ギリギリセーフ!間に合ったぜ!
【16位】ブレントフォード
10勝9分19敗/勝ち点39/得点56 失点65
耐えたものの正念場は続く
耐えたーーーーー!守護神のラヤはアーセナルに。エースのトニーは訳のわからない理由で長期の出場停止処分を喰らうなど、攻守の要を欠いて望む事になったシーズンは苦難の連続。
まず襲いかかったのは怪我人。酷かったのはSBと前線。ヘンリー、ヒッキーは早々にリタイヤし、負傷のままシーズンが終了。ゴドス、ローアスリウなどで誤魔化しつつ、レギロンでなんとか手当てをすることでシーズンをやりくりすることとなった。
前線はシャーデが大怪我をした事により実質ムベウモとウィサの2人体制に。チャンスメイクにフィニッシャーに活躍できるムベウモはエースの名前を背負える器であることを証明。22-23シーズンは代打の切り札だったウィサはスターターでも十分な価値を見せて2桁ゴールを達成。プレータイムを伸ばした分、ゴール数もきっちりと伸ばすという仕事人ぶりを発揮した。
しかしながら、そのムベウモも負傷で長期の離脱。ウィサはAFCONに派遣。コンゴは3位決定戦までフル稼働という大躍進でその分ウィサの離脱も長引くこととなった。
このように各ポジションにガタが来た結果、従来の対強豪仕様のハイプレス特攻は完全に鳴りを顰め、徹底的にブロック守備を敷くことで対抗する試合を並べるように。それでもサイドからの推進力を担保できないフォーメーションとなっているため、十分な陣地回復もできず。ブロック守備の練度自体は悪くなかったが、ピノックの不在もあり、最後のところで競り負けるシーンなども散見され、強豪相手のジャイアントキリングはなかなか見られないシーズンとなってしまった。
それでも降格した3チームに比べれば守備の組織が高かった分、なんとか踏みとどまったという感じである。ただし、復帰したトニーは時折鋭さを見せつつも従来ほどのコミットを感じられず、来季以降も大黒柱として信頼できるかは不透明といった状況である。
昇格組に近年のプレミア実績があるチームが多い来季は正念場になるだろう。今季負傷した選手が健在をキープできるか、ルイス-ポッター、シャーデ、そして今季補強したカルバーリョなど攻撃の新たな柱が生まれるかも注目。ここを乗り越えればトーマス・フランクのやりくりのうまさはさらに一段上のステージに引き上がることになるだろう。
Pick up player:イヴァン・トニー
復帰戦で審判の見てない間にボールをズラしてコースを空けて直接FKを決めた肝っ玉はさすが。散々迷惑をかけておきながら秒で移籍を匂わせる肝っ玉もさすが。
今季の道のり
【17位】ノッティンガム・フォレスト
9勝9分20敗/勝ち点32/得点49 失点67
底抜けしなかった守備と相棒探しの完了で首の皮一枚
エバートンと同じく勝ち点減処分を喰らった今シーズン。結果的に積み上げた勝ち点32は平年のシーズンであれば降格してもおかしくない数字であり、昇格組の3チームがいずれも勝ち点30に届かなかった幸運に感謝すべきである。
オフシーズンは毎度恒例となる大幅な選手入れ替え祭りだった。数は多いものの、放出した選手の中で主力と言えるのはトッテナムに移籍したジョンソン、GKの2人など一部の選手。獲得した選手もドミンゲス、アイナ、サンガレといった働き盛りの年齢の人から、エランガやハドソン=オドイといったメガクラブ経由組など幅広い戦力を敢行した。
苦戦の要因はホットライン構築の遅れだろう。中盤で反転し、スルーパスを出すことで前と後ろを繋ぐことができるギブス=ホワイトの相方がなかなか定まらず。移籍したジョンソンのように裏抜けする選手がいないし、怪我がちなアウォニィはシーズンを通して低調。新しいパートナー探しに遅れが生じてしまった。
終盤のゲームクローズにも難があった。リードを得ることができた19試合のうち、逃げ切りに成功したのは半分にも満たない9試合。正守護神がなかなか定まらなかったGKも含め、CBも相手のパワーに屈する場面も目立ち、サイドでも1on1で後手に回ることもあって苦しい試合が続くこととなった。
それでもなんとか首の皮一枚が繋がったのは前線のユニット構築が後半戦になんとか間に合ったからだろう。ギブス=ホワイトの相方としてエランガやハドソン=オドイといったメガクラブ経由組が開花。両翼のレギュラーとして徐々に立場を確立するようになる。
さらにはフィニッシャーとしてウッドも復活。2桁ゴールを決める勝負強いフィニッシャー役として存在感をきっちり出すことに成功。テイストこそ違うが、アウォニィ不在のCFの穴を埋めてみせた。
守備も強みとは言えないものの、降格したチームに比べれば失点数は堅実な数字を残しておりここが命綱になったと言えるだろう。ただし、来季はブレントフォードと同じく予断を許さないシーズンになるだろう。ギブス=ホワイトの残留の見込みが高いのはチームにとっては朗報。この大黒柱を軸にチームとしての完成度を高めて、なるべく楽な一年を過ごしたいところだ。
Pick up player:モーガン・ギブス=ホワイト
得意の攻撃だけではなく、守備にもきっちりと汗をかきながら言葉と背中の両方で味方を鼓舞できるハードワーカー。プレーを見ていて昨季とても好きになった選手の一人だ。
今季の道のり
【18位】ルートン・タウン
6勝8分24敗/勝ち点26/得点52 失点85
主力健在なら攻撃は通じたが…
下部で鍛えたキックアンドラッシュと前から捕まえに行くマンツー型の守備。猪突猛進と言っていいそのスタイルは残念ながら年間を通してプレミアで通用するクオリティにはなかったことが証明されてしまった。
順位が示す通り、もっとも残留に近かったのは彼ら。そして残留にまつわる「たられば」をもっとも言いたくなるのも彼らであろう。やはり大きかったのは選手の大量離脱である。エースとして君臨するアデバヨ、中盤の柱として存在感を示しつつあったロコンガ、そして橋岡をたらい回しにしなければいけないほど負傷者が相次いだ最終ラインと各ポジションで質と量を共に損なうレベルで怪我人が続出。もちろん、ルートンがプレミアに臨むスタイルは猪突猛進型の一本槍なのだが、その槍の破壊力は負傷者によって低下。カミンスキ、バークリーがきっかけを掴んだリバプール戦での勢いはあっという間に萎むことになってしまった。
ロコンガやアデバヨが健在ならば攻撃面でのクオリティの担保はできたのは確かだろう。その一方で守備に関してはフルスカッドでも通用したかは怪しいところ。マンツーで後方同数を受け入れるスタイルは個の能力の差が如実に出やすく、プレミアの質が高いアタッカーに対してあっさりと後手に踏む場面が多かった。ブロック守備での完成度も含めて、非保持のクオリティはプレミアレベルにはなかったように思える。
橋岡にとってはハードなシーズンとなった。まずは負傷者だらけで起用ポジションがバラバラになってしまったのが気の毒。プレシーズンなしの途中合流でこの役回りは完全に貧乏くじだと思う。加えてCBとして迎撃不足、WBとしては大外からの攻撃性能不足という帯に短し襷に長し感があったのも確か。この点は準備をしても足りるかどうか難しいところ。おそらくスタイルが変わらない来季にも同じ課題にぶつかることが予想される。
チームは総じて苦しいシーズンとなったが、見ていて楽しいスタイルを1年間提示したのは確かである。勝っていても負けていても直向きにサイドからクロスを上げ続けてゴールに向かっていく形をケニルワース・ロードのファンが後押しする姿は愛するクラブのプレミアの旅路を心から楽しんでいる様子が見られた。降格が決まったチームを拍手で称えるスタジアムのサポーターの姿を見て、いつかまた彼らがこの旅を楽しむ機会が来るようにと思わずにはいられなかった。
Pick up player:アルベール・サンビ・ロコンガ
正直、ルートンへの移籍は完全にスタイルとミスマッチを起こすと思っていたのだけども、見事にその予想を裏切ることに。左右への軽いタッチでの展開はアーセナル加入当初のワクワク感を思い出させてくれたし、マンツーのマーカーについていきながらボックス内で体を張って守備をする姿はアーセナル時代とは別人だった。
今季の道のり
【19位】バーンリー
5勝9分24敗/勝ち点24/得点41 失点78
様変わりしたスタイルも我慢が効かずに降格
4-4-2という並びこそ全く変わっていないものの、シティ印のコンパニの元、前回降格時のダイチ時代とは見違えるスタイルでプレミアに昇格をしたバーンリー。昇格組としてはルートンとベクトルは違えど、チャレンジングなスタイルで残留に挑むシーズンとなった。
序盤戦はかなりチューニングに苦労したように思う。トレードマークのはずのビルドアップは後方に重たいフォーメーションになりやすく、バランスが崩れていた。プレミア基準で言えばプレス耐性があるわけでもない上に、自陣に相手のマーカーを引きつけるので、スペースがない状況を自ら作り上げるという負の連鎖で悪い状況に飲み込まれていった感がある。
仮にプレスを抜けたとしても前線の枚数は足りなかったため、数的には圧力不足。後ろに重たいビルドアップの弊害はプレスを回避した後も続くこととなった。
救いだったのは前線のクオリティはプレミアレベルで通用したこと。序盤戦を見る限り、チームとしての核だったコレオショの離脱はかなり致命的なダメージを与えるものかと思われたが、さらに若いオドベールの台頭で埋めてみせた。2トップも含めて前の4枚はカラーの違う選手がそれぞれの持ち味を発揮することになった。
ビルドアップにかける人数バランスが改善し、トラフォードがチームを救うことも増えた中盤戦はかなりチームとして戦うことができていた。しかしながら、守備の強度はダイチ時代とは訳が違うため、スタイルに反して保持で押し込まれる状況における反発力の不足はかなり致命的だったように思う。
GKのムリッチに代表される終盤戦の重要な局面でのミス連発も頭が痛かった。エバートン、フォレストといった勝ち点剥奪組に対しては最後までプレッシャーをかけてもおかしくなかった勝ち点推移だっただけに、自滅でプレッシャーをかけるチャンスを逸してしまったのは残念であった。
降格してもコンパニ政権をベースにスタイル継続を目論んでいたはずだが、まさかのバイエルンからの引き抜きにあうという想定外の事態に。次に彼らが昇格してくる時はどのようなスタイルで残留に挑むことになるのだろうか。
Pick up player:ウィルソン・オドベール
ジョーカーとして存在感を発揮するだけでなく、スターターとしても攻撃の切り札として稼働できることを示した18歳。将来プレミアで再ブレイクをする可能性が十分にある逸材である。
今季の道のり
【20位】シェフィールド・ユナイテッド
3勝7分28敗/勝ち点16/得点35 失点104
3桁失点も納得の不安定な守備
正直にいってしまえば、シーズンの開幕から降格決定まで一度も「いけるかも」という感覚を掴めないままあっさりと終わってしまったなという感想である。大台の3桁失点ではまず残留を見込むのは厳しいだろう。
どの試合も開始10分ほどであれば上位勢相手でも喰らいつくことができていた。横断から、WBの勢いのいいオーバーラップからゴールに迫る奇襲はそれなりにどのチーム相手にも通用していたように見える。
その一方で押し込まれた展開を迎えたら、2,3回の試行で簡単に潰れてしまうというのが苦しかった。非保持の局面が多いことが明らかな状況で開始20分までには先制点を許してしまうことが多く、プランの破綻から練度がさらに下がってしまい、より失点を重ねてしまうという展開につながってしまうケースの連発だった。
ディフレクションが不運な形でゴールインしてしまうなど押し込まれるチームにはそれなりにスタイルゆえの税金のような失点が絡んでしまうことはある。しかしながら、シェフィールド・ユナイテッドの失点は個人レベルのエラーが引き寄せる必然のものが多く、同情を寄せにくい性質のものが多かった。簡単に滑ることでコースを開ける、もしくはPKを献上するなど、焦りが悪い方向に転ぶことで相手は早々にブロック守備破壊の活路を見出すことができていた。
そういう意味ではバックラインの主軸が定まらなかったのは痛恨だった。トラスティやアフメドジッチといった選手たちはプレータイム的にはレギュラーとしてきっちりシーズンを通したが、毎試合と言っていいほどミスが多く、チームとしていざという時に頼りにしやすいパートナーにはならず。冬の新戦力として経験を買われた加入したホルゲイトは三笘に殺人タックルをかまして日本のファンから大ブーイングを食らったこと以外は存在感を示せなかった。
同じ冬の新戦力でも前の選手には光があった。ブレアトンは加入直後から少ないチャンスを仕留めるゴールゲッターとして存在感を発揮、チームにとって明らかに勝ち点獲得の可能性を高める選手だった。
アーチャーやマカティーなど前線のタレントの中では才能を感じる選手は他にもいた。ただし、猫の目のようにメンバーを変える影響もあり、そうした選手が中心としてシーズンを背負う存在になり得なかった。それで残留を引き寄せられたかは別問題だが、用兵にも不満があったのは確かである。
近年は昇格したシーズンの即降格というムーブが目立つブレイズ。次回の挑戦こそ念願の残留を手にする戦力を整えたいところである。
Pick up player:ベン・ブレアトン・ディアス
攻撃のタレントとしては一級品。少ない攻撃の機会をゴールに変える素晴らしいタレントであった。その一方で自陣での守備に回ると、バタバタしており守備の機会が多いブレイズのスタイルとのミスマッチがあったのも確か。キャリアを考えると、自陣での非保持の振る舞いはもう少し鍛えたいところだ。
今季の道のり
終わり!