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「Catch up Premier League」~Match week 17~ 2023.12.15-12.17

目次

ノッティンガム・フォレスト【16位】×トッテナム【5位】

連勝も次節に不安はある

 前節のニューカッスル戦でようやく未勝利を止めたトッテナム。上位勢に対する反撃を回避するためにもここは勢いよく連勝を飾りたいところである。

 ボールを持つ側となったトッテナムはサイドを変えながらのポゼッションでフォレストの3-2ブロックの同サイドへの封殺という守備プランを壊して前進を狙っていく。左に人を集めて、解放された右にボールをつなぐというのがこの日のトッテナムのポゼッションの動線。右サイドではポロが引き取り手となり、左サイドから右サイドへの先導役を務めていた。

 フォレストからすれば3-2の誘導を外されて押し下げられる状況が続く前半。しかしながらトッテナムは右サイドから攻撃の出口がなくて苦戦。外での崩しのリソースはこの日のトッテナムには足りていない印象を受けた。

 フォレストは押し下げられてからはギブス=ホワイトとエランガのロングカウンターから対抗。敵陣でのプレーを少しでも増やして抵抗を見せる。トランジッションでのゴールのルートが見えない盤面ではゆっくりとボールを持つケースもちらほら。30分を境にポゼッションの機会が増えていく。

 トッテナムの課題である右サイドの閉塞感は意外な形で解決。ジョンソンの負傷により、右サイドにクルゼフスキが移ったことでトッテナムは右サイドでの攻撃はそれなりに解決策が見えるように。先制点となるクルゼフスキ→リシャルリソンのホットラインはいかにもクルゼフスキが右サイドに回った意義が集約された場面だった。

 後半は保持でもゆったりとした試合の進行。前半よりはマイルドでどちらが優勢という流れは見えにくかったように思う。どちらかといえば行ける感があったのはフォレストの方だろう。押し込む流れから左右のクロスまで運ぶフェーズは安定しており、前半よりはPA内に人数をかけた攻撃もできていた。

 しかしながら行けると思った矢先にトッテナムが追加点をゲット。プレスからターナーのミスを誘い、ショートカウンターを発動させるとその流れのままゴールを奪いきる。ターナーからしたら悔やんでも悔やみきれないミスだろう。

 一方のトッテナムも完勝ムードに水を差すビスマの退場は大事。おそらくは今季2回目の一発退場に4試合の出場停止が下される見込み。この試合では特に問題にはならなかったが、累積警告での出場停止となったウドジェに加えて次節は苦しい人繰りに逆戻りする一戦になるだろう。フライデーナイトを制したトッテナムだが、頭の痛い結末となった。

ひとこと

 フォレストは早くアウォニイが戻ってくれないとどうにもならない感がある。

試合結果

2023.12.15
プレミアリーグ 第17節
ノッティンガム・フォレスト 0-2 トッテナム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
TOT:45+2′ リシャルリソン, 65′ クルゼフスキ
主審:ジャレット・ジレット

チェルシー【12位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

最低限の結果でまずは連敗ストップ

 マンチェスター・ユナイテッド、エバートンと力なく連敗をきっしているチェルシー。最下位のシェフィールド・ユナイテッドにホームで勝ち点を落とすことになれば、今季最大級の向かい風がポチェッティーノに対して吹くことは間違いないだろう。

 ブレイズはバックラインへのプレッシャーは特になく、延々とチェルシーがボールを持つ立ち上がり。ブレイズが形成する4-5-1のブロックの前を左右にボールを動かしながら敵陣へと侵攻していく。

 敵陣に入っていく形はバックラインからのキャリーが効いている。CBの持ち上がり、特にバディアシルがボールを運んで刺す工程で効く動きを見せていた。

 その一方でアタッキングサードでの攻略は苦しいものがあった。押し込んだ後の個々の選手にはあまりつながりはなく、相手を動かすための共通のデザインのようなものを読み取るのは難しかった。ブレイズは後ろにきっちりと人数を揃えてはいるので、さすがに単騎ですべてを打ち破るのは難しい。敵陣にボールを運ぶところは安定していたが、ブロック守備を壊すところには課題があった前半だったといえるだろう。

 ブレイズは押し込まれる展開の中で抵抗を続ける展開に。アーチャーが孤軍奮闘気味にカウンターからミドルを放つくらいしか反撃の手段がないのはいつものことである。これもラインが下がりっぱなしの影響だ。

 それでも機を見たハイプレスの流れから少しずつチェルシーに押し込まれる時間を減らすアプローチを見せていく。ただし、アタッキングサードでのアイデアの部分はチェルシー以上に厳しいものがあるのが今のブレイズ。両チーム合わせて枠内シュートは1本というクリティカルなダメージがないまま試合は進んでいく。

 後半もボールを持って動かしていくチェルシー。サイドをスムーズに変えてパルマーが右サイドからの仕掛けを見せるなど、少しずつ前半より奥の位置に入り込めるようになっていく。

 そうした中でチェルシーは先制。スターリングとパルマーの右サイドの攻略から先制点をゲット。刺すようなパスは精度とスピードを伴ったものであり、ブレイズのバックスは反応しきれなかった。

 追いかける格好になったブレイズだが、二の矢がなかなか見つからないまま。反撃の手段はなくむしろ押し込まれる時間が増えていく。パルマー、スターリングを軸にチェルシーは攻撃を続けると、ジャクソンが追加点。ピンボールのように跳ねたボールの恩恵を受ける形でシュートを決めてみせた。

 最低限の勝利で何とか悪い流れを断ち切ったチェルシー。トップハーフに復帰し、面目躍如の連敗ストップとなった。

ひとこと

 勝ったのはもちろんいいのだが、少しパワーで押し切る系統に回帰している感じは心配。

試合結果

2023.12.16
プレミアリーグ 第17節
チェルシー 2-0 シェフィールド・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:54′ パルマー, 61′ ジャクソン
主審:アンディ・マドレー

マンチェスター・シティ【4位】×クリスタル・パレス【15位】

いつもの展開に待ったをかけたパレス

 「マンチェスター・シティとクリスタル・パレスの一戦」であれば、プレミアファンであれば簡単に展開は予測できるだろう。シティがボールを持ち、ひたすらにパレスが跳ね返す形を想像するのは容易だ。パレスが5バックを組んでいるのも特に驚きではないだろう。

 ブロック攻略はボールを持てるCBから。ディアスなどのフリーのCBが相手を引き付けてパレスの中盤を動かしてそこから勝負を仕掛けていく。主に動いていたのはパレスの左サイド側。ここを動かして、ベルナルドがサイドから1on1を仕掛けていく形でシティは敵陣に迫る。

 中央の部分でアクセントになっていたのはアルバレス。降りていく相手にはきっちりとついていくパレスの守備陣の修正を利用しつつ、時にはフリーのCBから裏へのパスを引き出すなどのアクセントをつけて勝負を仕掛けていく。

 ブロックの外からはディアスのミドルなどのテイストの違う攻め方も。大外レーンとブロックの外側、そして裏を狙う形などバリエーションが豊かな攻め筋でパレスを追い込んでいく。

 決め手になったのはライン間。今季はライン間の住人になっているフォーデンから裏へのパスを出して、グリーリッシュのシュートチャンスを創出し先制点をゲット。前半のうちにゴールをこじ開けて見せる。

 パレスはオリーズ→マテタのカウンターでエデルソンから危ういプレーを引き出すことに成功したが、これは警告止まり。このワンチャンス以外は押し込む機会もカウンターの威力も物足りずに苦しい前半となった。

 前半の終盤はややパレスがボールを持っていたこともあり、後半の頭にもう一度持ち直す。攻め続けたシティはリコ・ルイスが2点目をゲット。その後もシティは安全に時計を進める時間が続き、試合は完全に決まったかと思われた。

 しかしながら一瞬のスキを突いたパレスが反撃ののろしを上げることに成功。シティの右サイドの守備ユニットの一瞬のスキを突いたシュラップの裏抜けからチャンスを得ると、このきっかけをマテタが逃さずに仕留める。

 このゴールでハイプレスを解禁するパレス。ラストスパートをかけていくが、なかなかシティは簡単に尻尾を見せてくれない。この日のパレスの最終形態はエゼを投入しての4バック化。玉砕覚悟で臨んだパレスの覚悟は後半ラストプレーで報われることに。

 ベルナルドからボールを奪い、パス交換からボックス内への突撃でフォーデンのPKを誘う大仕事を果たしたのはマテタ。絶好の同点のチャンスをオリーズが仕留めて試合はタイスコアでフィニッシュ。いつものシティの押し込む展開に待ったをかけたパレスがエティハドからのポイント持ち帰りに成功した。

ひとこと

 2点差から勝ち点を落とすシティ、めっちゃ珍しい。

試合結果

2023.12.16
プレミアリーグ 第17節
マンチェスター・シティ 2-2 クリスタル・パレス
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:24‘ グリーリッシュ, 54’ ルイス
CRY:76‘ マテタ, 90+5’(PK) オリーズ
主審:ポール・ティアニー

ニューカッスル【7位】×フラム【10位】

5得点の連鎖は退場者でストップ

 まさかの2試合連続5得点というド派手な得点力を見せたフラム。今節はセント・ジェームズ・パークというプレミア屈指の難所に乗り込んでの一戦となる。

 2トップが縦関係を形成するフラムに対して、ニューカッスルは積極的に縦にパスを刺すような立ち上がりに。プレッシングに関してはニューカッスルの方が強気で時にはバックラインへのプレスを強めながら、リトリートでのブロック守備を絡めることでプレスのラインの高さを使い分けていた。

 ブロック守備に対する崩しあいになるかと思いきや、先に問題が発生したのはニューカッスル。シェアの負傷によりクラフトが登場。バックラインはバーンとラッセルズというオールドファッションなコンビが組むこととなった。

 そして、次のトラブルを抱えたのはフラム。アクロバティックなボールへの勢いのあるアプローチで一発退場。フラムは前半のうちに10人でのプレーを余儀なくされることに。

 10人の相手との勝負となったニューカッスル。試合はフラムを押し込むニューカッスルという構図でここから進むことになる。アクセントになったのは左のSBのリヴラメント。今季冴えているカットインでのドリブルで相手を引き付けながら逆サイドへの展開で手薄なサイドを作りだす。

 しかし、フラムもサイドの封鎖は間に合っている様子。ラインは下がってしまったものの、粘り強い守備から簡単にニューカッスルに得点のチャンスを与えない。ロングカウンターにおいては直近で好調なロビンソンのポジトラでなんとか押し返そうとするが、大きなチャンスを作るには至らない。

 なかなか得点が生まれないニューカッスルにさらなるトラブルが発生。次はジョエリントンが負傷交代でピッチを後にすることに。押し込むフェーズが続き、裏を取るクロスで相手のPA内の陣形を動かすニューカッスル。だが、点は取れない、怪我人が続くという何とも嫌な雰囲気で前半をスコアレスで折り返すこととなった。

 後半もニューカッスルが押し込み、ハーフスペース裏をフラムが埋め続けるという前半と陸続きの展開に。押し込むフェーズにおいてニューカッスルの解決策になったのはリヴラメントとギマランイス。前者のカットインを引き取った後者が狭いブロックを打開すると、引き取ったマイリーがゴール!ブロック守備をついにこじ開けることに成功する。

 さらに2点目は左から右に一つずつ相手を引き寄せてのパスワークを見せてのゴール。最後に余ったアルミロンが仕留めて試合を完全に決める。

 最後はセットプレーからバーンが仕留めて勝負あり。5得点で連勝を重ねたフラムも長時間の10人でのプレーには耐えられず、連勝はここでストップすることとなった。

ひとこと

 今のフラムががっぷり四つでどれだけやれるのかが楽しみだったので、率直に退場は残念。

試合結果

2023.12.16
プレミアリーグ 第17節
ニューカッスル 3-0 フラム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:57′ マイリー, 64′ アルミロン, 82′ バーン
主審:サム・バロット

バーンリー【19位】×エバートン【17位】

ショーン・ダイチ・ダービーはショーン・ダイチが勝利

 かつて、バーンリーの指揮官として一時代を気づいたショーン・ダイチがターフ・ムーアに帰還。かつて自信がオールドファッションなスタイルで染め上げたチームはヴァンサン・コンパニによって異なる色をまとっている。差し詰めこの一戦はショーン・ダイチ・ダービーといったところだろう。

 あまりメンバーをいじらないイメージであるダイチだが、この試合では珍しく後方を重たくする5-4-1を選択。後ろの枚数を固めて、バーンリーにボールを持たせるスタートとなった。

 ポゼッション側に回ったバーンリーだが、さすがにこれだけ後ろに重たいエバートンを引き出すのは難儀。前に枚数をかけても潰されてしまい、思うようにパスをつなぐことができない。

 どっしりと後ろで構えるエバートンだが、ボールを持つ側に回ると意外とつなぎながら前に向かる姿勢を見せる。いったんボールを持つと押し込んでいくエバートン。バーンリーはボールを奪い返すことができず、立ち上がりとは反対に押し込まれていく。

 エバートンの狙いはサイドからのクロス。キャルバート=ルーウィンめがけた空中戦に対抗するのはバーンリーにとっては非常にハード。1本目を何とかしのぎ、今日もトラフォードのファインセーブ祭りが開かれるかと思いきや、次のセットプレーでのチャンスをオナナが仕留めて先行する。

 先行されても全く押し返すことができないバーンリー。ポゼッションからのきっかけをつかむことができない。

 そんなバーンリーをよそにエバートンはさらに追加点。ターコウスキ、キーンとCB同士でボールをつないでボックス内に侵入すると、そのままこれを決めてリードを2点に広げる。

 後半もバーンリーがボールを持ちながらの勝負を仕掛けるが、エバートンの5バックは動じず。悠然と構えたままバーンリーのポゼッションを受け止める。

 バーンリーは大外からラーセンが動き出しのアクションを見せるなど、少しずつ工夫が見えていたが、インサイドに枚数をかけて受け止められてしまっているので、一発でシュートまで持ち込むことは難しい。横断してオドベールまで持ち込むことができればエバートンのバックスに望まない後退を強いることができていたが、そうした機会は稀だった。

 エバートンは奪ったら縦への鋭い攻めからの直線的な動きでカウンターを狙う。よりクリティカルにゴールに迫れていたのはエバートンの方だったといえるだろう。

 あれこれ工夫をしたバーンリーだが、エバートンの守備ブロックの動揺を誘うことは最後までできず。ダービーはショーン・ダイチが率いるエバートンが完勝で幕を閉じた。

ひとこと

 エバートン、上位互換だったな感。

試合結果

2023.12.16
プレミアリーグ 第17節
バーンリー 0-2 エバートン
ターフ・ムーア
【得点者】
EVE:19’ オナナ, 25‘ キーン
主審:アンソニー・テイラー

アーセナル【2位】×ブライトン【8位】

優位を握り続けたホームチームの完勝

 レビューはこちら。

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 アストンビラに敗れて首位を明け渡したアーセナル。ブライトンは強敵とは言え、主力を投入したELから中2日でアウェイに乗り込んでくるという行程を考えれば確実に勝利を挙げたいところだろう。

 バックラインから強気のプレスを仕掛けたのはアーセナル。高い位置からボールを奪いとりに行く。ブライトンはギルモアの左サイドに落ちるアクションなどからこちらのサイド側にアーセナルのプレス隊を引き付けていく。ララーナが中盤の底の高さまで落ちてくるのもその一環だろう。

 本来であればこのララーナを軸にパスワークからの脱出を試みたいブライトンだが、アーセナルはライスがここを徹底的に潰しボールを前に進ませない。前日まで体調不良で出場が危ぶまれていたというのがうそのようなパフォーマンスで、ハヴァーツと共にショートパスを阻害するプレス隊として絶大な存在感を示す。

 ショートカウンターの動線があるアーセナルは右サイドを軸に攻撃を構築。サカへのダブルチームではなく、一人ずつに一人ずつがマークに行くブライトンの基本スタイルはサカからすればやりやすかったことだろう。

 逆サイドでもフェルトマンの負傷により、アーセナルはマルティネッリが優位をとれるように。左右から自在にボールが上がってくるアーセナルに対して、ブライトンはファン・ヘッケとダンクの強力なCB陣が最後のところをやらせない頼もしさを見せる。

 迎えた後半、グロスがビルドアップに参加せずに前方にとどまることでブライトンはハヴァーツのハイプレスへの参加を抑制する。しかし、ビルドアップから前進がスムーズに進んでいたアーセナルはセットプレーから先制。ニアへのファン・ヘッケのタッチはファーで待ち構えていたジェズスへの絶妙なフリックとなってしまった。

 この先制点でハイプレスに打って出なくてはいけなくなったブライトン。これによりブライトンのCBコンビは幅広い範囲を守ることを強いられることに。こうなるとカウンターの局面ではアーセナルのアタッカーが優位。右サイドのヒンシェルウッドの裏からガンガン選手を裏抜けさせると、追加タイム直前にハヴァーツが試合を決める2点目を仕留めて勝負あり。

 ブライトンも終盤の三笘とジョアン・ペドロの左サイドは非常に強力だったが、グロスが同点ゴールのチャンスを仕留められなかったことが尾を引いた。逆に言えばその部分しかブライトンが勝ち点を取る筋は見えず、90分間アーセナルに苦しめられ続けた一戦だったといえるだろう。

ひとこと

 必要なら強度を提示できるアーセナルは頼もしい。

試合結果

2023.12.17
プレミアリーグ 第17節
アーセナル 2-0 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:53‘ ジェズス, 87’ ハヴァーツ
主審:ティム・ロビンソン

ブレントフォード【11位】×アストンビラ【3位】

破る側に回った要塞

たアストンビラ。そんな彼らの今節は要塞に乗り込む側に回る一戦。プレミアにおける難所の1つであるブレントフォードのホームスタジアムに挑むことになる。

 互いにフォーメーションは3-5-2。機を見たハイプレスで鋭さを見せる形でそれぞれのプレス隊がバックラインに襲い掛かるスタートとなった。

 よりプレスに力を入れていたのはブレントフォードの方だろう。7分の鋭いカウンターはゴドスのボール奪取からジャネルト、ルイス-ポッターまでの流れるようなパスワーク。マルティネスの落ち着きを前に屈することとなったが、一連のプレーの流麗さはいい意味でブレントフォードっぽくはなかった。

 しかしながら、10分もすればアストンビラはブレントフォードのハイプレスを見切りだすようになっていく。GKを噛ませて2CBが広がりブレントフォードの2トップを横に広げることでプレッシャーを分散。バックラインを押し下げていく。

 これでプレスをかけることは難しくなったブレントフォード。ブロックで構えるようになった相手に対して、アストンビラはバックラインからの裏狙いで攻勢に出る。見事な抜け出しを見せていたのは久しぶりの先発となったラムジーである。

 ハイプレス合戦でも後手を踏んだ感があるブレントフォード。背後を狙ってもそこは織り込み済みという感じでアストンビラに対応される場面が続くことになる。

 しかしながら、劣勢でもブレントフォードはセットプレーから先制。セットプレーから跳ね帰ったボールを抜け目なくルイス-ポッターが押し込んで先行する。

 後半はファストブレイクにシフトしたブレントフォード。アストンビラがブレントフォードのブロックを崩す流れになる。堅さを見せるブレントフォードは時にはボールを持ちながら順調に時計の針を進めていく。

 しかしながら、ブレントフォードに予想外のアクシデントが発生。ベン・ミーの退場により10人に追い込まれることとなる。

 5-3-1にシフトしつつ押し込まれることを許容せざるを得なかったブレントフォード。アストンビラは前線に枚数をかけながらガンガンサイドから切り崩しにかかる。同点ゴールが生まれたのはミーの退場から6分後のこと。右の大外のベイリーから逆サイドのモレノまでボールを届けて叩き込むことに成功する。

 一方的に押し込むアストンビラが勝ち越しゴールを奪ったのは終盤のこと。セットプレーからワトキンスが仕留めてついにこの試合はじめてのリードを奪う。

 それ以降は小競り合いが中心になったこの試合。モペイとマルティネスを軸に小競り合いが盛り上がり続ける。マルティネスが因縁を吹っ掛けた結果、カマラが退場することになったことは非常に余計である。難所攻略には成功したビラだが中盤の大黒柱不在で年末年始に挑むこととなった。

ひとこと

 モペイはモペイだし、エミマルはエミマル。

試合結果

2023.12.17
プレミアリーグ 第17節
ブレントフォード 1-2 アストンビラ
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:45‘ ルイス-ポッター
AVL:77’ モレノ, 85‘ ワトキンス
主審:デビッド・クート

ウェストハム【9位】×ウォルバーハンプトン【13位】

珍しいハイプレスで初手を奪っての完勝

 共にバックラインには落ち着いてボールを持たせるイメージのある両チーム。だが、この試合ではウェストハムがウルブスのバックラインに強気でプレスに出ていく立ち上がりとなった。

 ボールを高い位置で奪うと、左右のクロスから勝負をかけていくウェストハム。ウルブスは保持でも非保持でもリズムをつかむことができず。高い位置からのプレスのきっかけもなく、アタッキングサードでの仕掛けも単調。ウェストハムに対して後手を踏むスタートで苦戦する。

 ウェストハムが一枚上手だったのは保持とハイプレスの局面だけではない。この日の先制点はウルブスのセットプレー由来のロングカウンター。パケタのプレス回避から発動したクドゥスのカウンターは非常に美しいもの。華麗に先制点をもぎ取って見せる。

 先制されたことでボールを持つ機会が増えるウルブス。しかしながら保持での単調なリズムは後半も変わらず。ボールを持つ時間は増えていくがなかなか打開のきっかけを見つけることができない。

 強引な縦への仕掛けはむしろウェストハムのカウンターチャンス。彼らの追加点はウルブスの縦パスをズマがカットしたところから。パケタ→クドゥスという流れは先制点と全く一緒。スムーズなカウンターからウェストハムは前半のうちにリードを広げる。

 その後も強引に突っ込んでは威力の高いカウンターの反撃からピンチを迎えるウルブス。前半はウェストハムに面白いように手玉に取られ続けたままハーフタイムに突入する。

 後半は前半よりもプレッシングが落ち着いた内容に終始。保持側が攻略を促される内容になっていく。展開としては一方的にウルブスがボールを持っていた前半の終盤に比べて、両チームがフラットにボールを持つ機会を得ることとなった。

 そのため、ウルブスは前半とは異なる縦に速い攻撃からのチャンスメイクも見られるように。左サイドで裏を取ったベルガルドから逆サイドのセメドまできっちり繋ぎきってのカウンターは見事。もっとも、最後にシュートを放ったサラビアはオフサイドだったのだけども。

 押し込み続ける流れが続いたところでまたしても牙をむいたのはウェストハムのカウンター。ボールを奪ったところからスムーズに縦につけるとゴールを決めたのはボーウェン。試合を完全に決める一撃を仕留めたウェストハムは後半もウルブスに反撃の余地を与えず。序盤から試合を完全に制圧しての勝利となった。

ひとこと

 初手のプレスからずっと展開を決めていたのはウェストハムだった。

試合結果

2023.12.17
プレミアリーグ 第17節
ウェストハム 3-0 ウォルバーハンプトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:23‘ 32’ クドゥス, 74‘ ボーウェン
主審:クリス・カバナフ

リバプール【1位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】

主将不在のユナイテッドがアンフィールドでの連勝を止める

 ホームでボーンマスに完敗し、キャプテンを累積警告で失ったマンチェスター・ユナイテッド。誇り高きナショナル・ダービーではあるが、この状況で今季ホームチームが全勝しているアンフィールドに乗り込むのはなかなかに厳しいものがある。

 立ち上がりはその勢いの差を象徴するかのようなスタート。右サイドを中心に立ち上がりからボックス内にリバプールがガンガン入っていく展開はちょうど前の時間帯で行われていたアーセナル×ブライトンと全く同じものだった。

 サラーの突破もアレクサンダー=アーノルドのクロスも止める術がなかったユナイテッド。サイドに流れるアムラバトのコンディションもすこぶる悪そうでなかなか助太刀にはならない。ボックス内でのプレーも不安定であり、いつ失点してもおかしくない立ち上がりだった。

 アーセナル×ブライトンと異なったのは押し込まれる側だったユナイテッドもそれなりに前進のルートを見いだせたことだ。リバプールの中盤のプレスはやや間延びしており、前を向く時間が与えられたことである。

 だがこの状況をユナイテッドはうまく活かせない。疲れの見えるガルナチョはアレクサンダー=アーノルドを置き去りに出来ず、逆サイドのアントニーは相手を押し下げる以上のことはできず味方との連携も不十分。さらには時間の経過と共に中盤でマクトミネイがボール扱いにまごつくようになり、そもそも前線へのボールの供給が不安定になる。

 ロストしてトランジッションの機会が増えると、ユナイテッドはCHの不安定さが浮き彫りに。ポジトラで躍動するディアスとは対照的にマイヌーはタックルが遅れて警告を受け、アムラバトは簡単に相手とすれ違ってはピンチを招く。

 それでもユナイテッドが助かったのはリバプールがユナイテッドと共にトーンダウンしたこと。サイドでの崩しは手数をかけずにシンプルに上げるようになった分、ボックス内での対応は安定。サラーとアーノルドが浮いていることで逆に工夫をさぼるようになり、相手を動かせないままアバウトな攻撃に終始することとなる。

 後半も同じ流れが続く両チーム。サイド攻撃は右を中心に抜け出すアクションを作り、前半よりもフィーリングがよさそうなリバプールの立ち上がりとなった。ユナイテッドもマイヌーからビッグチャンスを迎えるが、これを仕留めることができずに試合はタイスコアに。

 優勢に試合を進めるかと思われたリバプールだが、選手の入れ替えでサイドの崩しの質はリセットがかかった感。外に起点が作れなくなったリバプール。またしてももっさりした前半の終盤の展開に突入することとなった。オープンになった展開はユナイテッドが右サイドからカウンターを放つと、その倍くらいの威力のカウンターがリバプールから飛んでくるという間延びした展開に。

 30本を超えるシュートを放ちながら最後までゴールを破ることができなかったリバプール。ユナイテッドは満身創痍ながらも今季初めてアンフィールドから勝ち点を持ち帰る大仕事をやってのけた。

ひとこと

 リバプールは流れの中での攻撃が冴えない時間帯があったのは事実ではあるが、セットプレーであれだけたくさんの機会をそれもほとんどが先に触る格好になっていたのに仕留められないのは不思議。単にシュート精度の部分の問題も無視できないドローだなと思った。

試合結果

2023.12.17
プレミアリーグ 第17節
リバプール 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
アンフィールド
主審:マイケル・オリバー

今節のベストイレブン

ボーンマス【13位】×ルートン・タウン【18位】

地獄からの生還に成功したボーンマス

 トム・ロッキャーの心肺停止が試合中に発生し、延期されていたこの試合。当のロッキャーがスタンドでリスケジュールされたこの試合を見守り、60分にファンが彼に拍手を送ることができたということはとても幸運なことである。

 試合はルートンがハイプレスに出ていくところからスタート。ボーンマスはこのハイプレスを乗り越えて前進できるかどうかがまずは試合のポイントとなる。サイドに広がるCBからキャリーを狙うなど、ボーンマスは後ろで横幅を使いながらルートンのプレスの矢印を分散させる。

 一方のルートンはボールを奪い返したら即座に縦に進んでいく。特に右サイドからオグベネが運び、カボレが追い越している形でのサイドアタックは有効。ボーンマスの左サイドの守備ブロックは率直に言えば怠慢。戻ることはきっちりするのだけども、ホルダーへの距離が遠くマークになっていない。クラークを絡めた3枚でのサイドアタックに雑に対応した結果、チョンへのクロスからの失点を許すことになってしまう。

 このサイド対応の緩慢さは失点以降も持続。特にこのボーンマスの左サイド側は酷く、戻っては寄せているフリをしているだけの状況は続いてしまう。その状況は右サイドにも伝染。ダウティーがワンツーでスミスを振り切ると、オグベネがネットを揺らし2点目。さらには再び左サイドからのキャリーであっさりと壊されてしまい、バークリーのゴールでハーフタイムまでに3点のリードを手にする。

 ボーンマスはソランケがポストから根性を見せつつ、セメンヨとシニステラの開放から反撃を狙う。形自体は悪くはなかったのだけども、いかんせん緩慢な守備が流れを切ってしまうのが痛い。

 それでも後半早々にソランケが根性からの反転でルートンのゴールをこじ開けることに成功。マッチアップした橋岡にとってはプレミアの門番に洗礼を浴びることとなってしまった。

 このゴールで一気に反撃体制が整ったボーンマス。左右からのクロス攻勢とセットプレーでの優位でルートンのゴールを脅かし続ける。62分のセットプレーからのザバルニーのゴールがGLTにより認められると、2分後にはまたも橋岡に試練を与えることとなったセメンヨが1on1を制して試合を振り出しに戻す。

 一方的な押し込みで勢いに乗ったボーンマス。前半の守備ブロックの緩慢さをつくための押し返しができない状態にルートンを追い込んでいく。橋岡を下げて左サイドの手当てをしたルートンだったが、セメンヨの勢いを止めることはできず。試合を決める83分の同点弾も彼によるものだった。

 すでにルートンに反撃に出る力は残っておらず、以降もむしろボーンマスが追加点を奪う可能性が高い状態で推移。3点差をひっくり返す大逆転勝利で地獄からの生還を果たした。

ひとこと

 橋岡にとってはこれ以上ない試練の内容。チームとしても重たい逆転負けである。

試合結果

2024.3.13
プレミアリーグ 第17節
ボーンマス 4-3 ルートン・タウン
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:50′ ソランケ, 62′ ザバルニー, 64′ 83′ セメンヨ
LUT:9′ チョン, 31′ オグベネ, 45+1′ バークリー
主審:サム・アリソン

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