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「差し引いたとしても」~2026.11.4 UEFAチャンピオンズリーグ リーグフェーズ 第4節 スラビア・プラハ×アーセナル レビュー

プレビュー記事

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レビュー

マンツー回避の黄金パターン

 プレビューの時から感じていたが、かなり特殊なチームとの対戦をしたなという感覚である。マンツーベースというチームは少なくはないけども、移動に対してここまで受け渡しがなく、「目の前のマーカーについていこうぜ!」という意識が強いチームはあまりない。100%のマンツーマンなんて存在はしないけども、比較的100に近いチームは存在していて、このスラビア・プラハはそれに当てはまるチームだといえる。

 敵陣ではほぼオールコートマンツー。先に述べたように選手のポジション移動に対する入れ替わりはなく、一人一殺が基本線というのがスラビア・プラハの方針となる。自陣側ではやや後方に人を余らせるイメージも持っていて、DFラインに1人マーカーを持たない遊軍を置くケースもある。そのぶん、相手のバックラインにはマークをかけない縛りになっている。ボールが敵陣にある時のほうがマンツーの濃度が高く、自陣にある時の方が薄まるイメージだった。

 ただ、マンツー守備をやりきる原則があるチームかと言われると難しいところ。まず、1on1で潰しきるような対人守備の強さがあるかは怪しい。チームの性質上、アーセナルのWGに対して1on1で対峙するのだけども、エゼとマドゥエケに対して1人で守りきるようなスキルを対面が持っていない。

 そもそも距離が遠いのも問題だ。マークにはついているものの、物理的な距離が遠い。特にアーセナルの低い位置の選手に対して厳しく制限をかけないため、出し手にほとんど制限がかからない。自陣で人を余らせるパターンもあるので、そうなってくるとラヤを絡めたパスワークについていくのは絶望的ということになる。

 アーセナルは中央のレーンで多くの選手が縦横無尽に動く形。CFのギョケレシュ、MF3枚、そしてSBなど様々な選手が入れ替わりながらマンツーを振り切ろうとする。特に簡単にボールを収めることができるパターンは降りる動きに合わせてパスをつける形。マーカーは基本的には後から追ってくる形になっているので、降りるアクションとポストを狙う縦パスを組み合わせられると守備者がボールに届かない。

 柔軟性があれば、普通は中盤に残っている選手が挟み込みにいく。だけども、スラビア・プラハはマンツー原理主義。降りる選手には降りる選手のマーカーが責任を持って対処する必要がある。けども、届かないような状況が出てきてしまう。

 先制点のシーンはスラビア・プラハの守備のやり方の弊害が思いっきり出たものだった。ポストを収めたギョケレシュは自陣側にかなり大きくコントロールしている。普通のチームであれば、挟み込んでいる中盤がボールを回収できるくらいには広い範囲を使ってボールを収めている。

 マドゥエケの動き出しに合わせたパスは見事ではある。が、その手前のコントロールはCLやPLの通常の守備をしてくる水準の相手であれば、もう少し丁寧にやりたいところだったりはする。

 それでも、スラビア・プラハ相手にチャンスを作るのであれば、このゴールシーンで行われていたことを徹底していれば問題なかった。中盤の間延びしたスペースに降りるアクションをして、自陣側に大きくコントロールしながらドリブルもしくはラストパスを出せる体勢を確保する。味方はその動きに合わせて主に前方に走り出すアクションをしてマーカーを振り切り、オフサイドにならないように抜け出す。ここさえ徹底できればスラビア・プラハ相手にチャンスを作ることができる。

 逆にここが甘くなってしまうと怪しいシーンが出てくる。降りるアクションをせずにカットされてしまうと、カウンターで前に出ていく。前に出ていくと決めた時の腹の決まり方は非常に優秀なチームなので、こうなると数的優位のカウンターを打つことができる。

 ただし、カウンターはかなり生き急いでいる感がある。とにかく選択肢は裏が最優先。本来であればポストのように誰かを噛ませて前を向く選手を作って敵陣に迫っていきたいところだが、スラビア・プラハの選択肢は最短最速である。そうなってくるとガブリエウ、コンサの対応は非常にイージーだ。

 きっちりと前を向く選手を噛ませることができれば、さらに状況が良くなるケースもある。アーセナルの2得点目がまさにこのケース。ギョケレシュとメリーノのワンツーはギョケレシュがメリーノに折り返したことで自らのマーカーを剥がすことに成功。角度のあるところから見事なシュートを決める。

 このシーンでも先制点に近い印象を持った。ギョケレシュのフィニッシュにつながるワーク自体は素晴らしい。その一方でCLレベルでこのワンツーでこのエリアで簡単にフリーで抜け出すことができるチームはあまりいないなという印象だ。

 試合はアーセナルが要所で違いを見せて2-0。アウェイでリードのままハーフタイムを迎える。

諦めの悪さに手を焼く

 後半頭、スラビア・プラハは2枚の選手交代を敢行。3バックにシフトした。前半の終盤から3バックへのポゼッションはほんのりやっていたけども、後半にその形を整えた格好だった。

 ただ、むしろ実効性がありそうだったのは前線のキャスト変更かもしれない。ターゲット型のシティルを入れたことでシンプルなクロスの効果を高めていく。

 サイドからボールを持ち上がり、シンプルなクロスを敢行。アーセナルを空中戦で苦しめていく。前半よりも強力になった前線のデュエルはハード。なかなか距離を出す跳ね返しを見せることができない。

 アーセナルは一つマークを外すことができれば一気に敵陣に運ぶことができる。前半に述べたようにポストと抜け出す選手の組み合わせさえきっちりとやればチャンスにはなる。コンサがギョケレシュのポストに合わせて攻め上がったシーンはその代表例といえるだろう。

 しかし、後半はその息が合うシーンが数少なかった。ホルダーが迷ってしまい、動きながら受けたとしてもリリースを躊躇ってしまってボールをロストする。もしくは敵陣の何もないスペースにパスを送ってしまう。

 ボールを捨てるのであればまぁ仕方ないのかなという感じだが、リリースが遅れて捕まってしまうのは痛恨。カウンターの火種になってしまう。スラビア・プラハはカウンターからチャンスを作るが、フリーの味方にラストパスを送って局面を進めたい場面でもシュートを選択。プレーセレクションの拙さにアーセナルは助けられた格好だ。

 70分を過ぎたところからアーセナルはサイドの深いところまでポゼッションで押し込んでいく。WGは1on1で優位を取れていたが、抜け出すアクションをする味方と息が合わず。ここでも攻撃を完結できない。このあたりのオフザボールの筋の悪さもこの試合のアーセナルの苦しいところだったりする。

 諦めの悪いスラビア・プラハはボールを奪ったら「とにかく前へ」を延々と繰り返して陣地回復を敢行。アーセナルはギリギリのところでのファウルでセットプレーのチャンスを与えてしまった。ラヤのクロスカットを狙った飛び出しが空振りだったのも難しいところ。ブライトン戦を彷彿とさせるエラーの連続は彼の課題になりそう。試合の中で一度ハマったら抜け出せずに危険な選択を連発する癖は修正したいところである。

 90分にはノバクが一撃を食らわせることに成功したスラビア・プラハ。だが、反撃はそこまで。アーセナルは最後は冷や汗をかきながらも敵地で逃げ切り勝利を果たした。

ひとこと

 CLというレギュレーションにおいては16ポイントを8試合で稼ぐということが最優先。この試合で10ポイントを確保。最終節にサバフFKとのホームゲームがあるので、できれば年内に13ポイントまで乗せておきたいというイメージには近づいている。そこはとても良かった。

 その一方で試合運びには難が残る。スラビア・プラハはとても諦めが悪く、なかなか通用しない攻撃手段でも愚直に繰り返すことができるチーム。前向きの矢印を出せたら、ボックス内に人を揃える思い切りの良さもあり、そこにストロングがあるチームでもある。ただし、前半のようにそもそも人を前に送り込む仕組みがない展開だとそういう強みはそもそも出ない。

 なので、受けに回る状況を選んだ場合はこの試合の後半のような展開もあり得る。けども、結局のところ彼らの守備の緩さは後半も変わっておらず、マークがタイトじゃなく、周りがヘルプに来るわけでもなく、危険なエリアを優先的に埋める整理ができているわけでもない。WGの1on1を受容してくれてそのエリアでアーセナルが優位を取れているにもかかわらず、これだけチャンスが少なかったことの方が個人的には問題だと思う。

 基本的にはきっちりとクローズして受けることが主体のチームということもわかるし、アウェイの連戦でタフなコンディションということもわかる。けども、この守備の水準を見せる相手であれば、そうしたものを差し引いても3点目、4点目を取るような火力を見せないといけなかったのかなと思う。得失点が重要なレギュレーション的にもそうだし、このコンペティションで上に上がるための最低限のものをこの試合では下回ってしまったのかなという感覚が強い。そういう意味では今季のどの試合よりも危機感を覚える内容だった。

試合結果

2026.11.4
UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第4節
スラビア・プラハ 1-2 アーセナル
エデン・アレナ
【得点者】
SLP:90′ ノバク
ARS:9′ マドゥエケ, 38′ ギョケレシュ
主審:トビアス・スチュイラー

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