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「決断を正解にする」~2026.11.1 プレミアリーグ 第9節 リバプール×アーセナル レビュー

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レビュー

溢れるライスの攻撃センス

 2012年以降、この地で勝利がないアーセナル。勝てば14年ぶりの勝利という解呪の瞬間を迎えるとともに、シティから首位の座を奪還することができる試合だ。

 立ち上がりから非常にアグレッシブだった両チーム。高い位置からのプレスを探っていく。リバプールはCHが列を上げながらアーセナルの中盤を厳しくチェイス。敵陣深くまでアーセナルのポゼッションを阻害していく。

 アーセナルは左右のサイドで異なるアプローチのプレス回避をしていたように思う。より深い位置に引き込みながらプレスを回避するトライをしていたのは左サイド。プレスを引き込みながら縦パスを刺す隙を探し、そこに降りてきたウーデゴールにパスを通していく。ツォリスとあえてポジションを重ねて裏抜けまで持っていったシーンはさすが!というべき場面だった。

 右サイドはロングボール中心。サイドに流れるハヴァーツ、そしてマドゥエケが長いボールを体を張って受ける。さらにはティンバーが早い段階で高い位置を取るようなアクションを見せる。この割り切ったポジショニングを見る限りは右サイドはある程度長いボールでという方向性があったのかなと考える。

 リバプールの保持に対してもアーセナルは積極策。ナイオニが左CBの位置に落ちる3バック可変に対して、マドゥエケが1列前までプレッシャーに行くことで強気のプレス。背後のケルケズとの両睨みでプレッシャーをかけていく。

 両チームとも前進の場面に工夫は見えていたが、どちらかといえば有効な攻撃を打てそうだったのはトランジッションの局面。盤面上はフリーの選手を作れていても、速いテンポでのプレーを強いられているのは間違いないので、ミスは出てくる。そのミスをひっくり返してのチャンスメイクができるかどうか?が序盤のキーポイントだった。

 その部分で物足りなかったのはリバプールの方だろう。アーセナルのミスで中盤でパスを引っ掛けても、そこから縦に進撃するパスの息が合わず。イサク、バルコラなど本来であればカウンターはこういったスピードを活かせる選手の得意分野なはずだが、攻撃を加速させる形でのボールの受け方ができなかった。

 逆にこの点で先に当たりを引くことができたのはアーセナル。16分のカウンター。アリソンのパスが乱れたところからのファストブレイク。なんといってもこの場面で素晴らしかったのはライスのオーバーラップだろう。

 他のボールに絡んだ選手も適切なプレー選択で攻撃を止めなかったと思うが、ライスのフリーランだけはエクセレント。おそらく、ティンバーが同じことをしていてもバルコラが下がって対応をしていたはずで、ライスが斜めに入っていきながら神出鬼没ムーブを見せることが素晴らしかった。最後はファーサイドのハヴァーツに正確なクロスを送り、ハヴァーツがきっちりと仕留めて先制。攻撃センスが溢れている。

 リバプールは失点の直後にライスとコンサの連携ミスからかなり直接的にゴールに迫れそうなチャンスもあったが、バルコラのトラップは定まらず。アーセナル相手に追いつくチャンスを逃してしまった。

構造で制圧にかかるリバプール

 上位チーム対決あるあると言えばそれまでなのだが、基本的には試合は構造での制圧というよりも局面局面でうまく振る舞えるかのぶつかり合いという様相が大きかった。リバプールはトランジッションからの左サイドアタックにフォーカス。こちらのサイドから同数の攻略を敢行し、セットプレーでのチャンスを奪取。

 CKからはファン・ダイクの高さが加わるなどボックス内の圧力が増加するリバプール。アーセナル相手でも簡単には弾かせず。前に蹴り出してもきっちりとリバプールは回収し、攻撃の局面をキープする。

 この状況を打破したのは意外にもマドゥエケ。低い位置で背負いながらフリーの味方に正確に送ることでロングカウンターの正確性を担保。これまで見られなかったタイプの貢献を自信を持ってできるあたり、とてもいいリズムで試合ができているのだと思う。序列が上がるということは極端な話をすれば、その選手が行うプレーを信じられるかどうか?だと思う。低い位置でこねくり回すマドゥエケは昨季は信頼できなかったけども、今ならば信頼できる。

 敵陣まで運ぶことができればアーセナルは左右のWGからファーサイドを狙うクロスを中心にチャンスメイク。ツォリス、マドゥエケはアタッキングサードで1on1で勝負を受けて立つリバプールの守備に対して、かなりいい形で組み合うことができていた。クロスは高く浮くものというよりも、ファー側のスペースを狙ったり、あるいは速いボールを入れるスペースをきっちり作れているものだったり。対応1つでリバプールのミスを誘い、失点につながりかねないボールを入れることができていた。

 リバプールはむしろ、攻撃の局面をキープするところに特化することで試合を制圧。ナイオニがラヤからのパスミスをカットしたあたりでアーセナルは割り切ってロングボールでの陣地回復に特化するように。リバプールはロングボールを処理して延々と攻撃の局面を続けていく。

 構造の支配よりも局面の制圧という話をしたけども、ここからはリバプールが構造で徐々にアーセナルに対応を強いていく。マドゥエケの背後をケルケズが取ることで徐々にアーセナルの右サイドは数的不利を強いられるように。

 アーセナルはライスを右サイドに流して対応。ここまでは準備ができていたようには見える。ライスが右にスライドするということはギマランイスの位置もやや右にスライド。全体のポジションが右に寄る。この中盤全体の右サイドへのズレが発生した結果、浮くことが出てきたのはマック=アリスター。リバプールの前半の最もクリティカルなオープンプレーでのチャンスは、左サイドから上がったクロスにボックス内でフリーで飛び込んだマック=アリスターの場面である。

 アーセナルはライスが右サイドに戻された時にはハヴァーツのプレスバックが間に合うかどうかが重要なポイント。マック=アリスターのケア役としてPA付近まで戻る素振りを見せていたハヴァーツの守備貢献はさすがの一言。アーセナルは押し込まれる局面を受容しながら前半を無失点で凌ぐことに注力。なんとか0でハーフタイムにたどり着く。

じわじわと効果が出てくる割り切り

 後半も大きく局面は変わらず。リバプールの保持局面へのアーセナルの対応は前半と同じ。高い位置に出ていく意識をキープすることを優先し、マドゥエケの背後はライスでケア。マック=アリスターへのマークが間に合うかどうかはハヴァーツのプレスバックにかかっているという流れだった。

 ケルケズのドリブルからイサクがCBの背中を取るような得意パターンを見せたのは面白いプレー。ただ、左サイドに流れる形で完結した分、シュートが逆足になってしまい怖さが割引になってしまった感があった。

 右サイドからシンプルに縦への抜け出しを使った大外からのクロス。ただ、こちらは山なりのクロスが中心になったので、アーセナルのDFとしては比較的対応しやすいボールが多かった。

 アーセナルは前半の終盤と同じくロングボールにフォーカス。変化点はロングボールのターゲットを左サイドに寄せた形。ツォリスとアラウホだとさすがに不利では?と思ったのだが、セカンド回収で勝負できるくらいには競ることができていたのが興味深い。後方からプッシュアップするウーデゴールから少ない手数でボールを回収する。

 リバプールが押し込む、アーセナルが手数の少ない陣地回復を狙うという構図は変わらなかったが、質は少しずつ変容していたこの試合。リバプールのアタックは前半ほどクリティカルなものが少なかったうえに、波状攻撃要素も低下。ライス、ギマランイス、マドゥエケあたりが低い位置で時間を作り、ファウルを奪取。リバプールの攻撃を少しずつぶつ切りにしていく。

 セカンドボール回収でも徐々に試合はアーセナルムードに。繰り返すプレッシングの効果が少しずつ出てきたように思えるし、その土俵で優位に運べるというのはさすがというアーセナルだった。

 高い位置でカラフィオーリの思い切りのいい攻め上がりをツォリスと組み合わせる形でチャンスメイク。引き寄せた時間帯で確実にあわやというシーンを作っていく。リバプールのチャンスはセットプレーからの混戦が中心となった。

 このまま押し返すことで制圧するのかな?と思ったが、選手交代からアーセナルは守備に寄る陣形変更。他の選手を見る限り5バックではないのだろうが、4-4-2のSHにカラフィオーリを置いて、サイドアタックのときは早めに下げるバランスとした。

 リバプールの終盤の攻め筋は交代で入ったングモハ、ムニョスの右しかなさそうだったので、アーセナルはカラフィオーリとインカピエでこれを制圧する。ここでも打ち手を正解にしたアーセナル。14年ぶりのアンフィールド制圧をクリーンシートで果たした。

あとがき

 圧倒という感じではないけども、この試合のアーセナルは繰り出す手を正解に持っていく力が強かった。リバプールに押し込まれる時間におけるロングキックフォーカスとか、あるいは背後のケルケズを見逃してまで高い位置のプレスとの両立にトライしたりとか、最後の早めに5バック化できる守備へのシフトにしてもそう。

 正直、リアルタイムでは「早くない?」とか「割り切りすぎじゃない?」と感じる決断もこの試合では多かったが、全てアンフィールド制圧という正解に持ってきた。左サイドの攻め筋を切り拓くというところではリバプールも正解につながりそうな筋まではたどり着いた感があったけども、その決断を正解にまで引き寄せる力でこの日はアーセナルを下回ってしまったように見えた。

 じわじわと受けながら最終的には選んだ手を正解にするという勝ち方は強いなと思う。ある意味今季で一番王者っぽい戦い方だなと個人的には思った。

試合結果

2026.11.1
プレミアリーグ
第9節
リバプール 0-1 アーセナル
アンフィールド
【得点者】
ARS:16′ ハヴァーツ
主審:アンディ・マドレー

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