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「FIFA World Cup 2026 チーム別まとめ」~ボスニア・ヘルツェゴビナ代表編~

目次

第1節 カナダ戦

おそばせながらの反撃で1ポイント止まり

 メキシコに続いてカナダでもワールドカップが開幕。開催国が迎え撃つのは、プレーオフからギリギリで滑り込んだボスニア・ヘルツェゴビナだ。

 4-4-2で組み合う両チームは、序盤から縦に速いロングボールの応酬。味方も積極的に前へ飛び出していくなど、かなりアグレッシブな立ち上がりとなっていた。

 時間の経過とともにボールを持つ機会が増えていったのはカナダ。ミラーに時間を作ってもらいつつ、オーバーラップする味方を使っていく。トランジッションからオルワセイを生かす形も含めて、徐々にボスニア・ヘルツェゴビナを自陣へ押し込んでいく。

 サイドから押し下げられ、ボックス内を何とか守る展開に追い込まれるボスニア・ヘルツェゴビナ。しかし、序盤から強さを見せていた空中戦から先制に成功する。セットプレーからコラシナツのニアフリックをルキッチが叩き込み、リードを奪う。

 以降はさらにカナダの保持が増える展開に。やや大味な肉弾戦の連続となり、なかなか決め手となる攻め筋を増やすことができない。それでも中盤でボスニア・ヘルツェゴビナの反撃をすぐに封じることで、自分たちのターンを延々と増やしていく。ボスニア・ヘルツェゴビナは右サイドのバイラクタレヴィッチがスピードを生かした陣地回復を狙うが、ラリアとのマッチアップで簡単には前へ出られない状況だった。

 少し違いになりそうだったのはインサイドのしなやかさだろうか。ターンからボスニア・ヘルツェゴビナのDF陣を振り切るようなシーンはちらほら見られた。それでも肝心の決定力がついてこなかったカナダ。前半のうちにビハインドを解消することができないままハーフタイムを迎える。

 後半もカナダのポゼッションは安定。前線のしなやかさを生かしたターンも健在で、ボスニア・ヘルツェゴビナはミドルゾーンより後ろで延々と耐える展開が続くこととなる。ブロックのコンパクトさも前半よりルーズになっており、カナダは中盤やサイドでブロックの内側にフリーの選手を作り、背後へ抜ける選手へパスを出すための動線を作る余裕があった。

 ボスニア・ヘルツェゴビナはロングボールのセカンドボール回収から一気にゴールを狙っていく形が中心。サイドの選手を入れ替えてアライベコヴィッチを投入しても、反撃の機運はなかなか高まらなかった。

 プレスの意識を強めたボスニア・ヘルツェゴビナを退け、あとは仕上げられるかだけがテーマとなったカナダ。決め手になったのはしなやかさだった。ボックス内でうまくフリーになったラリンが同点ゴールを決める。

 しかし、反撃はここまで。試合はタイスコアのまま終了。勝ち点1を分け合う結果となった。

ひとこと

 ボックス付近の精度が特に先発セットに欲しいという感じのカナダだった。

試合結果

2026.6.12
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第1節
カナダ 1-1 ボスニア・ヘルツェゴビナ
トロント・スタジアム
【得点者】
CAN:79′ ラリン
BIH:21′ ルキッチ
主審:ファクンド・テージョ

第2節 スイス戦

均衡をジョーカーが爆発させる

 初戦ではカタール相手に土壇場で同点に追いつかれることを許してしまったスイス。突破のためにもここは絶対落とせないところだろう。

 マンツーでのプレスをかけてくるボスニア・ヘルツェゴビナに対して、スイスはややずらす形でのポゼッション。GKを絡めつつ、右のSBを押し上げるような形から可変3バックでボールを動かしていく。サイドにボールをつけつつ、斜めのパスでエンボロのポストから横断。逆サイドにボールをつけてサイドアタックを狙っていく。

 まずは押し下げるところを優先したスイス。それが済むと左サイドからのサイドアタックに移行。パス交換から抜け出す選手作りを手数をかけて行い、相手のバックラインの背後を取っていく。ジャカを出し手としてここからハーフスペースの手前と奥を使いながらボックスに入る準備を行う。

 ボスニア・ヘルツェゴビナはアライベコヴィッチが最終ラインに入る5バックにて迎撃。しかしながら、最終ラインの動きは味方の動きに無頓着で、人を入れてレーンを埋めても相手の動きに対応する選手によって簡単に歪んでしまう。

 さらには保持に回っても陣地回復役にしたいアライベコヴィッチが低い位置でボールを持つことでなかなか前に進めず。スイスの即時奪回に苦しむこととなる。

 前半の途中からボスニア・ヘルツェゴビナはフォーメーション変更とハイプレスへの移行。噛み合うように5-3-2のような形に布陣を整理し敵陣から相手を捕まえにいく。

 この変化によって、アライベコヴィッチとメミッチが左サイドに集結。カットインができるアタッカーを2人揃えることでストロングサイドを作り、攻撃の目処まで立つように。得意のセットプレーの機会も増えてスイスのゴールを脅かす。

 後半は同じ噛み合うフォーメーションの中でも逆に手数をかけるボスニア・ヘルツェゴビナに対してスイスがハイプレスで出ていく立ち上がりに。ボールを捨てるようなアプローチを取ることでボスニア・ヘルツェゴビナを自陣に釘付けにする。

 ボスニア・ヘルツェゴビナは左サイドに中盤を下ろすなど工夫を見せていたが、簡単に回避することはできず。スイスのプレスの圧力をモロに受けてしまう。

 ボールを奪った後の決め手となるのはエンジアイ。左サイドからキレのあるドリブルで敵陣に迫っていく。

 しかし、ボスニア・ヘルツェゴビナは左サイドのユニットから少しずつ巻き返し。試合はポゼッションの機会が一進一退の展開となる。

 決め手になったのは交代選手の働き。スイスはマンザンビが均衡を破るアクロバティックなゴールを決めると、これがワンサイドゲームの幕開けに。そのマンザンビのパスから相手の退場を誘うと、続いてのゴールは同じく交代で入ったバルガス。自陣から出ていくことができないボスニア・ヘルツェゴビナをサイドから叩き続けて追加点を奪う。

 さらにはマンザンビは自らのゴールで追加点。1点をアクロバティックなシュートで返されるが、最終的にはジャカのPKでパーティーのやり直しに成功。先制点から交代カードで一気に流れを引き寄せたスイスが2戦目にして今大会初勝利を挙げた。

ひとこと

 ボスニア・ヘルツェゴビナもよく抵抗したと思ったが、スイスの交代選手の働きが素晴らしかった。

試合結果

2026.6.18
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第2節
スイス 4-1 ボスニア・ヘルツェゴビナ
ロサンゼルス・スタジアム
【得点者】
SWI:74′ 90′ マンザンビ, 84′ バルガス, 90+7′(PK) ジャカ
BIH:90+3′ マフミッチ
主審:ジョアン・ピニェイロ

第3節 カタール戦

輝きを放ち出したボスニア・ヘルツェゴビナのアタッカー陣

 もう1つのカードの余裕さとは対照的に、こちらは現実的には3位通過を目指す両チームの試合。勝てばW杯の初勝利という名誉もかかっている重要な試合である。

 4-5-1で構える形がメインとなったカタールに対して、ボスニア・ヘルツェゴビナがポゼッションするスタート。外にボールを循環させつつ、左サイドのアライベコヴィッチとコラシナツの縦関係から打開を狙っていく。

 とにかくこの日のボスニア・ヘルツェゴビナは積極的な姿勢が目立ったのが特徴。前が開いたらガンガン打つということを意識しており、割り切った様子が見られた立ち上がりだった。

 一方のカタールは基本的にはカウンターベース。9番の位置に立つアフィフはさすがに偽CF。中盤まで降りるアクションからボールを引き取り、そこから背後を狙うパスを出していく。アフィフを起点に裏抜けから直線的に向かうというのがカタールのプランだった。

 こうなってくると単発の攻撃であるカタールに対して、ボスニア・ヘルツェゴビナは保持の機会が増えていくことに。徐々にカタールを押し下げていく。サイドから押し下げていきつつ、セカンド回収という形でバイタルが空くか?というのがこの試合のポイント。そのポイントを制したのがアライベコヴィッチ。セカンド回収ではなく、ドライブで中盤を剥がすことでシュートのスペースを確保。振り切ったシュートで豪快な一撃を見事に決める。

 カタールはプレスを強化していきたいが、ボスニア・ヘルツェゴビナはデミロヴィッチを中盤に下ろすことで中央の数的優位を構築。ボスニア・ヘルツェゴビナがビルドアップの時にバックスがプレスを1枚引き寄せることでカタールは中盤が足りなくなってしまう。結果的にプレッシングは空転となった。

 ボスニア・ヘルツェゴビナは押し込む局面を継続。右サイドからのジェコのクロスがオウンゴールを誘発し、リードを広げることに成功する。

 ボスニア・ヘルツェゴビナの一方的な展開だった前半だったが、カタールは終盤に反撃。4-4-2の際にはボスニア・ヘルツェゴビナはなかなかプレスにいくことができないことを逆手に取り、右に流れるアフィフからサイドの裏を取ることに成功。あれよあれよという間にボックスに入って行き、最後はアル・ハイドゥースがゴールを決める。

 後半、ボスニア・ヘルツェゴビナはもう1回ポゼッションから展開をキープ。アライベコヴィッチとコラシナツの左サイドから展開を掴み直す。降りるアクションが多かったデミロヴィッチが背後を取る動きから変化をつけていく。

 ボールを持つ側になった場合のカタールは前半同様にボスニア・ヘルツェゴビナの消極的なブロックに対して、追い込むことができるように。展開としては一進一退の攻防となる。

 終盤にもう一度ギアを入れ直したのはボスニア・ヘルツェゴビナの方だろう。右サイドのバイラクタレヴィッチのカウンターからパンチのあるミドルを放つと、ここから勢いに乗ることに成功。マフミッチがゴール前で粘りながらゴールを叩き込み、試合を決定づける3点目を決める。

 初勝利と3位からの決勝トーナメントのチケットを手にしたのはボスニア・ヘルツェゴビナ。滑り込みでW杯の旅を続けることに成功した。

ひとこと

 ようやく若いWGたちが輝き始めたボスニア・ヘルツェゴビナだった。

試合結果

2026.6.24
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
グループB 第3節
ボスニア・ヘルツェゴビナ 3-1 カタール
シアトル・スタジアム
【得点者】
BIH:29′ アライベコヴィッチ, 34′ アルブラキ(OG), 80′ マフミッチ
QAT:42′ アル・ハイドゥース
主審:ヘスス・ヴァレンズエラ

Round 32 アメリカ戦

完勝も次戦は試練濃厚

 開催国として視界良好な山に入ったと言えるノックアウトラウンドのアメリカ。初陣はグループBをギリギリのところで通過したボスニア・ヘルツェゴビナとの試合となる。

 ボスニア・ヘルツェゴビナはこの試合で5-3-2を選択。引いて受ける前提でアメリカにボールを渡す。ボールを持たれる前提のフォーメーションではあったとは思うが、ボスニア・ヘルツェゴビナは引いて受ける一辺倒ではなく、IHやWBがスライドして前に出ていく場面もちらほら。

 ボールをカットすると、素早く前に蹴ってのロングボール勝負に出るボスニア・ヘルツェゴビナ。ジェコとデミロビッチの2人で攻撃を完結させるイメージで前に前に進んでいく。

 序盤はボスニア・ヘルツェゴビナのペースだったと言っていいだろう。アメリカはボスニア・ヘルツェゴビナの5-3-2に対して3バック変形をしないなど、後方に安全地帯を設けることはしていたが、前線の細かいポジションのズレからチャンスを作れる感じはしなかった。

 それでもアメリカはコラシナツとラデリッチの間から裏抜けのルートを見つけることで攻撃を徐々に加速。縦へのシャープな展開の中でプレスも強化していく。ボスニア・ヘルツェゴビナはロングボールの精度が乱れるなど、明らかにテンポアップしたアメリカに苦戦。バログンにネットを揺らされたシーンはオフサイドで事なきを得たが、今にも飲み込まれそうな様子だったことの象徴とも言えるだろう。

 インターセプトからのミドルゾーンでのトランジッションからボスニア・ヘルツェゴビナの左サイドを咎めるターンが続くアメリカ。待望の先制点は前半終了間際。雑なロングボールを回収するとそこから素早く縦パス。スカスカの中央を進むと、最後はバログンがネットを揺らす。

 後半、試合は強度が重要な展開にシフト。前半はアメリカに飲まれていたボスニア・ヘルツェゴビナも3枚交代からサイドアタックを整備。左右の縦関係の再構築からボックス内に素早いクロスを入れていく。

 ボスニア・ヘルツェゴビナが反撃のルートを探る中でアメリカはバログンが一発退場をするというアクシデントに。4-4-1で守るアメリカに対して、ここからはボスニア・ヘルツェゴビナがボールを持つ展開に。

 しかし、アタッカーの切れ味で勝るアメリカは数的不利ながらも追加点。左サイドからティルマン、プリシッチ、マケニーでボックス内に入っていくシーンを作って会場に活気を取り戻すと、ティルマンのFKでリードを広げることに成功する。

 ボスニア・ヘルツェゴビナはスローテンポながらボールを持たされる状況というのをあまりイメージができていなかったように思えた。左サイドから一人気を吐いていたアライベコヴィッチのカットインを除けば有効打はかなり限られたものに。アメリカもGKのクロス対応の怪しさがありながらも逃げ切りに成功。2点差を守って次のラウンドに駒を進めることとなった。

ひとこと

 バログンなしのベルギー戦は相当試練感が強い。

試合結果

2026.7.1
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
Round 32
アメリカ 2-0 ボスニア・ヘルツェゴビナ
サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム
【得点者】
USA:45′ バログン, 82′ ティルマン
主審:ラファエル・クラウス

総括

若きアタッカー陣が光になるか

 イタリアを撃破し、かなり重厚なストーリーから本大会にたどり着いたボスニア・ヘルツェゴビナ。他のグループにも助けられながら、なんとかグループステージを突破することはできたが、ノックアウトラウンドでは力不足を露呈した大会だったと言えるだろう。

 そもそも、グループステージから綱渡りの連続。全体的にプレスの機動力が足りておらず、マンツーで前に出ていく形から相手を乱すことができなかったのがスイス戦。この時点で追いかける状況に入ってしまうと厳しいのは明らか。ボールを取り返す力は明らかに足りていない。

 逆に先制点を取ることができたカナダ戦は得意な空中戦でアバウトな形での防衛というもっともいいルートに入っていった感がある。ハマる展開、ハマらない展開は明らかに存在しているタイプのチーム。

 ただ、最終的なアメリカ戦は展開的には得意なゴリゴリのブロックからのファストブレイクを狙っていく形に入ったものの、細かいポジション取りからブロックを崩すきっかけを作られてしまい、好きなように攻略を許してしまった感がある。そういう意味でノックアウトラウンドは本当の意味でこのチームの天井を感じたところでもある。

 希望の光となったのは鋭さを見せたサイドアタッカー陣だろう。前線のサイドに輝く個人の力を見せることができたのは今大会の収穫。

 その筆頭がこの夏にステップアップの噂が取り沙汰されるアライベコヴィッチだろう。カタール戦で見せたカットインからのシュートはグループステージの中でも有数の素晴らしい一撃である。

 展開を選ぶチームであることは確かではあるが、そのルートを尖らせる未来は想定できる。ブロック守備の強度を高め、カウンターからこうしたアタッカーを生かしたファストブレイクというスタイルが確立されれば、安定してこのラウンドは狙うことができるはずだ。新しい武器と従来の強みの融合ができれば今後は面白いチームになっていく可能性も秘めている。

Pick up player:エディン・ゼコ
 本来はイタリア戦で担当するはずでここにあてがわれたであろう北川さんによって豆知識が披露されていた。朝起きて体が痛いとか。

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