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「もうすぐトニーが帰ってくる」〜勝手にプレミア定点観測 23-24 中間報告編 part2~

第1弾はこっち。

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【6位】ウェストハム

10勝4分6敗/勝ち点34/得点33 失点30

2つのモデルチェンジ成功が好調キープの秘訣

 質実剛健さが持ち味のウェストハムの好調は冬になっても相変わらず。ELも文句なしの首位通過でノックアウトラウンドにストレートイン。モイーズのチームの作り変えはここまではほぼ思い描いていた通りに進んでいるといえるだろう。

 ざっくりとした今季のウェストハムのテーマは昨季までの主力から脱却できるかどうかである。このテーマはハーフシーズンが過ぎた現状では順調そのものだ。

 中盤のライスの穴はウォード=プラウズとアルバレスが加入し、ソーチェクとタッグを組んだ3センターで非常にスマートに埋めている。印象的なのはアーセナル戦のパフォーマンス。この試合はCBコンビがオグボンナとマヴロパノスという今季のパフォーマンスがなかなか上がってこないコンビだったのだが、上記の3センターがハーフスペースを埋めに走ることでCBの守備範囲をボックス内に制限。これによりアーセナルの攻撃をシャットアウトして見せた。

 攻撃においてもボックス内に飛び込めるソーチェクの破壊力を後方からウォード=プラウズとアルバレスが支援する形は非常に堅実。攻守に完成度が高いユニットといっていいだろう。

 前線では負傷で離脱が続くアントニオの不在を埋める必要があった。こちらに関しても前回の定点観測記事で触れたボーウェンをCFにコンバートし、クドゥスがサイドに入る形が完全にフィット。

 序盤こそ出遅れたクドゥスだったが、非常に快調なパフォーマンスで攻撃を牽引。右サイドからのアシストやレンジのあるシュートなど、攻撃の万能手としてすでに序盤の遅れをチャラにしておつりがくる活躍を見せている。

 パケタ、ボーウェンといった前線の相棒も好調。アントニオは復帰後にポジションを奪い取れるかどうかが怪しい。プレミアの中でも今現在11人の組み合わせが非常にはっきりしているというのもウェストハムの特徴といっていいだろう。

 保持で手数をかけた崩しはあまり得意としていないので、追いかける展開に追い込まれてしまうと少し苦しい部分はある。ハイプレスのように中盤の前向きの守備に負荷をかけるプランだとライス不在の苦しみは感じられるので、そうした状況をそもそも作らないことが重要なポイント。

 11人のケミストリーで勝っている部分も強いので、負傷が多いCBの離脱がこれ以上長引かないことや、中盤がELとの二足の草鞋でパフォーマンスを落とさないかどうかもポイントになるだろう。

Pick up player:エメルソン・パルミエリ
 正直派手さはないが、パフォーマンスは右肩上がり。確実にリーグ内で左SBとしての格を挙げている印象。特に鋭い攻め上がりはカウンターにおいて大きな武器になっている。

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【7位】ブライトン

8勝7分5敗/勝ち点31/得点38 失点33

苦しい台所事情の中で見える創意工夫

 上位5チームからはだいぶおいていかれてしまったが、それでもブライトンに関してはここまで何とか踏ん張ることができているという方が正直先に来てしまう。それくらい、チームの負傷者の事情は深刻である。

週に2試合を戦うという過酷な日程、市場がオープンするたびに引き抜かれていく主力、それを実績のない有望株で埋めるという戦略、そしてリーグ最低クラスの人件費を踏まえればこの成績に文句をつけることは非常に難しい。

 この夏の戦力流出はカイセドとマック=アリスターの2人。CHを担うことが多い彼らの離脱により、バックラインからのパス交換を起点とした縦に楔を差し込む形は大きく減少。その影響を受けたのがWGで、三笘とマーチに崩しにおいて過剰な負荷がかかってしまうというのが前半戦のブライトンの流れだった。

 その頼みのWGもマーチの離脱により三笘の片翼に。WGの後方からの支援が可能なエストゥピニャンやランプティも離脱するなどの周辺事情を含めると、さすがの三笘もお手上げ感が強い。冬には明らかなコンディション低下と負傷を経験することとなってしまった。

 もっとも、苦しい中でもいろいろと手を付けているのはさすがという感じのデ・ゼルビである。特に先述の縦に鋭いパスをつけるという観点においては工夫がみられている。例えば、バレバのサリーによる後方の陣形の可変は相手に中央の縦パスを刺すためのスペースを作るための1つの手段である。

 直近のウェストハム戦で見せた3-1-4-2風の可変も工夫の一環といえるだろう。WBで外を広げて内側の縦パスのコースを確保するプランだ。大外のミルナーとヒンシェルウッドは独力での突破を期待できるタイプではないが、三笘とアディングラを代表活動で失うことが決まっているこの冬の緊急避難としては十分説得力のあるクオリティだった。

 アタッキングサードにおけるサイド攻撃に関しても、大外の三笘に対してニアのグロスとファーのアディングラと2つの選択肢を用意することで少しでも負荷を減らそうという努力は伝わってくる。

 ただし、冬が明けても過密日程は解消の見込みはない。三笘はアジアカップで実質的なウインターブレイクなしで後半戦に臨むことになるし、他の負傷者の状況に関してもまだまだ不透明な部分は多い。プライオリティをつけながら狙いを絞って戦うという部分ではデ・ゼルビに器用さは感じないが、そういった部分の舵取りができるかどうかは要注目ポイントになるだろう。

Pick up player:ジョアン・ペドロ
 序盤戦はプレー選択がやや不思議ちゃんなのかな?と感じる部分があったが、中盤以降は連携を理解したのか前線の起点として不可欠な存在に。パンチ力があるフィニッシュも含めて前線のどこにおいても活躍を期待ができる選手。今のブライトンのセンターラインの攻撃の中心は彼である。

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【8位】マンチェスター・ユナイテッド

10勝1分9敗/勝ち点31/得点22 失点27

取り組みを結びつける意義探しが重要

 前回の定点観測からおよそ3ヵ月経っているが、正直な印象を言えば大まかなマンチェスター・ユナイテッドの立ち位置はあまり変わっていない。怪我人だらけのスカッドによって「その場しのぎ」のプランからなんとか勝ち点を拾っていく形でリーグ戦ではトップハーフをキープ。「もう本当にやばいかもしれない」という次の試合で勝ち点をきっちり引っ張ってくるあたり、テン・ハーグにはスールシャールのようなしぶとさを感じないでもない。

 それでも、総力戦を強いられるCLではちっとも通用せずに敗退してしまっており、成果面でも疑問符がつくのは仕方ないところ。特に終盤の失点が目立ちまくっており、完全に足を引っ張っていた。6試合で15失点はGSに参加した32チーム中アントワープに次いでの2位タイの多さである。これでは突破は難しい。

 リーグ戦では逆に得点力に苦しんでいる。20節を消化した時点での22得点はトップハーフ最少。リーグ全体でみてもこれより少ないのはバーンリーとシェフィールド・ユナイテッドの2チームでだけである。このように攻守の歯車がかみ合っていない状況が続いている。

 ピッチの中に目を向けてみると、ショートパスをベースにした後方からのビルドアップへの努力の跡は見られる。特にSBの位置を大きく変えることで縦パスのコースを創出しようという点に関しては積極的に取り組んでいる。

 だが、そうした可変がうまく目的と結びついていない感じが切ないところでもある。ダロト、ワン=ビサカは前を向いたときにできる配球に強みがあるタイプではない。ショウにしてもやはり外を追い越してナンボの選手のように思える。

 また、ここがフリーになった後のルートも整備されている感が薄い。例えば大外のWGで勝負をかけるとか、ホイルンドへの楔で加速するとか、この形なら一番スムーズに敵陣攻略ができるきっかけと紐づけることは必要のように思える。

 幸い、上の課題を解決できる材料はないわけではない。CHに入ったマイヌーは配球が安定しており、彼をフリーにできるのであればSBが絞る意義はある。リサンドロ・マルティネスもすでに復帰を果たしており、中盤CHからの配球パターンが確立する準備は少しずつ進んでいる。

 WGではガルナチョが好調をキープ。少なくとも崩しのフェーズにおいては現状のユナイテッドでは1番手といえる存在になりつつある。

 あとは待望のスコアラーだろう。ようやくリーグでの初得点が出たホイルンド、もしくは調子が上がらないアントニーとラッシュフォードのWG陣のうちの誰かの爆発は逆転でのCL出場権獲得を狙うのであれば必要不可欠のように思えるが。

Pick up player:アレハンドロ・ガルナチョ
 エバートン戦の豪快なオーバーヘッドは今シーズンのプレミアリーグのハイライトの1つ。それがなくとも大外からの仕掛けで違いを作ることができるユナイテッドの唯一の選手であり、シーズンが進むにつれて存在感は高まっている。あとは持続性。ラッシュフォードもそうだが、なかなかユナイテッドの逸材は輝き続けることに苦戦している印象が強い。そこを脱して超一流の扉を叩く場所になんとしてもたどり着きたいところだ。

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【9位】ニューカッスル

9勝2分9敗/勝ち点29/得点39 失点29

スタイルに大打撃を与えた過密日程

 ブライトンと並び、現状ではもっとも週に2試合というスケジュールによるダメージを受けているチームといっていいだろう。リーグ戦はここにきて4連敗(21節終了時点)と急ブレーキ。ついに勝利数を敗戦数が上回ることになってしまった。

 ニューカッスルがブライトンと異なるのは、強度の低下が明らかにチームとしての根幹をなしていること。もちろん、現代サッカーにおいて攻守のインテンシティはどのチームにとっても重要な要素であることは言うまでもないが、ニューカッスルはそこに特化することで躍進してきたチームということである。

 その強度の面が勤続疲労と多発する怪我人で明らかに失われており、すがるものがなくなってしまったというのが現状だろう。CLでの敗退以降、この傾向は非常に顕著に表れている。ルートンに競り負けたり、絶対的な優位を誇っていたセント・ジェームズ・パークをフォレストに制圧されたりなど様子がおかしい。

この2つの試合は共に英国らしいキック&ラッシュの展開が見られたという特徴がある。本来であればニューカッスルがもっとも得意とするはずの展開でルートンやフォレストに力負けしているのだから、やはりポテンシャルを勤続疲労で発揮できていないというのが妥当な見立てだろう。

 直近のシティ戦はそういう意味では納得感があった。オールコートマンツーの片道切符。後半のパフォーマンスは明らかに犠牲になっていたが、強度を集約してリードを奪うプランという賭けに出なくてはいけない状況であるということである。

 そうしたプランと心中することができるのは前線のスタメン3人のパフォーマンスが充実しているから。アルミロンは長い距離でのカウンターでも使い減りせずに、陣地回復をすることができるし、ゴードンは大外からの仕掛けでフィニッシュまで視野に入れることができる。

 そして、イサク。リバプール戦、シティ戦と2つの試合におけるフィニッシュの精度ははっきり言って衝撃的といえるレベル。寄せられることでタイミングやコースを限定されても、仕留めることができる高いシュート精度は圧巻。それをカウンターで余裕がない中でやってのけるのだから、まさしく今のニューカッスルの生命線である。

 ポープ、ジョエリントンなどまだまだ復帰が見込めない選手は多く、依然として情勢は厳しい。今季の欧州は完全終了し、後半の日程は緩和される見込みなのは救い。限られたスカッドでどこまで巻き返しを図れるか。プレミア一本化による復調を祈るばかりだろう。

Pick up player:マルティン・ドゥブラーフカ
 ポープのシーズン絶望により、白羽の矢が立った経験豊富な2nd GK。登用直後は試合勘のなさからか怪しいパフォーマンスが散見されていたが、その部分はベテランらしく試合を重ねるごとにチューニング。ラムズデールなど冬の移籍市場における獲得の話も隠れてきたことを踏まえると、ポープ不在時のゴールマウスは彼に託すことで腹を決めたのだろう。

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【10位】チェルシー

8勝4分8敗/勝ち点28/得点34 失点31

出遅れのリカバリーには長期離脱組の押し上げが欲しいところ

 前回の定点観測は地獄の強豪連戦突入寸前だった記憶がある。この強豪との連戦で今季のここまでをひっくり返せるかどうかが今季の復権の重要なポイントであると述べたはず。

 結果としては「まずまず」という感じ。特にビッグマッチにおいては一方的に叩きのめされるような展開は思ったよりは少なかった。その一方でそうした試合に勝ちきれないことが勝ち点の観点で蓋をしていたし、その合間にニューカッスルやマンチェスター・ユナイテッドにコテンパンにやられるなど、突き抜けた成績を得るには足りないものがあったというのが今のチェルシーの現在地だろう。

 現在は今季初のリーグ戦3連勝と一見すれば復調気配にも思える。しかしながら、内容を見るとルートン戦とフラム戦は一つ違えば異なる結果になってもおかしくない綱渡りの終盤戦を過ごしている。内容を加味すると上昇気流に乗っているとするのはまだ尚早な気もする。

 骨格としている選手たちが好調を維持しているのはそうした中でも朗報だろう。ギャラガーはチームの強度を攻守に支える働きを果たしているし、前線ではズレを作ってフィニッシュ局面まで導くという点でパルマーは明らかに別格の働きをこなしている。

 右のSBに関してもジェームズが再離脱をしてしまうという悲劇はあったものの、グストのパフォーマンスは安定。彼が健在であるならば、当面はこのポジションに大きな心配は必要がないように思える。

 となると、チームの出来を決めるのはそれ以外の部分。中盤においてはエンソの疲労がやや気がかり。後方から別次元のパフォーマンスでチームを引っ張っていた8番は以前ほどの存在感はなくなっている。幸い、このポジションはカイセドなどほかの核になりえる選手もいる。ようやく実践復帰を果たしたラヴィアは出場した際は左右の散らしをメインとした配球で他の選手と違う個性を発揮。どれだけ稼働することができるのかは気になる部分である。

 前線はブロヤ、スターリング、ジャクソンとパルマー以外は相変わらず波の大きさが目立つ。中盤と同じく、ここのポジションは柱となるポテンシャルを秘めているエンクンクがどれだけ活躍できるかが重要なポイントになるだろう。

 現状、ポチェッティーノのスタイルは軸となる選手のスタイルに合わせる形のオーソドックスなものという印象がある。選手の質を生かせば戦えるチェルシーであれば、特にこのスタンスが悪いものとは思わないが、後半戦も新しい柱が出てこなければ、前半戦の遅れを取り戻すのは難しいかもしれない。

Pick up player:マロ・グスト
 大外をタイミングよく駆け上がるレーンを埋める実直性はインサイドでプレーしたがるパルマーと好相性。クリスタル・パレス戦での先制点の場面では横断のドリブルから逆サイドに顔を出してアシストを記録するなど新境地を見せた。

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 つづく!

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