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レビュー
この日なりの調整
試合をしない時間帯に22年ぶりのプレミアリーグ制覇を決めたアーセナル。パレスによるガード・オブ・オナーによって王者としての達成感を感じつつ、最終節に挑む。
25-26シーズンの締めくくりという意味ではもちろん重要な試合ではあるが、より重要な欧州カップ戦のファイナルを控えている両チーム。およそチームの半分ほどを入れ替えたパレスと、ほぼまるっと取り替えたアーセナルのスターターを見れば、この局面での優先順位は明白であった。
試合はアーセナルの保持をベースにスタート。パレスはミドルブロックの5-4-1でブロックを組む入りとなる。
基本的にはいつも通りボールを大事にするスタンスのアーセナルではあるが、ところどころこの日のメンバーに合わせた構成が見受けられる。一番大きな変化が見られたのはSBの組み立てへの関与だろう。右SBに入ったスビメンディは後方支援役にフォーカス。攻め上がるというよりは、右のマドゥエケに長いレンジのパスを通し、1on1を任せるような姿勢だった。
左のカラフィオーリも組み立てにおける関わり方には変化。CHの2人は、ルイス=スケリーが最終ラインに落ちる“ライスロール”、中盤にとどまる“ルイス=スケリーロール”がノアゴールという組み合わせ。
普段であればノアゴールの位置はアンカー的に振る舞い、サポート役を並びで置かないケースが多いのだが、この日はカラフィオーリが寄り添う形で組み立てに関与。ルイス=スケリーではなくノアゴールであれば、寄り添う選手が必要だという微調整なのだろう。
全体的に後ろに重たい布陣を組んだ分、仕上げる人数は少なくする必要がある。右サイドでアイソレーション役となったマドゥエケを幅取り役としつつ、マルティネッリやダウマン、ジェズスでライン間から背後を素早く狙っていく。
右サイドのマドゥエケは若干仕上がり切らなかったアーセナルだったが、序盤からジェズスのラインブレイクから決定機を創出。わずかにネットを捉えられないという、いかにもジェズスらしい展開で試合は続いていくこととなる。
それでも個人的には、保持局面はうまくバランスを調整したと結論づけてよさそう。後方のCB陣は浮いている状況を生かした配球をすることができていたし、後方を重くしてポゼッションを安定させつつ、この日のメンバーで実現可能な強度で攻撃ルートを構築できていたという見立てになるだろう。
「ナイス!」と「ようやく!」の先制点
パレスは5-4-1で攻撃を受けつつ、ファストブレイクから反撃を狙っていく形。シンプルなロングボールからの進撃は、アーセナルのCB陣がレギュラーユニットでなければワンチャンス!というところではあったが、インカピエとモスケラはアーセナルの攻撃局面をきっちりとホールドするための跳ね返しができていた。
そのため、パレスのファストブレイクは左サイドがメイン。鎌田を軸にガンガンと追い越す選手を作りながら、敵陣に入っていくところまでを設計してチャンスを作りに行く。だが、ゴール前でスローダウンするのは仕方なく、ファストブレイクという枠組みの中でシュートまで持っていくことには苦戦していたと言っていいだろう。
パレスはファストブレイクでは厳しそうだったため、ショートパスから外に展開し、サイドからのシンプルなクロスでチャンスを作りに行く。アーセナルもさすがにパレスの3バックに対して枚数を合わせて咎めていくようなテンションではないので、パレスに多少押し込まれること自体はそれなりに受け入れていた。
一番惜しかったのは左サイドのキャドラインからのクロスだろう。カラフィオーリのあまりにチャラいクロス対応で完全に相手がフリーになるという事故が発生してしまう。逆に言えば、このシーン以外はアーセナルが落ち着いて防衛することができていた。
飲水タイム直後にはポゼッションを回復したアーセナル。敵陣でのプレータイムが増えた影響からか、やや後方重視だったバランスを前寄りに。CHやSBが高い位置を取るシーンを増やしていく。
しかしながら、最終的な仕上げとなったのはファストブレイクの方。ジェズスが決めたゴールは、「ナイス!」と「ようやく!」が両立するシーン。ライン間の選手をつないで抜け出すアクションまで、という前半のアーセナルの攻め筋のダイジェストとなるような一幕で、一気にゴールをもぎ取る。
チャンスの数で上回ったアーセナルは、その優位を先制点へと結びつけることに成功。リードしてハーフタイムを迎える。
次を見据えた後半に
後半、アーセナルは2枚、パレスは3枚を交代。交代もテコ入れというよりはプレータイムのシェアがメイン。負けているパレスの方がその傾向がより強かったことが、この試合の位置づけを物語っている。
アーセナルは早々に追加点を確保。ファーに集合するCKからの折り返しはゴール前ではなくマイナス方向へ。マドゥエケがこのボールを叩き込み、リードを広げることに成功する。折り返しからの空中戦でつなぐのではなく、ミドルで仕留めるという変化球を使ってCKでのゴール数の新記録を更新する。
このゴールでさらに試合のテンションは低下。互いの保持をプレスで咎める場面は減少し、ゆったりとボールを持つ時間が増えるように。パレスからすれば、平等に保持の機会はもらえているが、前半同様になかなかボックス付近に迫るきっかけを掴むことができないまま時間が過ぎていく。
アーセナルは残り30分の段階でメリーノを投入。このあたりもチャンピオンズリーグを見据えた調整と位置づけることができるだろう。ボックス内に飛び込む、メリーノらしさが見られる場面もあった。
フリーズ気味だった試合の中でテンションを上げる要因となっていたのは、馬力のあるアタッカーの存在だろう。パレスであればゲザン、アーセナルであればマルティネッリが対面を剥がし、ゴールに迫るきっかけを掴む。
特にマルティネッリは後半プレーがハマっていた感がある。HTの交代でキャドラインが対面に変わった影響からか、縦突破を絡めたアウトサイドレーンでの動きで違いを作ることに成功。抜け出した後のクロス精度も十分で、期待が持てる終盤だった。
しかし、結果に違いをもたらしたのはマテタ。左サイドからのクロスに対し、モスケラを吹き飛ばす空中戦からゴールをゲット。終盤にネットを揺らし、アーセナルのクリーンシートの上乗せを阻止する。
さらに後半追加タイムにはピノのミドルが決まったかに見えたが、これはわずかにゲザンにボールが当たっておりオフサイド。アーセナルは最終節の連勝記録を守ることに成功し、リーグ最終節で有終の美を飾った。
あとがき
目標がまだ先にあるチーム同士ということで、強度を合わせた調整ができたのはよかったと思う。エゼのセルハースト・パーク帰還も含めて、和やかなムードと、その先のファイナルを見据えた中で牧歌的な90分を過ごすことができた。お互い、欧州の舞台での健闘を祈る最終節となった。
試合結果
2026.5.24
プレミアリーグ
第38節
クリスタル・パレス 1-2 アーセナル
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:88′ マテタ
ARS:41′ ジェズス, 47′ マドゥエケ
主審:ファライ・ハラム