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「細かいところを積み上げる」~2026.8.22 J1リーグ 第3節 サンフレッチェ広島×川崎フロンターレ レビュー

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レビュー

逃したくない2つの守備のポイント

 開幕2試合はいずれもドロー。勝ち切れない試合が続く川崎は今季初めての西日本遠征に挑む。対するはここまで連勝中の広島だ。

 まず、この試合の大きなテーマとして挙げたいのは川崎の非保持におけるスタンスだろう。3-4-3をベースにする広島に対して川崎はどのようなプレスに出ていくか?というのは1つポイントになる部分だろう。

 答えとしては「死なば諸共ハイプレス」である。3バックに対してはSHが前方にスライドしてマンツーベースに。CFのロマニッチはマーカーの荒木を捨ててGKにハイプレスに出ていくこともあった。

 川崎のスタンスに対して広島のキーマンになるのはCHの中島。ここを浮かせることができれば広島は川崎に対して攻撃の動線を作ることができる。

 中島をフリーにしてしまった場合の川崎の対応のポイントは大きく分けて2つ。1つは大外のWBへのケアに出ていくことができるかどうか。もう1つはSHが下がってファーサイドへのクロスを埋めることができるか。大外からのクロスの出し手や受け手へのケアができるかどうかである。この場面はマルシーニョの戻りが遅れていれば中野がクロスに合わせることができていたはずだ。

 広島は中島をフリーにしてボールを動かすところまで辿り着くことができるかどうか。そのために早い段階で幅を取りながら川崎のプレスをかわしていく。結局はこちらも高い位置に出てくる川崎のSHを動かすことができるかが重要になってくる。

 結論から言えば広島は川崎を左右に揺さぶるような構造を作ることはできていた。大内から直接東に蹴るフィードを含め、インサイドを横断しながら川崎が出てくるところの背中を取るルートは見えていた。

 問題はこのルートをなぞることができなかったことにある。ホルダーはフリー、パスコースはある。その状況でもミスが出てしまうのがこの日の広島である。特にDFがインサイドに通す斜めのパスがズレるケースが多かった。アレーのポストもいつもより不安定だった。

 川崎はパスがズレたところからカウンターに出ていくように。ハイプレスを敷いてきただけありトランジッションのシャープさはさすが。殴られそうな構造を作られてしまっても結局はミス待ちで収支は合う状態。ポジティブに解釈するのであればマンツーで出ていくことによって生み出したリズムで広島にミスを生み出させたと言えるだろう。

中盤空洞化→ロマニッチルートの確立

 川崎の保持に対して広島はマンツー気味に高い位置からプレスに出ていく格好。フォーメーションの歪みの分は加藤が自陣に下がりながら中盤をケアすることで枚数を合わせる。

 川崎は序盤こそバタバタしたものの少しずつプレスに対しては落ち着いて対応できるように。ビルドアップは狙いのルートから前に進むこともできていた。CH、脇坂の3枚が広島の中盤を手前に引き出す、もしくはサイドに流れて釣ることで広島の中盤をCH1枚だけが残る形にできれば準備は完了となる。

 中盤を囮としてインサイドにパスコースを作り出す。あとはCFがボールを収めることができるかどうか。その点に関しては明らかにロマニッチは史上最高のパフォーマンス。リーグ屈指のCBである荒木に一歩も引くことなくボールを収め、攻撃を加速させるきっかけに。

 仕組みがあったとしても結局のところCFが潰されてしまったらおしまいなのでロマニッチの働きは言うまでもなく大きい。正直、ここまで連戦連勝でボールを収めるとは思ってもみなかった。

 もう1つ、地味に川崎の前進がうまくいっていたのは中盤がドリブルで広島のCHを引き出すことができていたこと。細かいことではあるけども、いちいち中盤に矢印を出させてから背中を取るということを徹底していたことで中盤中央に残されたCH(中島のケースが多かった)がきっちりと孤立する。この辺りは山本のアクションが見事だった。

 中島の周辺でロマニッチがポストを決めることで脇坂や裏に抜けるマルシーニョが自由を享受。もちろん、マルシーニョのスピードを生かした成功例が長いVARの末に塩谷に警告が出されたシーン。マルシーニョ大作戦である。アンカー脇の中島のカバー役としてワイドのCBが潰しに出てきた場合には佐々木旭がオフザボールから強襲するケースもあった。

 矢印を出させる+その矢印の背中を取るフリーランのセットは今季における改善要素。佐々木の前線への飛び出しは広島戦における大きな手応えを感じる要因になった。

 逆に改善したいのは右サイドの出口となった伊藤からの攻め。伊藤がボールを持った時に脇坂、ロマニッチなどが右のハーフスペースを抜けるアクションからチャンスを狙っていく形はもう少し工夫が欲しい。

 基本的には右サイドからのハーフスペースアタックは広島の守備者がパスが出る前の段階で川崎の抜け出す選手を潰すようなアクションができている。こうなった場合は抜け出す選手の個人のスキルでなんとかするほかない。マルシーニョのスピード、荒木を吹っ飛ばしていたロマニッチのパワーなど。

 今の川崎の設計はハーフスペースのラン自体はできているけども、その後の接続が甘い。1人のフリーランに呼応することができない。後半に左の三浦が抜け出した場面もボックス内の選択肢がない。広島が同じ攻略をする時にはまず間違いなくボックス内にターゲットはいる。この点の甘さは個人的には広島との差として痛感した部分である。

 属人性を排除した攻略を意識するのであればハーフスペースのケアに出ていった選手をカバーするようなフリーランを掛け合わせたい。25:30のシーンは山原が脇坂のケアでバイタルを空けた中島の根本にフリーランをしており、この試みは好感が持てる。

 ただ、伊藤がインサイドに絞る位置を取っていたせいで佐々木翔が伊藤と山原を同時に管理できていたのは問題。もう少し伊藤はアウトサイドに開くポジションを取った方がいいかもしれない。

 伊藤のポジションとフリーランの設計(山原のような矢印の根本を取るアクションを安定して行う)の2つの点で川崎のアタッキングサードには甘さがあった。マルシーニョやロマニッチの猪突猛進なシーン以外のチャンスメイクはもう少し増やしていきたいところだ。

 20分を過ぎると川崎の死なば諸共ハイプレスは徐々に効力を失う。CBまでプレスにいくことができなくなると中島への監視も甘くなり、広島は左右にボールを散らせるようになった。それでも広島にミスの連鎖が続いているうちはなんとか守ることができていた。

 ようやく広島が思い通りの攻撃ができたのが飲水タイム明けの1つ目のプレー。東から入ってきた鋭いボールに加藤が合わせて先制する。クロスが鋭かった分、佐々木旭は加藤に前を取られた時点で明らかに状況は厳しかった。佐々木の外側にはマルシーニョの戻りが遅れてしまった分、中野がフリーで構えており、ここも絞りの遅れに間接的に関与していたかもしれない。

 加えてこの場面では大外の東のケアに伊藤も山原も出ていくことができず。スローインから逆サイドに展開した中島がドリブルを挟むことで伊藤を内側にわずかに引き寄せているのが助演男優賞。外側のケアが遅くなるための一因は中島が生み出していた。

 結局のところボールサイドのWBにチェックにいけず、逆サイドのSHも遅れて広島のWBがボックス内にフリーで飛び込むことができた。序盤に挙げた2つのポイントをどちらも外してしまったのがこの失点だった。

 この時間以降、前半は広島がペースを握る。川崎の4-4-2がフリーズする中でホマーノが我慢できずに飛び出したところをひっくり返して、より危険なシーンを作っていく。オープンで身体能力を生かした潰し合いに関してはホマーノに文句はないのだけども、ジリジリと我慢してやらなければいけない状況で真っ先に我慢できず穴を広げてしまうというのは彼の明確な課題になるだろう。

 明らかに致死性のミスが増えた川崎にリードを広げることができなかった広島。オフサイドながらネットを揺らした荒木を含めて首の皮一枚の展開で川崎が粘ることとなった。

最後の最後は間に合わせる

 後半、川崎は死なば諸共ハイプレスを再開。構えていてもろくなことがないのでとりあえずハイプレスを再開しようということなのだろう。広島もプレス回避の段階でインサイドにつけるパスがズレて川崎のショートカウンターを食らうなど、前半の頭に戻ったかのような後半の立ち上がりとなった。

 変化点があったのは広島のサイドからの仕掛け。川崎のDFラインの背中を取るような低い軌道の速いクロスをガンガン入れていく。ゴールに迫る試行回数勝負に寄ってきた感。まぁ先制点の取り方を踏まえると理解ができる部分である。

 早々に広島に押し下げられる機会が増えた川崎はロマニッチ+伊藤、マルシーニョで手数を少なく直線的に前進していく。中盤を広げる作業を丁寧にやっていた前半よりも馬力勝負で陣地回復を狙っていく格好だ。

 やや後半頭の旗色は悪かった川崎だったが、伊藤が最後の最後に置き土産として残したCKから同点に。ホマーノの背中から足を振ることに成功した山本がゴールを生み出して追いつく。

 川崎は得点直後にわずかに保持の時間を作るが広島がすぐにリカバリー。死なば諸共プレスはいつまでも続かないので広島の保持を受けに回る展開に。ハーフスペースのフリーランを増やしながら広島は川崎のDFラインを背走させていく。

 広島が惜しかったのは選手交代に伴って受けに回った時の強度が回復しなかったこと。この日の広島は即時奪回やスライドの強度が開幕2試合と比べて割引。アレー、中島を下げたあたりでこの部分が改善するのかなと思ったのだけども、川崎の保持に対して狙いが定まらないままだらっと追うような時間はそれなりにできてしまった。

 川崎も前半と後半の頭に飛ばした分、少しずつ足が重くなってきた印象。特に前の選手を中心に足を気にする選手が多く、実際に交代した橘田(ロマニッチも少し気にしていたように見えた)だけでなく脇坂も足を引きずりながらプレーを続けるように。

 本間は非常に重要な場面でのデビュー戦となったが、なかなか得点のことだけを考えればいい状況ではなかった。ロマニッチと同じことは難しいので左右に流れながらの起点作りに走り回り、脇坂の足が重たい分は中盤の守備をこなす。92分のシュートシーンでは大関に落とした方が景色は良かったが、他のことで忙しかった分ストライカーとして一振りしたいと感じるのは当然だろうなという感じでもある。

 広島は押し込む時間を作りながらもハーフスペースの抜け出しの先にもう一工夫をつなげることができなかった。70分の川村のポストくらいまでクリティカルであれば抜け出したこと自体に意味があるけども、基本的には川崎のカバーは間に合っていたので怪しいシーンでも決定機と言えるくらいシュートコースが空いている場面は限られていたはずである。ホマーノが個人で飛び出すシーンを連発していた前半終盤の方が危ないシーンは多かった。

 試合は結局ドローで決着。死力を出し尽くした試合は勝ち点1を分け合う結末となった。

あとがき

 死なば諸共ハイプレスを広島にぶつけるというのは非常に勇気のある選択だったとは思うが、個人的には試合前に心配したよりはいい内容に落ち着いたと思う。引いて受ける時間帯のホマーノを見ると、より落ち着いた入りの方がむしろスコア的には悪くなった可能性は十分にあるだろう。

 フリーでボールを持った選手のパスの精度、即時奪回の圧力など広島は開幕2試合に比べてやや低調だった部分はあったように見えたが、その状況を引き出しながら利用できたのも確か。ロマニッチを活かすポストプレーに伴う中盤の空洞化の引き起こしや佐々木のフリーランはその中でも高い評価を与えられるものだろう。

 エリソンがいない中で何もないところから得点を積み上げることはできないので、地道ながらも少しずつ前進の精度やアタッキングサードの整備を進めていくしかない。山本のドリブルやキャッチ後のブローダーセンのリスタートのシャープな判断と精度など、細かいところを積み上げることから逃げていないのは個人的には今季のチームに対する好感につながっている。

試合結果

2026.8.22
J1リーグ
第3節
サンフレッチェ広島 1-1 川崎フロンターレ
エディオンピースウィング広島
【得点者】
広島:29′ 加藤陸次樹
川崎:58′ 山本悠樹
主審:須谷雄三

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