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「異なる質の強さ」~2026.5.30 UEFAチャンピオンズリーグ Final パリ・サンジェルマン×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

UEFAチャンピオンズリーグ
Final
2026.5.31
パリ・サンジェルマン
×
アーセナル
@プシュカーシュ・アレーナ

戦績

過去の対戦成績

 過去7回の対戦でパリ・サンジェルマンの2勝、アーセナルの2勝、引き分けが3つ。

Match facts from BBC sport

Match facts
  • パリとアーセナルの対戦は8回目。通算成績は互角で互いに2勝ずつで引き分けが3回。しかし、パリは直近2試合のアーセナル戦で勝利。24-25のCLの準決勝。
  • CLでは昨季の開幕から4回目の対戦。リーグフェーズではアーセナルが勝利したが、準決勝ではパリが2連勝。同期間でより多くの対戦をしているのはシティ×レアル・マドリー(5)だけ。
  • メジャーな欧州カップ戦のファイナルでフランス勢とイングランド勢が対戦するのは史上初めて。首都を本拠地するチーム同士のファイナルはヨーロピアンカップ時代から含めて4回目。1962年のベンフィカ×レアル・マドリー、1966年のレアル・マドリー×レッドスター・ベオグラード、1971年のアヤックス×パナシナイコス。
  • パリは直近5回のノックアウトラウンドのイングランド勢を全て撃破。最後にパリを下したイングランド勢は20-21の準決勝におけるシティ。
  • 昨季のRound16以降、今回のファイナルも含めてパリはCLでの対戦の24試合のうち54%に当たる13試合がイングランド勢。そして9回のノックアウトステージのうち、6回がイングランド勢との対戦。昨季のリバプール、アストンビラ、アーセナル、今季のチェルシー、リバプール、アーセナル。
  • アーセナルは過去2回のフランス勢とのCLでのノックアウトステージで敗退。14-15のR-16のモナコと昨季のSFのパリ。
  • パリは18-19のリバプール以来の2シーズン連続のCLファイナルに到達したチーム。CLにおいては3連覇したマドリーに次いで、2チーム目となる連覇を狙う。
  • 2020年以降、パリはCLの決勝にもっとも多く辿り着いているクラブ。この期間で3回目のファイナル。1回目は2020年のバイエルン戦での敗戦、2回目は昨季のインテル戦での初優勝。3回目が今回。

スカッド情報

Paris Saint-Germain
  • アクラフ・ハキミ
  • クエンティン・エンジャントゥ
Arsenal
  • ノニ・マドゥエケ(ハムストリング)
  • ユリエン・ティンバー(鼠蹊部)
  • ベン・ホワイト(膝)

予習

CL QF 1st leg リバプール戦

CL QF 2nd leg リバプール戦

CL SF 1st leg バイエルン戦

CL SF 2nd leg バイエルン戦

準備中

予想スタメン

展望

移動のメリットを最大化する

 25-26シーズンの欧州サッカーシーンの大トリを飾るCLファイナルは昨季の準決勝のリマッチ。「どちらが勝ってもCL初優勝に向けて一歩前進」という昨季の構図から「連覇か?初優勝か?」という形に構図を変え、ブダペストでの決戦を迎えることとなる。

 パリは基本的には昨シーズンと変わってはいない。保持での尖りをキープしつつ、他の局面でもきっちり強みを押し出してくるチームだ。

 大きな変化点といえば、かなり極端にCLに絞ったプレータイムの管理を行っているところだろう。開幕前のクラブ・ワールドカップ、そしてこの夏のワールドカップというカレンダー的な問題を踏まえ、国内リーグの競争力をにらめっこしながら、戦力をどこに投下するかを考えながらシーズン終盤を迎えている。このファイナルに向けたコンディション調整という意味では昨季以上に狙いが定まっていることが推察される。

 強みとしてはやはりボールを持った局面が真っ先に来るだろう。相手が引いてこようが、前がかりになってこようが欧州でも最強レベルの答えを持っている。

 リーグアンでは5バックベースのミドルゾーンに構える相手が多い。ヴィチーニャのサリー、SB(主に左のメンデス)の最終ラインへのビルドアップ参加で相手の2列目に当たるユニットを引き寄せる。この引き寄せる動きとリンクするようにIHやWGが列を落としてパスを引き出す。マーカーの背中を取るアクションで局所的な数的優位を作り、コンパクトなミドルブロックに穴を開けていく。

 CLではやはりバイエルン戦が印象的になるだろう。マンツーでのしばき合いは明らかに国内の振る舞いとは異なっていたし、もっと言えば今季の他のCLの試合と比べても明らかに異質さを放っていた。

 中盤より前はかなりポジションの自由度が高く、特定の選手が決まったレーンを使うということはほぼない。WGの逆サイドへの出張、CFのデンベレの中盤化、IHのサイドへのフローなどあらゆることが許容されている。

 素晴らしいのはこうした自由度の高さにも関わらず、全体のバランスが崩れていないこと。動きが被ったり、必要なところに人がいないことがほぼない。変幻自在なポジション移動は相手の混乱と引き換えに、自分たちも全体のバランスが崩れたまま攻撃を完結できないケースが出てくることもあるのだが、パリはそうした自分たちの混乱の要素はほぼなし。相手を一方的に混乱させることでポジション移動における利益を最大化している。

 そうなる要因の1つは特に前線の選手たちがセンター、両サイド問わずあらゆるポジションでプレーができる資質を持っているということ。移動によって発生する不具合の1つである、移動した先で思ったようなプレーができないということはほとんどない。

 SBの攻撃参加の破壊力と運動量も大きな武器の1つ。怪我の影響が懸念されているものの、右のハキミのボックス付近での振る舞いは異次元。FW的な直線的な動きだけでなく、MF的なテクニックも兼ね備えており、長いレンジのシュートを決めるスキルもある。

 左のメンデスは最終ラインでビルドアップに関与していたかと思えば、前線に飛び出すポジトラお化けのような振る舞いを見せる。右と共通して言えるのはどちらも2人分働ける運動量を持っていることだろう。

 非保持においてはバイエルン相手にマンツーで殴り合って勝負することができる強度という時点で一定のクオリティは明らかに保証されている。ただし、一部はあれ?と思うようなマークのズレから失点を喫するなど、かなり原理的なマンツーを運用した結果の失点があったのも確か。もっとも、自分たちが保持に回れば殴り返せるので問題ないという発想なのだろうし、実際にそれで勝利を挙げている。

 連覇を狙うチームに相応しくわかりやすい弱点はない。王者として堂々と挑戦者であるアーセナルを迎え撃つ準備ができているだろう。

どの決戦仕様で挑むのか

 アーセナルが決めなければいけないのは守備のコントラストだ。当然高い位置で迎え撃つ姿勢は見せるだろうが、その程度がどれくらいなのか。具体的にはリーグのシティ戦で見せたオールコートマンツーをどのように扱うかが気になるところでもある。

 ある程度慎重に入るのであれば、立ち上がりにハイプレスを見せつつ、ミドルブロックを組んでコンパクトさをキープ。パリに「国内リーグモード」のブロック攻略を強いる形を考えさせるケースがオーソドックスになる。

 その場合、懸念点となるのは動きが大きいCHの後方に起点を作られること。偽9番的な動きが得意なデンベレがライン間に入る動きをどのように咎めるかはかなりはっきりさせる必要がある。

 もう1つのポイントはクワラツヘリアのケアだろう。背中を向いていたとしても反転からの加速ができる彼の存在は封じたと守備側が感じたサイドを甦らせる力がある。プレーのスピードが上がってもドリブル、パス、シュートのいずれの精度が落ちないことも怖さである。

 マンツーハイプレスで受ける作戦において、もっとも警戒すべきはこのクワラツヘリアへの対応だろう。当然アーセナルにとって最善なのはティンバーの復帰だろうが、それが難しければ基本的にはモスケラで受ける必要がある。

 バイエルン×パリのようにマンツーで撃ち合いになったケースを想定するのであれば、火力では明らかにパリの方が優位。これは認めざるを得ない。その上でアーセナルにはおそらくバイエルン以上に緊急事態への対応で信頼のおけるCBとライスを始めとする爆速プレスバックがある。火力に対して火力で渡り合ったバイエルンとは異なり、火力に対して火消しできる壁で対応するイメージ。もちろん、これには自分たちもパリの守備を破る程度の火力は求められるけども。ファストブレイクの精度はシーズン終盤からもう一段上のものを引き当てたいのが正直なところだ。

 保持に回った際にはマンツーで対抗してくるバイエルン戦仕様はもちろんのこと、「ボールを持たないときにもっとも怖いチーム」というルイス・エンリケのコメントを鵜呑みにしたミドルブロックの攻略の両面に備える必要がある。

 トラブルがなければスタメンになるであろうラヤ、サリバ、ガブリエウ、ライス、サカの5枚。右のSBははっきりしていて、ティンバーの状態が整えば彼ということになるだろう。それ以外は個人的には「どう点を取るか」から逆算して考えていけばいいように思う。

 マンツーハイプレスで相手が来た際のことを考えると、欲しいのは人がついた状態で剥がせる可能性があるルイス=スケリーとポジションを乱すことができるハヴァーツ、ウーデゴール、カラフィオーリ。あとは縦に速いカウンター完結ならばエゼか。マルティネッリの走力も面白いが、駆け引きよりも上下動の量で勝負するタイプなので、基本的には後半を展開がほぐれた状態で迎えたケースか、延長戦にもつれ込んだケースのどちらかか。

ただし、パリのネガトラの最も大きな弱点は攻め上がったハキミの背後をマルキーニョスが一人でカバーする点。ここはマルティネッリのフリーランが刺さる可能性もある。

 押し込む局面をある程度与えられるのであれば、欲しいのはナローなコースでもパスとシュートを通せるトロサール、一発があるエゼ、高さのあるメリーノ、ボックス内への侵入精度が高いスビメンディとカラフィオーリあたりになるだろう。バイエルンは押し込む局面になった後に、変に中央に突っ込んでいくせいでチャンスを潰していた感があるので、サイドからズレを作ることを念頭に置いたユニットの方がいいかもしれない。それであればCFもハヴァーツとなる。

 この2つの局面を両方想定したスタメンを組んでいきたい。個人的にはLSBはカラフィオーリをベースに、リードシチュエーションを迎えることができればインカピエというリレー。カラフィオーリはパレス戦の気の抜けたクロス対応は怖さはあるが、意外と今季は対面で置いていかれる場面は少ないので、攻撃のメリットを優先する形で考えたい。

 2列目は非常に迷うところではあるがトロサールとエゼがいいかなと思う。ウーデゴールがいない分、プレス回避とハイプレスは難しくはなるが、ハキミが先発した場合に左のSHをエゼに任せるのは怖さがあるのと、CHにルイス=スケリー、CFにハヴァーツを起用するのであれば、プレス回避の局面はなんとかしてくれるのではないか?という想定でこの並びにした。

 個人的にはウーデゴールを交代で投入した局面からハイプレスでスイッチを入れる二の矢を放つ形は作っていきたい。仮にビハインドシチュエーションで後半を迎えるのであれば、シティ戦のオールコートマンツーのリメイクがベターになる。

 基本的には今季のアーセナルはスカッドの層の厚さを重視したチーム。戦績こそCLの方がいいが、本来のスカッドづくりの方向性で言えば消耗戦の様相が強いリーグ戦の方が明らかに向いているチームだと思う。

 その根拠の1つになるのはいわゆる決戦仕様の試合で勝利ができていないということ。カラバオファイナルとエティハドという2つのシティ戦がその代表格ということになる。CL準決勝までのアーセナルの戦いはもちろん素晴らしいものではあるけども、どちらかといえば普段着のままやるべきことを淡々と行っていった上で勝利を掴んだという感覚がある。

 その一方でシティとの試合、特にエティハドの方は相手のやるべきことが先に決まっていて、アーセナルがどう出るか?を問われるような座組になっていた。このパリ戦はエティハドでのシティ戦に近いものがある。大舞台で求められるのはこの相手であれば普段着よりも決戦仕様。どの点で勝負できるかを初手の構造で見出せるかが第一歩、その上で変化する試合の流れに応じて打ち手を繰り出すことができるか。そして、やってきたチャンスを1つ目で仕留めることができるか。リーグ制覇と質の異なる強さを繰り出せるかが問われる試合となるだろう。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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