
プレビュー記事

レビュー
選び取ったそれぞれの組み立て手段
フライデーナイトで開幕することとなったアーセナルの今季のプレミアリーグ。アーセナル目線の戦績的にはめっぽう強い昇格組の中からコベントリーがエミレーツにやってくる。このスタジアムにおいてはプレミア初対戦ということになる。
序盤からボールを持つのはホームのアーセナル。2CB+2CHがビルドアップの主役。ルイス=スケリー、もしくはライスが最終ラインに落ちて3-1気味になるケースが多かった。コベントリーは4-4-2と4-5-1の中間といった形。オンエカが1つ前に入れば4-4-2になれそうな感じではあった。
一方のコベントリーもCBがかなり広く距離をとってGKを絡めたポゼッションを敢行。後方からボールを動かしていく。アーセナルは4-4-2ミドルブロックに構えつつ、プレスをかけようと距離を詰める素振りを見せていたが、寄せようとするとコベントリーはロングキックで回避。アーセナルのハイプレスとガチンコでぶつかるよりはシムズに長いボールを蹴ってお祈りするような場面が多かった。
ターゲットになるのはシムズだけではなく左右のWGも。どこのターゲットに手応えがあるかを探る形がメイン。チャンピオンシップのコベントリーであれば、相手のWGの外切りプレスの背後を狙うようなフィードでサイドから前進することを狙ったりするのだが、そうした素振りも特になし。安全第一の前線へのロングボールから解決を図っていく。
しかしながら、ガブリエウとモスケラ相手に起点を作ることはコベントリーにとっては簡単ではない。セカンドボールを拾うことができてもそこから加速ができずに停滞。アーセナルの守備陣相手にミドルサードから先への侵入を許してもらえない。なかなか前に進むきっかけを掴むことができないコベントリーだった。
4人目の中盤で混乱をもたらす
保持の局面でより手応えがあったアーセナルはまずはインサイドにギャップを作っていく。中盤3枚はもちろんのこと、カラフィオーリ、ホワイト、ツォリス、ハヴァーツといったSBや前線の面々がインサイドに絞りながら中盤に現れる。
4枚以上の中盤が現れたことでコベントリーの守備は混乱。インサイドに絞る+αの面々をどのように抑えるかを整理できなかった。インサイドで前を向く選手を作ったアーセナルはそこからサイドに展開、もしくはDFラインの背後をダイレクトに狙う形を併用。
サイドアタックは昨シーズンに比べてかなりシャープになった印象。右サイドはサカを軸にホワイト、ウーデゴールがハーフスペースを破る形でボックス内に入っていく。遅れて出てくる守備者に対して、アーセナルは嘲笑うかのように前進。出てきた穴をさらに広げるようにどんどんボックス内に入っていく。
左サイドにおいても大外に立つ機会が多かったツォリスを基準に前進。ハーフスペースに抜けるカラフィオーリをシンプルに使う形と自らが仕掛ける形の併用。サイドにつけている時点でコベントリーのラインが下がっているため、ルイス=スケリーのマークが甘くなるのはミソ。後方にやり直すきっかけという保険がある状況でリスクをどこまで取るかを探ることができるのはアーセナルにとっては理想的な状況だと言えるだろう。
サカ、ツォリスには特にダブルチームに来ることのない仕組みもアーセナルにとっては好都合。コベントリーのWGはむしろ数が多い中盤の守備に入るかどうかに迷っており、列を下げるケースは少なめだった。対面と腰を据えて勝負ができるWGによって、アーセナルは順調にチャンスメイクを重ねていく。CK狙いのようなとりあえずという縦突破がなかったことが、オープンプレーでの崩しの好調さを物語っている。
ちなみに、セットプレーの質もこの試合では昨季とかなり違っていた印象。昨季の段階ではやや付け焼き刃感があったショートコーナーも相手の出方を見ながら揺さぶることができており、守備側からするとより狙いは絞りにくくなった。
先制点は15分。左サイドのツォリスの仕掛けからボールを奪ったファン・エバイクがボールを逃し切ることができず。ボールを奪い返したアーセナルはカラフィオーリの突撃から最後はハヴァーツが仕留めてゴール。コベントリーはファン・エバイクがボールを持っている段階で、後方にボールの預けどころとしてトーマスがラインを下げたところでボールを失うという最悪の形の連携の噛み合わなさを披露してしまった。
先制点以降も落ち着いて試合を進めるアーセナル。先に挙げた次々登場する中盤に対して、コベントリーは対抗することができず。アーセナルは余っているCBからゆったりとしたポゼッション+厚めのインサイドからの仕掛けで敵陣に入っていく。
コベントリーはカウンターから反撃に出たいところではあるが、深い位置まで押し下げられた状態の中からなかなか中盤に起点を作ることができず。攻守にルイス=スケリーのデュエル性能の高さが際立っている。奪う形が良ければ、自由なポジション取りをしているアーセナルのSBのエリアは狙い目なのだが、そもそも前向きでボールを奪えるケースが限定的。守備者が自陣側になんとか体を放り投げてボールをカットするケースが多かった。
カウンターのシャープさに関してもアーセナルは一枚上手であることを見せつける。サカの追加点はツォリスのアシスト未遂もさることながら、速度を落としすぎずに適切なスピード感で前への推進力を出すことができるウーデゴールの好調さが際立っていた。後ろ選択をやたらとする時期であれば、一度大きく後ろに下げてしまっていたかもしれない。
2つのゴールでリードを確かなものにしたアーセナル。前半の終盤は右サイドからのクロスをベースにチャンスメイク。コミュニティ・シールドでゴールに繋がった左サイドへのファークロスを中心にゴールに向かっていくが、なかなかゴールを生み出すことができず。試合は2点のリードでハーフタイムを迎える。
手付かずの課題を咎めて制御する
勝敗という意味では48分のウーデゴールの得点ですでに決着したと言えるだろう。フィニッシュはやや拍子抜けなキックになってしまったが、崩しという意味ではこの試合のアーセナルを象徴するようなプロセスが見られるゴール。ライスの縦パスで相手が出てくる逆を取り、同数で受けようとする相手を同サイドの複数人のオフザボールで崩して、ボックスへの導線を作り出す。
コベントリー目線から言えば、前半からサイドの受けの枚数は足りているにも関わらず、適切に相手の管理を受け渡せない場面が多かった。サイドにコベントリーの守備者は2人いるのに、アーセナルのWGにボールが渡った瞬間はフリーになってしまうみたいな。この試合はアーセナルのWGがボールを受ける際の景色が相当良かったように思える。コベントリーはアーセナルがサイドにボールをつける際に先手を打って制限をかけることができなかった。
アーセナルのプレスが沈静化する中で、コベントリーは60分手前にやや手応えのある攻めを見せることができた。SBがようやく敵陣に入りながら仕掛けるシーンを披露。特に左サイドのダ・シルバからのカットインは可能性を感じるものだった。
この時間帯はコベントリーのバックラインがハヴァーツへの供給を寸断。強いアプローチからボールを回収し、自分たちの攻撃のターンを続ける。
ペースとしてはコベントリー側に流れそうなきっかけではあったが、アーセナルの腰を据えた保持をどのように前から捕まえるか?という課題が手付かずだったことによって、流れは簡単に堰き止められることに。アーセナルは後方からの保持で再び敵陣に侵入することに成功。逆に今度はモスケラが高い位置でコベントリーのカウンターをカットすることで、自分たちのペースをホールドしていく。
60分手前数分のチャンスを活かせなかったコベントリーは以降もなかなか攻め筋を見つけることができず。アウォニィでアーセナルの2人のCBをまとめて釣り上げたことを起点として、ルドニが決定機を迎える場面が終盤に到来。しかし、ヘディングをきっちりミートすることができず、この試合唯一の得点源を逃してしまう。
アーセナルは選手交代後はややチャンスメイクの手応えが落ちてしまったことが誤算だったかもしれない。ただ、試合全体のテンションが下がったことを踏まえれば、むしろ試合の大枠を握りながら時計の針を進めていることを是とすべきだろう。
文字通り、コベントリーに何も起こさせなかったアーセナル。見事な勝利で26-27で一番初めに勝ち点3を積み上げることとなった。
あとがき
基本的には完勝ということになるだろう。早い時間帯に先制点を奪い、そのまま試合をコントロール。コミュニティシールドで見せた流れをそのまま開幕戦に持ち込む事ができた。
特に好調さを感じる部分は本文でも触れたが、WG(特にサカ)がCK獲得ありきの縦突破を見せなくなったこと。そして、カウンターにおけるウーデゴールの前へのベクトルを落とさない選択肢の2つ。オフザボールのスキルが冴え渡っていたホワイトも含めて右サイドが継続的に高パフォーマンスを見せる事ができれば、昨季以上の得点力となっても不思議ではない。
昇格組との開幕戦といえば個人的にはブレントフォードにボコボコにされた試合が印象的。ラヤ(当時は敵だ)-トニーのロングボールのホットラインでタコ殴りにされたあの日である。相手が違うとはいえ、チャンピオンシップを堂々戦ったコベントリーに何もさせなかったことは順調そのもの。長いシーズンで何が起きるかはわからないが、間違いなくいいスタートを切る事ができたことだけは確かだ。
試合結果
2026.8.21
プレミアリーグ
第1節
アーセナル 3-0 コベントリー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:15′ ハヴァーツ, 23′ サカ, 49′ ウーデゴール
主審:トーマス・ブラモール