Fixture
プレミアリーグ 第24節
2025.2.2
アーセナル(2位/13勝8分2敗/勝ち点47/得点44 失点21)
×
マンチェスター・シティ(4位/12勝5分6敗/勝ち点41/得点47 失点30)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績

過去5年間の対戦でアーセナルの1勝、マンチェスター・シティの8勝、引き分けが3つ。
アーセナルホームでの戦績

直近10試合でアーセナルの2勝、マンチェスター・シティの8勝。
Head-to-head from BBC sport
- マンチェスター・シティは2017年から2023年までアーセナルとのプレミアリーグは12連勝。しかし、現状は3試合連続未勝利。
- 2005-2009の4連勝以来初めてアーセナルはシティ戦でのホームゲーム連勝を狙う。
スカッド情報
- 筋肉系のトラブルを抱えているダビド・ラヤは当日判断。
- マイルズ・ルイス=スケリーはウルブス戦でのレッドカードによる出場停止が取り消されて起用可能。しかし、ベン・ホワイト、冨安健洋、ブカヨ・サカ、ガブリエル・ジェズスは長期離脱中。
- オマール・マルムシュ、アブドゥコディル・クサノフ、ヴィトール・レイスはCLを経てスカッド復帰。
- オスカル・ボブに復帰の可能性。
- ルベン・ディアス、ナタン・アケ、ジェレミー・ドクは離脱中。
Match facts from BBC sport
- 14試合プレミアで無敗というアルテタ政権下での最長記録を狙う。
- 8月以来初めての2試合連続リーグ戦クリーンシートのチャンス。
- PKを除き、セットプレーから12得点を決めておりリーグハイ。シティ相手に決めた直近10得点のうち、5得点はセットプレー。
- アルテタ就任の2019年12月以降、19枚のレッドカードを受けており、この期間でリーグ最多。
- プレミアの歴史において退場者を出して勝ち越している唯一のチーム。10人になった時の勝利数は38で負けよりは3つ多い。
- 8月以来初めてのアウェイ連勝を狙う。
- クリスマス以降のプレミアで18得点を決めており、リーグ最多。プレミアでは6戦無敗でうち4試合で勝利。
- ビハインドから17ポイントを得ておりリーグ最多。
- プレミアの12勝中5勝は逆転勝利。
- PKを除きセットプレーからの失点は2でブレントフォードと並んでリーグ最少。
- プレータイムのうち39.6%が30歳以上の選手。グアルディオラ初年度の16-17に次いでクラブ史上2番目に高い割合。
- サヴィーニョは直近6試合の公式戦の出場で5得点に関与(2G,3A)。それ以前の23試合のシティにおける試合より1つ多い。
予習
CL 第7節 パリ・サンジェルマン戦

第23節 チェルシー戦

CL 第8節 クラブ・ブルッヘ戦

今季ここまでの道のり

予想スタメン

展望
シティは復活したのか?
公式戦5連敗など明らかに不振に陥っていた昨年末のシティ。5連敗は11月のことだが、12月に入っても不調を引きずっていた感はある。1月の戦績はその2か月に比べれば回復の傾向にある。パリ戦での衝撃的な4失点の敗戦はあったが、プレミアリーグは直近6試合負けなし。2025年に入ってからは無敗だ。
イプスウィッチ戦やウェストハム戦など今季のプレミアではあまり見られなかった大勝もあり「シティは復活した」との声もある。本当にシティは復活したのか、このプレビューでは要素を分解しながらシティの現在地を考えていきたい。
まず、明確な復調といえる部分は前線のコンディション良化だろう。とりわけ、開幕時点と比べるとフォーデンとサヴィーニョには明らかな上積みが見られる。
フォーデンは速攻における豪快なフィニッシュが戻ってきた感がある。序盤戦はややプレーに迷いを感じる部分もあったが、ゴールというきっかけを手にしてから思い切りよく振りぬくことが出来ている。まさしく好循環が生まれている感じがする。
サヴィーニョは左サイドでの起用が転機になった。まさしくレフティーという持ち方をするタイプのWGであるサヴィーニョ。かなり左足でボールをコントロールしたがる傾向が強いのが彼の特徴だ。
そのため、相手からするとプレーのパターンは読みやすい。前半戦に使われていた右サイドではカットイン→シュートという流れが相当な割合でシュートブロックに遭っており、相手のカウンターのきっかけになることが多かった。
左サイドであれば、カットインからのシュートはなくなるが、順足起用だとボールを守備者から遠い位置にナチュラルに置けるメリットがある。そのため、単純に目の前の相手にボールを引っかけるケースが減少。幅をとるという役割をきっちりとこなすことが出来ている。
その2人に加えて、前線に新しく入ったマルムシュはデビューとなったチェルシー戦で裏抜けの量で相手を揺さぶり続けた。正直、明確なオフサイドも多いので相手のDFラインとの駆け引きという面ではまだ伸びしろはあるが、とりあえずまずは動いて量を担保するという方向性は今のシティの前線において明確に足りないところなので、そこを埋めることが出来ているというのは悪くないように思う。
今のシティの復調気配のところは見えてきた。では逆になかなか上積みが見えない部分について考えよう。
端的にいってしまえば守備全般だと思う。やはり、真っ先に目に付くのは中盤。ロドリ不在の影響とIHの高齢化により守備の可動域が激減。ファストブレイクだけでなく、ブロック守備においてもライン間で相手に簡単に反転を許す場面は多く、中盤が相手の攻撃に対するフィルターになるシーンはほとんど見られない。
前線からのハイプレスもあまり中盤の負荷のカバーになっていない。それどころか、ハイプレスによる間延びから中盤の守備の負荷を増やしている場面もしばしば。昨季までのシティであればハイプレスはビッグマッチで勝負所に繰り出す飛び道具だったが、今のチームだとあまりそうした機能性は見られていない。
負傷者が多いバックスもこの歪みを取ることはできていない。最もパフォーマンスでチームを助けられそうなディアスとアケはとにかく稼働率が安定せず、離脱と復帰を繰り返すシーズンに。自身比でも昨季からクオリティが落ちているように見えるアカンジに文句を言いづらいのはフルシーズンできっちりと稼働している唯一のCBだからだろう。
CB陣はこの2人にストーンズも含めて、稼働がとにかく不安定。ウォーカーが離脱したSBも含めて再編が問われている。新戦力のクサノフを含めて、後半戦のベストメンバーを模索する作業はここから始まることになるだろう。デビュー戦では苦しい出来となったクサノフはエミレーツのピッチに立つのかは注目に値する。
ブロック崩しの質が天井を決める説
こうした守備での問題点に隠れて、攻撃の面でも課題があるのがシティだ。今現在のシティの攻撃から生まれた得点の多くはファストブレイクが中心。押し込んだ相手を壊し切るというシーンは実はあまり多くない。直近のCLのクラブ・ブルッヘ戦を除いてしまえば、多くの試合でファストブレイクの攻撃が決め手になっている。
個人的にはこの傾向は攻撃陣の復調に一役買っている可能性もある。フォーデンは思い切りよく振りぬきやすいシチュエーションだし、サヴィーニョは大外と異なり片側を切られていない状態なので、より相手との多様な駆け引きをしやすい。この2人がハーランドの周りを周遊できるカウンターは今のシティの得点源といえる。
ハーランド自身の特性もカウンター寄りだと思う。ボックス内でフリーになっている時のシュートと比べても、1on1独走における決定力は明らかに桁違い。抜け出すための身体能力に目が行きがちだが、個人的にはスピードに乗った状態でのGKとの1on1は世界一上手いんじゃないかなと思う。
逆に押し込むフェーズにおいてはややシティは手詰まり感もある。もちろん、得意のハーフスペースアタックはきっちりとやっているが、攻撃のルートが複数ない場合が多いのが気になるところ。例えば、大外→ハーフスペースアタックをフリに平行を使うみたいなことがない。

このようなアタッキングサードにおけるオフザボールの動きの減少が押し込んだ時の得点力の低下につながっているように思う。ロドリの不在、CBの稼働不安などスカッド要因に近い守備の難点はなかなか今季中の修正は難しいと思う(そういう意味ではシティが完全な復活を今季中に果たすのは個人的には難しいと思っている)が、保持面でのオフザボールの動きの活性化は今のスカッドでもできることだと思う。現にチェルシー戦ではギュンドアンやベルナルドの列移動が効いていた部分もある。
ファストブレイクでは光は見えた。よって、今季のシティの完成体は押しこんだ際の攻撃の完成にあると思う。新戦力と復調気配の既存戦力で完成度を高めるフェーズを残りのシーズンでどこまで持って行けるか?2月もタフな試合が続く中で依然としてシティは真価が問われている状況だ。
ミドルゾーンからのスピードアップを巡る攻防
新戦力を組み込めた(CLのリーグフェーズは冬加入選手は登録外)チェルシー戦をベースに考えるのであれば、シティの攻撃時のレーン分けとしては大外がSBとなり、2列目のSHはインサイドにしぼる。前線はハーランド付近を周遊しつつ、相手のバックスからダイレクトに背後を狙う格好だ。
要は今のシティのゴールはミドルゾーンからフィニッシュをスピーディに行うことによって生まれているので、敵陣でのプレーは縦に速くというのがベスト。それを意識した布陣になっている。
大外のグバルディオルが前線に飛び出すところも今のシティらしい。連鎖的に相手を動かすオフザボールよりも、本来は後方の選手を前線に送り込み、数の論理で解決することを狙う。無論、グバルディオルにはそのリスクをかけるだけのストライカー的な才覚があるのも事実だ。
よって、アーセナルが真っ先に意識すべきなのは「シティのアーセナル陣内での攻撃をスローダウンさせること」である。もちろん、初手で止めて反撃に出ることが出来れば理想だが、それが無理な時はきっちりとスローダウンさせて相手に手数をかけさせてアタッキングサードに人数をかけさせるフェーズに移行する。
もちろん、シティなのでブロックを固めれば必ず守り切れるという保証はない。けども、このやり方が効くと感じる理由の1つは、先に挙げたように今季のシティは人をどんどんボックス内に送り込むことで前線の厚みを増やす節があるからだ。
具体的な3センターとLSBのグバルディオルの全員がボックス内に入っている状態になっても、誰も後方に下がってバランスをとろうとしない場面は多くみられる。すなわち、跳ね返しに成功すれば、アーセナルはカウンターに一直線。アーセナルが守り切れる保証はないが、今季のシティの細かいパスワークやブロックの外からの壊す力を踏まえれば、この形を狙うのは悪くない選択肢だと思う。少なくとも、ファストブレイクに付き合い続けるよりは。
保持でもきっちりと押し込む形は当然狙うべきだろう。シティの今季のプレスであれば、バックスにメンバーが揃えられそうなこの試合においてはアーセナルは十分にプレスの回避が見込めるだろう。
ミドルゾーンでの加速から敵陣で素早くプレーした方がいいのはアーセナル側も同じ。右サイドにサカというブロック崩しのキーマンがいない状況においては人を揃えられるよりは早く壊し切るほうが得策。
シティの今季の中盤の守備を考えれば、ブロックを組んでいる状態からでもライン間の縦パスから加速する形を作るのは可能だと思う。先に挙げた「人数をかけた攻撃に対するカウンター」に加えて、ビルドアップからでもスピードアップの機会はあるはずだ。
キーマンはマルティネッリと見る。おそらくは本職のDFではないヌネスとのマッチアップが目されるこのアタッカーがアーセナルの突破口になってほしいところ。オンザボールもそうだが、どちらかといえば逆サイドからのヌワネリやウーデゴールなどのファークロスを抜け出しながら仕留める形で貢献したい。
開幕前の前評判であればこの2チームは本来優勝争いをしているはずだった。だが、フタを開ければシティはCL出場権争い中、アーセナルも首位に多くの勝ち点差を付けられており優勝争いをしているかは怪しいところだ。それでもアーセナルとしてはあきらめる理由はない。復調気配のシティを叩き、リバプールへのチャレンジャーは自分たちただ一人であるということを知らしめる勝利を挙げたい。