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「与えられたものに食らいつく」~2026.9.2 J1リーグ 第5節 FC町田ゼルビア×川崎フロンターレ レビュー

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レビュー

町田が見出した攻め筋

 序盤は互いに様子見のダイレクトな展開の応酬。川崎は脇坂をケアして出てきた昌子の背中を取るラセルダのフリーランからスタートする。

 町田も前線へのロングボールからスタート。町田のスタイルは個人的には時期によって変わると思っているのだけども、今季の「まずは繋いでいこうぜ!」というスタイルを出発点とすると、やや直線的な印象を持った。理由として考えられるのは右のWBの望月がロングボールのターゲットとして計算できることと、谷口サイドへのロングボールは川崎の守備ユニットの狙い目であるということだろう。

 ロングボールでの前進。そして、サイドからのロングスロー。ボックス内での対応に関しては上背で明らかに負けている川崎。ロングスローやセットプレーのように町田のDF陣が上がってくる場面であれば、なおさら身長差は際立つこととなる。

 川崎の選手たちは勝ち目のない競り合いに無理に挑むのではなく、自分も飛ばないし相手も飛ばせない形で対応。バスケットボールでいうところのスクリーンアウトのようなプレーが目立っていた。

 町田の前進は先に挙げたイェンギか望月をターゲットとするロングボールのほかに、(いつもより頻度は低いものの)自陣からのショートパスの繋ぎ。谷がビルドアップに参加する際にはSBロールになる岡村がマルシーニョの背中に入ることができればチャンス。ここからCHを経由し、逆サイドの相馬までボールをつなぐ。

 マルシーニョは前からのプレスと岡村へのスライドを両睨みできるような立ち位置に立ったため、一発で背中を取られるようなシーンはそこまで多くはなかった。それでも、横断することができた時は川崎のスライドは遅れ気味。逆サイドで出口となった相馬、明本に対して山原と伊藤のチェックは間に合っていない。

 よって左サイドからのクロスで町田はチャンスを作っていく。ボックス内はスクリーンアウトで耐えているけども怖さはあるという状態の川崎。そういう状態の中で左サイドから相馬が自由にクロスを上げているという状況はありがたい話ではない。クロスカットに難があるブローダーセンの対応を含めて、川崎は苦しい時間が続く。

 スライドの遅れ、もしくは伊藤が前の昌子を捕まえに行った際のズレ(川崎の守備に対する最もオーソドックスな攻略法だ)など、構造的にずれてしまっている際にクロスを上げられるのも問題ではある。だが、単純に枚数が合っている時に距離が遠いせいでマーカーをマーカーとしないようなクロスの上げ方をされているのも辛いところ。

 特に相馬と山原のマッチアップはそれが顕著。オフザボールで背後を取るシーンを含めて、相馬は文字通り山原をボコボコにしていたと言っていいだろう。

ミドルゾーンの前進が安定

 序盤はラセルダ、マルシーニョを出口としたお手軽な前進ができるかどうか?という形でスタートした川崎。しかしながら、そう簡単にはいかなそうというのは立ち上がりにすぐにわかった。特に菊池とマッチアップしているラセルダはロングボールの収まりどころとしてはこの日は完敗。後半にゴール前では見どころがあったが、前進への寄与という意味では広島戦のロマニッチにはなれなかった。

 むしろ、後方から短いパスを繋ぐことで勝機を見出したい川崎。町田のインサイドは堅いと見せかけて緩いところがある。特にミドルサードでは。

 例えば、イェンギが前に出た時のCHの受け渡しは非常に甘く、山本や橘田がフリーになることが多かった。ドリブルしながらリリースのタイミングを図ることができる今の彼らが浮くと、インサイドに切り込んでいく動きを規制するのは難しくなる。

 DFラインを背負う選手に当てる縦パスも、まともに体をぶつけ合うようなデュエルになると潰されてしまうけども、ワンタッチで落とす先を決めておければ特に問題なし。脇坂はこの動きをうまく使っていたし、そもそも捕まらない伊藤がドリブルからスピードに乗るシーンもあった。

 ライン間で町田のCHの背中に入り込むところまではできていた川崎。特に飲水タイムからしばらくは、この保持におけるメカニズムの機能から敵陣に入ることができていた。

 しかしながら、仕上げ切ることができない川崎。CHの背中を取った先の出口はマルシーニョと三浦のスピードを活かしたい左サイドなのだけども、ここへの町田のケアが最終的には間に合うシーンが多く、スピードダウン。

 強引に仕掛けてロストするというよりは、左から中央に旋回しつつ細かいパス交換で相手を外すようなトライを見せる川崎。それでもシュートブロックは間に合っていた町田。上に挙げた「いい時間帯」でさえも川崎はシュートまで持っていくことができなかった。

攻撃の整理で逆転を呼び込む町田

 後半も望月へのロングボールからスタートする町田。前半との微妙な変化は右サイドでの攻撃の完結が多くなったこと。前半であれば、右サイドで起点を作った後に逆サイドへの展開から相馬のクロスでフィニッシュという形がメインだけども、後半はそうしたシーンは少なく、大外のクロッサーとしての相馬の存在感は少なめだった。

 余談だけども、町田は前節の水戸戦でも同じような傾向。後半に相馬を大外のクロッサーとして活かしていないような時間があった。なぜかの推論ができないので、もし仮説がある人がいたら教えてください。

 町田の右サイドの前進が微妙なのは望月の扱い。ロングボールのターゲットとしては優秀だった(この試合ではプレスバックしての守備者としても良かったが)のだけども、ドリブルなどボールを受けてからワンプレーを挟んでしまうと少し難しくなってしまうところがある。

 左サイドがメインの時間帯は相馬のクロスという出口がはっきりしていた町田だったけども、右サイドになるとそこがぼやけてしまうのが難しいところ。後半の序盤はそういうわけで敵陣での攻撃の整理がいまいちできていなかった。

 川崎はトランジッションからマルシーニョが背後を取って加速するシーンが多め。前半は前進役としては存在感が薄かったラセルダもポストからシュートシーンを迎えるなど、ゴール前ではできることを証明しかけた。

 先制点は左サイドから。インサイドにパスを一度刺して視線を集めてからのアウトサイドアタックが成功。大外からマルシーニョのパスを受けた三浦が岡村を振り切って差し込んだマイナスのパスを脇坂が叩き込む。

 なんといっても見事だったのはマルシーニョのパス。アタッキングサードにおける素晴らしいパスの条件は「受け手が次にやるプレーが自明であること」だと思っている。あの軌道のパスを見れば三浦はあのコース取りで走るしかないし、あのコース取りで走ったらマイナスのクロスを入れるしかない。マルシーニョのお膳立ては三浦にアシストへの道筋を教えるような類のものだった。

 反撃に出たい町田は攻撃陣を整理。失点直後には小川を投入。ロングボールのターゲットにするのだけども、ここは収まらずむしろ川崎のカウンターの温床。最終的には負けていたので心証は悪いのだけども、谷口は小川をロングボールで抑えるという意味では働いていた。

 空洞化する中盤で脇坂や山本が躍動する川崎。マルシーニョとラセルダを使いながらゴールに迫っていく。

 町田はさらに選手交代でテコ入れ。その中の一人である松尾が小川に代わってポストをしたところからもぎ取ったCKから同点ゴールを決めるという流れはなかなかに数奇。クロスに走り込んだ小川がCKを叩き込んだところから、町田の攻撃の潮目は変わったように思えた。

 スピードが豊かな松尾が低い位置でポストプレーに参加することで、川崎の守備陣は少し対応が難しくなった感。町田の追加点は川崎の守備陣が明らかに遊ばれてしまった結果となった。

 潰しきれなかった谷口を責める声が多かった気もしたが、小川のポストのせいで球足が死んでいることもあり、松尾にボールが入っている段階で谷口がアプローチできる瞬間はなかったように思う。むしろ、ここは松尾がコントロールできなかった段階で山本が挟み込むことができれば、逆サイドまでの展開はもう少しスムーズさを欠いた可能性がある。何かができたとすれば、谷口よりは挟み込むことができなかった山本か、最後に小川を離してしまったホマーノのどちらかかなという印象だった。

 川崎は三浦、紺野、持山と前線の顔ぶれが変わったことで明確にパワーダウン。とりわけ、縦への突破ができない左右のWGになってしまったことがハードであり、まともに仕掛けることもできず。かといってプレスでスイッチ役になることもできなかった。

 前節も思ったのだけども、三浦は1列前の方が守備が雑になっている感がある。抜かれても仕方ないと思っているのか、やたらとチャレンジングな寄せ方からあっさりと抜かれる場面が多い。

 町田の中盤が間延びする現象自体は前半から継続していたため、山本、脇坂がフリーになればチャンスはある。後半ATの山本のシュートは町田に冷や汗くらいはかかせたはず。

 それでも決め手を欠いたのは明らか。先制こそした川崎だったが、最後は力負けとも言える逆転負けを喫した。

あとがき

 多くの人が指摘しているように交代選手のパワーの差であったことは間違いない。小川は投入直後こそ微妙なプレーが続いていたけども、ゴールから自分のリズムを取り戻す力強さがあった。

 この試合に関しての最適解で言えばラセルダ、マルシーニョを引っ張ることだったのだろうが、連戦中という状況であればその決断は簡単ではない。特にラセルダはコンディション途上のように見える上に、この試合では負傷のリスクもあった。そうなった時に今の川崎に打つ手はこの試合以上にはない。

 ということで両外国籍選手が退いた後に勝ち目があるとすれば1-0での逃げ切り以外にはなかっただろう。だけども、今の川崎はそれを遂行する強さはない。今季の川崎は明らかにうまくなっている。けども、それが勝ちにつながりそうかは微妙。こういう試合を逃げ切るイメージが湧かないのは、そういうところもあるのかもしれない。

 広島、町田と相手がどれだけチャンスをミスってくれるか次第でどこまで戦えるかという試合が続いている感じがある。今の地力であればこの2つ相手にそういう試合をしてしまうのは仕方がないところがある。今すぐに組み合うような試合をするのは難しい。それでも広島も町田もチャンスを仕留めきれずに喰らいつく隙を与えてくれた部分はある。与えられたものに喰らいつく立ち位置から、なんとか強さを身につけていきたい。今の川崎のリーグ内での序列はこの位置なのかなと思った。

試合結果

2026.9.2
J1リーグ
第5節
FC町田ゼルビア 2-1 川崎フロンターレ
町田GIONスタジアム
【得点者】
町田:75′ 81′ 小川航基
川崎:59′ 脇坂泰斗
主審:フー・ミン

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