壊。右サイドからのバックドアで背後を取ったポロからの折り返しをファビアンが沈めてスペインが先制する。

 押し込んだ局面においては右サイドの切れ味が光っていたこの日のスペイン。ヤマルは1枚剥がすアクションのキレが上がっており、いよいよギアが上がってきた様子を感じさせる場面も。左サイドに顔を出す場面もあるなど、この日は右の幅取り役以外の顔も見せた。

 ベルギーは先制されたこともあり、もう1回ハイプレスに行くがこれも空振り。スペインは前線の動き出しと1枚剥がせるヤマルを使いながら優位に立つ。

 それだけにデ・ケテラエルのゴールは脈絡がない意外なものだった。一発勝負で空中戦を仕留めるデ・ケテラエルの勝負強さは間違いなく前のラウンドでの流れを汲むものだった。

 瞬間的に右サイドからの攻撃の機会を取り戻すベルギーだったが、スペインが保持からのリズムを取り戻したところでハーフタイムに。試合はタイスコアで後半に。

 後半は両チームともよりはっきりと中盤を最終ラインに落とすことでポゼッションの確保を優先。クバルシのタッチダウンパスなどダイレクトな展開から中盤を省略するケースもあったスペインだった。

 ベルギーは右サイドのトランジッションを大事にする入り。ゆったりとした定点攻撃においては左サイドから枚数をかけた攻撃で敵陣に侵入していく。

 時間が経つとやはり支配的に保持を進めるのはスペインの方。対角パスとサイドからのトライアングルの攻撃をなめらかに行っていく。ベルギーは起爆剤となりうるルカクの投入を早々に決断することになる。

 ドクとルカクの直線的な動きは瞬間的な切れ味も垣間見えたが、時間の経過とともに中盤が間延びするベルギーの守備ブロックを隠すまでには至らず。こうなったら容赦なくライン間を刺す攻撃にフォーカスできるのがスペイン。左サイドにニコ・ウィリアムスを入れて、横幅もコンパクトに守ることを許さず最後の仕上げにかかる。

 そして、今日も仕上げを担当したのはメリーノ。クバルシの鋭いミドルのこぼれ球をメリーノが押し込んで決勝ゴールをゲット。クルトワの負傷によって出番が回ってきたラメンスにとってはほろ苦いW杯となった。

 2試合連続で貴重な決勝ゴールを手にしたメリーノ。フランスの待つ準決勝に駒を進めたのはスペインだった。

ひとこと

 ルカクの投入からの反撃を抑えて、一手一手仕上げに向かうスペインらしい勝利だった。

試合結果

2026.7.10
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Quarter-final
スペイン 2-1 ベルギー
SoFiスタジアム
【得点者】
ESP:30′ ファビアン, 88′ メリーノ
BEL:41′ デ・ケテラエル
主審:マイケル・オリバー

総括

逆転勝利がもたらした副産物

 非常に不思議なチームだったなというのが今大会のベルギーに対する感想だった。グループステージは相変わらず低調なスタート。オナナがデ・ブライネにブチギレられそうなパスを連発するなど、第1節のエジプト戦は自分たちがいい形を作れそうな雰囲気をあっさりと放り投げてしまうというなかなかに苦しいスタート。

 続くイランにも粘り切られてしまい、2試合連続の引き分け。ロースコアでのドロー沼というグループGの苦しい雰囲気の中心となってしまった。

 それでも延々と叩き続ける時間を作り続けたニュージーランド戦では快勝。大量の得点でグループ首位での突破を結果的には決めた。

 このグループステージでは決め手不足、アタッカーの不振が非常に目立った。一番初めにお目覚めしたのはトロサールだろう。ワイドに開いた時の対面の選手を剥がすアクションやボックス内で体をぶつけながらフリーになる動きなど、巧みさと力強さを併せ持つ円熟味のあるプレミアリーガーとしての輝きを見せた。

 この勢いでノックアウトラウンドまで進んでいきたいところだったが、セネガル戦では2点のビハインドを背負う苦しい展開に。窮地で繰り出したデ・ブライネとドクを外すという一手が具体的にどんな効果があったかはなんとも言えないところだけども、彼らを外したからには絶対に結果を出す!という賭けにルディ・ガルシアが勝ったことは確か。

 脈絡のないルカクのゴールから着火した攻撃はティーレマンスに燃え移る。ボックス内への侵入で見事な同点ゴールをもぎ取ると、延長戦ではリーグでもあまり見ることもないPKを決めてベルギーに逆転勝利をもたらした。

 基本的にはセネガルの集中力が切れたところをうまく突いたなという印象なのだけども、この試合によってガルシアは序列に囚われることなく柔軟な戦力運用で特に前線を90分から逆算して作れるようになった。そう考えるとデ・ブライネ、ドクを外して勝ったのは大きな意味があるのかもしれない。

 Round16では完全に下げ潮ムードだったアメリカに大勝。交代出場で入ったルカクとドクのカウンターでひたすらチャンスを作り続けることで本拠地のファンを黙らせることに成功する。

 スペイン戦ではデ・ケテラエルの空中戦が猛威を振るうことでスペインを苦しめる場面も。前線の持ち味の多様性を発揮することはノックアウトラウンドに入ってからのベルギーの支えになったと言えるだろう。最後はスペインに屈してしまったが、グループステージの様子を見ると、ノックアウトラウンドでここまで善戦したのは正直意外。そういう意味では大会の波にうまく乗ることができたチームだと言える。

 ただ、逆にいうとベースの部分が揺らいでいるのは気がかり。黄金世代は30代中盤に差し掛かっており、特にセンターラインの後方ブロックに新しい核が出てきていないのは明確な課題。勢いに乗って結果を出した一方で、土台の強さを感じる場面を今後見せられるかが次のEUROの目標となるだろう。

Pick up player:レアンドロ・トロサール
 うちの子です!と何回も言いたくなるような活躍。波が多い選手が目立つチームの中で、デ・ケテラエルとともに安定したクオリティでチームを牽引した。

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