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「一生懸命じゃないいいところ探し」~2026.10.28 Jリーグ ヤマザキビスケット ルヴァンカップ 4回戦 サガン鳥栖×川崎フロンターレ レビュー

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レビュー

2つの前進の柱

 ミッドウィークの一戦は今季3回目の九州遠征。宮崎、熊本に続き鳥栖とのルヴァンカップ4回戦に臨む。

 予想通り、互いにリーグ戦とは大幅にメンバーを入れ替えて臨んだこの試合。鳥栖は5-4-1で構えながら、川崎のビルドアップを監視していく。鳥栖はCFの酒井が中盤を監視しつつ、シャドーがハイプレスのスイッチを入れる格好。前から捕まえに行くタイミングを探っていくような格好だった。

 ざっくりと川崎の対策は2つ。1つはプレスをあえて誘引するような形。特にこの日はLSBに入った松長根が低い位置でボールを触り相手のWBを引き出す。

 鳥栖のWBを川崎のSBまで引き出すことができれば、鳥栖のワイドのCBは川崎のWGにスライドする。すなわち、川崎目線でいうと鳥栖の最終ラインに対して、縦へのスライドだけでなく横へのスライドも強要することができる。こうなるとかなりDFラインとしては対応がタフになる。

 松長根の誘引に合わせて長が裏に抜けるアクションを見せていたのも悪くはない。オフザボールというよりは足元にボールが入ってから!というタイプの選手かもしれないが、バックドアで抜け出すような動きを見せていたのは個人的には悪くないなと思った。なかなか刺さり切る感じではなかったけども、そういう動きを見せることがプレーの幅を広げるための第一歩でもある。

 長に限らない話なのだけども、この試合の前線のメンバーのオフザボールの動きは悪くはなかった印象。マルシーニョみたいな一発で裏を取るような派手な動きはないのだけども、特に斜めのランで相手のDFの背中から顔を出したり、マークの受け渡しを強要するようなこともできている。持山、山市などはこうした動きがとてもうまい。大関のPKくれよ!のランもそんな感じ。もしかすると、この試合のオフザボールの動きはレギュラーセットよりも質が高いかも的な予感もあった。

 もう1つ、川崎の攻めの手段はセンターラインのギャップを使う形。トップ下の大関が絡む形でミドルゾーンから手前のポジションチェンジを繰り返しながらフリーの選手を作っていく。河原が最終ラインに落ちたり、大関が中盤まで降りたりなどまずは鳥栖のマークを外すような動きをする。

 基本的には鳥栖のCFである酒井の背中側でフリーの選手を作ることが川崎にとっては目的の1つ。この位置でフリーのMFを作り、ライン間の大関、山市などにパスを入れることが攻撃のアプローチの柱。前線でダイレクトな展開から収めるキャラクターの選手がいない分、どちらかといえば主流はこちら。中盤に降りる選手がライン間に縦パスを通し、前を向いた選手が前線の動き出しを使ってフィニッシュを狙っていく。その動きのかけ合わせである。

 地雷パスもありつつ、大きな方向性として入りは悪くない立ち上がり。川崎は鳥栖のプレスに対してうまく立ち回れていた序盤だった。

守備者が与える脅威が分かれ目に

 鳥栖のビルドアップは深い位置からポジションを取っていく。川崎はごりっと深追いするハイプレス。SHがジャンプする形から広がる鳥栖のCBにプレスをかけていく。

 基本的には蹴らせる形まで持っていくことができればOK。ある程度余裕がある状態で酒井に当てるところまでできれば、問題はないというかつなぐことはできるのだけども、川崎のプレスに屈して雑にリリースをしてしまうこともしばしば。

 鳥栖はおそらくは深い位置から左サイドのユニットで川崎のプレス隊を誘引しながら進んでいく形を作りたかったのだろうが、逆に山市のカットからカウンターを食らう場面も。かといって左右に広げてというアクションはとても少なかった。おそらくは右のユニットだと前進に不安があるのだろう。

 この状況をとてもよく利用していたのは長。ビルドアップ局面における鳥栖の右サイドは比較的捨ててよさそうなので、中央に絞りながらプレッシングに参加。これがとても効いていた。

 川崎と鳥栖のビルドアップの安定感の違いは、守備側のプレスバックの強度に起因していたように思える。川崎は長や持山など前線のプレスバックで鳥栖の中盤に与える時間は限定的だったが、鳥栖はある程度川崎に自陣側への前進を許容した際に酒井の背中に立つ河原をフリーにする機会が多かった。

 勝負をかけたい局面で潰される鳥栖と勝負をかけたい場面でフリーの選手を作ることができる川崎。保持における根幹といえる場所が相手の守備者にどれだけ脅威にさらされているか?これこそ主導権が川崎に流れた要因だろう。

 前半の途中からは鳥栖は川崎に対して少しずつ組み合える手ごたえをつかんだように思えた。まずはプレス回避の局面。左サイドで降りる玄をボールのレシーバーとしてGK経由でロブ性のパスを送れるようになり、川崎のプレスを回避できるように。CHもショートパスから持山の背中を取ろうとするなど、動き出しからギャップを作る意識を見せる。

 もう1つは鳥栖がプレスをかける側になる際のアクション。川崎のサイドに深追いをかけることに成功し、無理矢理ボールを蹴らせるフェーズに。CHへの地雷パスもショートカウンターにつなげていく。

 ただ、鳥栖はアタッキングサードで仕上げるための武器がない。基本的には左WBの楢原に展開する形から完結していきたいのだろうが、プレスバックした川崎を貫ける動きは少なめ。枚数をかけてハーフスペースの裏抜けを重ねることで抜け出そうとするが、川崎の守備は基本的には間に合っていた。

 川崎はやや風向きが変わってもあまり姿勢を変えなかった。潰された後に平然と河原にハードなパスを送るなど、いい意味でも悪い意味でもあまり失敗にとらわれていないように思えた。

 押し込まれる局面は少し増えたが、カウンターを打つことで反撃に出る川崎。しかし、こちらもシャープさは足りず効果的なフィニッシュまではいくことができず。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。

前門の大関、後門の河原

 後半、川崎は立ち上がりから支配力を発揮。一方的に押し下げるところから試合を進めていく。個人的にはファーストプレーで持山がボールを収めて前進したのが大きかったのでは?と思った。

 このロングボールから生まれた場面に代表されるように、後半に完全に川崎のワンサイドゲームとなった要因の1つは大関がとにかく攻撃の組み立て役として前を向くことができたこと。ボールを持ったらとにかく大関への縦パスを川崎は徹底。神出鬼没な大関に対して、鳥栖は簡単に前を向かせる程度のプレッシャーしかかけることができず、ここを攻撃の起点に。

 さらに言えば、後方でフリーとなっていた河原も自由なのは前半と同じ。後方の河原が整えて、前方の大関が仕上げに行く。この2人を全く抑えられなかったのが後半の鳥栖が苦しんだ要因だろう。

 敵陣でのプレーが続く川崎。ここでも細かいフリーランが効いていた。後半に川崎が狙いを定めていたのは鳥栖の左CBの小川の周辺。背後へのポケットランや手前に引き出すような縦パスをつけた後、別の選手が背後を狙うなど複数の選手が違う角度とタイミングで同じスペースを強襲することで穴をあけて活用するという一連がスキームとして成り立っていた。

 即時奪回に動く川崎相手に鳥栖は呼吸をするタイミングを作ることができず、一方的に殴られる格好に。65分に先制点を確保したのは流れ通り川崎。鳥栖がチェックできない後方の支援役となった由井を起点に、小川周辺のスペースから最後は山市が仕上げる。後半の川崎の支配力と狙いどころをきれいに反映したような得点。大関としてはおそらく脇坂が登場する前にリードを勝ち取りたかったはずで、胸をなでおろすようなゴールとなった。

 鳥栖は髙橋を投入し、5-3-2に移行。ツインタワーにすることでロングボールを機能させることがメインのように見えて、実は3センターで相手のハイプレスに対して穴をあけることの方が効果は高かった感じ。ミドルゾーンで浮いた伊澤がミドルで躍動したり、アンカーの櫻井から対角パスが飛んできたりなど少しずつ中盤の組み立てができるように。

 左サイドに入った坂本もリーグではレギュラーの戦力。中央でフリーの選手ができたことでサイドの坂本にスペースがある状態での1on1を作ることができていた。

 川崎はレギュラーセットを続々と投入。ホマーノの投入で一足先にマルシーニョへの一撃必殺のパスを出すなど新しいバリエーションからチャンスを創出する。

 そして、千両役者の脇坂が一発回答。ファークロスでマルシーニョが飛び込むというおなじみの形で試合を決める。鳥栖からすると直近でも見られた長澤周辺のクロス対応で綻びが出るという苦しい展開になった。

 後半は特に鳥栖を一方的に制圧した川崎。年内の九州遠征を全勝で締めて、プライムラウンド進出を決めた。

あとがき

 今季のカップ戦はずっとカテゴリーが下のチームと対戦してきたので、手放しでチームの層が厚くなった!と喜ぶのは少し早いと思うけども、これまではカテゴリーが下の相手でもかなり苦戦していた印象が強いので、同じくリーグではベンチメンバーのスカッドとはいえ、磐田と鳥栖相手に違いを見せられたのはよかったと思う。

 ポジティブなポイントもオフザボールでの動き出し、コース取りとかプレスバックの献身性なのもいいところかなと思う。単純にそれぞれの選手の成長と思える部分だというのが1つ、もう1つはカテゴリーが上がった時に裏切りにくい要素であるのかなと。

 「スピードで千切りました!」とか「フィジカルで制圧しました!」とかだと強度が上がる相手ではおじゃんになりそうではあるが、そういう裏切りにくい要素で上積みが見られるのは個人的には好感触。今までの国内カップ戦とかあるいは百年構想リーグでの手ごたえとは違うというか。友近じゃないけども「いいところを探そう探そうと一生懸命になることない」のがいいと思う。わからない人は「友近 The W」で検索してください。

試合結果

2026.10.28
ヤマザキビスケット ルヴァンカップ
4回戦
サガン鳥栖 0-2 川崎フロンターレ
駅前不動産スタジアム
【得点者】
川崎:65′ 山市秀翔, 86′ マルシーニョ
主審:小林拓矢

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