Fixture
明治安田 J1リーグ 第9節
2024.4.20
川崎フロンターレ(16位/2勝1分5敗/勝ち点7/得点10/失点11)
×
東京ヴェルディ(15位/1勝5分2敗/勝ち点8/得点12/失点13)
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で川崎は6勝、東京Vの1勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの戦績
過去8戦で川崎の3勝、東京Vの2勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
- 直近の対戦は2022年の天皇杯3回戦。佐藤凌我の得点で東京Vが勝利している。
- しかしながら、それ以前の12回の対戦では川崎は東京Vに無敗(W7,D5)。
- 直近3回の対戦はいずれも勝利したチームがクリーンシートで勝利。
- 過去3回の川崎のホームでの東京V戦では東京Vが勝利を収めたことはないが、川崎も複数得点を挙げたケースがない。
スカッド情報
- 宮城天、車屋紳太郎は負傷離脱中。
- 高井幸大は代表活動で不在。
- ベンチ外が続いていたファン・ウェルメスケルケン・際は完全合流。
- バフェティンビ・ゴミス、大島僚太はトレーニングマッチに出場。
- 三浦颯太、丸山祐市、ジェジエウは負傷のため欠場。
- 山田楓喜は代表活動で不在。
- 谷口栄斗は前節のFC東京戦で途中交代。
予想スタメン
Match facts
- 直近3試合のリーグ戦で無得点。
- ここ7試合のリーグ戦で1勝のみでうち5試合は敗戦している。
- 今季敗れたリーグ戦は全て1点差での負け。
- 直近10試合の昇格組とのリーグ戦では6敗(W2,D2)
- 今季の2試合はいずれもホームで敗戦している。
- エリソンは加入後4試合連続でゴールを決めた後、4試合連続ノーゴール中。
- 今季勝利した2試合のリーグ戦はいずれも脇坂泰斗が先制ゴールを決めている。
- 公式戦直近6試合で負けがない(W2,D4)。
- ここまでのリーグ戦では全試合で得点と失点をいずれも記録している。
- 得点も失点もいずれも1か2のみ。
- リーグ12得点はボトムハーフでは浦和と並んで最多。
- これより多いのは13得点のFC東京、広島、神戸のみ。
- ただし、13失点を喫しておりこれより多いのは湘南、札幌、鳥栖の16失点のみ。
- 76分以降の失点は5で全体の失点の38%。ただし得点も30%と多い時間帯。
- 城福監督は直近3試合の川崎戦で負けがない(W1,D2)。
- 今季PKを3つ献上しており、リーグ単独で最多。
予習
第6節 湘南戦
第7節 柏戦
第8節 FC東京戦
展望
ロングボール機能の要件
3試合連続無得点による未勝利と苦しい戦いが続く川崎。このタイミングで迎えるのは今季からっきし苦手な昇格組との一戦。東京Vとの試合は9節目にして今年最後のホームでの昇格組との対戦となる。
東京Vは得点も失点も多いチームなのだが、毎試合の得失点の分布は小さいという異質なチーム。毎節得点も失点もコンスタントに記録した結果、どちらも多くなりましたというスタッツとなっている。
基本的なフォーメーションは4-4-2。試合の終盤も含めてこの形から大きく変更することはまずない。各ポジションに入れる選手のキャラクターで攻撃や守備の色の濃淡を調整しているイメージである。
保持時にはポジションを多少動かしていく。CB2枚は大きく開きながらGKのマテウスをビルドアップに参加させる。枚数の調整役はRSBの宮原とCHの森田。この2人が列を降りながらバランスを調整する。特に相手が2トップのプレス隊の時はFPが誰かしら降りるアクションを見せる。
降りる役割は試合ごとに割と固定気味であり、ビルドアップの陣形の流動性は比較的低い。宮原なら宮原、森田なら森田が3人目の調整役として指名されるパターンが多い。
攻撃の出口になるのはロングボールである。2トップの染野と木村を目掛けた長いボールや縦パスから攻撃は展開されていく。2トップはそれぞれでボールを受けるパターンに異なる印象を受ける。縦横無尽に動きながらあらゆるところで顔を出す染野と前線に張る形で最終ラインに体を当てながらボールを受けたがる木村とそれぞれの役割をこなしている。どちらも共通しているのはSBの裏をとる外に流れる動き出しである。
出口になるのがCFへの放り込みであるならば、低い位置でボールを動かす必要はあまりないようにも思うかもしれない。だけども、ロングボールの機能する要件を考えると自陣でのボールを動かすアクションの必要性が見えてくる。
染野にしても木村にしても中央でがっちりと踏ん張る形でロングボールを収める力はない。J1のDFが相手だと競り合いに負けてしまったり、50:50になって味方を押し上げる時間を作ることが難しかったりする。
よって、相手のプレス隊をある程度自陣側に引き寄せて前線の負荷を軽減する必要がある。少なくとも相手のMFとDFに挟まれる形にならないようにロングボールを蹴ることができれば収まる確率が上がる。またはボディコンタクトがないようにSBの背後に走らせてもいい。
中盤にしてもSBにしてもそのためには自陣に引き寄せたい。そのため自陣でのボール回しの必要性が生まれるのである。
東京Vのロングボールの失敗パターンはロングボールを収めた選手が自ら前を強引に向こうとするケースだ。試合のテンポが早かったり、後方のボール回しが甘かったりすると、とりあえず預けてFWが前を向こうとすることが多い。単純にこうしたプレーは成功率が低い。収めたタイミングで落とす先を作れているかどうかは単純にロングボールを放たれた時の位置関係で作られている感がある。
ロングボールに関しては正直FWが行ってこい!の設計になっている場合もあるため、一概にFWの責任であるとはいえないが、J1水準で考えると無理が効くタイプではないのは確か。ロングボールのロードマップを敷くことができるかどうかが東京Vの攻撃の機能性に直結すると言えるだろう。
守備の強度は試合や展開によって使い分けている印象だ。2トップはミラーフォーメーションだと中盤を監視するために交互にCBにプレスに出ていき、湘南のように3センターのチームだと中盤が前にスライドしてプレスのヘルプに出ていくこともあった。若干逆じゃないのか!と言いたくなるが、実際のところはそうである。
マンツーのスイッチが入った時は後方を同数で受けることも厭わない。中盤に降りていった選手を谷口が潰しにくるアクションも東京ダービーでは見られた。ただし、当の谷口は負傷で不在のため、この辺りのバランスは人員の変化により変わる可能性はある。
おそらくはボックス内での守備の時間が長くなるというのが序盤戦の学びなのだろう。できるだけミドルゾーンにラインの高さをキープしながら、相手を自陣から遠ざけたい意識は見て取れる。後方は激しいコンタクトもためらわないハードさがあるので、ボックス内に入ってしまうとPKのリスクがあるというのも少し関係しているかもしれない。
前線不遇の土壌の解消を狙う
東京Vの弱みはやはり強度面だろう。試合のテンポが上がった時にはあまり落ち着かせるための手段がなく、かつ自陣でのボール保持も安定しなくなる。相手のプレスの穴をつきながらロジック優先で前進していくタイプでもないので、川崎としては町田やC大阪に揃って壊された4-2-3-1の切れ目(下図)はあまり突かれないかもしれない。
試合のテンポが上がればコンパクトな守備を維持するのは難しくなるので中盤は間延びする。そして一度押し下げられるとなかなか陣地を回復する手段を整えるのがハード。かつ強引に2トップにボールを当てるため、ここでのロストから一気にカウンターを喰らうというケースも少なくない。
ここ数試合の川崎は高い位置からのプレスの手綱を締めることはできているので、攻撃面で不調な脇坂を外すという荒療治がない限りはプレスからリズムを作れる公算は多少はある。サイドに追い込み、中央への折り返しや斜めのFWへのボールをつけざるを得ないところからのカウンターの形はアタッキングサードでの攻略の精度に苦しんでいる川崎にとっては絶対に狙いたい部分である。
逆にバックラインに余裕を与えて、前線へのロングボールから先が繋がるようになってしまうと旗色が悪くなる。ここまで無得点の試合がないことからも分かる通り、90分間で全く彼らがリズムを作れない!という試合は少ない。例えば、FC東京戦で見られたような、染野と見木のレーン交換からのチャンスメイクは川崎の最も苦手な部類の対応だ。山田楓喜という飛び道具は失われてはいるが、彼らにはそれを差し引いても強みがある。
見ていて面倒だなと思うのは諦めの悪さである。前線へのロングボールもそうなのだけども、多少旗色が悪くても何度でも続ける根気の良さがある。もちろん、それゆえのミスからピンチを迎える場面はあるのだけども、成功の確率が低くても当たりをその試合の中でも引ければOKというのがアタッカー。そういう意味では根気強く試行回数を重ねる染野や木村の諦めの悪さは面倒である。
守備側としては対応をミスれば決定的なピンチに陥るリスクはあるし、セットプレーに持ち込まれても面倒。直接FKにしてもCKにしても得点力はある。ただ、スペシャルなキッカーである山田はいないし、CKの得点源の谷口も不在が見込まれるのだけども。それでも急造DFラインで臨むことが想定される川崎にとっては試行回数を重ねられること自体が厄介。ここは折れないことを大事に粘り強く対応したい。
自陣からの攻撃に関しては逆に長いボールを機能させるためにも自陣での引き付けを大事にしたい。東京VのFWが前線に出てくる守備をする場合、彼らの守備はFW-MF間で間延びする。ここでCHが関係性を作って前を向くことができれば、そこから先の攻略は見えてくる。
問題は今の川崎がこの構造を作る安定感がないこと。前節のC大阪戦ではCHの瀬古と山本のリンクがなく、それぞれがそれぞれに相手の中盤と向き合っていた。東京Vは縦パスの受け手にはタイトにマークして前を向かせない守備がある。この部分で強引さが先行すると、川崎はしっぺ返しを喰らう可能性がある。
なので、前線には時間を作って渡す。無得点の前線がいい出来ではないのはわかるが、後ろがここまで雑に前にボールを渡せば何もできないのはある意味当たり前。これで前が不出来だと糾弾されるのは正直見ていられない。前が機能しないのが当たり前になっている中盤のパスワークの土壌から変える必要がある。
相手の強引さに対しては折れずに組み合い、自分たちの保持では強引さに付き合わない。強引さとの距離感を適切に保ち、今季初の昇格組に対する勝利を掴みたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)