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「アーセナルはPL優勝、シティはCL優勝で手打ち希望です」〜勝手にプレミア定点観測22−23 終盤戦報告 part1~

シーズン終わりまでもうちょっと!プレミア全チームの現況を振り返り!それでは早速スタート!

目次

【1位】アーセナル

28試合/22勝3分3敗/勝ち点69/得点66 失点26

難局を乗り切った充実の一体感と代償

 クリスマスをテーブルのトップで迎えたアーセナルは3月の代表ウィークを再び首位で迎えることに成功。消化試合数が違うとはいえ、2位に8ポイントの差をつけての首位なのだから現状の成績に文句のつけようはないだろう。

 W杯明けにアーセナルが直面したのは前半戦を牽引したガブリエル・ジェズスの負傷である。プレスを牽引するだけでなく、流麗なパスワークにおいても存在感を発揮していたジェズスはアーセナルの攻守に欠かせない存在。彼の不在をどう乗り切るかは大きな命題だった。

 代役に指名されたエンケティアはとりわけゴールを奪うという局面で大きな貢献を果たす。マッチウィナーとなるゴールを奪ったマンチェスター・ユナイテッド戦ではまさに救世主といえる働きをしたといえるだろう。

 だが、エンケティア試合ごとの存在感にバラつきがあったのも事実。特に細かいパスワークの部分では前線のレーン交換による変幻自在さを出すことができず、ややシステムの硬直を促進してしまった部分もあった。

 そこをうまく補ったのは冬にやってきたトロサールである。自らがボールを引き出し、ゴール前にドリブルを仕掛けるだけでなく、左サイドに流れるプレーを増やすことでジェズス時代のレーン交換の流麗さを復活。問題なく役割を果たすだけでなく、やや停滞気味だったマルティネッリを蘇生させるなど多大な貢献を示した。

 もう1人の冬の新加入選手であるジョルジーニョも優れたピンポイント補強。敵陣でパスワークの正確さと前線のオフザボールを見逃さない認知能力は折り紙付き。事前にささやかれていた機動力においては明らかに難はあるが、アーセナルを警戒して早い段階で引いてくる相手が増えたことを踏まえれば、有用なジョーカーになるのは明らかだ。

 CF以外のセンターラインとサカは相変わらず好調を維持。チームは連勝を重ねながらジェズスの戦列復帰の日を迎えることに成功した。

 リーグでは素晴らしいパフォーマンスなのだが、惜しむらくはカップ戦では軒並み敗退してしまっていること。早々にエティハド送りにされたFA杯は諦めがつくかもしれないが、ELで早期敗退はチームの経験値としての大きな痛手になる。来季の参戦が濃厚なCLにおいて、一発勝負と週2のスケジュールに慣れておけなかったことは足かせになりえる。

 シーズンが終了してしまった冨安の不在も不安要素の1つ。すべてのポジションを高水準でこなすことができる彼の存在はスカッドの厚みとバリエーションの両面において欠かせない存在となっている。逃げ切りのカードとしても有用な彼を失ったことで接戦を落とすようなことがあれば、紛れもなくアーセナルにとっては大きな損失になる。

Pick up player:ブカヨ・サカ
ワールドカップを経て、調子は落ちるどころか凄みを増すばかり。多少存在感が消えている試合でも一振りで試合を決めてしまうあたりはエースの風格が明らかに備わってきているといえるだろう。

ここまでの道のり

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【2位】マンチェスター・シティ

27試合/19勝4分4敗/勝ち点61/得点67 失点25

出力の自在な制御が悲願達成のカギ

 今季もリーグ戦は安定。グアルディオラのチームのリーグ戦には外れなしである。CLとFA杯はいずれも勝ち残りを決めており、現状では最大三冠を狙える終盤戦になっている。アーセナル同様に戦績的には上々といえるだろう。

 後半戦も得点源はハーランド。試合によっては決めきれずにモヤモヤする展開もなくはなかったが、要所要所で存在感を発揮。中でもライプツィヒとの2ndレグにおけるパフォーマンスは圧巻であった。タイスコアだった1stレグが嘘のように、リターンレグではシティのワンサイドに。ハーランドの独壇場ともいえる大暴れで見事突破を決めて見せた。

 ビッグマッチでの不発とハットトリックの固め打ちの行ったり来たり。ビルドアップにあまり組み込まれていないこともあり、これだけの得点を決めているにも関わらず、ハーランドの評価にはややバラつきがあるようにも思える。期待値のせいなのか、組み立て関与のせいなのかはわからないけども。

 ただ、彼の評価は結局はCLでどれだけやれるかで決まる気がしている。ビッグイヤーをもたらすことができればヒーローだし、そうでなければ不十分という評価を下される流れのようにも思う。

 ハーランドのシティ移籍は押し込まれた状況からロングカウンターで刺すという手段の大幅な強化につながっている。その一方で従来のシティの得意分野である、押し込んで殴り続ける攻撃手段においてはやや陰りがあるのが気がかりでもある。サイドでのハーフスペースの裏抜けというこれまでのシティの十八番は鳴りを潜めており、シンプルなクロスで殴り続けることもしばしば。

 ハーランドがインサイドにいればそれでもいいのかもしれないが、デ・ブライネのキックのフィーリングが合わず、カンセロが移籍した状況ではアウトサイドからブロックの外から点で合わせるという部分はやや弱体化しているように思えるのが気がかりである。 一方でもう1つのトレードマークの即時奪回においては、ベルナルドの途中投入という形でスポット的に目途が立ったのは大きい。彼を旗頭とした敵陣からのプレスは試合の流れを大きく変える切り札。アーセナル戦など試合の終盤に一気に敵陣に圧力をかけて、非保持から相手を畳みかけるスタイルは前半戦に鳴りを潜めていた往年のシティの迫力を体現するものだった。

 CLという逃してはいけないビッグマッチを確実にモノにするにはこうした強度面での抑揚をどれだけ意図的にコントロールできるのかどうかが非常に重要。インテンシティの上げ下げを展開に応じて自在に調整できるかどうかが悲願達成の条件だ。

Pick up player:ケビン・デ・ブライネ
 CL制覇に必要なものがハーランドをはじめとする瞬間的な切れ味!なのだとしたら、デ・ブライネは鬼になる必要がある。まだ、今季は鬼になるシーンをあまり見せていない彼がハーランドの相棒としての役割を全うできれば、悲願達成は大きく近くなる。

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【3位】マンチェスター・ユナイテッド

26試合/15勝5分6敗/勝ち点50/得点41 失点35

カップ戦での躍進が過密日程として跳ね返る

 ここに来てさすがに上位2チームからは離されてしまったが、リーグ戦ではCL出場権争いのポールポジションを確保。FA杯、ELでも順調に勝ち上がっており、すでにカラバオカップでのタイトルも手にした。テン・ハーグは就任初年度としてはこれ以上は望みづらい躍進をしていると言っていいだろう。

 W杯明けのマンチェスター・ユナイテッドを牽引しているのは紛れもなくラッシュフォードである。ビッグゲームでも格下との試合においても確実に大きく展開を動かすゴールを決めており、キャリアにおいて最高の時を過ごしていると言ってもいいだろう。マンチェスター・ダービーにおいては負傷したにもかかわらず、交代せずに出場を強行。見ているこちらはヒヤヒヤしたが、最終的には得点に絡む活躍をしてみせた。

 攻撃の軸が定まったことで周辺のユニットの整備も徐々に進んでいった印象である。ラッシュフォードをどこに置くかはだいぶ迷っていたようだったが、CFにポストプレーと堅実な守備のタスクをこなすベグホルストが定着したため、左のWGに収まった。層が薄いCFにおいて稼働率の面でも十分なベグホルストはユナイテッドにとってお得な買い物だったと言えるだろう。

 右WGではアントニーが定着。相手と正対して止まった状態でボールが持てるアントニーがいるといないとではユナイテッドの攻撃は大きく変わる。彼がいないと攻撃は直線的で一方調子な感が否めない。数字の面では寂しいところもあるが、後方の選手の攻撃参加を促す意味でも彼の存在は今のユナイテッドには欠かせないだろう。

 攻撃のユニットが安定してきている一方で序盤戦を牽引してきた中盤より背後は懸念が徐々に増えている。誤算なのは中盤セントラルの人選だろう。万事快調であればエリクセンとカゼミーロなのだろうが、前者は不幸としか言いようがないタックルに巻き込まれてシーズン絶望、後者は一発退場と累積警告でリーグ戦ではまともに稼働ができない状態が続いている。ザビッツァーで緊急のテコ入れをしたとはいえ、彼らの不在はクオリティの面で大きな問題になる。

 バックラインは勤続疲労が目立つ。前半戦はMVP級の働きだっただったリサンドロ・マルティネスはリアクションの遅れと対面した時に置き去りにするケースが増えており、体と頭の両面が疲れているように思える。ヴァランも怪我が少ない選手ではなくいつ離脱してもおかしくはないというギリギリの状況。どちらもW杯をファイナルまで戦っており、おそらくコンディションは厳しいマネジメントになっていることだろう。

 W杯を除いたとしても、ユナイテッドはここまで全てのコンペティションで最大試合数をこなすスケジュールになっており、試合数の増加の問題は深刻。W杯明けのリーグカップの直後を除けば全てのミッドウィークが埋まっており、2023年になってからは試合間隔が中5日以上になったことは一回もない。25試合という試合数は首位のアーセナルの18試合と比べるとかなり重たい負荷になっている。

 現状ではパフォーマンスを追求できる状態にはないし、ELを敗退しない限りは緩和は見込めない。4月もミッドウィークはすでに全て埋まっている。もはや、M-1王者みたいな日程である。優先順位をつけずに四兎を追いかけてきたツケがシーズン終盤に回ってこなければいいのだが。

Pick up player:マーカス・ラッシュフォード
 苦悩の英国人選手が才能を開花させている様子を見ると、個人的には頼むから怪我をしないでくれという思いが出てくる。W杯明けから明らかに凄みを増しているラッシュフォードはシーズンを駆け抜けることができるのだろうか。

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【4位】トッテナム

28試合/15勝4分9敗/勝ち点49/得点52 失点40

尖らすよりも弱みを埋める方針がベターか

 おそらく、今年のCL出場権争いは例年以上に熾烈なものになるだろう。もしかすると、プレミア史に残る激戦になる可能性もある。消化試合のバラつきもあり、今の段階では明確な予測を立てるのは難しい。

 そうした中で現在4位。今この時点でのポールポジションはトッテナムである。だが、W杯明けからここまでの道のりはどちらかといえば苦難の方が多く、順調とは言い難がった。

 ソン、リシャルリソンなど不調のアタッカー陣はなかなか上向くパフォーマンスを見せることが出来ず、逆にチームを牽引する働きをしていたクルゼフスキがコンディションを落としてしまう。これにより、撤退守備の攻略の精度はむしろ下がってしまった。

 アタッカーの不調でロングカウンターは例年よりも割り引き、かつブロック攻略にも暗雲が立ち込めているということになれば、ハイプレスを頑張りたいところ。しかし、キーマンであるベンタンクールがシーズン絶望の負傷を負ってしまったことでこちらも絵に描いた餅に。スキップも頑張ってはいるが同等のクオリティを求めるのは酷だろう。バックラインで唯一ハイプレス適性があったはずのロメロも、無理なタックルから早い時間に警告を受ける場面が徐々に増えており、ハイラインを支え切れているとは言い難い。

 チーム関係者から発されるコメントもこうした不穏なピッチ内の現象を反映しているかのようにピリピリしたものになっている。コンテは選手への不満を隠していなかったし、起用される側のリシャルリソンからも明確な出場機会不足に対するストレスが前に出てくるように。

 コンテの指摘についてはいろいろと是非が飛んでいたように思うが、最終的にはこの記事を書く少し前に解任されてしまうことに。残りのシーズンはステッリーニをメイソンがサポートする体制で乗り切ることが決まった。

 後任はかなり舵取りが難しい状況なのは確かだが、現状では尖った長所を伸ばすよりも各局面における弱点を減らしながら戦うしかないだろう。ハイプレスが無理ならミドルブロックなど、あまり尖ってないプランで粘る時間帯を増やしながら前線の復活を待つのが最善手のように思える。

 攻撃においてはボロと前線の連携が徐々に通ってくるなど新たな連携構築の兆しは見える。守備での不安があるのは否めないが、エメルソンの長期離脱で残りのシーズンで出番が増えることが確実視されているポロを活用した攻撃ユニットの構築は前線を助けることになる可能性もある。クルゼフスキが不振に陥った右サイドを蘇生させられるかどうかが残りのリーグ戦の明暗を分けるかもしれない。

Pick up player:リシャルリソン
自分が主役!というメンタリティと超エースの相棒を務めている時が最も輝くというピッチ上での特性がイマイチ噛み合っていない選手。勝っていない時に無駄な振る舞いで時間を浪費している部分も含め、メンタル面での改善が見られれば大きな飛躍が見込める選手だと思う。環境の変化がプラスに働けばいいのだが。

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【5位】ニューカッスル

26試合/12勝11分3敗/勝ち点47/得点39 失点19

出場停止と勤続疲労でのブレーキが誤算

 ハーフシーズンの時点ではほぼ問題なくCL出場権内を確保できるという見立てだったが、年明け以降はだいぶズルズルと勝ち点を落としてしまった印象だ。勝ち点的に痛かったのはやはり2月。試合数が少なく、負け試合こそ退場者を出したリバプール戦だけだったが、やはり勝ち試合が長いことないのはメンタル的には厳しい。

 1月最終戦と3月初戦も落としており、ここでリーグ戦では5試合連続未勝利を記録。CL出場権争いまで順位を下げてしまったのはこの大きなブレーキが一因だろう。まず、痛恨だったのはカラバオカップで一発退場をしたブルーノ・ギマランイスの出場停止。中盤の要である彼の不在はチームのパフォーマンス低下にもろに直結することになった。

 そのギマランイスの後を追うように、ジョエリントンも累積警告で2試合のリーグ戦欠場。こちらも中盤の機能性に大きく影を落とす不在となった。

ちなみに退場者でいえば、ポープもリーグ戦での退場でリーグカップファイナルの出場を逃している。2ndGKのドゥブラーフカがカップタイドで出場不可だったため、3rdのカリウスが出てくるという因果もあった。結果に大きく影響を与えるミスはなかったが、なかなかなストーリー性である。

 前線も前半戦猛威を振るっていたアルミロンがややトーンダウンしたことで、再びサン=マクシマンの無鉄砲ぶりにに頼る流れになっている。イサクはゴールを決めており、徐々に順応して言っているが連携面ではまだ途上といったところだろう。

 バックスは相変わらず手堅いが、フォレスト戦では珍しくボットマンのミスからの失点が見られた。同じメンバーでの試合が続いているため、勤続疲労も気がかりである。ターゲットが帰ってきているLSB以外は負傷が出ると影響は大きくなりそうである。

 基本的にはバックラインの強固さを押し出しながら、手早い攻撃で先制点を奪い、きっちり守るというプランで手堅く勝ち点を獲っていきたいところ。強度が生命線になるので、終盤戦にどのようなコンディションで臨めるかは気になるところである。

 監督も含めて、CL出場権という上位を目指しての終盤のタフな日程は未経験なのも懸念点。昨年はアーセナルのCL出場を最後に阻んだが、今年は自らが挑む側となりタフな終盤戦に臨むことになる。

Pick up player:ブルーノ・ギマランイス
 同じく出場停止を食らったジョエリントンと比べても、かなり欠場の影響は大きかったように思える。撤退守備を壊すという意味でのアンカーロールは実質代役不在。残りのシーズンはフル出場で駆け抜けたい。

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【6位】リバプール

26試合/12勝6分8敗/勝ち点42/得点47 失点29

魔法が解けなければCL出場権に議論の余地はない

 W杯明けのパフォーマンスから考えると、リーグ戦でのCL出場権争いに舞い戻ることが出来たのは上々といえるだろう。ニューカッスル、トッテナムなどが勝ち点を積むペースが明らかに下がったことで、再びリバプールにも大きなチャンスが生まれることになった。

 大きいのは負傷者の復帰である。ファン・ダイクとコナテが最終ラインに揃い、前線にプレスのスイッチ役とエリア内でのスコアラータスクを両立できるジョッタが帰ってきたことは大きなスカッドの後押しになった。中盤では俊英のバイチェティッチが躍動。チアゴが負傷した中盤の新たな戦力として頭角を現した。

 こうしたプラス要素が噛み合って、特大なインパクトを残したのはマンチェスター・ユナイテッド戦だろう。アンフィールドでの7-0での大勝はかなりセンセーショナル。この日のリバプールとは誰も対戦したくないだろうし、朝目を覚まして結果だけ見た日本のプレミアファンが「何が起きた?」と驚いていたのが印象的だった。

 この試合で彼らが見せたのはハイプレスの蘇生、そしてハイラインにも耐えられるバックラインの強度。さらにはワンチャンスを逃さない前線の鋭い決定力。ガクポの評価はこれをもって確実なものになり、凄みを見せたサラーは止めようがないことを再認識する試合であった。

 ユナイテッド戦のパフォーマンスを継続して見せることができれば、混戦といわれるCL出場権争いには議論の余地はなくリバプール一択である。だが、そうもいかないのがプレミアリーグのタフさである。続く、ボーンマス戦とレアル・マドリーとの連戦でアンフィールドでの魔法はとけてしまったように思う。

 マドリーにはハイプレスから主導権を握るやり方は全く通用せず、寝技に持ち込まれて完敗。ボーンマスにはカウンターからファン・ダイクが出し抜かれてしまい、リーグの連勝を阻まれてしまった。

 中でもボーンマス戦でワッダラ相手にフリーズしたファン・ダイクは気がかり。彼のパフォーマンスが悪い時は無理に出て行って状況を悪化させるよりも、対応を遅らせることで結局ピンチに追い込まれてしまうケースが多い。ボーンマス戦の彼のパフォーマンスはまさしく彼が調子を落としている時のそれだった。

 中盤ではバイチェティッチがシーズン絶望の負傷を負うなど、スカッド的にも上昇気流の波をせき止める要素があるのが現状。4位争いをするチームの中では最高到達点が最も高いチームであることは間違いないだろうが、CLが無くなった現段階ですら、勢いに蓋をする要素がある。

もちろん、残り試合をほぼ白星で駆け抜ける地力はあるチーム。他のチームに同じことを望むのは難しい。すべては自分たち次第だろう。

Pick up player:ディオゴ・ジョッタ
 フィジカル寄りの選手ながら、長期離脱直後から水準通りのパフォーマンスを見せることができるのは底力である。ディアスも含めて左サイドを活性化し、サラーの負荷を取り除くことができれば彼らの攻撃力はさらに増すことになるだろう

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【7位】ブライトン

25試合/12勝6分7敗/勝ち点42/得点46 失点31

完成度の高さに夢見るものは

 十分に構築されているシステムに個性を上乗せ。チームの完成度としてはリーグでも随一といっていいだろう。特にプレス回避の局面はリーグにおいてもトップオブトップに分類される出来栄えだ。フリとなる縦パスを入れて相手を動かしては、本命となる縦パスを入れるなどでスムーズに前進をする。

 ビルドアップのパターンは非常に多彩。CHがフリーになればもちろんスムーズに前進できるが、彼らが相手の中盤に監視されてしまっても、その背後をマック=アリスターやファーガソンといった前線の選手たちが降りて使っては縦パスを引き出すアクションを行っている。

 かといって、トップが中盤をケアすればバックラインのダンクから前線への精度が高いフィードが飛んでくる。そうなればバックラインも放っておくことはできない。

 保持に振っているチームあるあるとして困難にぶち当たるのはアタッキングサードにおける武器不足で、ポゼッションの割に決定的なシュート機会が増えないというパターン。しかし、ブライトンはそこも無縁。三笘、マーチという両WGの破壊力はビルドアップと並んでリーグのトップオブトップである。

 三笘とマーチという大外に張って1枚剥がすというタスクが十分に期待できるし、三笘のサイドには追い越す動きが十八番のエストゥピニャンが常駐。フォロー役がいることで、サイドの破壊力は増すばかり。WGは二人とも大外からインサイドに入り込んでパスを受けるパターンを備えており、スコアラーとしても十分すぎる破壊力を持っている。対角からのクロスに入り込むスキルも十分で、ボールサイドでなくとも目を離せる存在ではない。

 決して層が厚いといえるチームだけに、あらゆるポジションをこなすことができるグロスは重宝される。マック=アリスター、カイセドといった数試合単位の離脱であれば、問題なく埋めることができるのはどこにおいてもタスクを遂行できる彼がいてこそである。

 層の厚さに関して言えば、リーグ戦の残り試合数の多さが大きな懸念になる。欧州カップ戦こそないものの、25試合消化というのは現在のプレミアの中では最も少ない。その上に、FA杯の準決勝が予定されている分、さらに延期分は増えることが想定される。ニューカッスルと同じく経験値の少なさは懸念だが、こちらはよりダイレクトにスケジュールという不安要素も上乗せされている格好だ。

 それでもこのチームに夢を見たくなるのは確か。ポッター→デ・ゼルビというリレーすら難なくこなした今季でこの完成度である。FA杯というタイトルはもちろん、CL出場権を手にすることができれば、引く手あまたな現在の主力を引き留め、物語のその先を見るためのこの上ない好材料になるはずだ。

Pick up player:三笘薫
 デ・ゼルビへの監督交代とトロサールの離脱から一気に出場機会を増やすと、そこからはもうがっちりつかんだスタメンの座を離すことはなかった。大外からのカットインは川崎でもお馴染みの光景だったが、斜めの走り込みでCB-SBの間で受けるスキルはブライトンによって磨かれた武器。日進月歩で進化していく彼がブライトンをどこまで引き上げられるか。終盤戦も目が離せない。

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【8位】ブレントフォード

27試合/10勝12分5敗/勝ち点42/得点43 失点34

2つのシステムの使い分けが機能し安定感が底上げ

 本来のクラブの規模でいえば、これだけ多くのチームが巻き込まれている残留争いとは無縁の日々を送っていること自体が快挙。それだけでなく、いまだに欧州カップ戦出場権を確保できる位置にいるのだからそのすごさは一層際立つ。

 ホームスタジアムは相変わらずの要塞ぶりで、今のところ敗れたのは首位のアーセナルだけ。年明けからはリーグ戦12試合の無敗も記録しており安定感は抜群である。

 こうした安定感があるパフォーマンスを見せることが出来るのはシーズン序盤に見られた試合ごとのムラが改善したのが大きい。相手に強くプレスに行く展開になれば問題はないが、日によってはプレスに出て行けないスタンスになってしまい、手も足も出なくなるのが序盤戦の彼らの悪癖だった。

 しかし、後半戦はこの2つのシステムの使い分けが安定したように思う。高い位置からプレスに出て行くビッグマッチ仕様の3-5-2と、落ち着いたポゼッションとリトリートの4-1-4-1という2つの顔の使い分けはそのままに、後者の完成度を引き上げたのが後半戦の成績向上の大きな一因。今のブレントフォードは当たりはずれの下振れだけがかなり削れた印象である。

 リトリートの改善の要因としてはエリア内での守備の安定が上げられる。やはりベン・ミーの加入が大きい。低い位置で跳ね返すというタスクに関して言えば、ほぼバーンリー時代と同じ役割であり、安定感が段違いである。

 前線ではトニーの好調が持続。ピッチ外の話でいつスカッドから外れることになるかわからないという爆弾要素はあるものの、ピッチの中での存在感は相変わらず。相棒のムベウモもできることが徐々に増えており万能性に関してはトニーに引けを取らない。終盤の決定機を逃さないウィサも相手からすれば厄介な存在だ。

 エリア内でのエアバトルの強さはアタッキングサードにおけるフレアのなさを補って余りあるもの。ファーへの決め打ちクロスやセットプレーから泥臭く点を奪い、逃げ切るパターンを崩すのは容易ではない。アーセナル、リバプールと同じく彼らは逆転負けが1つもないチームである。

 先行された場合の決め手不足は懸念ではあるが、確立されたスタイルの上にそこまで身についてしまったら普通の強豪チームだろう。ここまで望むのは欲張りというもの。大物食いに安定感を身に着けたブレントフォードはカップ戦出場権争いをかき乱す存在になるだろうか。

Pick up player:ブライアン・ムベウモ
 トニーの陰に隠れがちだが、彼もまたブレントフォードの柱だ。イケイケドンドンの極みであったW杯のカメルーン代表ですらポストプレーで起点となったり、裏抜けで相手のDFラインをかき乱す仕事をしているのだから、もう世界中のどこでもこの役割は出来るのだろうと思う。

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【9位】フラム

27試合/11勝6分10敗/勝ち点39/得点38 失点37

打たれた対策はスタイル確立の証

 さすがに欧州カップ戦出場権争いからは脱落してしまった感があるが、彼らもまた無風地帯にいること自体に称賛が十分に集まるチームである。残留圏内と15ポイント差で間に8チームあるのだから降格はもはや気にしなくていい話。ローカルライバルのチェルシーよりも現状は上の順位である。

 基本的にはプレースタイルは序盤戦からは変わっていない。前線はプレッシングで相手を誘導しつつ、網を張った中盤で一気にボールを奪い取るミドルプレスのスタイルは相変わらず健在。攻撃の原料になるミドルカウンターを打つためにも網を張ったミドルプレスは彼らの生命線といえるだろう。

 彼らのスタイルがリーグに浸透したのだなと感じさせたのはフォレスト戦。ライン間への縦パスから前を向く選手を作るのがスタイルであるフォレストはフラムのミドルプレスが厄介だと踏んだのだろう。徹底して外から裏を狙う形にシフトチェンジしていた。その結果、フォレストは自分たちの攻撃も立ち行かなくなっていたけども。

 相手チームが本来の持ち味を棚上げしてまで、フラムのスタイルへの対策を打つようになったのはある意味スタイルが確立した裏返しともいえるだろう。対策を打たれるようになったから一人前みたいな。

 ただ、チームとしてのパフォーマンスはやや停滞気味。もっとも懸念なのはすっかり決定力が湿ってしまったミトロビッチである。フィフティーの競り合いでは苦戦が目立つようになり、シュートはことごとく枠の外。FA杯の準々決勝ではVARから帰ってくる審判を小突くという蛮行で長期の出場停止処分が下される見込みになる。

 トップはヴィニシウスやボビー・リードのスライドでなんとかなっているが、中盤のパリ―ニャの不在はどうにもならない。シンプルにここまで欠場した試合は全敗とミドルプレスにおける彼の存在感の大きさとフラムにとってミドルプレスが命綱であることがよくわかるデータである。

 前線のパスコート限定と中盤のボール奪取力、そしてレノとリームを軸とした強固な最終ラインとミトロビッチはいなくなってもチームの後方の強度はそれなりに信頼は出来る。好調が続くウィリアンとラッキーボーイ的な存在であるソロモンの2人で攻撃を牽引し、シーズンをいい形で締めくくりたい。

Pick up Player:ジョアン・パリ―ニャ
 出場停止時の負けっぷりは数字で見てもなかなかだが、見るからにプレスがかからなくなっているので本当に納得感がある。万が一、もう一回累積警告による出場停止を受けてしまうと3試合不在になるので、そこは何とか避けたいところである。

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【10位】チェルシー

27試合/10勝8分9敗/勝ち点38/得点29 失点28

長期的視野の必然と懸念

 互いに低迷中で虚無だった1月のリバプール戦。ここからV字回復に成功したリバプールとは異なり、チェルシーは中位の沼にどっぷりと浸かってしまった印象である。

 1月はムドリクとエンソという2つの高額取引を皮切りに多くの獲得で世界中の注目の的となった。だが、エンソとバディアシルを除けば適応には時間がかかっており、大型投資の費用対効果はすぐにはピッチには表れていない。

 正直それは当然な話のように思う。多くの選手は若くプレミア初挑戦。プレミアどころか他国での生活に慣れるのに時間がかかるであろうムドリクのような選手もいる。高額な移籍金がプレッシャーにつながっている感があるが、獲得している選手と契約期間は長期的な視座なものであり即効性を見込むこと自体がお門違いな感じがする。

 もっとも、こうした長期契約を夏も冬も乱発していることから、そもそもの「長期的な視座」に疑問符を持つのは当然である。財政的な違反がなくとも、余剰戦力の売却に苦しみ、思うように買いオペが進まないという未来は現状では容易に想像できてしまう。不安材料を完全に拭うのは難しい。

 ピッチの中の話を移すと、キャリーができないバックラインと降りてくる動きと縦に長いパスを好む前線のかけ合わせにより、ボールが前にあっても人を前に送れないという状況が頻発。前プレの強度も不十分であり、高い位置で厚みのある攻撃を仕掛けることができない状態となった。

 ただ、チアゴ・シウバの離脱により3-4-3に移行したことでやや事態は好転しているように思う。似たタイミングで復帰したフォファナはこれまでバックラインが出来なかった持ち上がりを見せており、足りなかった深さはチルウェルやロフタス=チークといったWBが担うことでカバーすることが出来ている。特にチルウェルの裏抜けは今のチェルシーには不可欠である。

 4バック時には窮屈さが目立ったクリバリも両サイドのCBが積極的に迎撃に出る3バックに移行してからは躍動。横スライドでピンチを未然に防ぐことで持ち味を発揮している。

 浮上のきっかけは得点力になるだろう。現状ではトップハーフでは唯一の20点台の得点であり貧打に苦しんでいる。決定力を見せつけることができれば前線は即レギュラー定着確定だろう。

 リーグでのCL出場権獲得はかなり絶望的ではあるが、それがモチベーションに蓋をすることもないだろう。長期契約を結んだチームで出番をつかみ取れなければ地獄まっしぐら。自らの価値を示すことが出来なければ高額の給与を担保してくれる移籍先すら見つけることができないはずだ。

Pick up player:メイソン・マウント
 契約延長案件でどちらが主導権を握っているのかはいまいちよくわからないが、提示された長期の契約をマウント側が渋っているという構図で合っているのだろうか。ここに来てピッチでのパフォーマンスが安定してないことが退団の後押しをしている感もある。マウントの未来はどうなるだろうか。

ここまでの道のり

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