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「決め手に値する一撃」~2026.8.31 プレミアリーグ 第2節 アストンビラ×アーセナル レビュー

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レビュー

鈴木彩艶のデビュー戦の評価は?

 この試合の展開を論じる上でまず争点になるのはアストンビラのスタンスだろう。開幕節は4-0という文字通りの大敗。とりわけ、攻守にハイプレスのところがネックになっていた。

 特にハイプレス回避はアストンビラの生命線。相手のプレスを誘引しながら前進するスペースをひねり出し、一気にゴールまで迫っていく疑似カウンター的なアストンビラの得意パターンにはある程度のプレス耐性は必須ということになる。

 その点でキーマンになるのは新加入の2人。GKの鈴木とCFのジャクソンがつなぎの上でどれだけの役割を果たすことができるか?というところになる。

 鈴木は特に日本人ということもあり注目度が高い選手。プレミアデビュー戦となった彼のパフォーマンスを掘り下げるところからまずは始めていきたい。

 立ち上がりはいきなり冷や汗をかく場面。CKのクロス対応でかぶってしまい、ガブリエウに無人のゴールマウスにシュートをするチャンスを与えてしまった。この場面以外にも飛び出しの局面は探り探りやっていた印象。もちろん、試合終盤のハヴァーツの飛び出しへのケアなど貢献した部分はあったが、どれくらいいけるかを常に探りながら90分を過ごしていた。

 保持においても評価は同じ。飛距離の出るパントキックはビゾットの手持ちには明らかにない武器であり、左右のSHを目掛けて蹴るなどアストンビラにはこれまでないレパートリーでの前進を与えた。まずはパウ・トーレスに預けて相手を誘引しながら前進しようということにこだわらなくていいのはGKが鈴木になったならではの現象のように思える。

 アーセナル目線で言えば高い位置からハヴァーツの鈴木へのプレスをきっかけにビラの左サイドにボールを誘導するハイプレスを起動したいところ。序盤はこの形からボールを奪ってシュートまで持っていくことはできていたんだけども、結局プレスをかけても鈴木のパントで逃げられてしまうので続ける雰囲気にもならなかった。

 総じて、パントキックやクロスカットを中心に今のアストンビラのGK陣の中ではできないことができるし、天井の高さに関しては可能性を感じさせる。一方でGKはミスを許容しにくいポジションなので、狙うプレーの精度は上げたいところ。特にハイボール対応に関してはここから多くのプレミアのチームに揉まれながらチームに貢献していきたいところだろう。

勝手が異なるWG主体の攻め

 アーセナルのポゼッションは3-2-5がベース。低い位置を取るのはライスが多く、ルイス=スケリーとの関係でいえばライスが後ろ。ウーデゴールも列落ちをする3-2-5がベース。左サイドはツォリスとカラフィオーリは大外とハーフスペースを共有する格好である。

 アストンビラのスタンスは4-4-2。無理に数を合わせたハイプレスは敢行せず。この辺りはブライトン戦の反省が伺える部分だったりする。

 後方でフリーマンを作ることは容易だったアーセナルは対角パスから右サイドに展開。サカを軸に打開を図っていく。右サイドに流れるハヴァーツも含めて複数人から打開をしていく。

 コベントリーとアストンビラが異なるのはSHが明確にWGに対する守備を敷いてきたことだろう。ヘミングスとマッギンはマッチアップするSBのカバー役や直接WGをマークする機会もしばしば。時には6バックのような姿勢も見られたため、アーセナルが狙いたいSB-CBのゲートもかなり狭い形に。なかなかクリティカルな形を作ることができない。

 特に苦戦が見られたのは左サイドのツォリス。交互にやってくるマッギンとキャッシュ相手にかなりハードなマッチアップを強いられた。ここまでを見る限り、ツォリスがいいパフォーマンスを見せられる場合は細かいタッチから相手を動かす駆け引きを能動的にできるパターンのように見受けられる。この試合では相手を動かそうとするタッチの1つ目に対面が対応してきており、その後の駆け引きに持ち込むことができなかった。

 自陣でのクローズはうまくいったアストンビラだが、得点の流れにはなかなか直結しないのが難しいところ。後ろをケアするSH、スムーズな横断を阻害する2トップが守備に忙殺される影響は確実に存在。一番大きいのはハイプレスに移行することはまずできないので、アーセナルがボールを持つたびに展開が落ち着いてしまうことである。

 もう1つはカウンターが重たいこと。ジャクソンがサイドに流れてボールを引き出していたが、インサイドが間に合うケースが少なかった。

 アストンビラは自陣からの保持が得意なチームではあるけども、やりなおしながら押し込んだ局面を制圧することは苦手であり、誘引した擬似カウンターから一気に完結を狙う形が真骨頂。一度スローダウンしてしまうと厳しいものがある。

 そういう意味ではとりあえずサイドに流れる(中央からの抜け出しができるなら別だけど)ジャクソンに預けるのではなく、鈴木を活用した自陣からの前進からスピードアップをする形が理想と言える。右サイドからの進撃で相手のCHを引き出しつつ、横断からマートセンのオーバーラップから完結という形ができればアーセナルを脅かすことができる。ちなみに中央に絞るツォリスのボールロストもアストンビラ的には直線的なカウンターを打つチャンスでもあった。

 しかしながら、アストンビラもまたスピードアップを精度高くやり切ることができず。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。

惚れ惚れする先制点

 後半、動いてきたのはアーセナル。警告も受けていたツォリスに代えてエゼを投入。前半はSHとSBが大外とハーフスペースをシェアしていたアーセナルの左サイドだが、後半はインサイドにエゼ、アウトサイドにカラフィオーリがメインの形となる。

 アストンビラは後半も守備に回った際のジリジリとした展開を許容。時折6バックになることで自陣のバックラインの横幅を埋める。右サイドからはクロスを上げることはできていたが、ボックス内でハヴァーツがリンデロフの上から叩くなど、対面を負かさない限りは状況を解決できない。

 アストンビラは後半も横断からマートセンを出口とした攻撃を敢行。バークリーの管理が甘くなったところから一気に加速をするなど、前半よりも横断の頻度を上げながら敵陣に入っていく。

 どちらも攻撃の型はおぼろげに見えながらも枠内シュートが出てこない時間が続く中で、ついにゴールを掴んだのはアーセナル。後半に手当てをした左サイドから得点に辿り着く。エゼとカラフィオーリの見事なラインの移動から微妙なズレをアストンビラの守備に生むと、カラフィオーリとサカがそれぞれリンデロフとマートセンの鼻先でボールを突いてゴールイン。無駄のないタッチと駆け引きから見事にゴールを生み出した。

 ちなみに縦パスを出したモスケラは直前のサカのPK未遂でもインターセプトに成功。要所で攻守のキーマンとなる働きを見せていた。

 鈴木としてはカラフィオーリのケアに出過ぎてしまった分、折り返しにノーチャンスだったのが残念なところ。「出ていく幅はゴールマウスまでに制限した方がいい場面だった」と一緒に配信したGK経験者は言っていた。いずれにしてもカラフィオーリはシュートを受けるほど余裕がある状況じゃなかったので、ある程度折り返しに備えたかったところ。左サイドから予想外の進まれ方をしてしまったことにより、対応が整理しきれなかったのかもしれない。

 失点をしてもプレスの強度は変えずにまずはブロック守備を重視するアストンビラ。アーセナルの右サイドを圧縮しながら、カウンターの機会を能動的に作っていく。ブエンディアのホワイトへの寄せは非常に見事だった。

 ただ、逆に言えば右サイド以外のところではプレスのきっかけを掴むことができなかったアストンビラ。その右サイドでのアーセナルのボールロストもアストンビラはスムーズにカウンターに移行することができなかったため、一方的にペースを握るということはできなかった。

 ここまではアーセナルの保持に対して、アストンビラが攻撃につながる奪い方ができるかどうか?という戦い方だったが、終盤になると立場は逆転。今度はアーセナルがSHをきっちりと下げて自陣を固め、アストンビラが攻略する隙を突いてのカウンターを狙うこととなる。

 右サイドに入ったアリソンはカラフィオーリを出し抜く場面を1回作り出したが、エゼも下がって守備を組むアーセナルの左サイドの切り崩しには至らず。得点どころか枠内シュートも生み出すことができない。

 アーセナルはカウンターから追加点を取れれば理想。途中交代のギマランイスの一つ飛ばすパスから局面を前に進める能力はさすがだったが、ゴールには結び付かず。フル出場で疲労が溜まっていたということもあるが、ハヴァーツは全体的にもう少しセンターラインで勝負しても良かったかもしれない。交代枠、もう1つ欲しかったなと個人的には。

 それでも中盤にガチムチな成人男性を入れることで試合の引き締めに成功。要所で体を張ってファウルを引き出し続けたアーセナル。長かった8分の追加タイムを含めて落ち着いてみられるゲームクローズで2連勝。クラブ史上初のプレミアアウェイ開幕戦5年連続勝利を果たした。

 

あとがき

 前節は絶不調だったアストンビラはホームで見事なリバウンドメンタリティを見せた。改めてプレミアのアウェイは簡単ではないと痛感させられた試合だった。

 こじ開けた先制点はモスケラの縦パス、カラフィオーリのレーンの細かな移動、エゼのダイレクトな特性、そしてマートセンの前に出たサカの駆け引きと個人と組織の崩しのスキルが詰まったゴール。枠内シュートが出ないジリジリとした展開の決め手になるには十分な一撃だった。モスケラ、怪我が軽いといいなぁ。

 デビュー戦となった鈴木はチームを引き上げる素養の高さと致命的になりかねないミスが同居するパフォーマンス。慣れが出ないうちに判断に即したミスが出るのはある程度仕方がないところだと個人的に思う。まずはこのミスを減らすための待ち時間をもらうための説得力は十分に与えられたのではないか。

試合結果

2026.8.31
プレミアリーグ
第2節
アストンビラ 0-1 アーセナル
ビラ・パーク
【得点者】
ARS:59′ サカ
主審:ジャレット・ジレット

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