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「攻撃の雛形の有用性」~2023.12.3 J1 第34節 サガン鳥栖×川崎フロンターレ プレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第34節
2023.12.3
サガン鳥栖(13位/9勝11分13敗/勝ち点38/得点43/失点46)
×
川崎フロンターレ(9位/13勝8分12敗/勝ち点47/得点50/失点45)
@駅前不動産スタジアム

戦績

近年の対戦成績

直近5年間の対戦で鳥栖は1勝、川崎は5勝、引き分けが5つ。

鳥栖ホームでの戦績

直近10戦で鳥栖の2勝、川崎の4勝、引き分けが4つ。

Head-to-head

Head-to-head
  • 川崎が勝てば2014年以来9年ぶりのシーズンダブル。
  • 直近3回の対戦において鳥栖は川崎に得点を挙げることができていない。
  • 直近5回の対戦でアウェイチームは1得点しか挙げていないカード。
  • 鳥栖のホームにおいて川崎は3年連続未勝利を継続中。

スカッド情報

サガン鳥栖
  • 小野裕二は前節負傷により途中交代。
  • 本田風智は左膝半月板断裂で離脱中。
川崎フロンターレ
  • 右下腿三頭筋肉離れで離脱中の大島僚太はランニングをスタート。
  • 佐々木旭は左ハムストリングの肉離れで離脱。
  • 車屋紳太郎は左脛骨骨挫傷で離脱もフルメニューを消化。

予想スタメン

Match facts

サガン鳥栖
  • リーグ戦直近13試合で勝利は1つだけ(D6,L6)
  • 公式戦最後のクリーンシートは6月24日の湘南とのアウェイゲーム。
    • 以降の16試合ではいずれも失点。
  • 直近7試合のリーグ戦では得点も失点も必ず記録している。
  • ビハインドから奪った勝ち点は15。これより多いのは福岡(19)、浦和(20)、横浜FM(20)だけ。
  • 河原創は今季ここまでフルタイム出場している唯一のMF。
    • FPではアレクサンダー・ショルツ、植田直通、中谷進之介の3人が他のフルタイム出場者。
  • 長沼洋一は今季ここまで10得点でチームリーダー。
    • ここ3得点はすべてアウェイで決めたもの。
川崎フロンターレ
  • リーグ戦は直近7試合で1敗のみ(W4,D2)
  • しかしながら、直近2試合の勝てなかったリーグ戦はいずれも日曜日のもの。
  • 直近6年のリーグ最終節で無敗(W5,D1)
  • 鬼木監督政権下でのリーグにおける最低勝ち点、最低順位、最少得点、最多失点の更新はほぼ確実。
  • 脇坂泰斗がゴールを決めればキャリア初のリーグ2桁得点。
  • レアンドロ・ダミアンが2試合連続リーグ戦でゴールを決めれば2021年11月以来2年ぶりのこと。

予習

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展望

サイドと中央が繋がるかどうかが生命線

 リーグにおけるホーム最終節である鹿島戦の快勝、そしてACLのグループステージ突破。今季も残りわずかだが、川崎はシーズン終盤において少しずつ勢いを増しながら天皇杯決勝という今年のフィナーレに向かっている。

 その川崎がリーグの最終節を戦うのは鳥栖。今季のリーグ戦のトリを飾る舞台は3年勝ちがない駅前不動産スタジアムである。

 残留争いに関与しないという意味では今季も安定していた鳥栖。だが、直近のリーグ戦では勝てない試合が嵩んでおり、苦戦していると表現するのが妥当だろう。

 基本的なフォーメーションは4-2-3-1。この形は不動である。直近で苦戦の要因になっているのはバックラインのやりくりだろう。毎年のように引き抜きに合うのでいつも苦しいのは確かだが、今季は若手や新戦力の台頭以上に既存戦力のコンバートが目立っており、例年以上の苦しみが見て取れる。ジエゴがいなくなったLSBには菊地、山﨑の出場停止やソッコの不在など手薄なCBに入るのは福田である。

 こうした本職ではないポジションの選手を起用することで真っ先に不具合が生じるのは撤退守備の強度である。柏戦ではローブロックの4-4-2に移行してもなおDF-MF間にパスを通される機会が目立っていたし、ボックス内での対応も苦しいものがあった。

 よって、相手に持たせて凌ぐという選択肢を選び取るのはなかなか抵抗がある状況である。そのため、ある程度のリスクは承知でアップテンポなプレスを仕掛けてくる。積極的なプレスにはこういう苦しいやりくりという側面もあるだろう。

 ボール保持においてはサイドでの崩しが出口になる。ポゼッション局面ではフルタイム出場を達成間近な河原がアンカーに入り、ここから左右にパスが展開される。非保持においては4-4-2だが、ボール保持においては河原の相棒(手塚、森谷、藤田など)とトップ下がそれぞれサイドにサポートに出る。

 WG、SB、そして中盤からのヘルプとサイドからは枚数をかけた攻撃を行っていく。とは言っても単にクロスを上げるだけでは難しい。ボックス内に明確な高さがあるストライカーは富樫くらいであるからだ。ちなみに小野も競り合えるが、高さで優位に立てるわけではないし、そもそもこの試合の出場が不透明だ。ボックスにかける枚数が少なく、CFにクロスのマークが集中してしまうのは今季の鳥栖の攻撃の苦しい部分である。

 その部分を解消するのはサイドのスピードである。SBを置き去りにする瞬発力と抜け出しからWGがCBを外に釣り出し、インサイドをあけることができれば枚数の少ないクロスは刺さりやすくなる。岩崎と長沼の抜け出しはもちろんのこと、後から出てくるであろう樺山や横山という選手たちも前線にエネルギーを送り込むことができる存在だ。

 特に長沼の好調さは目が引く。スピードだけでなく駆け引きからの裏への抜け出しから対面の選手を置いていくフリーランはもちろんのこと、逆サイドからのクロスのターゲットのランになれているのは素晴らしい。このワイドのタスクを追いながらの2桁ゴールはすごい。

 長沼のプレーはアウトサイドで時間を作り、その流れの中でインサイドでシュートまでを完結させることの重要さを示している。サイドの裏抜け、もしくは逆サイドからのラン。こうした動きでサイドと中央を繋ぐことができれば鳥栖の攻撃はスムーズになる。これを実践できるかどうかが鳥栖がゴールを得るための生命線となるだろう。

天皇杯を視野に入れた武器の拡充を

 鳥栖の守備を壊すという観点で真っ先に思いつくのは高いラインを壊すファストブレイクだろう。ダミアンorゴミス、マルシーニョ、家長にボールをとっとと当てて、ラインを強襲する形を作るのが一番手っ取り早いのは間違いない。

 もちろん、こうした打ち合いに勝算がないとは思わないし、縦に速い展開に持っていく妥当性は十分にある。ただ、この形は逆に相手のサイドにもスペースと攻め入る隙を与えてしまうという難点がある。

 相手の良さを出させないという観点に立てばきっちり押し込む形にトライするのがいいのではないだろうか。とりあえず、ロングボールというプランに関しては全貌が見えてきた感があるので、試合ごとにまだ不安定感がある保持の駆け引きは頑張りたい。ACLでもこの部分では成長が見られたので天皇杯までに磨いていきたいところ。ハイプレスに出てくるのであれば、保持から鳥栖を落ちつかせることが出来るのかは気になるところになる。

 敵陣ではジョホール戦の後半の右サイドの形の再現を狙いたい。大外に相手を広げて、インサイドで抜け出すためのスペースを作る。狭いスペースにきっちりと刺すというのは川崎のアイデンティティかもしれないが、ホルダーが誰であれ広げるアプローチを挟む方が精度は上がるのは当然。そういう意味では大外→横パス→縦パスで抜け出すパターンは作りたいところだ。

 こうした攻撃のひな形作りは誰でもメソッドを共有できるというメリットがある。主力以外の戦力を拡張していくためにはこういった部分の拡充が大きな貢献を果たすだろう。サイドを下げる×ハーフスペースアタックという掛け合わせで鳥栖のCBの可動域を広げてエラーを引き起こしたい。

 個人で期待したいのは瀬古。飛び込みと縦パス、そしてドリブルでのキャリーとシーズン終盤においてパフォーマンスは安定した。リベンジという意味でも次の柏戦ではキーマンになるだろう。鳥栖戦で弾みをつけたい。

 柏戦という枠組みで考えれば鳥栖も同じ4-4-2なのだから使える部分はそれなりにある。FW-MFを広げてアンカーをフリーにするところが機能すれば、シミッチも起用しやすくなる。サイドを変える攻撃は柏には効くだろうし、相性も悪くはない。今季のファイナルに向けた武器の拡充としてもこの最終節を利用したい。

 非保持においては相手の攻撃の手段を削ることが重要。特にサイドでのスピードアップは怖さがある相手だ。登里と長沼のマッチアップは同サイドでも逆サイドでも川崎にとっては耐えどころ。アジリティが持ち味の選手は松村、アリフ・アイマンと抑えてきた登里だが、長沼はここにフリーランと逆サイドからのクロス飛び込みがあるから厄介である。裏への勝負はCBやGKと連携して封じていきたい。

 中盤では河原のケアの優先度が高い。左右にスムーズな配球を許してしまえば、川崎の非保持は後手に回る。柏にも中盤のキーマンとしては高嶺という存在がいる。河原をきっちり抑えることができれば、来週のファイナルにも弾みはつくだろう。FW-MFの連携から中盤のパスの起点を封じたい。

 何はともあれ今年もいよいよ最終節。だが、川崎は最後ではない。次を見据えて怪我なく勢いを持続させるパフォーマンスで2023年のリーグ戦の幕を下ろしたい。

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

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