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レビュー
激痛だった立ち上がり
連戦の中でもタフな日程の佳境を迎えているアーセナル。スコアレスドロー沼として名高いシティ・グラウンドで勝利をつかみ取り、ミュンヘンから1ポイントを持ち帰って迎える週末のリーグ戦はホームに戻ってのエバートン戦。最後のところの粘りがきっちりとしている非常にタフな相手である。
しかしながら、相対するエバートンも万全だったわけではなし。事前に情報がなかった(見落としていたのかもしれないが)ブランスウェイトとグリーリッシュが不在。ややメンバーを入れ替えてのエミレーツ遠征に。プレビューを書く段階では負傷者はなし。
そこから2人が落ちたという格好になるが、少量のメンバー離脱でもクライシスになるのが今のエバートンのスカッド。特にデッドラインデーで事故ってしまった前線はかなり状況が深刻。グリーリッシュがいないというのは単純にタメを利かせられるアタッカーがいなくなるという質的な面でも痛いけども、ジョージをスターター投入した結果、流れを変えられるジョーカーがいなくなるという数的な面でも激痛である。
そういう意味では試合運びにより慎重になる必要があったのはエバートン。とにかく0-0の時間を長くしつつ、簡単に失点してはいけないという状況だった。
試合はアーセナルのポゼッションからスタート。立ち上がりからアーセナルは右サイドに起点作り。ライスのサイドフローで2トップ脇に起点を作る。アーセナル側視点でいえばナチュラルに立てば右のSBが立つエリアで前に進むポイントを作りに行く。
まず重要だったのはこのエリアでホワイトがボールを受けることがあまりなかったこと。2トップ脇のポイントを使うのはライス、もしくはウーデゴールが多く、ホワイトは高い位置を取りながら対面のジョージを敵陣側に押し下げる役割だった。
LSBのルイス=スケリーはインサイドに絞り、2CHの一角もしくはアンカーロールを担う。アウトサイドに開くこともあったが、全体の陣形が右に流れているときは特に中央に陣取るバランサー役。メリーノは1つ前でビルドアップへの関与は少なめ。ライン間で縦パスをレシーブしつつ、フィニッシャーとしてボックス内に入っていく。
アーセナルは偏重している右サイドを基本線にしつつ、インサイドでの縦パスも。この辺りはメリーノとルイス=スケリーが起用されている意味合いを感じるようなプレーであった。
右サイドと中央をバランスよく使いながら押し込むアーセナル。セットプレーの連打からコンサがわずか6分でゴール。混戦の中だから仕方ないという部分はもちろんあるが、こういうプレーでの失点はまずはエバートンが体を張って防ぎたかった部分でもある。先述のスカッド事情も踏まえて、まずはアーセナルに先に行かれるという激痛の立ち上がりとなってしまった。
誤算だった間延び
反撃に出たいエバートン。意外にも前進にはそこまで苦労していなかった。まずはバリーへのロングボールが前半にはそれなりに機能していたこと。アーセナルのDF陣はボールを跳ね返しきることができず、セカンドボール勝負に。
このボールを拾ったエバートンは左右にボールを散らしながら敵陣に入っていく。押し込む局面においてはグリーリッシュの不在が大きいエバートン。それでも左サイドを中心にオフザボールで何とかフリーマンを作りながら、クロスを上げるところまでは作れていた。左サイドに入ったジョージの1on1も有望。セットプレーからもチャンスはありつつ、アーセナルは安定して跳ね返していく。
ただ、エバートンの本命はむしろここから。アーセナルがボックス内からはじいたボールを回収して二次攻撃につなげる。積極的なミドルシュートの際にはアーセナルのブロック守備が間に合っていないケースもあり、この部分は狙えるところ。
当然キーポイントになるのはCHのアームストロングとガーナーのところ。前がかりにボールをハントすることができるこの2人でカウンターにつなげることができれば、エバートンにとっては大きい。
逆にアーセナル目線でいえばこのCHのラインをうまく超えることができるかが重要。前がかりにボールを奪いに来るということは中盤の陣形自体は間延び。ライスがこの2人のCHの背中でドリブルしたシーンのように、このラインをクリーンに超えればきっちりとチャンスが作れていた。
エバートンにとって誤算だったのは中盤が間延びしていたのがプレスに出ていた局面に限らなかったこと。自陣に下がる局面においてもエバートンは中盤が最終ラインに吸収されるタイミングが早いなど、中盤に不用意にスペースを空けるシーンが散見された。
デューズバリー=ホールが加わって中盤守備をしてもこのライン間の間延びは改善せず。アーセナルはインサイドでのレシーバーが自らターンできるくらいには余裕があった。前がかりな状況ではエバートン視点でいうと成功した時にカウンターを打つことができるからまぁ間延びも許容できるところもあるが、ローブロックでバイタルを空けることは百害あって一利なし。メリーノがこの位置で明らかに存在感を発揮しており、この点はスタメン抜擢が刺さっていた。
アーセナルはクロスを上げる前に一工夫を入れることができたため、エバートンのクロス対応はギリギリ。自陣に下がりながら目いっぱい伸ばした足にボールを当てながらアーセナルの攻撃を回避する。「単純なクロスは無効化を簡単にできるから一工夫を入れられるかどうか?」はプレビューで触れたポイント。アーセナルはこのポイントを無事に突破したといえる。
こうしたプロセスの差し込みによってエバートンを押し込む時間が長くなると、相手の前進も徐々に蝕まれていくように。余裕を持って前線への供給ができなくなることで、アーセナルはずっと俺のターンを敢行。得点シーンのようなセットプレーも含めて、延々と自分たちの攻撃を続けていく。
逆にアーセナルが自陣に追い込まれた場合はギョケレシュへのロングボールでの陣地回復が成功。カジュアルに長いボールを入れながら相手をかわしていくことができていた。6分の先制点以降も濃淡は変わりながらもアーセナルが一貫して主導権を握った前半だったといえるだろう。
いろんな意味で安心な追加点
迎えた後半、引き続き優勢なのはアーセナル。ポゼッションから右サイドを軸にアクションをかけていき、敵陣の深い位置に入り込んでいく。後半も右サイドに人をかける形から攻撃の形を作る。
逆に左サイドは少人数。アイソレーションでもボールを簡単に失わないエゼはバイエルン戦でのいい流れを引き継いでいるパフォーマンスを見せることができていた。奪った後のシャープさも上々。即時奪回も含めたハイプレスもテンポを掌握する手段の一つに。
一方のエバートンはポイントを作ることができずに苦戦。バリーが収まらず、効果は前半の立ち上がりから低下。低下しても入れ替える余裕がないスカッドなのはすでに述べた通りである。
押し込む局面を作ることができたとしても前半以上の停滞感があったエバートン。アーセナルとしては安定して跳ね返すことができた中でガブリエウの負傷疑惑に肝を冷やしたところではあったが、なんとか無事にプレーに戻ることでもう一度アーセナルが主導権を握り直す格好に。
セットプレーの二次攻撃でアーセナルは追加点。右サイドからのクロスに攻め残ったガブリエウがゴール。いろんな意味で安心するゴールでアーセナルは突き放しに成功する。
右サイドから抜け出したホワイトは少しタイミングが遅いかな?と思うところもあったが、インサイドがラインコントロールに相当に無頓着。これだとまず取れるオフサイドはないだろうというライン設定で空けてしまったサイドの裏から侵略を許してしまうこととなった。
エバートンは以降ボールを持つ時間を増やしていく。中盤が積極的に前線に飛び込んでいくことでアーセナルのDF陣をバタバタさせることはできてはいたが、確実に何かを引き起こすためのトリガーを引けたかは微妙なところ。
一方のアーセナルは積極的な選手交代で試合をコントロール。何も起こさせないことに注力しつつ、スキがあれば反撃。投入されたカラフィオーリが交代枠を使い切った後に負傷するアクシデントもあったが、マドゥエケが自陣を埋めて何も起こさせなかった。こういうことが普通にできるのも今いいパフォーマンスができている流れに乗れていると感じる。
苦しい試合になると思われた一戦だったが、アーセナルは問題なくコントロールに成功。3ポイントを上乗せしてシティと勝ち点で並ぶこととなった。
あとがき
セットプレーでこじ開ける解決策をようやく引っ張れたのは大きいところ。苦しい状況が長引いてタフな時間が続けば今後のやりくりにも響く。WG以外ひとまずはプレータイム管理は問題なさそうな状況で連戦を終えられるのは好材料で、メリーノのようなここまで苦戦していた選手もよどみなく試合に臨むことができた。難攻不落のアンフィールドから始まる11月もなんとかしのいでいきたいところだ。
試合結果
2026.10.24
プレミアリーグ
第8節
アーセナル 2-0 エバートン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:7′ コンサ, 68‘ ガブリエウ
主審:トニー・ハリントン