チェルシー、26-27シーズンの歩み。
第1節 フラム戦(A)

白い巨人的ロンドン・ダービー
第1節の最後を飾るのはウェスト・ロンドン・ダービー。数あるロンドン・ダービーの中でもかなり近距離のチーム同士のダービーだが、両チームが新しく迎えた指揮官はどちらも昨季レアル・マドリーの監督だったという数奇な運命がある。
序盤からチェルシーは高い位置でのプレッシングを敢行。内切りから外に追いやるようにフラムのバックラインにプレスをかけていく。
このスタンスが得点に結びつくまでには時間はかからず。わずか30秒ほどでロングボールの跳ね返しからジョアン・ペドロがゴールを仕留める。リンクマンのパーマーの巧みさが光る得点だった。
この得点のようにチェルシーは鋭くボールを取り、縦に速い攻撃を仕掛けていく。ロジャーズも含めた3人の前線の連携で一気に仕上げていく。
フラムは自由なポジショニングでチェルシーのプレスを牽制。バッシー、カスターニュなどはかなり大きく動くことを許容されており、ベルゲが最終ラインに入るケースもあった。
先制点を取ったこともあり、チェルシーのプレスは少しずつ沈静化。腰を据えてボールを持つ場面も出てくるように。敵陣での高い位置のプレスからコルウィルがバタバタと慌ててあわやという場面もあるなど、まだまだ試合は完全にチェルシーペースというわけではなかった。
徐々に試合はゆったりとしたポゼッションにシフト。互いにローブロックをどのように崩すかを思案する展開となる。
その中でも攻略の切り口が微妙に異なる両チーム。チェルシーはトランジションで場面転換の切れ目を狙い、速攻を仕掛けて引いて受ける以外の盤面を作り出そうとする。フラムは相手を動かしながらのポゼッションから解決策を模索する。
対照的な両チームのアプローチからスコアを動かしたのはフラム。コルウィルを引っ張り出したところに侵入したキングが威力のあるシュートでゴールを撃ち抜いてみせた。チェルシーとしては埋めることが遅れることに再現性があった箇所を閉じきれなかった感がある。
このゴール前後からキングの切れ味が増してきたフラム。推進力のあるドリブルからゴールに迫っていく。
しかし、攻撃陣の切れ味の話をするのであればこの日のパーマーは素晴らしかった。ターンでベルゲを追いやってドリブル。ロジャーズにデビュー戦でのゴールをお膳立てすることに成功した。
さらに後半もパーマーは好調をキープ。左サイドの角度のないところからレノの空けたコースを撃ち抜いてみせた。
フラムは左サイドを片上げするポゼッションから反撃のムードを作っていくが、キングの切れ味が落ちてくることと比例して少しずつチャンスは作れなくなっていった感。
それでもアチェンポンの処理ミスのところを逃さなかったフラム。ゴールを決めたのはゴンサロ・ガルシア。ここにもレアル・マドリーの関係者である。
1点差ながら若い選手を積極的に起用するチェルシーにはやや驚いたが、失点以降は納得感のある試合運びを見せたチェルシー。最小失点差ながらも危なげない形で試合を進めることに成功し、同胞新指揮官ダービーを制した。
ひとこと
前3枚の切れ味の手応えはありそうなチェルシーだった。
試合結果
2026.8.24
プレミアリーグ 第1節
フラム 2-3 チェルシー
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:23′ キング, 54′ ガルシア
CHE:1′ ペドロ, 41′ ロジャーズ, 49′ パーマー
主審:ジョン・ブルックス
第2節 ブライトン戦(H)

一撃の重さで天敵を下す
なかなかにやりくりの厳しさを感じさせるブライトンのスタメン。ボスカリをアンカーとする4-3-3という表記が正しいのだろう。放出と負傷者によるやりくりの厳しさを感じるスカッドとなった。
そのスカッドの出来を測る前の段階でチェルシーは先制。セットプレーからウィーファーとフェルブルッヘンのミスからラヴィアがこぼれ球を押し込んでスコアを動かす。
試合はブライトンの保持を中心に推移。無理にバックスにプレスに行かないチェルシーの5-4-1を前にボールを動かしながらきっかけを探っていく。
目立ったのはブライトンの中盤のローテーションの多さ。中央に出たり入ったり、前線に飛び出したりなどグロスとヤルクエの2人を中心にポジションの入れ替えをかなりやっていた。
そうした動きで相手のマークを惑わすことが最善ということは、裏を返せばどっしりと組んだ時に勝てるマッチアップがないということでもある。この形で怖いのは攻撃を完結させ切ることができない時に陣形が乱れた状態でカウンターを受ける必要があるということ。一度ボールをロストすると、あっさりと自陣に運ばれてシュートまで持っていかれる怖さがある。
かつ、この日のチェルシーは仮に対面にブライトンの選手がいても簡単に吹っ飛ばすことができていた。特にネト、ロジャース、ペドロあたりはそれが顕著。チェルシーは1on1のデュエルの強さを繋ぎ合わせるような形で追加点を重ねていく。特に2点目のロジャーズ→ネトの繋ぎはその前段も含めて美しかった。
ブライトンは積極的な前線の飛び出しで1つゴールをもぎ取ることに成功。コストゥラスが破ったチェルシーの左サイドは前節も脆弱性を見せた部分でもある。
ブライトンは前線への飛び出しの人数の確保だけはサボらなかったため、早めのクロスの仕掛けによってチェルシーのバックラインを脅かすシーンは少しずつ。反撃の雰囲気をちらつかせながらハーフタイムを迎える。
後半も試合はブライトンの保持がベース。チェルシーはパーマーとロジャーズを共に自陣の左サイドに揃ってプロテクト。非保持は5-3-2の陣形となる。
この陣形の狙いはよく分からず。中盤のスライドがかなりアバウトで、ブライトンはサイドチェンジ一発で簡単にMFラインまでキャリーができる場面が続く。
ブライトンはサイドから簡単に進むことができたので、ボックスにはクロスを早めに入れていく。逆サイドに流れてもシュートや二次攻撃などの面白い展開が待っており、前半以上に楽しむことができた。
特にアタッキングサードではヤルクエが躍動。リズムを変える縦パスで変化をつけると、ジョアン・ペドロのオウンゴールにつながるグロスの抜け出しをお膳立てした。
全体的にいい流れではあったブライトン。だが、カウンターで吹っ飛ばされる守備の軽さは健在。ネトやジョアン・ペドロなどの右サイドからの単騎突破にはかなり手を焼いていた。
4点目のパーマーのシュートもペドロのポストを活かしてブライトンの左サイドの軽さを利用したもの。シュートは見事だが、好きなようにドライブをさせてコースを空けすぎの対応になってしまった。
交代選手がギアアップすることができないまま時間が過ぎていった終盤戦。グロスが1点を返す意地を見せるが、勝ち点奪取の可能性を残すにはあまりにもこの一撃は遅過ぎた。
撃ち合いを制したチェルシー。近年相性の悪いブライトンを下し、開幕2連勝を決めた。
ひとこと
細かいところは気にはなるけども、大枠としてはいいところが先に来ているので、問題にはならないかなという感じのチェルシーだった。
試合結果
2026.8.30
プレミアリーグ 第2節
チェルシー 4-3 ブライトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:4′ ラヴィア, 14′ ネト, 32′ ジョアン・ペドロ, 74′ パーマー
BHA:35′ ヤルクエ, 63′ ジョアン・ペドロ(OG), 90+6′ グロス
主審:マイケル・オリバー
第3節 アーセナル戦(A)

ダメージにも動じない逆転勝利
レビューはこちら。

連勝同士で迎えたロンドン・ダービーはいきなり試合が動く立ち上がり。アーセナルへの移籍の噂があったロジャーズが敵地で先制点を奪うという、チェルシーにとっては最高にダメージを負わせるスタートとなった。
しかし、アーセナルは落ち着いて立て直した感がある。4-4-2で受けようとするチェルシーを徐々にミドルブロックから自陣側に押し下げていくと、右サイドからの連携で少しずつギャップを生み出していくように。
序盤のセットプレーの連打はなんとか凌いだチェルシー。しかし、ジョアン・ペドロへのロングボールを軸とする速攻はなかなか刺さらず、押し込まれ続ける時間を回避することはできない。
アーセナルは再三続けた右サイドからの攻撃で同点ゴールをゲット。ハヴァーツのカットインという非常に珍しい形から追いつく。
以降も押し込むアーセナルが試合のペースを握る。ナローなスペースを攻略するための浮き球の使い方、オフザボールのシャープさなどはチェルシーのそれと比べても今の段階では一段上。押し込みながらさらなるゴールを狙い続けて前半の残りの時間を過ごす。
後半、チェルシーは高い位置からのプレスに出ていくことでアーセナルを牽制。アーセナルはプレスをうまく活かしながら押し返すことに成功。
前半の押し込む局面が安定してきた時間から徐々に優位を見せてきたツォリスが2点目をお膳立て。対角パスを引き取ると、カットインからウーデゴールへの華麗なアシストを披露。この試合で再三見せていたハヴァーツのスルーが実を結び、アーセナルがこの試合で初めて前に出る。
チェルシーは少しずつ押し込む時間を作れるようにはなるが、ブロック攻略にアバウトさが出てしまい、なかなかボックス内に入り込めず。サイドの裏を抜けてもCBに落ち着いて跳ね返されるシーンが続く。
アーセナルも逆にカウンターを仕留めきれずに苦しい時間が続くが、ブロック守備が安定している分、特に焦る様子はなし。攻めあぐねるチェルシーを最後までコントロールし続け、逆転での3連勝を果たした。
ひとこと
早々の先制点にもバタバタしない貫禄の勝利だった。
試合結果
2026.9.6
プレミアリーグ
第3節
アーセナル 2-1 チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:25′ ハヴァーツ, 50′ ウーデゴール
CHE:2′ ロジャーズ
主審:クリス・カヴァナー
第4節 ハル戦(H)

難しい試合にしてしまった感
アーセナルが失点を喫したことでリーグ唯一の無失点チームとなったハル。無敗記録を継続するべく対峙するのは、そのアーセナルに今季初失点を喰らわせたチェルシーだ。
チェルシーはここまではファストブレイク重視で得点を重ねてきたチーム。ハルのようにまずはローブロックで始めてくるチームにどのように得点のアプローチをかけていくか?というところが序盤の見どころになるはずだった。実際にハルの守備の方向性もその路線に沿ったものだった。
しかし、チェルシーは少し違う角度から課題を解決。CKのカウンターからお馴染みの速攻でロジャーズがニア抜きに成功。7分で先制点を決める。これまでの5分以内という今季の傾向からはやや遅いくらいしか不満点がない試合だ。
ハルの保持に対してもチェルシーはハイプレスで飲み込むようなスタート。マクバーニーへのロングボールで逃げるしかないハルは苦しい立ち上がりとなった。
押し込む局面においてもラヴィアの列を越すパスが冴えており、ナローなスペース攻略にも手応え。プレスはやや落ち着いてハルの保持の時間はできたものの、左右に散らすところへのスライドに対応しており、特段問題はないかのような前半となった。
一変したのは失点してからだろう。なんの変哲もない左サイドへのロングボールに対して、チェルシーは終始後手後手。誰かがきっとなんとかしてくれるだろうとチェルシーのDF陣がボールを見守り続けた結果、最終的にはベローミにゴールを叩き込まれる結末を見届けることとなった。
この得点をきっかけにハルの猛攻に晒されたチェルシー。横幅が足りない!という感じのコイルの攻め上がりからのシュートはなんとかマルティネスがセーブをしたが、セットプレーの二次攻撃から逆転となるゴールを献上。またしてもベローミがシュートを叩き込んだ。
うまくいっていたはずの崩しまで細かいところが微妙に噛み合わなくなり、なんとなく嫌な流れのまま前半を終えたチェルシー。ハルがリードのままでハーフタイムを迎える。
後半、チェルシーはチャバリアを投入。左右ともに積極的なSBのオーバーラップを活用するという方向性により沿った人選にDFラインを入れ替える。
敵陣でのプレータイムは期待通り多かったものの、なかなかクロスを思ったように味方には届けられず。ニアの高い壁に引っかかってしまい、狙ったところにボールを落とすことができない。
ハルはゆったりとしたポゼッションとロングボールでの前進。機会自体は少ないが、全く歯が立たずに一方的に押し込まれるわけではないかなという感じの後半の立ち上がりだった。
メンディの脳震盪に伴い、3枚交代を敢行した後はハルは左サイドを中心に攻勢に。スタンフォード・ブリッジを怪しい空気に巻き込んでいく。
しかし、その状況をチェルシーは変えることに成功。左サイドに流れたパーマーからの折り返しを最後はジョアン・ペドロが仕留めてゴール。ニアからの折り返しを閉じきれなかったハルは反省すべき対応ではあったが、ニアしかない状況で突き刺したジョアン・ペドロのシュートの質は相当高かった。
チェルシーは逆転のためにありったけの攻撃のカードを投入。負傷が絡んだとはいえ、ギュスト→ウェルベックでかなり前傾の姿勢を高めていく。
打つし打たれるしという意味で見応えがある終盤戦にはなったが、これ以上スコアは動かず。試合はドローでの決着となった。
ひとこと
余計な失点で変な試合にしてしまった感があるチェルシーだった。
試合結果
2026.9.12
プレミアリーグ 第4節
チェルシー 2-2 ハル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:7′ ロジャーズ, 66′ ジョアン・ペドロ
HUL:28′ 34′ ベローミ
主審:ファライ・ハラム
第5節 ブレントフォード戦(A)

素晴らしい筋書きと指揮官の雄叫び
リーグ戦ではここ2試合勝利がないチェルシー。ジョアン・ペドロという前線の核抜きでブレントフォードとのアウェイゲームに挑むという、代表ウィーク前のラストゲームは大きな試金石になりそうな試合である。
前半は端的に言えば、保持側が互いの布陣のギャップを有効活用している試合だったと言えるだろう。チェルシーは左右のWBを出口として積極的なクロスを入れていく。ブレントフォードはプレスの位置を上げようとSHがポジションを取り直す分、布陣にズレが出やすくなっていた。アンソニーの前に出ていく意識を抑制することで後方の陣形を合わせていたが、その分チェルシーはゆったりとボールを持つことができていた。
ブレントフォードもワンサイドカットを狙うチェルシーのプレスをかわしていくことで敵陣まで。CBをきっちりと浮かせてキャリーしつつ、サイドアタックに移行する。
レーン交換で誰かを浮かせる意識が強いチェルシーのサイドアタックに比べると、ブレントフォードはきっちりと奥を取って揺さぶっていく形を積極的に採用。少ないタッチから抜け出す選手を作っていく。
この点に関してはチェルシーの守備が非常に上手く対応しており、これまでの試合に比べると完成度が上がっているように見えた。光ったパーマーのプレスバックも含めて、これまでの試合よりも一段階上のパフォーマンスを見せることができたと言っていいだろう。
アンソニーがラインを下げたことでチェルシーに保持の機会を譲ったブレントフォードだったが、トランジションからダムズゴーのキャリーを増やしていくことで、こちらも左サイドを中心に反撃の様相を見せていく。
徐々に増えていくトランジションの中でパーマー、ネト、シャーデといったここまで好調な選手たちが鋭さを見せるが、守備側も負けじとこれについていく。スコアレスの中でも見どころのあるファーストハーフとなった。
後半も前半と同じくアグレッシブにお互いが食らいついていく流れ。ブレントフォードはチアゴが左サイドに流れる機会を増やし、時間を作れるようになった分、ルイス=ポッターの攻撃参加時の存在感が増していく。
一方のチェルシーはトランジションからのファストブレイクのチャンスを探っていくが、相手のCBの対応が素晴らしかったとはいえ、ウェルベックがなかなか高い執行力を見せられないのが辛いところ。右サイドからのダイレクトクロスや配球を行っていたヘンダーソンにも少し似たようなことが言えるようにも思える。
そういうわけでジリっとペースを引き寄せたブレントフォード。左サイドを軸としたクロスで攻勢を強めていくと、得意なセットプレーで先制。ファーサイドの折り返しをフリーのアンソニーが仕留めて試合を動かす。
ブレントフォードは徐々に前からのプレスを抑制。4-4-2で構えながらチェルシーを迎え撃つ。チェルシーも4-4-2にシフト。クエンダをサイドに投入し、前線はロジャーズとパーマーというダブル0トップのような体制だ。
右サイドからファーサイドへのクロスを狙っていくチェルシー。だが、ブレントフォードのDF陣のボックス内でのクロス耐性が強く、効果的な形を生み出すことができない。そもそもダブル0トップでやることなのかという話もあるけども。
ブレントフォードが虎視眈々と狙っているカウンターが完全に刺さったのは83分。ダムズゴーがDFラインを置いていくパスを出した時点で半分は勝負あり。マルティネスがセーブでわずかに望みを繋いだが、チアゴが無人のゴールに押し込んでその望みを握りつぶした。
チェルシーから見ると、ヘンダーソンからCFへのギャンブルパスが潰されたところからのカウンター。ジョアン・ペドロが欲しかったなという試合を象徴するような失点の仕方に。
最後は負傷明けのカルバーリョが得点を祝うという素晴らしい筋書きを実現したブレントフォード。沈黙のシャビ・アロンソを尻目に雄叫びを上げたアンドリュースの姿が、後半の両チームの姿をよく表していた。
ひとこと
セットプレーで試合を動かして、そこからカウンターで得点を積んでいくというブレントフォードの振る舞いはもう強いチームのそれ。
試合結果
2026.9.18
プレミアリーグ 第5節
ブレントフォード 3-0 チェルシー
G-techコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:61′ アンソニー, 83′ チアゴ, 90+4′ カルバーリョ
主審:アンディ・マドレー
