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「返り討ち要素を備える」~2026.10.7 天皇杯 3回戦 川崎フロンターレ×テゲバジャーロ宮崎 レビュー

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レビュー

CBの制空権を活かした先制点

 前の試合から1週間が空いた川崎とリーグ戦が前後に詰まっている宮崎。この試合のスターターはまさにそうした日程事情を色濃く反映したものになった。

 リーグ戦の多くのスターターをベンチスタートとした宮崎に対して、川崎はこのままリーグ戦を戦っても遜色がないレベルの面々を揃えてきたと言えるだろう。議論の余地があるのはバックスの人選くらいで、他は負傷者を除けばこれが川崎の今のファーストセットである。

 序盤から高い位置でプレスを仕掛けてきた宮崎。川崎は序盤はほんのりバタついたものの、基本的には冷静に対処。開く2CBに加えて、CHが位置を調整しながら宮崎のプレスを乱していく。

 駆け引きの対象となったのは宮崎のSH。宮崎の2トップ脇に立つ選手を作ることで川崎はサイド攻撃の構築を狙っていく。

 とりわけ序盤に光っていたのは右のSB起用となった佐々木。受け手としてはレーンを入れ替えながら大外へのパスルートを作り、出し手としては相手のハイプレスに対してサイドフローする脇坂や背後を狙うボールを供給してボールを逃がしていく。まずはこの佐々木と井上の駆け引きから試合が始まった感がある。

 プレス回避に関しては比較的安定していたと言えるだろう。ブローダーセンのキックは宮崎からのプレッシャーのかけられ方が厳しくなってしまったという環境起因も含めてやや不安定さはあったが、ラセルダとマルシーニョという、いざとなったら彼らに託していいという保険を持っていたことで、チャレンジングなつなぎに挑むことができていた。

 押し込む局面では3枚目の選手が主に右サイドのハーフスペースの裏を積極的に狙っていたが、宮崎はここにはスマートに対応。思うようには抜け出すことができない。

 即時奪回のフェーズが安定していたため、攻め続けることはできそうだった川崎。ここからどうやってナローなブロックを壊していこうか?と思案している最中にセットプレーから先制に成功。ウレモヴィッチが飛び込んですらしたボールを最後はマルシーニョが仕留めてゴール。セットプレーでCBの攻撃参加を活用すれば、制空権は握れるのでは?というプレビューで書いたところをきっちりと絵にした先制点だったと言えるだろう。

ロングボールが機能しなかった理由は?

 宮崎はなかなか思うように前進できなかったように思える。宮崎はプレスを誘引しつつ、そこからロングボールを蹴っていくスタイル。誘引して間延びした中盤をセカンドボール争いで制するか、CFの橋本(この日はベンチスタート)の動き出しから一気に背後を狙っていく形を出口としていく。

 端的に言えば、このスキームがうまくいかなかったのが立ち上がりの宮崎。ロングキックではオフザボールの掛け合わせによって勝負するスペースを作ることができず、松本が川崎の2人のCBに対して数的不利になるような局面が多かった。

 間延びさせられなかったこともあるが、セカンド回収でも川崎のCHに対して後手。早めに警告を受けてしまうなど、宮崎は思ったように主導権を握りたいところから勝負をかけることができなかった。要因としては橋本という動き出しに優れたターゲットの不在、そしてロングボールを蹴るための誘引の不十分さ、さらには宮崎のエンドが風向き的には向かい風で、そもそもロングボールを正確に届けることができなかったなど複合的なもののように思える。

 川崎のプレスはかなり前がかりなものではあったけども、外されてしまったとてそこから一気に加速をされて困るという状況を宮崎に作られることはなかった。「プレスを外されても致命傷にならずプレスバックが間に合う」という状況は体力的な消耗を除けば、プレスをかけ得と言える局面。宮崎は相手のプレスを外すスキルは優れていた(しかも、レギュラーセット抜きで!)とは思うが、それが川崎をスピーディーに攻略することにはつながっていなかった。

 川崎も川崎でトランジッションの精度が足りず。ボールを奪ったところからマルシーニョが加速して一気に敵陣に入っていくこともあるが、彼や彼からパスを受けた選手の精度が足りず。クリティカルなシュートまでたどり着くことができなかった印象だ。

 宮崎が少し流れを掴んだかなと思うのは丸山のパスを引っ掛けてカウンターに移行できそうな匂いが出たくらいか。この局面の前後で川崎は自陣でのビルドアップミスが目立った。スピーディーに仕留めるというところではなかなか思うようにいかなかった宮崎だが、左サイドから少しずつ自分の時間を作っていくように。

 オフザボールで連鎖して、川崎の守備の穴を突いていきつつ、もう1枚足りなかったら逆サイドや中央からさらに人員を動員。伊藤周辺からギャップを作り出し、そこから背後を取って左サイドの深い位置からクロスを入れていく。このスキームが確立していくようになった。

 この状況で目立ったのはウレモヴィッチ。熊本戦と同じく単純なクロスを無効化できるのは心強いところ。カテゴリー差がある相手が続いているが、それを差し引いてもクロス対応に関しては今の川崎では一番安心して見ていられるCBであると言っていいと思う。

 ニアでの跳ね返しは安定していた川崎。だが、ここからカウンターに進むことはできず。試合はそれでもリードを確保して後半に向かう。

走力で完結する擬似カウンター

 後半の立ち上がりは左サイドの縦関係からオフザボールでギャップを作る川崎。追い越していく三浦で抜け出していき、その三浦をもう一度マルシーニョが追い越していくという縦方向の揺さぶりから相手の逆を取っていく。セットプレーも含めていきなり宮崎を追い詰めていく入りとなった。

 宮崎は高い位置からのプレスで真っ向勝負していくが、このプレスをひっくり返して川崎は追加点。佐々木の縦パスから宮崎の重心は一気に後ろに。インサイドでラセルダが時間を作ったことで、左サイドからオーバーラップを促された三浦がゴール。走力を活かした擬似カウンターでリードを広げる。

 佐々木から縦パスが入った段階では三浦のそばには宮崎の選手(おそらく堤?)がいる。が、ゴールの瞬間では三浦に対して堤は遥かにゴールから遠い位置にいる。ニュージーランド戦で中野がやたら言われていた失点と構図は一緒。川崎としては三浦とマルシーニョの走力は当然武器の一つであり、この局面では2人揃って簡単に抜け出す場面を作ることができた。

 2点差がついたところで宮崎の保持が増えてくる。伊藤の背後に抜けていく宮脇が左サイドの奥を取ることで少しずつ攻撃を加速。クロスにもきっちりと枚数を揃えており、川崎はインサイドの数的には1対1のシビアな対応を強いられる。ここでもウレモヴィッチの跳ね返しのスキルは際立つ。

 イケイケになりそうな宮崎だったが、いきなりインサイドにつけるパスに関しては川崎のCH陣がシャットアウトしたことで致命傷にはならず。行けそうな時間帯に一番クリティカルな場面を作らせないのは素晴らしい粘り腰だったと言えるだろう。65分にウレモヴィッチが慌ててバイタルケアに飛び出した場面はやや冷や汗をかいたが、それ以外の場面は押し込まれる時間を耐えながら凌ぐような戦い方にはなっていたのかなと思う。

 宮崎もクロスの枚数を揃える+早めのクロスという戦い方は悪くはなかったし、実際にクロスに先に触れる場面もあった。だけども、ブローダーセンを脅かせるようなシュートを打てる体勢でボールにミートできていたかは微妙なところ。CBをもっとクリーンに外し、シュートのコースと威力を確保できる場面をもっと作りたかった。

 宮崎は橋本を投入して2トップに移行。クロスのターゲットを増やすことで空中戦を強化していく。だが、これはサイドのクロスを上げるための過程作りが甘くなったことで、クロッサーがクリーンにクロスを上げることができる場面が減る方向に進んでしまったように思う。

 終盤はプレスの強度も下がったことで再び押し込みながら時計の針を進めることができた川崎。受けに回る局面を減らすことも、受けに回った局面で耐えることも取り組んでのクリーンシートを達成。4回戦に駒を進めることとなった。

あとがき

 セットプレーとプレスをひっくり返しての加速。2つともプレビューで「差を出せるのではないか?」と仮説を立てた部分だったので、割と久しぶりに刺さった予測を立てることができたかもしれない。ちゃんと見れたんだなということでただ気分がいい。それだけだけど。

 全体で見ると押し込まれる時間がそれなりにあったり、その中で後半に苦しむような場面もあったりなど、完璧な90分を過ごしたとは言い難いかもしれない。ただ、彼らの持ち味である強烈なプレスをひっくり返したり、あるいはセットプレーで突けそうな弱みを引きずり出したりなど、ホームで一泡吹かせてやろうと向かってくる相手を返り討ちにする資質は十分に備えていたと思う。

 ルヴァンカップや天皇杯の早いラウンドは要所を締めて返り討ちができればOK。もちろん、この代表ウィークのカップ戦はJ1はリーグ戦がお休みで、J2とJ3はリーグ戦の合間という傾斜がかかっていたところではあるので過信は禁物だが、そういう試合を2つ並べられたことは良かったのかなと思う。

試合結果

2026.10.7
天皇杯
3回戦
川崎フロンターレ 2-0 テゲバジャーロ宮崎
いちご宮崎新富サッカー場
【得点者】
川崎:12′ マルシーニョ, 50′ 三浦颯太
主審:高崎航地

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