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「適切の積み重ね」~2026.10.21 J1リーグ 第11節 川崎フロンターレ×ヴィッセル神戸 レビュー

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レビュー

強度を発揮できない神戸

 カップ戦ラッシュで過密日程が続くJリーグ。そうした中でこのミッドウィークはJ1開催。等々力に迎えるのはACL-Eと国内大会の二足の草鞋を履いている神戸である。

 神戸は連戦にもかかわらず、ほぼ同じメンバー。唯一、入れ替えた感のあるRSBの飯野はレギュラーの酒井が発熱で療養しているという事情があっての変更ということになる。

 端的に言えば、神戸が固定メンバーを選んだことがこの試合の流れを決める大きな要素の1つになったと言えるだろう。トータルで見たときにあらゆる局面で出足が遅く、川崎相手にデュエルで完敗。大敗した柏戦と同じく、本来であれば強みであるトランジッションで川崎を上回れるようなコンディションではなかった。神戸最大の強みが過密日程で潰されてしまったような内容だったことは押さえておきたい。

 基本的には前半の神戸はシンプルなロングボール狙い。大迫をターゲットとしてそこからの進撃を狙う。やや右サイドに流れつつ、武藤や飯野が右サイドの裏に走る形に合わせていくような形を作っていきたいようには見えた。

 だが、このロングボールがそもそも決まらない。単純に味方に合わないようなボールを蹴ってしまうこともあるし、セカンドボールの奪い合いになると川崎相手にほとんど拾われてしまうという問題もある。

 さらに裏への動き出しに関してもオフサイドでチャンスを潰してしまう場面も。ジエゴが大外で抜け出したシーンは川崎がラインを上げたことの影響もあるだろうが、とにかく神戸サイドのポジションを取り直す動きが少ない。せっかくホルダーからラインを破れるパスが出てきそうな局面になっても、適切なタイミングでラインを破ることがこの試合の神戸はできていなかった。

 プレッシングに関しても大迫にSHが連動することで高い位置からのプレッシングに出ていきたさは見えた。事実、ブローダーセンに危険なパスのチョイスを強いるところまではできていた。しかしながら、ホマーノのところで川崎の脱出を許してしまう。もちろん、ホマーノの1枚外すためのキャリーが有効だった側面もあるが、基本的には神戸の守備の連動の問題だろう。ホマーノに外切りに出てくる永戸の背後の山原のところに誰もスライドに来ないのが神戸のハイプレスの実態。

 外切りハイプレスは結局のところ、コースを背中で消しているだけなので、アングルを変える余裕があれば人自体は浮かせることは可能。逆に言えば、守備側はそうなる前に前にスライドする動きが必要。だが、この試合の神戸にはそうしたスライドをする元気がなかったと言えるだろう。

CH周辺に負荷をかける保持

 川崎はリズム良く保持から相手を乱して前進することができていた。ポイントになったのは神戸の前からのプレスを引き寄せながら、守備の陣形を縦に間延びさせていたこと。

 神戸は前から川崎のパスのコースを誘導することができず、かつ前線のプレスバックも控えめだったため、後ろの選手が間延びしたスペースにアタックするような潰し方ができなかった。神戸の前線の誘導にハマらないというプレビューで掲げた攻略のテーマを川崎はきっちりと実践した。

 神戸のプレス隊の中で最も大きな負荷がかかっていたのは井手口だろう。ハイプレスを起動するために前にスライドをすれば、背後を簡単に大関に使われてしまう。井手口の背後で縦パスを引き出す大関の立ち位置は、川崎のCHが中央で余裕を持つための重要な要素になっていた。かといって、大迫が戻りきれなかった選手を放置すれば、そこから前に運ぶことができる。それが悩ましいところ。

 中央に対するリスクの取り方が見事だった川崎。狭いスペースで正確にパスをつけつつ、機を見れば自分で前を向くことができるパターンを見せることができていた。この判断にミスが出れば神戸のカウンター。このカウンターは神戸が攻撃を完結するためのトリガーになりそう。神戸はファストブレイクでもシャープさを見せることができていなかったが。

 ただ、神戸のカウンターにつながるようなミスが出るパターン以外の結果に着陸する方が多かった川崎の保持。正確なパスとターンからライン間で前を向く選手を作ることができていた。

 川崎は大関以外にもラセルダや山市、マルシーニョといったSHもインサイドに絞るなど、井手口と鍬先周辺で縦パスを受けるためのコース取りをすることで狙い目を分散。1人が受けたと思えば立ち去り、もう1人の選手が現れて違うゲートに縦パスを引き出す。端的に言えばこれの繰り返しである。

 それならば、バックラインが列を上げてライン間の川崎の選手を潰しに行けばいいのだが、川崎はこの動きも牽制。CBの背後をラセルダとマルシーニョが斜めのランを繰り返して裏を取ることで、神戸のバックラインに列上げを躊躇する材料をばら撒く。川崎はこの裏抜けを織り交ぜることでライン間のスペースを確保することに成功していた。

 使うのは奥行きだけでなく横幅も。マルシーニョ、山市を中心にサイドに広がるSHに最終ラインや中盤から対角のパスを出すケースも。神戸はSHのプレスバックが間に合わないことも多く、川崎のSBのオーバーラップに対して後手を踏むことも。

 ライン間だけでなく、裏と幅を取るメカニズムも安定していた川崎。かなりスムーズに保持の局面を進めていた。しかしながら、アタッキングサードにおけるスピードアップはもう1つ精度不足。特にシュートの局面でうまくボールをミートせずに強いシュートを蹴ることができず、権田の正面を突く場面が多かったのは残念。最後に体を張って間に合わせた神戸の守備陣の奮闘もあり、前半はスコアレスで折り返すこととなった。

ロングボール封殺で取り戻す主導権

 後半、マイナーチェンジを図ったのは神戸。前半に比べると、ショートパスを使いながらの前進を増やした。前半も鍬先を最終ラインに落としてテンポを整えることはあったが、基本的には出口はロングボール。しかし、後半はショートパスを増やしながら、川崎のハイプレスをバラしにいく。

 狙いとしていたのは川崎の左サイド側。橘田の左半身側の周辺に大迫が顔を出すなど、縦パスを引き出したい動き出しにきっちりと縦パスを合わせることができていた。

 井手口のワンツー的な動き直しでも川崎を振り切るシーンを作っていた神戸。グラウンダーのショートパスからフリーで前向きの選手を作れたという手応えは前半には存在せず。大迫のポストからサイドの裏にスピードアップするということと川崎のミスを絡めずにできたのが後半の立ち上がり。自分たちのポゼッションから川崎の守備に穴を開ける予感がする立ち上がりだった。

 しかし、神戸がペースを握りきれなかったのは川崎が要所で反撃のきっかけを見つけることができていたから。まず、ポゼッションのフェーズになると神戸の即時奪回の圧力をいなしながら、最低限ファウルを奪うことができる。余裕が出れば、空いたサイドにボールを展開。左サイドから縦に進んでいく。

 もう1つはロングボールへの対応。ショートパスの本数は増えていた一方で、全くなくなったわけではないロングボールに対して、川崎はきっちりとアプローチすることができていた。スキッベ監督も嘆いていたが後半は神戸が風下。前半もボールが届いていなかったので、風上であれば風上の難しさもあるように思うが、丸山やホマーノは前向きのアプローチで空中戦に競ることができていた。

 特にホマーノは奪ったところからスムーズに縦パスや攻め上がりからのクロスに出ていくなど、トランジッションからのオフェンスにつなげるまでがスムーズ。この試合で川崎が優位を保っている攻守の切り替えの局面にうまく試合を引きずり込んでいた印象だ。

 ロングボールの封殺から一気に縦に進んでいき、逆に神戸に波状攻撃を繰り返していく川崎。延々と自分たちのターンから押し込んでの攻撃を繰り返していくと、先制点は61分。ホマーノのボール奪取からスムーズに敵陣に侵入すると、右サイドからの伊藤→マルシーニョのクロスで先制。体ごとゴールに投げ出すヘディングで川崎がリードを奪う。

 先制してさらに勢いに乗る川崎。トランジッションから脇坂が権田を脅かすシュートを放つなど、すぐに追加点に手をかけるような有効打を放っていく。

 ホマーノと飯野の接触でしばらく試合は中断。ここで流れが変わるかと思われたが、その直後に川崎は追加点。右サイドから伊藤がダイレクトに蹴ったボールがそのままゴールイン。去年のノエスタの佐々木大樹のゴールのお返しのようなアクシデンタルな要素を孕んだシュートでリードを広げる。

 失点につながるかどうかは別として神戸はサイドに展開されてしまったことは反省。橘田、河原をバイタル付近で包囲する網目を徐々に狭くできていた場面だったので、圧をかけ切りたかった。最低限ジエゴが頭の上を越されたくはなかった。こういう形でなくても、ピンチになる形を作ってしまったことに関しては反省の要素があるだろう。

 だが、すぐに神戸は反撃。左サイドから入れたクロスを大迫が強引にねじ込んでゴール。丸山、ウレモヴィッチのCB陣は一番警戒すべき人をぽっかりと空けてしまい、勝負をかける隙を与えてしまった。エースのゴールでこの試合の勝敗を再び流動的なものにしてしまったということは大いなる反省だろう。フリなしの本命勝負でこじ開けられるのはこの2-0というスコアラインではどうしても避けたいところだった。

 終盤はボールを握りながら勝負をかける神戸。SBに岩本というスクランブルな運用となり、ボールプレイヤーが増えた右サイドから重点的にボールを入れていく。しかしながら、クロスや飛び込みの精度がもう1つ。このあたりの精度の甘さによって川崎は救われた感。

 82分の混戦わちゃわちゃには冷や汗をかいたのは間違いない。だが、これを凌いだ後はパワープレーとしての最後のカードの小松も含めて、ボックス内の対応は比較的落ち着いていたと言えるだろう。

 保持においてきっちりと時間を溶かすことができたのも大きい。サイドの裏からのカウンターでのスピードアップと、ボールを取り返した後からのプレスを引き寄せてのリリースの繰り返し。C大阪戦では数的優位でありながら攻撃のテンポを落とせなかったが、この試合ではリードした状況に応じたプレー選択ができていた。ブローダーセンの危険なプレゼントパスを除けば、多くのプレーは2-1でリードしているチームとしての振る舞いとして適切。試合のコントロールと3点目を狙うアクションを悪くないバランスで両立することができていたように思う。

 最終的には2-1での逃げ切り勝利。川崎は苦手な関西勢を連勝で撃破。上位陣と差を詰める3ポイントを手にした。

あとがき

 なかなかアドバンテージを握れない神戸に対して、川崎は適切なプレーを積み重ねることで優位を維持した試合だった。できれば前半でスコアを動かしたかったが、後半にペースを取り戻してもう一度優位を握っての先制点という流れはむしろこの試合における強さを見せたとも言える。神戸のコンディションの悪さは差し引かなければいけないが、試合の大部分を上位相手に主導権を握って進め、実際に勝利を挙げたというのは大きな成果だ。

 井手口、鍬先周辺に負荷をかけつつ、奥行きと幅を使っていくポゼッションのプラン立案もハマった感がある。加えて、大関や山市といったスターターとして馴染みのないメンバーがこのプランを高い精度と強度で実装できたのも大きな成果。いつもと順番は逆だが、こういう形で層の厚みを感じられたのも大きい。このパフォーマンスを続けられれば、今季の課題である交代メンバー投入以降のガス欠も解消する可能性があるかもしれない。

試合結果

2026.10.21
J1リーグ
第11節
川崎フロンターレ 2-1 ヴィッセル神戸
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎:61′ マルシーニョ, 71′ 伊藤達哉
神戸:73′ 大迫勇也
主審:中村太

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