MENU
アーカイブ
カテゴリー

「2つのプランニングエラー」~2026.10.11 J1リーグ 第9節 川崎フロンターレ×名古屋グランパス レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

地雷パスにならない3ヶ条

 試合は4分で2つのゴールが生まれる乱戦ムードの立ち上がり。先にスコアを動かしたのは名古屋。セットプレーでファーサイドの藤井がボレーを決めてゴール。野上が藤井のマーカーのホマーノをブロックしてオープンに。ややボールは低くなったようにも見えたが、藤井は非常に器用にボレーで押し込んで見せた。

 このゴールの前でも後でもファーサイドを狙いながら、ローテーションからのスクリーンプレイで味方をオープンにするセットプレーを繰り返していた名古屋。野上は基本的にはマルシーニョ対策を念頭に置いた起用だとは思うが、セットプレーでも重要な役割を果たしていた。

 対する川崎もファストブレイクで同点に。突き抜けたマルシーニョのファストブレイクを後方からプッシュアップした脇坂がゴール。すぐにスコアを戻す。トランジッションで裏一発を狙った山本の視野が起点となった。

 2つの得点を経てようやく試合は落ち着く方向に。川崎のホルダーに対して、名古屋は人基準のプレッシングを敢行。平たく言えば川崎はこのプレッシングをうまくいなし切ることができなかった。

 名古屋のプレッシングは人をかなり深く追い回しはするが、ホルダーとマーカーの距離自体は遠く、ボールを前を向いて晒しながら持てないほどではないという強度だった。前線は二度追いからGKも含めてプレッシングにいくが、警告を受けた永井など、距離を見誤るケースも多かった。

 残念だったのは川崎にこのハイプレスをいなすスキルがなかったこと。永井の警告のシーンのように「長い距離を全力で走って寄せるプレス」はホルダーがファーストタッチをコントロールできる状況を回避できないと守備側の目線でリスクが高い。

 なぜならば方向転換ができないから。こういう単騎でのプレスを好む人もいるけども、方向転換ができない状態でリリースをされてしまうと、まず間違いなくワンツーパスで簡単に外されてしまうからである。なので、この「長い距離を全力で走って寄せるプレス」はリリースさせないことがミソ。川崎のボール保持者にはリリースできる余裕があったが、リリースをしきれなかった。

 名古屋のハイプレスにはこうした欠点があったため、川崎はビルドアップでここを利用したかった。しかしながら、ブローダーセンはいつもよりも簡単に蹴ってしまい、なかなかこうした状況を利用する形に持っていく機会を作ることができず。もちろん、プレッシャーを受けて蹴らざるを得ない局面もあったが、相手との距離に余裕があり、ショートパスを選べそうな場面でも早々にロングボールを選んでいた印象がある。

 要因として考えられるのはCHの橘田と山本のマーカー。森島と内田がマークを担当することが多かったのだが、この2人は他の選手に比べてかなりタイトにマークについていたため、ブローダーセンはパスをつけるのを躊躇したのかもしれない。

 「マーカーが背負った状態のCHにパスをつける」というのは基本的にはリスクの高い行為。いわゆる地雷パスとしても認定されがちな行為でもある。しかしながら、個人的にはこうしたパスは条件付きで容認できると考えている。

 1つ目の条件はマーカー以外にパスをつけた先に挟み込める相手がいるかどうか。挟み込まれてしまうのであれば、いくらなんでもリスクが高すぎる。許容されるべきではない。

 2つ目の条件は低い位置のワイドに明らかにオープンな選手がいるかどうか。要は、受ける瞬間にパスの向け先を決め打ちで定めたコントロールとパスを出すことができるかどうかという話。

 3つ目の条件は上記の決め打ちのパスとコントロールをボールを受けるCHが降りるアクションをしながらできるかどうか。止まって上記のアクションを行う場合、守備側の決め打ちのインターセプトの網にかかる可能性がある。降りるアクションをしながらであれば、そのリスクは明らかに下がる。

 要は安全にサイドに逃がすメドが立っていれば、この地雷パスはつけても問題はないと考える。名古屋は挟み込みの守備もしないし、川崎の低い位置のCB、SBが空いているケースがほとんど。なので、CHのマーカーだけがジリジリとしたマークをしたとしても、個人的にはボールを逃がすチャンスはあったと思う。

 この試合を見ていても、山本や橘田は捕まりそうになったら大きく蹴り出すくらいのリスク管理は有している。そういう意味ではもっとバックスはCHを信じてボールをつけて良かったはず。対人では自信を持って当たってくる藤井にロングボールで挑んでいくという策を簡単に選んでしまったのは個人的にはもったいないように感じた。ここにチャレンジしていくことが名古屋攻略には効果的だったはずだ。

誘引できない両チーム

 逆に言えば、アクシデンタルにでもCHがフリーで前を向くことさえできれば、川崎はスピードアップする攻撃を行うことができていた。それがもっとも顕著だったのは名古屋の攻撃が終了した直後。中央を強引にこじ開けに行ったところから名古屋はボールをロストする頻度がそれなりに。川崎の同点ゴールなども名古屋の攻撃が終了した直後に山本がフリーになったことがきっかけだった。

 名古屋のポゼッションは稲垣が最終ラインに入り、藤井と高嶺と3バックを形成。森島がアンカーに入る。4-4-2の川崎の非保持に対して、構造的に浮く立ち位置は多かったが、中盤ポジションを管理する選手に対して、矢印を出す前にパスをつけるシーンもあったので、構造のギャップを使いきれなかった感がある。

 21分の高嶺→木村のパスが典型例。マグネット的に見れば木村は川崎の選手の間で浮いているように見えるが、高嶺がパスを出す前の時点で橘田がパスのカットに動くことができている。高嶺は前にスペースがあったので、伊藤につっかけるようなパスから森島にリリースするようなアクションがある方が理想的だろう。

 名古屋は総じてこうした構造のギャップを相手を連鎖的に誘引する方法に長けていない。川崎で言えば松長根が課題として持っている部分を名古屋は試合単位でチームの中で感じるイメージだ。

 名古屋の攻撃の中でより効果的だったのはそもそも数の論理の優位を生かしやすい箇所を使うこと。例えば左サイドから上がるファークロス。積極的に上がってくる野上によって、三浦は基本的には数的不利の対応を強いられることに。三浦自体の対応にも問題はあったが、マルシーニョの戻りはいつもよりも甘かったように思う。

 もう1つは人がマークしているポジションをこじ開けること。誘引して相手を動かすことが苦手なチームであれば、捕まっているポジションから相手を外すことが唯一の解決策。この試合の前半で言えば、永井を活用するロングボールは奪われた時にカウンターにつながるリスクも低い上で、相手を千切れる可能性がある手段だった。

 というわけで、名古屋の攻撃の完結の仕方につく隙があった川崎。ただし、この試合の川崎のカウンターもまたシャープさに欠けていた。人を引きつける意識のなさは川崎のカウンターにも言えることでもある。

 先に挙げた21分のカウンターで橘田は内側に切り込んでしまったが、これによって遅れて戻ってきた内田に進んで管理される格好になった。自分自身が内田に捕まってしまうと数の優位は消滅する。外のレーンをキープしながら高嶺につっかけて伊藤かラセルダのどちらかがベターだと思う。

 いわば、21分のシーンは川崎のカウンターの思い通りにいかなさと名古屋のビルドアップの課題の両方を象徴したシーンと言える。

 川崎の攻撃の問題点はアタッキングサードでも。名古屋の非保持はラインを一度押し下げられると、マイナスのパスに対して押し上げられないという欠点がある。右サイドでアイソレーション気味の展開を受けた山原は1on1での突破は難しいかもしれないが、平行かマイナスのパスからもう一度背後を取る動きができれば、名古屋の守備を動かせた可能性は十分にある。

 そうしたアタッキングサードでの縦方向への揺さぶりのなさはこの試合の明確な川崎の欠点。これまでの試合でできていたはずのことができないまま前半を終えてしまった感覚がある。

マンツー色の強化が裏目に出る

 後半、守備からマイナーチェンジをしたのは川崎。4-4-2のゾーンの色が薄まり、人を基準にした守備に変化。3バックへのプレスはマルシーニョがいくのか、それとも脇坂がいくのか、あるいは持たせるのかがファジーだったが、基本的には脇坂が前にスライドすることで整理された感がある。

 マンツーで受けるという基準変更は川崎にとってはマイナスに作用したように思える。後方で同数を受け入れるというのがこの仕組みの基本となるのだが、その割には簡単にホマーノとウレモヴィッチがサイドのフォローに出ていきすぎている。

 後方を余らせる仕組みであればまぁそれでもいいのかもしれないが、後半からは同数が基本になっているので、この志向と両CBの行動は合致しない。後半頭の木村のサイドからの抜け出しのようなことを簡単に許してはならない。

 そもそもSBが簡単に振り切られすぎというのもあるけども、それであれば一人一殺が基本のマンツーを濃くするというプラン変更自体に無理がある。カバーが前提で組むと破綻するのは明らかだ。

 さらに言えば、マンツーで受け切るのであれば失点シーンも2人のCBで処理しきって欲しいところ。ホマーノ&ウレモヴィッチの同数守備はこの試合では水準に満たなかったと言えるだろう。

 川崎の保持面のクオリティも前半から据え置き。ブローダーセンは余裕がある場面でも蹴っていたし、CHのボールコントロールも速い展開の中で乱れがち。裏へのパスはピーキーで相手の動きを止めるというパスワークの前提を怠ったまま、無駄に博打のようなパスが増えるばっかりだった。

 抜け出す場面も作れないことはないが、藤井というストッパーの壁を越えられなかった感。藤井はマルシーニョ、持山と対峙する場面がそれぞれあったが、体の向きが常に外側。まず内側に切り込む相手には対応できない体勢だった。

 ただし、内側には藤井以外の味方のカバーが間に合っており、藤井の体の向きはマルシーニョや持山のドリブルコースを誘導したという見方もできる。いずれにしてもファストブレイクの駆け引き負けは明らかだった。

 そういう意味では終盤に登場した家長は異質。追い越す選手の有効活用という意味ではアタッキングサードでの活性化につなげることは十分にできていた。

 家長の登場で少しずつスピードを生かせるようになった左サイドから終盤はチャンスを作るが、ネットを揺らすことはできず。ホームでの名古屋戦に敗れ、川崎はリーグ戦2試合未勝利となった。

あとがき

 選手のパフォーマンス次第のところもあるので、勝敗がそれだけで変わったかというと難しいところではあるけども、この試合は明確なプランニングのミスがあったように思う。

 1つ目は後半にマンツーマン主体の守備にシフトチェンジをしたこと。誘引ができない名古屋相手にわざわざ1on1で戦うことができるマッチアップをわざわざ作ってあげる必要はない。ビハインドならまだしも、じれるほど危ういシーンを作られ続けた前半でもなかった中でこのシフトをこちらからする必要はなかったと思う。

 2つ目は家長の投入のタイミング。ラセルダを下げた上で、マンツーという土俵で勝負するのであれば、家長の存在は押し上げに必須。人基準ではあるが、個々のマーカーは距離が遠くプレッシャーが緩いという名古屋の特徴を踏まえると、プレッシャーをプレッシャーと感じない落ち着かせ方はしたかったはず。

 カウンターは全部突き抜けるようなイメージで戦っていたけども、特にスピードで振り切れる感じもしなかったので、テンポを整える選手が欲しいという意味でも家長の投入はこの試合に関しては早くても良かった。

 ただ、今季ここまではスカウティングからのプラン立案はハマっている試合の方が多かったので、こういう試合が出てくるのは仕方ないところなのかなと思う。

 どちらかといえば、この土俵でも勝てるポイントがある相手との対戦だったと思う中で勝ちきれなかったことの方が今後を見据えれば重たいところでもある。勝ち筋が交代後に薄くなることを踏まえれば、試合序盤のプラン立案からのリード確保は勝ちパターンには欠かせないということになる。選手の奮起を促すしかないけども、時間とともに勝ち筋の数が減っていく状況が変わらないのであれば、上位進出がシビアなままという現実もまた確かだ。

試合結果

2026.10.11
J1リーグ
第9節
川崎フロンターレ 1-2 名古屋グランパス
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎:4′ 脇坂泰斗
名古屋:2′ 藤井陽也,73′ 山岸祐也
主審:須谷雄三

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次