Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第23節
2023.8.12
川崎フロンターレ(7位/9勝5分8敗/勝ち点32/得点30/失点27)
×
ヴィッセル神戸(1位/13勝5分4敗/勝ち点44/得点42/失点19)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年間で川崎の8勝、神戸の2勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの戦績
直近10戦で川崎の6勝、神戸の2勝、引き分けが2つ。
Head-to-head
- 川崎はリーグの神戸戦において直近7試合負けがない(W4,D3)
- 神戸は引き分け以上で2015年以来初めてのリーグ戦で川崎戦の敗戦がないことになる。
- 等々力でのリーグ戦は川崎が3連勝中。
- 直近5回の等々力での対戦はいずれも両チームが得点を挙げている。
スカッド情報
- ジェジエウは左膝外側半月板損傷により長期離脱中。試合形式のトレーニングには復帰。
- 大島僚太は右下腿三頭筋肉離れにより離脱。
- 車屋紳太郎は天皇杯とバイエルン戦でベンチ外が続く。
- バフェティンビ・ゴミスは来日待ち。
- 酒井高徳は横浜FC戦でベンチ外。
- 山川哲史は右第5中足骨骨折により3ヶ月の離脱。
- 菊池流帆は左膝前十字靭帯断裂により8ヶ月の離脱。
予想スタメン
Match facts
- 負ければ今季3回目の連敗。
- 1回目の連敗も1つ目の負けはG大阪戦だった。
- 直近6試合のリーグ戦の勝利はいずれもクリーンシート。
- リーグ首位との対戦は直近9試合で1敗のみ(W7,D1)
- 現状のトップ6相手の等々力でのリーグ戦は未勝利(D2,L2)
- 今季のリーグ戦で逆転負けがない3つのチームのうちの1つ。
- 前回の神戸戦は2点のリードを追いつかれた。
- 脇坂泰斗はここまでリーグ戦で5得点を決めており、2019年と2022年に並ぶキャリアハイ。
- リーグ戦は今季初めて2試合連続で勝ちがない。
- 3試合連続になれば2022年8月以来1年ぶりのこと。
- 公式戦は5試合連続で失点を喫している。
- 現状で7位以上のチーム相手には今季6戦で1勝のみ(D2,L3)
- 今季ここまで19失点は浦和に次いで少なく、42得点は横浜FMに次いで多い。
- ここまでの公式戦において前半15分に失点がない。
- リーグ戦の直近5得点のうち、4得点は大迫勇也が決めたもの。
予習
第16節 川崎戦
第22節 横浜FC戦
展望
横浜FC戦の敗因は?
リーグで近々に対戦した相手とのプレビューというのはなかなか厄介である。というのも近々の傾向は変わりにくいため、書く内容が似通いやすいからだ。リーグは中断期間を挟んだため、ここで流れや方針が大きく変わる可能性もあるだろう。しかしながら、今回の対戦相手である神戸のように、シーズンがうまく流れているチームにはそうした変化も見られない。
よって、基本的なベースは前回プレビューした時と同じになってくる。
ただ、内容に大きな違いはなくとも成績面では少し停滞感がなくもない。中断あけの横浜FC戦ではあっさりと敗戦。この試合は横浜FCが神戸にボールを持たせていくことで解決を図っていた。そのため、川崎には参考にはならないかもしれない。神戸を倒すやり方の1つとしては有効だったため振り返ってみる。
横浜FCは神戸のバックラインにはボールを持たせてOKというスタンス。佐々木、齊藤といった面々は横浜FCのブロックから出て受けることが多く、相手にとって全く怖いエリアでボールを受けることができない。そのため、ポゼッションは延々とU字で続いていくこととなる。
頼みの大迫は横浜FCのDFが複数人で囲みながら封殺。横浜FCのCHは横パスを制限し、サイドから逆側への素早い展開を抑え込んでいく。中央にボールが入らないように圧縮し、逆サイドへのスライドも間に合うように危険なエリア、人物から優先して潰していく。
自陣に押し込まれた状態からでも横浜FCはカウンターが炸裂させることができていた。ヒアンといったターゲットマンよりも山下や小川といったスピードスターの方が神戸の守備陣には刺さっていた。
終盤の神戸は「押し込んでも崩せない」の前提である「押し込んでも」の部分が崩壊。最後は普通に組み合うことで横浜FCはがっぷり四つで試合を進めていた。川崎のプランにフィットするとは思えないが、神戸はボールを持たされたことで危うさが出たことは心に留めておきたいところである。
握力を高めていく方策は?
もう一つの視点でいうともちろん前回の神戸×川崎から反省点を組み上げることは必要だろう。この試合における失点の仕方は次の試合に向けてケアをしておきたいところである。
前回も述べたが、大迫のところを完璧に抑えるのは難しいだろう。ここで相手に主導権を渡さなければ一番楽なのだが、まぁそういうわけにはいかないと考えるのが自然である。
となれば、抑えたいのは大迫に向かうクロスの出し手である。特に警戒したいのはSHとSBの関係性。汰木、初瀬の左サイドは縦方向のギャップを作りながらの侵入がうまい。反撃のきっかけとなったPKの獲得は初瀬が追い越すアクションによって生まれたものである。
このような味方を追い越す動きと共にボールを引き取るアクションは川崎のバックラインにDFのラインを下げながらボックス内の対応をすることを突きつけてくる。ラインを下げながら大迫や武藤が飛び込むスペースを消し切るアクションをするのは非常に難しい。よって、出し手に積極的にプレッシャーをかける必要がある。家長はプレスバックをサボりにくい状況である。
逆に追いこさずにアーリー気味にクロスをあげる場合は川崎のラインは上下動を伴う揺さぶられ方はしない。初瀬、飯野という両サイドのクロッサーが順足というのも踏まえれば、ファーサイドにゴールに向かう弾道のクロスは上がりにくい。それであればある程度はエリア内でのクロス対応も頑張りたい。大迫と武藤を優先しつつ、挟み込みながらシュートを制限していきたい。
神戸の非保持の部分は横浜FC戦ではあまり見られなかったため、こちらも川崎戦を軸に考える。前回の川崎戦の前半で川崎がスムーズに前進できたのはシミッチが解放されていたという事情が大きい。4-2-3-1での2トップ、大迫と佐々木のところでギャップを作り、シミッチをフリーにする形は引き続き狙っていきたいところとなる。
神戸戦では90分間試合のペースをキープできず、後半は自分たちに流れを持ってくることができなかった。G大阪戦ではダミアン、マルシーニョといった前線の尖った武器にやや傾倒していたところもあったが、これを無理なく組み込めるかどうかは重要なポイントになる。
たとえば、マルシーニョの裏への動きだし。ロングカウンターで一発狙いももちろん有効ではあるが、神戸の守備のベースであるCBが同サイドまで出張しながら、圧縮してくるという形を破るには彼の一瞬のスピードが有用である。
こうした前線の武器が前の試合ではやや孤立していた感があった。マルシーニョの裏抜けを流れの中に組み込むこと。それができれば、トゥーレルをサイドに引っ張り出すことができるため、エリア内でのダミアンにクロスを入れた際のミスマッチも期待できるだろう。
繰り返しになるが、後半戦の川崎の課題は90分間持続可能な形で試合を進めること。いわば、試合の握力を高めることにある。理屈の上では神戸戦で見せた前半の出来に、ダミアンとマルシーニョの掛け合わせによって90分間を稼ぐことはできそうである。が、G大阪戦ではそれができなかった。新加入のゴミスも含めて異なる形の前進の組み合わせで自分たちの時間を増やしていくことは必須になる。
G大阪戦の課題の一つは先に述べたマルシーニョとダミアンを使った前進の機構に巻き込める人を増やすこと。そして、もう一つは彼らがいない時間につなぐことから逃げないこと。G大阪戦の終盤はまるで彼らがいるかのように前線にボールを放り込んでいた。
ダミアン、マルシーニョ、あるいはゴミスの存在が繋いで後方から時間を送ることの免罪符になるのはいいが、いない時にギアチェンジができなくなってしまえば攻め込めなくなるのは当然。押せ押せのはずの残り15分の流れを掴むことができなかった。
途中出場の瀬川のパフォーマンスは一つ指標になる。得点を決めたところもさることながら、際立っていたのは相手の守備の矢印を折るような動きだしを中央でもサイドでもできたこと。G大阪戦のレビューで取り上げた山根のビルドアップもそうだが、こうした動きを11人全員ができるようになることで少しずつ前進の精度は高まっていく。
ダミアン、マルシーニョという軸にきっちり他の戦力を絡めること、徐々にオフザボールの感覚をつかみ出している瀬川や山根にシンクロすること。彼らが他を巻き込むことで90分間を戦い抜く握力を紡ぎ出していきたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)