MENU
アーカイブ
カテゴリー

「必要なスペースを作り出す」~2026.9.9 UEFAチャンピオンズリーグ リーグフェーズ 第1節 ナポリ×アーセナル レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

右のペナ角からの出口

 ついに26-27シーズンのCLが開幕。アーセナルはナポリの地から悲願達成のシーズンの幕を上げることとなる。

 序盤に目についたのはナポリのプラン。アンギサ、マクトミネイと中盤に負傷者が出ていることもあり、この日はギルモアとロボツカを中盤の底に並べるのが基本。自陣まで下がればデ・ブライネがMFのラインまで下がって守備をするが、ミドルゾーンでは4-4-2のような形で陣形を組む。

 リーグ戦からややメンバーを入れ替えたアーセナル。左サイドはインサイドにエゼ、大外にインカピエという形で棲み分け。エゼは絞ってライン間に入っていく形をとる。

 それでもいつもと傾向は大きくは変わらないアーセナル。この日も右サイドを軸に前進。サイドで三角形を作りながら裏に抜けるパスをつけることで、少しずつボックスへの襲撃の機会を狙っていく。

 主にウーデゴールが担当するボックスの角のところから大外もしくはハーフスペースの裏を狙うアクションから、アーセナルは勝負をかけていく。序盤は特にハーフスペースの裏抜けに関してはナポリを出し抜くことができていた。

 だが、時間の経過とともにナポリは修正。逆サイドのSHであるポリターノが自陣深くまで下がることで5バック化。アーセナルのハーフスペースの抜け出しに対して、素早くスライドする形で修正。出し手となるペナ角の選手にはロボツカがきっちりとプレスをかける。

 こうなると簡単にはニアから抜けることができないアーセナル。ペナ角から奥を取る選択肢を見出すことはできず、ペナ角のホルダーは出し手としてどこに出せば良いか困ってしまう。逆サイドへの揺さぶりもアーセナルの左サイドのユニットはやり切ることができず。特に突破でもフリーランでも縦へ抜けるアクションがないことで、左に展開しても攻撃を仕上げることができなかった。

 ということでアーセナルはファーサイドへのクロスを狙っていく形。右サイドのペナ角からのクロスでニア側のDFを越えて、ファーに待ち構える味方を狙っていく。初めはGKのメレトを越えないボールになることも多かったが、時間の経過とともに少しずつニアを越えることができるように。エゼの折り返しをメリーノがシュートしたシーンなどは、この形からの最大の決定機だった。

トランジッションの利益を占有する

 ナポリのポゼッションは非常にメリハリがある形だった。まず、狙っていたのはトランジッション。少ない人数での縦に速い攻撃からゴールに迫る形を意識する。

 ロングボールの的となることが多いホイルンドはコンササイドにつっかけることができれば、ボールを収めることができる。ここは速攻を仕上げる上でキーになるファクター。前で時間を作る役割をCFに託せれば、縦に速い攻撃の難易度は下がる。

 定点攻撃においても後方3枚+左サイドのユニットの旋回を織り交ぜて、マンツーハイプレス気味のアーセナルのプレスをいなしつつ、ホイルンドへのロングボールは積極的に狙う形。やや静的な局面でもある程度ボールを収めるところは見せることができたホイルンドだった。

 もう1つ、ナポリが狙っていたのはセットプレーの局面。前にある程度初めから人を残すというチェルシーのオマージュのような狙い。スピードに乗ったところから攻撃を完結させにいく。

 惜しまれるのは大外のアタッカーがカウンターを完結する精度がなかったこと。デ・ブライネが左右に散らすところまではたどり着いたナポリだが、アリソン・サントスとポリターノが対面のSBに優位を取ることができず、攻撃を仕上げることができない。

 それでも前半序盤のナポリの攻撃の設計はうまくいったと結論づけるべきだろう。総じて彼らの狙いは「トランジッションによる利益を自分たちだけ得る」こと。縦に速い攻撃を仕掛けるのは自分たちだけで、アーセナルの保持の局面においては素早く陣地を下げてリトリートをする。リスクをとったCKの仕掛けなどからはこのスタンスが見て取れる。

 プレビューにも書いた通り、オープンな展開で撃ち合ってしまえば、今のナポリは間違いなくアーセナルにテンポで置いていかれてしまう。ならば、自分たちだけ急げるところを作り出し、そこからトランジッションを局所的に発生させる。その上で、相手にはその利益を与えないということで一方的に自分たちだけ得をしたい!というイメージである。

 アーセナルは序盤こそこの一方通行のトランジッション成分に悩まされていたが、前半の中盤からは少しずつナポリがアーセナルの速い攻撃を抑えられず。サイドアタックがラヤにキャッチされてしまえば、そこから素早く始まるアーセナルの攻撃を抑える術はない。

 その真骨頂だったのは前半終了間際のサカの決定機だろう。ロングボールのセカンド回収から素早く攻撃に移行することをアーセナルに許せば、こうなってしまうという代表例だった。

 序盤は苦しんだアーセナルだが、トランジッションの発生を双方向に変化させることで、主導権を取り戻すことに成功。しかし、試合は動かずスコアレスのままでハーフタイムを迎える。

開けるべき場所を開けるパス

 後半、ナポリは再び4-4-2でのミドルブロックからのプレスを狙うが、アーセナルは落ち着いてポゼッションで制圧。しかしながら、前半から苦しんでいるラストパスやミドルの精度不足でなかなか得点に近づくことができない。

 ナポリはカウンターから少ない手数で仕上げる形と、ゆったりと進みながらサイドに散らす形の両方を狙っていくが、やはりサイドの突破力がボトルネック。インカピエ、ホワイト、コンサなどの壁に阻まれてクリティカルなクロスを入れることができない。

 前半と同じ流れをじんわりと変えていったのは選手交代。先に動いたナポリはファバズリを右のWBに入れて5-4-1という守備時の並びを最適化する。この交代でナポリはこれまで以上に前からのプレスに出ていくのが難しくなった。残り30分にして方向性を提示した格好だ。

 アーセナルはやや遅れて前線をレギュラーセットに入れ替え。ギマランイスに加えて、ツォリスとハヴァーツを投入する。

 アーセナルが腰を据えたブロック攻略を続ける展開となったこの試合。前半同様にペナ角からファーを狙うインスイングのクロスが攻撃の主体にはなっていた中で、選手交代がアーセナルに新しい味をもたらす。

 ペナ角からの攻撃の選択肢はこれまでは大外への展開かハーフスペース裏に抜けるパスかファークロスだったが、ハヴァーツやツォリスが右サイドに顔を出すことで、ポストからパスをつけたホルダーの位置を動かすアクションが追加されることに。

 この動きがウーデゴールの得点の決め手に。得点の直前、シュートを打つ前にアーセナルは2本縦パスを入れたあと、素早くウーデゴールにリターンをしている。この2つの縦パスでアーセナルはバイタルをカバーすべき2人のCH(バルガラ、ギルモア)を食いつかせることに成功している。これまで相手のブロックに引っかかっていたウーデゴールのミドルが通ったのは、その手前のパスワークによってわずかなスペースをバイタルに作り出したからである。

 出て行かなくてはいけなくなったナポリ。しかしながら、一度下げてしまった重心はなかなか上げるのが厳しい状態。デ・ブライネを軸とした攻撃から仕上げに行きたいところではあるが、なかなか彼とつながれる選手がいないのが難しいところ。ハーフスペースから抜け出されたシーンはアーセナル的には肝を冷やしたが、抜け出したデ・ブライネ以外は味方も敵もこのアクションに反応できなかった。

 仕留めるチャンスがあったカウンターを仕留められなかったことは反省だが、追加タイムはナポリのチェイシングの足が鈍っていたことで、アーセナルは落ち着いてゲームクローズ。開幕節は勝ち点3を確保するスタートとなった。

ひとこと

 プレミアに比べると詰めが甘いところがあったが、主力のプレータイムの管理も含めて欲しいものは全て手に入れたという結果となった。アウェイはこれでいい。

 先制点のところはブロック攻略におけるナローなスペースの生み出しから。いかにも今季のアーセナルらしいこじ開け方だと言える。この試合ではミドルがなかなか枠をとらえなかったが、ウーデゴールだけは目の前の相手にぶち当て続けていたので、前が空けば決まりそうな雰囲気はあったとも言える。必要な時に必要な人の前にスペースを作ったことが、この試合の重要なポイントだった。

試合結果

2026.9.9
UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第1節
ナポリ 0-1 アーセナル
スタディオ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナ
【得点者】
ARS:75′ ウーデゴール
主審:グレン・ニーベリ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次