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「事故なくロンドンへ」~2026.4.29 UEFAチャンピオンズリーグ Semi-final 1st leg アトレティコ×アーセナル レビュー

プレビュー記事

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レビュー

ライスとスビメンディを入れ替えた理由

 前日には9得点が飛び交う大乱戦が繰り広げられたCL準決勝。水曜のカードはアーセナルとアトレティコ。いわゆる「塩試合」扱いされそうなカードだが、実際のところはノックアウトラウンドにおける1試合平均得失点が最も少ないアーセナルと、ボコボコに殴り合っているアトレティコという好対照な戦い方を見せているチーム同士の対戦と言えるだろう。

 立ち上がりはまずは体をぶつけ合いながらの腕試しのようなスタート。ハイインテンシティの中で、メトロポリターノのピッチでインカピエが足を滑らせたことをきっかけにアトレティコが攻めていく。

 アトレティコの前進はざっくりと二通り。高い位置からプレスを目論むアーセナルに対して、アバウトに前線の抜け出しに合わせてボールを蹴り込み、セカンド回収から押し上げてサイドにつける形が1つ。

 もう1つはマドゥエケ周り。近頃はすっかり相手チームの狙い目になっているマドゥエケの背後でルッジェーリがボールを持つことで、縦に進むきっかけを作る。

 この試合でアーセナルがスビメンディとライスの位置を入れ替えた理由は考察のしがいがあるテーマだと思うけども、自分なりに理由を提示するとすればこのマドゥエケ周りをプロテクトするイメージになるのかなと思う。マドゥエケのプレスをやめてしまうと、前からの圧力がどうしてもかかりにくくなる。それならば、出ていく前提で後方に構える選手のカバー範囲を広くしてしまおうという発想のように見えた。

 このアイデアはそれなりに効果はあったように思う。高い位置に出ていくところからライスが後方フォローでボールを奪い切る場面もあり、ニューカッスル戦に比べれば明らかに変なバイタルの空き方がする場面は減少した。

 サイドから運ばれるケースもあるが、アーセナルはそれなりに対応。左サイドはルッジェーリとルックマンの2人の攻撃だったが、下がって受けるマドゥエケとホワイトで枚数を合わせていく。

 逆サイドはやはり左よりも人数をかけた攻撃になるアトレティコ。流れてくるグリーズマンも含めてガブリエウ、インカピエにマルティネッリが加わる形でサイドを封鎖。決め手となるハーフスペースへの抜け出しを抑え、ミドルシュートに対してもCBが押し上げてシュートブロックに入ることで得点のきっかけを与えないアーセナルだった。

トランジッション要素の生み出し合いにシフト

 アトレティコの非保持は4-4-2ベースだが、ジュリアーノが低い位置に落ちる5-4-1気味の形。相手の陣形に噛み合わせるというよりは今回はこれがデフォルト。シンプルに4-4-2で対峙すればインカピエを見るのはジュリアーノだが、この位置にはCHのコケやワイドCBのジョレンテが出ていくことになる。

 残念だったのはアーセナルがこのギャップをいまいち使い切れなかったこと。インカピエに相手のマーカーが出てくるにはそれなりの時間と、その後のスペースがあったのだが、仕組みとして活用しきれなかったのは痛恨。ジョレンテの背後に走り出したギョケレシュを狙った場面もあったが、パスは通らなかった。

 左サイドから奥に進むきっかけを作ることができれば、インカピエからマドゥエケへのファークロスは空中戦的には面白かったはず。だが、左サイドで奥を取る術がなかった。相手がヒントを見せていただけに、もう少し打開策を提示したかった感がある。

 右サイドでも活用しきれない相手のギャップは存在。マドゥエケのマークに対してはルックマンがルッジェーリとダブルチームで対応していたが、浮いたホワイトを活用できず。オーバーラップのタイミングが掴めないまま高い位置で存在感を出せないことの方が、対人守備以上にホワイトにとっては深刻に見えた。

 朗報だったのはマドゥエケがそれなりにクロスを上げ切ることができた点。直近2試合ほどの機能しない状態を脱し、ファーにクロスを供給できていた。ファーサイドにはインカピエとマルティネッリが飛び込んでおり、高さを生かして脅威を作り出せていた。

 控えめだったアトレティコのプレスだが、20分を過ぎたあたりからスポットでハイプレスに出ていくように。サリバ方向に追い込む形でスイッチを入れると、そこからミドルゾーンでボールを引っ掛けショートカウンターを発動する。だが、ルックマンはいつもほどのキレがなく、アルバレスはやや強引なシュート選択が目立ち、アーセナルのDFがきっちり対応。決定機に至るケースは多くなかった。

 アーセナルもプレス回避はもう少しスムーズにできたはず。後方に降りるアクションから繋ぎきれない場面があり、逆に相手の重心が下がっている局面でもライスやウーデゴールが降りてしまうなど、バランスの悪さも見えた。

 どちらのチームも崩しきれない状況が続く中、狙い目はトランジッション。押し込む局面の一手で崩すのではなく、失った直後の即時奪回からひっくり返す形。アトレティコのスポットハイプレスもこの文脈に含まれるだろう。

 もちろん、相手が前がかりになる瞬間は脱出できれば大きなスペースがある時間でもある。そうしたリスクを少しずつ取りながらスペースの奪い合いに移行したのが前半終盤だった。

 この争いで利益を得たのはアーセナル。アルバレスのバックパスを奪うと、最後はギョケレシュがボックス内でハンツコに倒されてPKを獲得。これを自ら決めて先制点をゲットし、リードしてハーフタイムを迎える。

ハイプレス以上に流れを渡したのは・・・

 迎えた後半、動きを見せたのはアトレティコ。ジュリアーノを交代し、後方にル・ノルマンを投入。3バックにした時により自然な並びに陣形を整える。

 ただし、狙いとしたのはブロック守備の整備ではなくハイプレスだろう。アトレティコは後半の頭から人を捕まえるハイプレスで相手をチェイス。前半のスポットハイプレスよりも人を捕まえる枚数も迫力も一段上がった印象だった。

 後方に揃えたCB陣はギョケレシュへのロングボールへの迎撃に活用。前半のようにジョレンテが対応するのであればフィジカル差があって難しい状況に持ち込まれてしまいそうになるリスクがあるので、ル・ノルマンかプビルのどちらかが対応しやすいマッチアップにすることでハイラインをキープして敵陣でのプレータイムを確保しにいく。

 アーセナルもこのアトレティコのハイプレスに呼応するようにハイプレスを敢行。個人的には後半頭のアトレティコペースの要因の1つはプレス回避に苦戦したことよりも、カウンターのように発動したアーセナル側のプレスをいなされてしまった影響の方が大きかったように見えた。

 カルドーソが左に落ちてボールを落ち着かせたり、中央に降りるグリーズマンからサイドにボールを配球するケースも。左サイドのルッジェーリはマドゥエケを出し抜いて敵陣まで辿り着くこともあり、前半以上にルックマンとの連携でゴールに迫る事ができる。配球役のグリーズマンと左サイドのポジトラ強度を生かす格好だ。

 押し込みながらセットプレーで圧力をかけ続けたアトレティコは、ホワイトのハンドでPKを獲得。アルバレスが決めて同点とする。

 ゴール以降も勢いに乗るアトレティコ。ファストブレイクとセットプレーのラッシュからアーセナル相手に更なるゴールを狙いにいく。

 アーセナルは選手交代で流れを変えにいく。3枚を一気に入れ替えた交代の効果はかなりまちまち。いきなり中央に降りてクリティカルなロストをしたトロサールの入りは最悪だった一方で、右サイドの低い位置でボールに絡んだサカやジェズスはそれなりに収めどころに。

 相手目線からすると地味にジェズスはめんどくさかったのではないかという仮説も。左サイドに流れて加速しながら肉弾戦を挑んでくるギョケレシュとこの日は右サイドの低い位置に降りて相手を背負いながら出しどころを探るジェズスはかなりキャラクターが異なる。一発勝負で勝った負けたをやるギョケレシュよりもまずは収めるジェズスの方がこの時間の助けにはなっていた。

 加えてこの交代により、ハイプレスからミドルプレスの4-4-2に移行。カウンターでスピードに乗った攻撃から主導権を握ったアトレティコが少しずつスローダウンする。

 保持の機会を得たアーセナル。アトレティコは交代ができなかったグリーズマンやルックマンが非保持に回った時のガス欠感が少しずつ出てくるように。カウンターに出ていける馬力を持ったアルバレスを下げざるを得なかったのは痛いだろう。

 大外でポイントを作りながら攻めていくアーセナルはエゼがこの日2つ目のPKを獲得したかに思えたが、これはOFRで取り消し。アーセナルとしてはOFRでこの日2回目の不利益な判定を下されることとなった。

 それでもこのOFRとアトレティコのガス欠も相まって、後半の頭から続いていたアトレティコの押せ押せムードは鎮火。アーセナルが腰を据えて左右からの攻撃を探るターンがメインで残り時間を過ごすことに。

 だが、これ以上スコアは動かず。試合は1-1で戦いの舞台をロンドンに移すこととなった。

ひとこと

 プレビューで書いた通り、まずは1st legを事故なく終える事が多い。今季のアトレティコとの1st legは難しい試合になるというのを他のクラブとの対戦で嫌というほど見てきた。特にこのメトロポリターノの試合ではスリッピーなピッチに苦しめられる傾向にあったので、そこから重要なインシデントを引き起こさなかったことは大きい。

 その上で勝ち筋もあった試合だったと思う。後半頭から鎮火するまでのアトレティコペースは強力ではあったが、それ以外の時間は意外とゆったりと攻める機会を与えてくれたなという感じ。ボックス内の対応も紙一重でPKになるようなコンタクトが多いということもわかり、これなら敵地でも勝ちが見えたなという手応えだった。

 逆に言えばアトレティコにも勝ち筋はあったはず。ラヤを脅かしたシュート、特にルックマンの左足は特大決定機だったはず。アトバンテージを持ち帰ってアウェイの地に向かいたかったところだろう。そういう意味でアーセナルはアトレティコの思い通りにさせないまま1st legを終える事ができたように思える。

試合結果

2026.4.29
UEFAチャンピオンズリーグ
Semi-final 1st leg
アトレティコ 1-1 アーセナル
エスタディオ・メトロポリターノ
【得点者】
ATM:56′(PK) アルバレス
ARS:44′(PK) ギョケレシュ
主審:ダニー・マッケリー

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